米国では、米国連邦準備理事会(FRB)が2021年11月からテーパリング(資産購入額を徐々に減らす)を開始、2022年3月には利上げが開始されました。利上げは、住宅ローンや企業の借入金利の上昇を招くため経済を失速させる効果があります。
この利上げによりグロース株を中心に株価が大きく下落しました。米国では利上げ効果から経済指標の一部に景気減速の兆しが見え始めてきました。
そこで今回は、景気のサイクルと株式のセクターローテーション、不況に強い銘柄の特徴と選び方、購入と売却のタイミングを解説します。
目次
- 景気サイクルと株式セクター
- 不況に強い銘柄の特徴
2-1.生活必需品
2-2.参入障壁が高い - 不況に強いセクター
3-1.公共関連銘柄
3-2.医薬・ヘルスケア関連銘柄
3-3.生活必需品関連銘柄 - 購入と売却のタイミング
4-1.購入のタイミング
4-2.売却のタイミング - まとめ
1 景気サイクルと株式セクター
景気サイクルは、回復期、好況期、後退期、不況期の4つに分けられます。現状は、米国が金融引き締め政策に転じたため世界景気は減速しており、後退期にありそうです。景気後退期や不況期に強い株式セクターには、景気の影響を受けにくい電力や公共セクターのほか、日用品など一般消費財が挙げられます。
景気サイクルと買われやすいセクター
項目 | 回復期 | 好況期 | 後退期 | 不況期 |
---|---|---|---|---|
買われやすいセクター | ・IT関連 ・グロース関連 |
・素材 ・工業 |
・公共セクター(電力、ガス等) ・一般消費財(食品、日用品等) |
・ヘルスケア ・医薬品 |
2 不況に強い銘柄の特徴
不況期に強い銘柄の特徴を見ていきましょう。不況期には、生活者は財布のひもを締めてしまい、モノ・サービスへの消費を控えます。しかし、生活をする上で必要なモノ・サービスへの出費を削ることは難しいため、生活必需品に関連した企業の株価は不況に強いと言えそうです。
2-1 生活必需品
トイレットペーパー、歯ブラシ、歯磨き粉、飲食料品、洗剤、シャンプーなどは生活していくうえで欠かすことができません。これらに関連する企業は不況に強いと言えそうです。
2-2 参入障壁が高い
参入障壁が高い業界も不況に強いと言えそうです。参入障壁が高い業界は、参入規制が厳しかったり、許可制・免許制となっていたりします。電力・ガス、鉄道、通信業界などは参入障壁が高い業種です。
これらの業種は、売上の急拡大は期待できないものの、不況時でも売上が比較的安定的に推移します。
3 不況に強いセクター
セクター単位でも見ていきましょう。
3-1 公共関連銘柄
公共関連銘柄とは、電力やガス、鉄道などの公共インフラを提供する企業を示します。公共インフラ企業は、好況・不況にかかわらず、売上が安定する傾向にあります。
また、近年では、光ファイバなどの高速通信網も公共インフラとなっています。5Gの普及とともに、日本の光ファイバの整備が進み、整備率は99.1%(2020年)に上っています。
携帯電話やスマートフォンなどのモバイル端末の普及率も9割(2020年)を超えているため、関連業種も不況に強い業種と言えそうです。
3-2 医薬・ヘルスケア関連銘柄
ヘルスケア関連銘柄とは、健康の維持増進、健康管理に関連するモノやサービスを提供する企業のことです。製薬、医薬、バイオテクノロジー、高齢者向けの生活支援などの業界です。医薬・ヘルスケア関連銘柄においても収益がブレにくいので、不況に強い業種と考えられます。
3-3 生活必需品関連銘柄
生活必需品関連銘柄は、は、日々の生活に必要な製品を生産販売している企業のことです。シャンプー、歯磨き、歯ブラシ、石鹸、洗剤、トイレットペーパー、ベビー用品、ティシュぺーパー、生理用品等は生活に必要なため需要が安定しており、関連企業は不況に強い業種と言えそうです。
4 購入と売却のタイミング
株の購入と売却は、金融政策の転換点を見極めることが重要です。
4-1 購入のタイミング
購入のタイミングは、中央銀行の金融政策が緩和から引き締めに入るタイミングが良いでしょう。
景気には循環サイクルがあります。景気が過熱し、インフレ率が高まると、中央銀行はインフレを抑えるために金融引き締め政策を採ります。利上げは企業の資金調達コストの上昇を導くため、株価にとってマイナス要因です。
利上げ時には、景気動向に業績が左右されにくい銘柄に成長株から資金シフトが起き、不況に強い銘柄が買われる傾向があります。
4-2 売却のタイミング
不況に強い銘柄の売却のタイミングは、中央銀行による利下げが行われた時です。
景気の悪化が長引き、失業率が上昇し始めると、中央銀行は景気をてこ入れするために利下げに動きます。利下げは成長株を押し上げることが多く、株式市場では不況時に強い銘柄から成長株への資金シフトが始まる可能性が高いのです。このタイミングで不況に強い銘柄から成長株に乗り換えると効率が良い資産運用ができそうです。
まとめ
不況に強い銘柄の多くは、景気動向に業績が左右されにくいという特徴があります。公共インフラ関連、生活必需品、ヘルスケア、医薬・医療品などは、景気に振り回されることなく業績が安定している業界で、不況に強い業種とされています。
不況に強い銘柄の購入と売却のタイミングは、中央銀行による金融政策がキーとなります。景気が過熱化し、インフレ率が上昇すると、中央銀行はインフレを鎮静化させるため、政策金利を引き上げます。この時、株式市場では成長株が下落し、不況に強い銘柄に資金シフトが起きる傾向があります。
つまり、利上げ時に不況に強い銘柄に投資すると良いと言えそうです。一方、景気が低迷し、中央銀行が利下げに踏み切るときが売却のタイミングと言えそうです。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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