遺贈寄付を行う手順は?税金の注意点・特例の適用条件も

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自身が亡くなった後に、財産をNPO法人・公益財団法人などの支援団体に寄付する事を「遺贈寄付」と呼びます。

遺贈寄付を検討している方の中には「遺贈寄付をしたいけど、どうやって行うのか」「注意すべき点はあるのか」とお考えの方もいらっしゃることでしょう。

本記事では遺贈寄付の2つの方法と手順、遺贈寄付と相続税について解説していきます。

目次

  1. 遺贈寄付の方法とは
  2. 遺言書で遺贈寄付を行う手順
    2-1.遺贈先を選び、寄付する財産や金額などを決定する
    2-2.遺言書を作成する
    2-3.遺言書を保管する
  3. 遺贈寄付と相続税
  4. まとめ

1.遺贈寄付の方法とは

自身が亡くなった後に、特定の団体や個人に無償で譲渡することを遺贈と呼び社会貢献のために寄付金として遺贈する事を遺贈寄付と呼びます。

遺贈寄付には遺言書による寄付、信託財産としての寄付という2種類の方法があります。

1-1.遺言書による遺贈寄付

遺言書による寄付は遺言書に遺贈先や遺贈する財産を記す方法で、信託による寄付は遺贈したい財産をあらかじめ信託銀行や信託会社に預け、遺贈を契約し自身が亡くなった後実行してもらう方法です。

遺言書による寄付は、遺言書を作成するだけで「遺贈寄付がしたい」という意向を示す事が出来る、相続財産に関しての記載もできるというメリットがあります。

ただし、相続は遺言書がある時には原則として遺言書の内容通りに行われますが、相続人の話し合い(遺産分割協議)で相続人全員が合意している際には、遺言書の内容に従う必要はありません。よって、遺贈寄付が必ず行われるとは限らないという点に注意が必要です。

1-2.信託財産としての遺贈寄付

信託財産による寄付は信託銀行・会社に預け契約を結ぶことで、遺贈寄付を実行してもらう事が可能です。ただし、手数料がかかる、信託できる財産が限定されていることがあるなどのデメリットがあります。

本記事では一般の方でも取り組みやすい、遺言書による遺贈寄付の手順について解説していきます。

2.遺言書で遺贈寄付を行う手順

  • 遺贈先を選び、寄付する財産や金額などを決定する
  • 遺言書を作成する
  • 遺言書を保管する

2-1.遺贈先を選び、寄付する財産や金額などを決定する

まず遺贈寄付を行う団体を選びましょう。「遺贈することで、どのような社会貢献をしたいか」などのような観点から、医療・子供への教育支援・災害支援など興味のある分野をピックアップした後に団体を探し、それぞれを比較検討します。

団体の理念や活動報告書・寄付金の使い道などをホームページやパンフレットで調べ、自身の希望に沿った遺贈先を選ぶことが重要です。この時、遺贈寄付を行う財産や金額についても検討し、決めておきます。

2-2.遺言書を作成する

次に、遺贈寄付の詳細や相続財産の分配などについて記した遺言書を作成しましょう。遺言書には自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は財産目録以外を遺言者自身が自筆で書き、遺言書を書いた日付を記載、署名・押印を行います。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は遺言書の内容を知られたくない時に作成する遺言で、公証役場で証人2人と公証人立ち合いの元、手順に従って遺言書の封印を行います。

公正証書遺言

公正証書遺言は遺言の内容を伝え、公証人が作成する遺言です。公証役場で原則20年間保管され、公証人が作成するため不備のリスクを抑えられますが、手数料がかかります。

いずれの作成方法でも、「遺言の内容を確実に実行してもらいたい」という方は遺言執行者を選任しておきましょう。

遺言執行者は誰でも就任することができますが、推定相続人(相続人となる予定の方)が遺言執行者になると利害関係が生じトラブルが起こる可能性があります。弁護士などの第三者への依頼も選択肢に含め、慎重に検討しましょう。

2-3.遺言書を保管する

自筆証書遺言は自宅や銀行の貸し金庫など身近な場所に保管する事もできますが、相続人に存在を知られず遺産分割が行われてしまう、変造・偽造されてしまうといった可能性があります。

さらに自身が亡くなった後に、遺族は家庭裁判所で遺言書の変造・偽造を防止する検認の手続きを行わなければいけません。このような事態に備え、遺言書の保管方法についても検討しておくことが大切です。

例えば、自筆証書遺言は法務局に保管することができます。保管する際に所定の手続きを行うため、検認が不要となり遺言書が変造・偽造されてしまう可能性は非常に低いと言えるでしょう。

遺言書を法務局に保管してもらうと保管証が発行されますので、保管証を通帳や印鑑などと一緒に保管しておき、あらかじめ家族に話しておくことで遺言書の存在を知らせておきましょう。

また、公証人が作成する公正証書遺言・秘密証書遺言は公証役場で20年間保管されます。こちらはそのまま保管が出来るため、保管方法を自身で用意する必要はありません。

いずれの保管方法を取った場合でも、生前から推定相続人に遺言書を残したこと、保管場所を伝えておくことが重要です。遺贈寄付の意向や相続についても話し合っておくことで、自身が亡くなった後に相続人が遺言書の内容に戸惑うことなく手続きを進めることに繋がります。

なお、時間が経つにつれて、相続財産の内容や自身の気持ちが変わることもあるでしょう。遺言書はあらかじめコピーを取っておき、10年、20年と遺言書の内容を見直してみることも大切です。

3.遺贈寄付と相続税

遺贈によって取得した財産には基本的に相続税が課されますが、国・地方公共団体・公益法人などに寄付した場合には相続税の対象外とする特例措置があります。特例の要件は以下の通りです。

  1. 寄付した財産は、相続や遺贈によって取得した財産である※相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含む
  2. 取得した財産を相続税の申告書の提出期限までに寄付する
  3. 寄付先が国、地方公共団体、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる公益を目的とする事業を行う特定の法人である※特定の公益法人の範囲は独立行政法人や社会福祉法人など一定の団体で、寄付時には設立されている

※引用:国税庁「相続財産を公益法人などに寄附したとき

信託財産を寄付した場合

信託財産を寄付した場合には、上記3の代わりに「受託者(受け取った者)が信託会社・銀行(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律により同法第1条第1項に規定する信託業務を営む同項に規定する金融機関を含みます。)であり、公益信託が教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められるなど一定のものである」という要件に置き換わります。

認定NPO法人に寄付した場合

認定NPO法人に寄付した場合には、3が「認定NPO法人が行う特定非営利活動促進法第2条第1項に規定する特定非営利活動に係る事業に関連する寄付をする」という内容となります。

なお、認定NPO法人とは、特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人のうち、一定の基準を満たすものとして所轄庁(都道府県知事又は指定都市の長)の認定を受けたものです。

寄付を受けてから2年以内に認定NPO団体が非営利活動に使っていない、公益法人が公益を目的とする事業に使っていない場合、寄付により相続税・贈与税が不当に減少した際には適用から除外されます。

特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に特例の適用を受ける旨を記載し、適用を受ける財産の明細書や一定の書類を添付して申告します。

4.まとめ

遺贈寄付の方法は遺言書で遺贈寄付を指定する方法、信託財産で寄付をする方法の2つがあります。遺言書による遺贈寄付では、遺贈先を検討し遺贈先・寄付額や寄付する財産を決めた後、遺言書を作成し保管します。

遺言書の種類によって作成方法や保管場所が異なります。推定相続人にあらかじめ保管方法を伝えておき、遺贈寄付や相続についても話しておくことを検討しましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。