住宅購入のための資金は、比較的短期間に集中して貯める場合が多いのではないでしょうか。教育資金などと並行して準備する場合、効率的に準備していかなくてはなりません。この記事では、住宅資金を貯める方法、目標金額を決めるために把握すべき住宅購入費の総額などについて解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2021年7月1日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- 物件売買代金以外に必要となる住宅資金は?
1-1.物件取得にかかる諸費用
1-2.住宅ローンにかかる諸費用
1-3.その他の費用
1-4.頭金プラス諸費用が準備すべき住宅資金 - 住宅取得時に受けられる助成金・補助金
2-1.すまい給付金
2-2.地域型住宅グリーン化事業
2-3.地方自治体で実施している制度も - 住宅ローンは無理なく返せる金額で組むこと
3-1.借りられる金額はいくら?
3-2.無理なく返せる金額は? - 住宅資金の効率的な貯め方
4-1.銀行の積立定期預金
4-2.会社の財形貯蓄
4-3.個人向け国債
4-4.住宅資金を効率的に貯めるためのポイント - まとめ
1.物件売買代金以外に必要となる住宅資金は?
住宅を購入するときには、物件の購入代金以外にも諸費用がかかります。諸費用の目安は新築マンションで物件価格の5%前後、それ以外では10%前後かかるといわれています。諸費用は主に税金や手数料です。詳細は後述します。
通常、住宅ローンで諸費用を含めた借入はできず、数百万円を現金で支払わなくてはなりません。そのため、住宅の資金計画では諸費用分の準備が必須となるのです。
1-1.物件取得にかかる諸費用
不動産を取得する場合には税金や手数料がかかります。
印紙税
不動産の購入時に取り交わす売買契約書には印紙税がかかります。印紙税は印紙を貼ることによって納める税金で、契約書に記された契約金額によって税額が決まります。契約金額が1,000万円超5,000万円以下の印紙税額は、2万円です。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得した場合に一度だけ課される地方税です。不動産取得税額は固定資産税評価額(取得額ではありません)に標準税率を掛けて算出されます。不動産の標準税率は原則4%ですが、2024年(令和6年)3月31日までに取得した不動産の場合は特例措置により3%に設定されています。
固定資産税評価額は固定資産課税台帳で確認可能です。条件によっては税額軽減措置を受けられ、税額がゼロになることもあります。
登録免許税
不動産を取得したら所有権を登記する必要があります。この登記にかかる国税が登録免許税です。固定資産税評価額に登記の種類ごとの税率を掛けて算出します。税率は0.1%から2%です。
司法書士報酬
登記手続きを司法書士に依頼した場合には、報酬を支払います。上記の所有権移転登記をする際は、司法書士に手続き代行を依頼することが通常です。報酬額は登記の種類などによって差が出ますが、目安としては5万円前後を見ておきましょう。また、司法書士報酬と登録免許税を一緒に司法書士へ支払うことが通例となっています。
固定資産税(都市計画税)精算金
固定資産税(及び都市計画税)は1月1日時点の不動産所有者に対してかかります。年の途中で所有者が変わる場合、日割り金額を売り主支払って精算するのが通例となっています。
仲介手数料
不動産会社を通して(媒介契約に基づいて)不動産を購入する場合、仲介を行った不動産会社に仲介手数料(媒介報酬)を支払います。400万円を超える物件の仲介手数料は「物件価格の3%+6万円(消費税別)」が上限です。
1-2.住宅ローンにかかる諸費用
住宅の取得に住宅ローンを利用する場合、借入のためにかかる費用があります。
印紙税
住宅ローンを借りる際に取り交わす金銭消費貸借契約書には、売買契約書同様に印紙税がかかります。
登録免許税
住宅ローンの手続き時には、抵当権の登記に登録免許税がかかります。
ローン事務手数料
住宅ローンを取り扱う金融機関には、所定の事務手数料の支払いが必要です。事務手数料は金融機関ごとに決められており、「借入金額×2.2%」などの定率型、「一律3万円」などの定額型があります。
ローン保証料
住宅ローンの返済が滞った場合に、保証会社に返済を保証してもらうための費用がローン保証料です。保証料は物件価格の2%程度が相場です。
1-3.その他の費用
その他、住宅購入に必要な費用は以下の通りです。
火災保険料
ほとんどの金融機関では、住宅ローン借入時に火災保険の加入を求めます。求められない場合でも、台風や火災などの災害による建物や家財の損害リスク等に備えるため、火災保険は加入すべきです。
火災保険の保険期間は10年が最長です。最長の契約期間で保険料を一括払いにすると割安になります。保険料は保険金額(建物価格)や建物の構造、補償内容によりますが、30万円前後が相場です。
修繕積立基金
新築マンションを購入する際には、修繕積立基金を支払います。将来の大規模修繕に備えるための積立金です。金額は20万円から40万円くらいが相場です。専有面積が広い場合、100万円を超えることもあります。
1-4.頭金プラス諸費用が準備すべき住宅資金
以上の諸費用と物件取得のための頭金の合計が、住宅取得時に準備すべき資金ということです。頭金は物件価格の2割から3割が目安となりますが、最近は頭金なしでローンを組める金融機関もあります。しかし、返済額が大きくなるデメリットもあるため、資金計画は慎重に立てましょう。
2.住宅取得時に受けられる助成金・補助金
住宅取得時には、要件を満たすことで国や自治体の助成金や補助金を受けられる場合があります。利用できる制度はもれなく使って、住宅取得のお金の負担を減らしましょう。
2-1.すまい給付金
すまい給付金は、消費税の引き上げによる住宅取得者の負担を軽くするための制度です。年収775万円以下の人が一定の要件を満たした場合、最大50万円の現金が受け取れます。実施期間は2021年(令和3年)12月まで、一部2022年(令和4年)12月までです。
詳しくは国土交通省「すまい給付金」のウェブサイトでご確認ください。
2-2.地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化事業とは、省エネ性や耐久性に優れた木造住宅を新築する際、一定の条件を満たしていれば補助金が支給される制度です。
施工業者や製材業者で構成されるグループがあり、グループに所属する中小工務店などで住宅を建てた場合に補助金が受けられます。補助金の申請は個人ではなく、施工業者などを通じて行います。補助金額は長寿型・低炭素型で110万円、ゼロエネルギー型で140万円です。
詳しくは地域型住宅グリーン化事業のウェブサイトでご確認ください。
2-3.地方自治体で実施している制度も
住宅取得時に受けられる助成金・給付金の制度は国だけでなく、地方自治体が実施しているケースもあります。住宅資金を現金給付する以外に、住宅ローンの金利を補給するなどさまざまです。お住まいの地域でどのような助成が受けられるか、自治体のウェブサイトで確認してみましょう。
3.住宅ローンは無理なく返せる金額で組むこと
住宅を購入する際は、住宅ローンを利用する方がほとんどです。住宅ローンの借入額は、無理なく返済していける金額にすることが大切です。
借入の際には「いくらまで借りられるか」を確認し、その金額をもとに購入する物件価格を決める人が多いのではないでしょうか。しかし、金融機関が貸してくれる金額と、借りた人が無理なく返せる金額は違います。
3-1.借りられる金額はいくら?
住宅ローンで貸し出す金額には金融機関ごとの審査基準があります。そのため、おおよその目安をフラット35のウェブサイト上の住宅ローンシミュレーションで試算してみましょう。
前提条件として、年収600万円の方が金利1%、返済期間30年で借りるとします。この場合の借入可能額は5,440万円です。実際に5,440万円を借り入れると、ボーナスなしの毎月の返済額は17万5,000円です。このときの返済負担率(=年間返済額の年収に占める割合)は35%になります。
3-2.無理なく返せる金額は?
住宅ローンを無理なく返済していける金額は、家計の状況によります。子どもの教育費や老後資金を準備する場合、住宅取得資金として積み立てていたお金は住宅ローンの返済に回さないほうがよいでしょう。
また、将来にわたって家計を赤字にしないためには、返済負担率は多くても25%程度にすることが望ましいと考えられます。上記の条件で返済負担率が25%の借入可能額は3,886万円、20%なら3,109万円です。借入可能額より1,000万円以上少ない金額になります。
4.住宅資金の効率的な貯め方
ここからは、実際に住宅資金を貯める方法について解説します。
住宅資金は、比較的近い将来に使うことが決まっているお金です。使い道の決まった資金は、他のお金と分けること、資産が目減りする可能性の少ない低リスクな方法で準備することが大切になります。
4-1.銀行の積立定期預金
住宅資金は10年以上の長期間で準備することはほとんどありません。5年程度で準備する場合、一般の投資商品を活用すると損失を被る可能性があります。
そこで、元本保証の積立定期預金で住宅資金を準備することは有力な選択肢となります。住宅資金用として、他と口座を分けておいて目的外に使うことがないようにしましょう。
4-2.会社の財形貯蓄
財形貯蓄とは、国と企業が連携して従業員の資産づくりを支援する制度です。給与天引きで積立ができるため、住宅資金など目的の決まったお金の準備に適しています。財形貯蓄には「一般財形貯蓄」、「財形住宅貯蓄」、「財形年金貯蓄」の3種類があります。
このうち、財形住宅貯蓄(住宅財形)は、住宅資金作りのための制度です。元利合計550万円までの利子が非課税になります。また、住宅財形に限らず、1年以上財形貯蓄を利用すると、住宅を取得・リフォームする際に財形持家転貸融資を利用できます。
4-3.個人向け国債
個人向け国債は、国が発行する個人を対象にした債券で、1万円から購入できます。償還までの期間により10年債、5年債、3年債があり、10年債は変動金利で5年債と3年債は固定金利です。
利子には0.05%の最低保証があり、一般的に都市銀行の定期預金金利より高い利息が期待できます。また、購入後1年経つと中途換金が可能で、その場合でも元本割れはありません。個人向け国債は取り扱う金融機関が多く、SBI証券、楽天証券、マネックス証券といったネット証券でも購入できます。
4-4.住宅資金を効率的に貯めるためのポイント
住宅資金を効率的に貯めるには、いつまでにいくら貯めるかを明確にすることが大切です。その目標から逆算して毎月の積立額を決めましょう。少しでも多く住宅資金に回せるように、無駄な保険の見直しなどをすることも効果的です。
まとめ
住宅資金の準備には、お金を増やすことより減らさず貯めることが求められます。そのため、給与天引きの財形などで積立をする方法や、預金や国債といった元本割れリスクが低い資産での運用が適しています。
資金計画を立てるにあたっては、物件価格以外に必要な諸費用も把握しておきましょう。住宅取得以外のライフイベントに影響がないようにすることが大切です。
松田 聡子
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