ETFの税金の仕組みは?税額、確定申告方法、節税ポイントなど

ETF(上場投資信託)はローコストで分散投資ができる金融商品として、近年取引量が増加しています。ETFの取引で利益を得た場合、他の金融商品と同様に課税されます。また、ETFには国内で上場している国内ETFと米国などで上場している海外ETFがあり、税の扱いが異なるため注意が必要です。

この記事では、ETFの税金について知っておくべき基本的なことについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2021年5月27日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. ETFにかかる税金の仕組み
    1-1.ETFの売却益への税金
    1-2.ETFの分配金への税金
    1-3.税率はどうなっている?
    1-4.損益通算と繰越控除について
    1-5.配当控除とは?
    1-6.外国税額控除とは?
  2. ETFの確定申告
    2-1.ETFの取引で確定申告が不要なケース
    2-2.ETFの取引で確定申告が必要なケース
    2-3.ETFの確定申告の方法
  3. ETF投資の節税対策
    3-1.ETF投資の税金を減らす方法
    3-2.ETFの税金で注意したいこと
  4. まとめ

1.ETFにかかる税金の仕組み

最初にETFの取引で得られる利益に対する税金の仕組みについて解説します。

1-1.ETFの売却益への税金

ETFを購入して購入価格より高く売れた場合、差益は譲渡所得として課税されます。売却益の納税方法は、取引口座により異なります。

特定口座(源泉徴収あり)の場合、金融機関が源泉徴収した税金を納税してくれるので、顧客は確定申告も必要ありません。一方、特定口座(源泉徴収なし)と一般口座の場合、顧客自らが確定申告により納税します。

1-2.ETFの分配金への税金

ETFの分配金は配当所得として課税されます。分配金に対する税金は、取引口座に関係なく支払い時に源泉徴収されるため、顧客が納税する必要はありません。

海外に上場しているETFで得た分配金は、現地での租税条約により定められた税率で源泉徴収されます。さらに、残りの金額に対し日本国内で課税されます。ちなみに米国の源泉徴収税率は10%です。なお、分配金への課税はすべての国で行われるわけではありません。

1-3.税率はどうなっている?

ETFにかかる税金の税率は譲渡所得、配当所得ともに20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)です。

1-4.損益通算と繰越控除について

ETFの運用益は申告分離課税方式を選択して、損益通算や繰越控除の制度を利用できます。

利益と損失を相殺する損益通算

ETFの取引で得た運用益は、他の口座の損失と「損益通算」できます。損益通算とは年度内に発生した利益と損失を相殺することです。ETFの運用益や損失は、上場株式や投資信託などとの間で損益通算が認められています。特定口座(源泉徴収あり)の場合、口座内での損益通算は自動的に行われるため、顧客が損益通算をする必要はありません。

ただし、複数の口座間の損益通算は顧客自らが行うことが必要です。たとえば、A証券会社のETF取引で50万円の運用益を得て、B証券会社の株取引で30万円の損失があったとします。その場合、50万円の利益から30万円の損失を差し引いた20万円が課税所得となります。

損益通算で損失が残った場合は繰越控除で

損益通算しても控除しきれない損失がある場合には、3年間「繰越控除」ができます。繰越控除とは、損益通算で残ってしまった損失を次年度以降に繰り越して、その年の利益から差し引ける制度です。

1-5.配当控除とは?

ETFの分配金は他の所得と分離され税金が源泉徴収されますが、総合課税を選んで配当控除を受けることもできます。配当控除とは、分配金に一定の率をかけた金額を所得税・住民税から控除する制度です。

総合課税の場合、所得税にかかる税率は所得によって異なります。そのため、所得が高い人の場合、配当控除にメリットがない場合もあるため注意が必要です。なお、海外ETFの分配金は配当控除が認められていません。

1-6.外国税額控除とは?

外国税額控除とは海外と日本での二重課税を調整するために、海外で支払った税額を日本の所得税や住民税から差し引く制度です。海外ETFの分配金で現地と日本の両方に支払った税金は、外国税額控除で払いすぎた分を取り戻せます。

NISA口座でも海外ETFの分配金に対し、現地では課税されます。しかし、外国税額控除の対象にはなりません。

2.ETFの確定申告

以下の表は口座の種類別のETFの運用益への確定申告の要・不要をまとめたものです。

項目 譲渡所得 配当所得
特定口座(源泉徴収あり) 不要 不要
特定口座(源泉徴収なし) 不要
一般口座 不要

2-1.ETFの取引で確定申告が不要なケース

ETFの取引で売却益が出た場合、原則として確定申告が必要です。ただし、実際には確定申告が不要なケースも少なくありません。

特定口座(源泉徴収あり)・NISA口座

特定口座(源泉徴収あり)またはNISA口座からの運用益は確定申告をする必要がありません。

給与所得がある人の場合

会社員や公務員など給与所得のある人が以下のいずれにも該当する場合、確定申告不要です。

  • 年間の給与の収入金額が2,000万円以内
  • 年間の給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以内

2-2.ETFの取引で確定申告が必要なケース

上述した確定申告が不要なケース以外は原則として、ETFの運用益について確定申告は必要です。本来は確定申告が不要でも、以下のような場合、確定申告が必要になります。

  • 損益通算と繰越控除をする場合
  • 配当控除を受ける場合
  • 外国税額控除を受ける場合

2-3.確定申告の方法

ケースごとの確定申告の必要書類などを解説します。

特定口座(源泉徴収なし)の場合、金融機関が1年間の損益を計算し、「特定口座年間取引報告書」という書類を発行してくれます。一方、一般口座の場合は金融機関から送られてくる取引報告書をもとに、自身で取引の収益や税額を計算しなくてはなりません。

損益通算と繰越控除をする場合

損益通算はすべての課税口座で利用できる制度です。通常の申告書に株式等に係る譲渡所得者の金額の計算明細書、確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)を提出します。申告書の作成は、金融機関発行の特定口座年間取引報告書や源泉徴収票をもとに行います。

繰越控除は最初に損失が発生した年から、翌年以降に控除を受けるために確定申告をしておきます。3年連続で繰越控除をしない場合でも確定申告を続けておけば、繰り越した損失は消滅しません。よって、運用益が出ない年でも確定申告は継続しましょう。

配当控除を受ける場合

配当控除を受ける場合は総合課税を選択するため、すべての口座の分配金を合計します。その金額をもとに控除額を自分で計算します。

外国税額控除を受ける場合

外国税額控除を受けるには、申告書と外国税額控除に関する明細書(居住者用)に外国所得税額が課されたことを証する書類などを添付して提出します。添付書類は金融機関から送付される外国証券の年間取引報告書などです。

3.ETF投資の節税対策

ETF投資で運用益への課税を少しでも減らし手取りを増やす方法と、注意すべき点について解説します。

3-1.ETF投資の税金を減らす方法

ETF取引での運用益の節税の方法を紹介します。

取引金額が少ないうちは、あえて特定口座(源泉徴収なし)を選ぶ

給与所得で年間の取引金額が少ない人は、あえて特定口座(源泉徴収なし)を選ぶことも選択肢の1つです。

ETFの課税所得に、税金を源泉徴収される分配金は含まれません。特定口座(源泉徴収あり)で取引をすると、売却益が発生するたびに税金が源泉徴収されます。しかし、年間の投資額が数十万円単位では、運用益が20万円超になる可能性は低いでしょう。

運用益が20万円以内だった場合にも確定申告で還付を受けることはできます。しかし、20万円以上の利益が見込めない場合、特定口座(源泉徴収なし)なら手間が省けます。特定口座の源泉徴収区分は変更できますので、自分にメリットのある口座で取引しましょう。

ETF取引のその他の節税方法

ETF取引では上記の他に、次のような節税方法があります。

  • NISA口座の活用
  • 損益通算の活用
  • 繰越控除の活用
  • 外税額控除を受ける

3-2.ETFの税金で注意したいこと

ETFの取引で生じた課税所得を減らすために確定申告をすることが、必ずしもメリットとは言えない場合について解説します。

配偶者控除や扶養控除への影響

専業主婦(夫)や学生の節税のための確定申告は、しないほうがいい場合があります。配偶者控除や扶養控除を受けている主婦(夫)や学生の合計所得金額が38万円を超えると扶養から外されてしまうからです。

扶養を外れると、扶養している配偶者や親が配偶者控除や扶養控除を受けられなくなります。その結果、世帯単位の納税額が増えてしまう場合もあります。

特定口座(源泉徴収あり)で源泉徴収された運用益は、38万円を超えても合計所得金額に加算されません。親族に扶養されている人も確定申告をしなければ、扶養から外れることはありません。ETFの取引で利益が生じた場合、確定申告により合計所得金額が増える影響を頭に入れておいてください。

自営業者は国保の負担増も

自営業・フリーランスなどで国民健康保険に加入している人が確定申告をすると、国民健康保険料の負担が増える可能性があります。

特定口座(源泉徴収あり)で取引をして確定申告をしない場合、運用益は国保の所得割額の計算に用いる総所得金額等に含まれません。しかし、確定申告をした場合には、総所得金額に含まれることになります。そのため、保険料が増える場合もあり、注意が必要です。

国民健康保険料が増える場合、確定申告で還付される税額と比較して確定申告をすべきかどうか検討しましょう。

まとめ

ETFは運用コストが安く効率的に資産形成ができる金融商品です。さらに支払う税金を抑えられれば、運用に回せるお金が増えることになります。最初はNISAの非課税枠を利用し、非課税枠を超えたら特定口座を活用するとよいでしょう。また特定口座で運用益が出た場合、節税になる損益通算や外国税額控除の活用を検討してみましょう。

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松田 聡子

松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。運営サイト : 働く女性・子育て世代のためのマネーセミナー