不動産相続の相続税申告は、これまで税関連の知識を持っていないかった方でも突然対処しなければならなくなるケースも多く、税務リスクが比較的高くなりやすい特徴があります。自身での申告が難しい場合には、税務の専門家である税理士に相続税の申告を依頼することを検討したいところです。
しかし、税理士に依頼する際には費用がかかり、注意しておきたいデメリットもあります。相続の状況に合わせて、慎重に判断したいポイントです。
この記事では、不動産相続の申告について、税理士に依頼するメリット・デメリット、税理士の選び方を解説していきます。
※記事内の税制内容は2023年2月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- 不動産相続の相続税申告を税理士に依頼するメリット
1-1.正確な相続税申告をおこない、税務リスクを減らすことができる
1-2.相続税の各種控除・特例を適正に適用し、相続税を軽減できる
1-3.複雑な土地の財産評価を適正におこない相続税を軽減できる
1-4.相続税申告の手間や税務調査対応の負担を減らし、本業に集中できる - 不動産投資の確定申告を税理士に依頼するデメリット
2-1.税理士に対して支払う費用がかかる
2-2.相続税申告が専門でない税理士もいる - 不動産の相続税申告に強い税理士の選び方
3-1.相続税の申告実績が豊富であること
3-2.報酬体系が明確で適正であること
3-3.不動産評価算定や相続税の特例適用ができること
3-4.二次相続を見据えた相続税対策ができること
3-5.税務調査対応や書面添付ができること - まとめ
1.不動産相続の相続税申告を税理士に依頼するメリット
不動産相続の相続税申告を税理士に依頼するメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 正確な相続税申告をおこない、税務リスクを減らすことができる
- 相続税の各種控除・特例を適正に適用し、相続税を軽減できる
- 複雑な土地の財産評価を適正におこない相続税を軽減できる
- 相続税申告の手間や税務調査対応の負担を減らし、本業に集中できる
1-1.正確な相続税申告をおこない、税務リスクを減らすことができる
税理士は税務の専門家ですので、税法の法令に基づいた正確な相続税の申告をおこなうことができます。
また、相続税申告業務は、単なる書類の作成代行ではなく、納税者に代わって税務署に主張を伝えるという税務代理業務であるため、税務署から問い合わせなどがあった場合、税理士に対応してもらうことが可能です。税務調査が入った場合でも、相続税申告を税理士に依頼していれば、対応を依頼しやすいでしょう。
このように、税理士に依頼することで相続税申告に関連する税務リスクを減らすことができます。
1-2.相続税の各種控除・特例を適正に適用し、相続税を軽減できる
相続税の法令には、財産や相続人の状況によって、相続税を軽減することのできる特例や各種控除が設けられています。
たとえば、被相続人の配偶者である相続人に対しては、遺贈された正味財産額が1億6千万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかからない税額軽減制度があります。(※国税庁「配偶者の税額の軽減」)
その他、相続財産に不動産がある場合、一定の条件を満たす土地を特定の相続人が相続する際の相続税の財産評価額を減額する「小規模宅地等の特例」を適用できることがあります。(※国税庁「小規模宅地等の特例」)
相続税の申告を税理士に依頼することで、このような、相続税の各種控除や特例の適用を受けて、適正に相続税を軽減することができます。
1-3.複雑な土地の財産評価を適正におこない相続税を軽減できる
相続税の申告をおこなう際には、相続対象となる財産評価をおこなう必要があります。財産評価の方法は、相続税の法令によって定められており、相続財産のうちに土地がある場合、その評価方法は複雑であるといえます。
市街地であれば、毎年国税庁が道路に接する標準的な宅地価格として設定している、路線価によるのが基本です。該当する土地の路線価を調べ、土地の奥行きや形状の不整形さ、間口の狭小さ、土地が接する道路の数に応じて定められている補正をおこなって評価額を算定します。
相続税の申告を税理士に依頼することで、このような複雑な土地評価を適正におこない、適正に相続税を軽減することができます。
1-4.相続税申告の手間や税務調査対応の負担を減らし、本業に集中できる
相続税申告を自分でおこなうには、相続税の法令についての調査や、相続税申告に必要な書類の収集、作成作業などの事務手続きをすべて独力でおこなう必要があります。申告期限までにすべての作業を間違いなく完了させるためにかなりの労力が必要になるでしょう。
税務調査が入った場合には、申告内容やその前提となる事実などについて質問検査がおこなわれることがあります。そして、調査の結果、法令の適用や計算などに誤りがある場合には、その内容等が口頭で説明され、修正申告の勧奨や更正決定がおこなわれます。
このように、税務調査対応をすべて独力でおこなうには、かなりの労力が必要となるだけでなく、相続税の法令についての知識も必要になります。
相続税申告や税務調査対応には、かなりの労力と専門的知識が必要であり、それらをすべて自力でおこなうのは、大きな負担であるといえます。税理士に相続税申告や税務調査対応を依頼することで、そのような負担をなくし、本業に集中できるというメリットがあります。
2.不動産投資の確定申告を税理士に依頼するデメリット
不動産投資の確定申告を税理士に依頼するデメリットとしては、費用がかかってしまうこと、相続税申告が専門でない税理士もいること、が挙げられます。
2-1.税理士に対して支払う費用がかかる
相続税の申告を税理士に依頼すると、税理士に対して報酬を支払う必要があります。また、税理士との打ち合わせや資料収集など、最低限自分でおこなう作業もあることもデメリットでしょう。
相続税の申告を税理士に依頼することで軽減できる税務リスクや、相続税の特例や各種控除を適用することで得られる税額軽減効果は、相続財産の規模が大きくなるほど大きくなる傾向があります。費用対効果を見極めて依頼を検討してみましょう。
2-2.相続税申告が専門でない税理士もいる
相続税の申告は、被相続人の死亡を契機として、被相続人の正味遺産額が基礎控除額を超える場合に初めて申告義務が発生します。
このように申告義務の条件が非常に限定されており、日常的に発生するものでもないため、税理士の業務の中では、法人税や所得税、消費税の申告や関連業務と比較すると、携わる機会の少ない分野であるといえます。
従って、税理士の中には、相続税申告が専門でない税理士もいるため、相続税申告が専門である税理士を探して依頼する必要があります。
3.不動産の相続税申告に強い税理士の選び方
不動産の相続税申告は、専門でない税理士もいます。それでは、不動産の相続に強い税理士は、どのような点に注意して選ぶのがよいのでしょうか。以下で詳細を説明していきます。
3-1.相続税の申告実績が豊富であること
相続税の申告は、税理士によっては携わる機会の少ない分野であることから、相続税の申告実績が豊富かどうかを確認すべきといえるでしょう。その際、相続税の相談実績ではなく、税金の計算をして税務署に対して書類を提出する、申告業務の実績がどれぐらいあるかを確認しましょう。
できれば、申告実績の内容について、遺産規模や資産の種類なども確認するとよいでしょう。法人税の申告を主要業務としている税理士の場合、顧問業務をおこなっている法人の社長などの相続税の申告が多く、株式の相続税申告は経験しているものの、不動産の相続税については経験が少ないケースがあります。
また、相続税専門の税理士の中には、他の税理士がおこなった相続税申告を修正し、納付済の相続税を取り戻す相続税還付申告を請け負う税理士もいます。還付申告の実績についても確認してみましょう。
3-2.報酬体系が明確で適正であること
相続税の税理士報酬は、遺産総額の〇%というように決められていることが通例ですが、相続税の申告では、個別の特殊事情によって手間がかる場合があり、その分の報酬が加算されることがあります。
報酬加算の対象となる事情とは、たとえば、土地の評価が必要である場合や、相続人が複数いる場合、非上場株式の評価が必要である場合、申告期限まで時間がない場合など、税理士事務所によって様々です。
このような、報酬体系が明確で適正な金額であることは、それだけ申告実績があり、業務フローが確立されているということでもあり、相続税の申告に強い税理士であることの目安であるといえるでしょう。
3-3.不動産評価算定や相続税の特例適用ができること
不動産の相続税の基礎となる財産評価の際、税法の解釈や適用方法によって、不整形地の評価を減額したり、小規模宅地等の特例に該当する土地の評価を8割減額したりすることができます。
このような、不動産の評価算定方法や特例を適用して、相続税の適正な減額をおこなってもらえるかどうか、という点も不動産の相続税申告の依頼をする際は、判断ポイントになるといえるでしょう。
特に、不動産の評価は個別性が高く複雑であるため、不動産の相続税申告に強い税理士事務所では、相続税申告と不動産評価サービスを分けておこなっていることもあります。
3-4.二次相続を見据えた相続税対策ができること
二次相続を見据えた相続税対策の提案があるかどうかも、不動産の相続税申告に強い税理士を探す基準になります。
二次相続では、配偶者に大きな非課税枠がある配偶者控除を利用できない場合が多く、法定相続人が減ることで基礎控除額も減少してしまいます。さらに、二次相続では、相続人である子が同居要件や所有要件を満たすことができず、小規模宅地等の特例を適用することが難しくなる場合もあります。
このように、二次相続で発生する相続税まで考慮した上で、相続財産の分割などについての対策の提案があると心強いといえるでしょう。
3-5.税務調査対応や書面添付ができること
相続税の申告について、税務署の税務調査にも対応してもらえる税理士であれば、税務リスクを軽減することができるといえるでしょう。税務調査対応は、相続税の申告業務とは、別料金で対応する税理士事務所が多いです。対応の可否、料金の目安を確認するとよいでしょう。
また、申告書に税理士がその申告書について計算、整理をし、相談を受けた事項を記載することによって、税務調査の際、事前にその税理士に意見聴取することを義務付ける、書面添付制度があります。この書面添付制度を適用するサービスをおこなう税理士であれば、税務署対応を任せる際にも心強いといえるでしょう。
専門性の高い税理士を無料で探せる「税理士紹介エージェント」
税理士紹介エージェントは、インターネットを活用した税理士紹介サービスです。エージェントに希望条件を伝えることでニーズマッチした税理士を探してもらうことができ、税理士の選定や面談の設定などもエージェントに任せることが可能です。
分野ごとに顧客のニーズに合った税理士を登録税理士の中からピックアップして紹介してくれるため、相続分野のような専門性の高い税理士を探している人には、有用なサービスといえるでしょう。
まとめ
相続税の申告を税理士に依頼することで、税務リスクを軽減でき、法令に基づいて適正に相続税額を軽減することが可能です。
ただし、税理士に依頼するには費用がかかります。相続税申告が専門でない税理士もいるため、税理士選びは慎重にしたいといえます。
税理士を探す際には、相続税の申告実績や相続税の特例適用の有無、税務調査対応の可否などを確認するようにしてみましょう。
佐藤 永一郎
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