境界標(杭)の無い土地・不動産の売却方法は?確定測量の手順も解説

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境界標(杭)は、土地の所有権を明示する大切な指標です。しかし、登記情報が古かったり、郊外の物件では境界標が設置されておらず、境界が不明瞭になっていることがあります。

土地・不動産の売買では、売主に境界明示義務があるため、境界標の無い土地・不動産を売却する際は注意が必要です。このような境界標の無い土地・不動産を売却するにはどのような方法があるのでしょうか。

本記事では、境界標の無い土地・不動産を売却する方法、確定測量の手順について解説していきます。

目次

  1. 土地・不動産の売却の際の境界明示
    1-1.土地・不動産の売買では売主に境界明示義務がある
    1-2.境界明示に役立つ境界標
  2. 境界標(杭)の無い土地・不動産の売却方法
    2-1.境界の確定測量をする
    2-2.境界の争いがある場合、訴訟やADRによって確定する
    2-3.境界の争いがある場合、筆界特定制度を利用する
    2-4.公簿売買をおこなう
  3. 土地・不動産売却における確定測量の手順
    3-1.資料調査・現地測量
    3-2.測量結果分析と仮境界の復元
    3-3.隣地所有者との境界確認
    3-4.境界標設置・図面作成
  4. まとめ

1.土地・不動産の売却の際の境界明示

土地・不動産の売却の際には、原則として売主側に境界を明示する義務があります。そして、境界を明示するためには、境界標が役立つことになります。以下で、詳細をみていきましょう。

1-1.土地・不動産の売買では売主に境界明示義務がある

土地・不動産の売買では、売主にはその土地・不動産の境界を明示する義務があります。

登記簿には、その土地・不動産の面積が表示されていますが、その表示された面積と実際の面積は違うこともあります。登記簿では面積が分かっていたとしても、売買時には、実際の土地・不動産において土地の範囲をはっきりと示し、買主に売買対象の土地・不動産の範囲を分かってもらう必要があります。

通常の土地・不動産の売買契約では、境界の明示は売主の義務とされていることが多く、実際の範囲を明示して登記簿の面積と異なる場合には、その免責の差に応じて売買代金を精算する契約形態をとることもあります。

1-2.境界明示に役立つ境界標

土地・不動産の売買における境界の明示は、境界標の存在によって比較的容易におこなうことが可能です。境界標とは、目に見えない境界点を現地で示す標識であり、御影石、コンクリート、プラスチックなどの材質できた杭で、頭部に十字や矢印が刻まれています。

境界標が土地・不動産の四隅にあれば、その境界標を結んだ線が境界であるといえる可能性は高いと言えるでしょう。ただし、隣地の人がそのように認識していないケースや、境界標が移動されたりしているケースもあり、境界標がありそれを確認したというだけで、境界明示をしたことになるとは必ずしもいえないことには注意しましょう。

2.境界標の無い土地・不動産の売却方法

それでは、境界標が無い土地・不動産を売却しようとする場合、どのようにすればよいのでしょうか。次のような方法があるといえます。

  • 境界の確定測量をする
  • 境界の争いがある場合、訴訟やADRによって確定する
  • 境界の争いがある場合、筆界特定制度を利用する
  • 公簿売買をおこなう

以下、それぞれについて、詳しくみていきましょう。

2-1.境界の確定測量をする

境界標が見付からず、新たに境界を確定するには、確定測量をおこなう必要があります。

確定測量では、土地家屋調査士が、境界に関する資料を下に現地を測量し、その結果を分析して、境界点を復元します。境界の隣地所有者の立ち会いの下、その境界点の確認を得た上で、新たな境界標を設置します。

2-2.境界の争いがある場合、訴訟やADRによって確定する

境界の確定測量をしようとしても、隣地所有者との間で境界の認識に争いがあり、境界の確認に応じてもらえないことがあります。

その場合、裁判所に所有権確認訴訟、境界確定訴訟などの訴訟を起こし、判決によって確定する方法もあります。裁判手続によることで、当事者間に法的拘束力が生じ、境界が確定します。

また、調停手続の一種であるADRという裁判外紛争解決手続を利用して境界の確定をする方法もあります。土地家屋調査士や弁護士が当事者間に間に立ち、話し合いによって合意に至るように交渉を進めます。ADRによって合意が得られれば、境界が確定します。

※出典:法務局「境界問題でお困りの方へ

2-3.境界の争いがある場合、筆界特定制度を利用する

土地の境界には、所有権に基づく所有権界とは別に、筆界と呼ばれる境界があります。筆界は、法務局が登記情報に基づいてその土地の範囲を区画するものとして定めた境界です。

この筆界について、土地所有者等からの申請に基づいて、法務局の登記官が判断を示す筆界特定制度を利用することで、証拠価値のある境界を示すことができます境界紛争の相手方が話し合いに応じてくれない場合でも、一方の土地の所有者だけで申請することができます。

法的拘束力はありませんが、裁判手続でも筆界特定の結果が尊重される傾向にあるため、境界に争いがあり、裁判手続やADRなどで時間や手間をかけたくない場合には、有効な手続きといえるでしょう。

2-4.公簿売買をおこなう

実務上、買主側が合意すれば、隣地所有者の立ち会いによる境界確定をおこなわず、売主側から土地の境界や範囲の指示や説明を受けるだけで売買契約が成立することもあります。

この場合、登記所に備え置かれている地積測量図などで境界ポイントを確認し、登記簿上の面積を記載した上で、売買代金を決めてしまうという方法がおこなわれることが多いといえます。

このような売買方法を公簿売買と言い、買主側が、購入後に測量をおこなって、実際の面積が登記簿上の面積と異なることが判明した場合であっても、代金の清算はおこないません。

境界標(杭)の有無について判断が難しい場合

境界標がどこにあるのか分からず判断が難しい場合には、まず売却を依頼する不動産会社へ相談してみましょう。不動産会社では不動産査定時に境界標の有無についても確認してくれるため、自己判断で測量を行う必要がなくなります。

なお、不動産会社へ売却を依頼する際は複数社へ査定を依頼し、査定価格や査定の根拠、対応内容などを比較することが大切です。不動産会社によって得意とする物件タイプやエリアに違いがあるため、査定結果にも違いが出てくるためです。

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3.土地・不動産売却における確定測量の手順

確定測量の手順について見ていきましょう。確定測量は、次のような手順でおこないます。

  • 資料調査・現地測量
  • 測量結果分析と仮境界の復元
  • 隣地所有者との境界確認
  • 境界標設置・図面作成

3-1.資料調査・現地測量

確定測量は、土地家屋調査士に依頼しておこないます。土地家屋調査士は、確定測量の依頼を受けると、まず、境界に関する資料(公図、地積測量図など)の調査をおこないます。

資料調査は、法務局や市区町村の役所、区画整理があった場合には土地区画整理組合等でおこないます。収集した資料に基づき、依頼地を含む街区全体を測量します。

3-2.測量結果分析と仮境界の復元

収集した資料と測量結果を分析して精査し、公正な境界ラインを導き出し、境界と思われる位置を復元します。

官民境界も確定する場合には、道路管理者の役所に申請をして担当者と協議し、道路ラインを確定します。

3-3.隣地所有者との境界確認

隣地所有者や道路管理者等の関係者と、現地において境界の確認をおこないます。

隣地所有者の利用状況なども聞いて、境界の説明をおこなって境界ラインについての同意を得ます。関係者とは、図面や写真とともに境界のライン、境界標を分かりやすく記した境界の確認書を取り交わします。

3-4.境界標設置・図面作成

隣地所有者等の関係者との合意に基づき、立ち会い時に確認した場所に境界標を設置します。確定測量に基づき、確定測量図を作成し、境界標とともに証拠とします。必要であれば、登記申請もおこないます。

まとめ

原則として、土地・不動産を売却する際、境界を明示する必要があるため、境界標が無い場合には、それを確定測量によって復元する必要があります。

確定測量は、土地家屋調査士が、境界に関する資料を下に現地を測量し、その結果を分析して、境界点を復元します。境界の隣地所有者の立ち会いの下、その境界点の確認を得た上で、新たな境界標を設置します。

境界に争いがある場合、隣地所有者の協力が得られず、確定測量ができないことがあります。そのような場合には、訴訟やADRによって境界を確定したり、行政が境界位置の基準を示す筆界確定制度を利用したりすることを検討しましょう。

実務では、登記資料を下に売主が境界を示す公簿売買という方法も用いられることが多いので、そのような方法も検討してみましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。