コロナ禍で保健ODAへの意識高まるも、若年世代の保健分野の関心度には課題。FGFJ「感染症に対する一般意識調査」

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公益財団法人日本国際交流センター(JCIE)は3月22日、「世界の感染症に対する日本の国際協力に関するアンケート調査」の結果を発表した。調査主体は、同センターで世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)を支援する民間イニシアティブ「グローバルファンド日本委員会」。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験したことによる感染症への理解の変化や、開発途上国の感染症や保健医療分野に対する国際協力について、一般の意識を把握し、政策提言活動の基礎資料とする目的。

調査方法は、スマートフォンユーザーを対象とするインターネット登録モニターを用いたウェブ調査で2月24日~26日に実施。対象は、令和2年国勢調査人口等基本集計(2020年10月)における全国15~69歳の日本人人口から人口構成比を算出、性・年代ごとの回収数となるよう設定した。有効回答数は1578名。

新型コロナ感染症の経験を受けた気持ちの変化として、93.2%が「感染症には国境がないということがわかった」と回答。地域別にみると、「そう思う」と回答した人の割合は、「九州・沖縄地方」が最も高かった。

また、新型コロナ以外にも世界には多くの感染症が流行していることを述べた後、「日本は開発途上国の感染症に対して支援を行うべきだと思うか」との質問に対し、78.5%が「行うべき」と回答した。この質問に関して伊藤氏は、「開発途上国の感染症に対する支援では、①ワクチンや酸素濃縮装置などモノの支援、②感染症に強いコミュニティづくりの支援の2つが重要」とコメントした。

医療・保健分野のODA(政府開発援助)に関しては「日本は保健分野のODAを増やすべきだと思うか」との問いに対し、72.2%が「そう思う」と答えた。開発途上国のコロナ対策支援を増やした結果、20年の日本の保健分野ODAが前年の約3倍に増えたことに対して、72.4%が「良いことだと思う」と回答。男女を比較すると、女性の方が開発途上国の感染症に関する関心が高く、保健医療分野の国際協力への支持も高い。特に、女性は、ODAでの取り組みが重要な分野として保健を選択(複数回答)した人の割合が、全世代にわたり最も高かった。

年代別では若い年代、特に男性の15~39歳の関心値が比較的低い。「開発途上国のコロナの情報は聞いたことがない/わからない」と答えた人は全体の11.9%で、年代別で見ると、男性の20代と30代で回答した人が最も多く、いずれも22.3%だった。また、新型コロナのワクチンや検査、治療について、先進国と途上国の間で深刻な不平等があるといわれていることについて、「知らなかった」と答えた人の割合を職業別に見ると、学生が30.9%で最多だった。

こうした世代間格差について、同センター執行理事でグローバルファンド日本委員会事務局長の伊藤聡子氏は「若い世代に届くメッセージが欠如していること、若い世代に情報が伝わる経路が利用されていないこと、気候変動や環境問題のように若い世代の活動家が感染症分野にはいないこと」が原因ではないかと考察する。

また、保健ODAを増加することへの期待について「日本のODAはインフラ、エネルギーが多く、保健分野の ODAの割合は5.4%にとどまっているが、7割以上の人が日本のODAにおける保健分野の支援の割合を増やすべきと回答している。他の先進主要国のODAは保健、難民、人道支援、教育など社会開発や人道分野の支援が多い傾向で、日本のODAが顕著に異なっている」と指摘した。また、

一方、新型コロナ対策の支援増により、20年の保健ODAはおよそ三倍に増加したと推定され、変化の兆しがみられるという。この実績に対しても、調査では7割以上が「良いこと」と回答、好感度が高いことが裏付けられた。

伊藤氏は「国際社会では、危機時の資金動員と、二度とパンデミックを起こさないための平時からの備えの拡充の双方で、保健への『投資』の拡大が喫緊の課題となっている。それは気候変動と同様な地球規模課題の解決に向けた国際的な連帯であり、ひるがえって自国の安全保障への投資でもある。日本政府には、20年の保健ODAの増額を一過性の緊急対応に終わらせず、引き続き抜本的な資金の拡充、より費用対効果の高い支援方法の模索、さらに ODA以外の公的資金や民間資金の動員の検討など、グローバルな感染症問題に対するコミットメントの強化を期待する」と総括している。

グローバルファンドは低・中所得国の三大感染症対策を支える官民連携基金。G7を初めとする各国の政府や民間財団、企業など、国際社会から大規模な資金を調達し、低・中所得国が自ら行う三疾病の予防、治療、感染者支援、保健システム強化に資金を提供する。新型コロナ対策では検査、治療、ワクチン開発・提供のため、WHO、欧州委員会、フランス、ビル&メリンダ ・ ゲイツ財団によって2020年4月24日に発足した「ACTアクセラレーター」の主管機関として大きな役割を担っている。

日本委員会は、グローバルファンドに対する理解を促進するとともに、感染症分野における日本の役割を喚起するため、政策対話や共同研究、国際シンポジウム、視察プログラム、一般向けの意識啓発などを実施している。

【関連サイト】グローバルファンド日本委員会「感染症に対する意識調査の結果を発表