不動産投資で注意しておきたい経費の一つに修繕費・設備交換費があります。入居者に快適な住空間を提供する意味でも住宅設備機器は重要ですが、故障が発生すると修理や交換費用によってオーナーの家賃収入を圧迫してしまうことになります。
しかし、不動産の設備交換がどのような頻度で発生するのかは非常に読みづらく、また入居者のターゲット層によって設備のグレードなどもまちまちです。専門的な知識を必要とする分野でもあるため、不動産会社の協力を受けることも検討したいポイントと言えます。
そこで今回のコラムでは、設備機器を保証する不動産投資会社のサービスに焦点を当てます。設備保証サービスを提供している5社について、利用料金や内容を比較して解説していきます。
目次
- 不動産投資の設備保証付きの管理とは
1-1.対象となる住宅設備機器
1-2.設備保証サービスのメリット
1-3.設備保証サービスのデメリット
1-4.不動産投資でかかる修繕費用・時期の目安 - 設備保証サービスを提供する不動産投資会社5社
2-1.プロパティエージェント
2-2.湘建
2-3.REISM(リズム)
2-4.エイマックス
2-5.クリアルパートナーズ - まとめ
1 不動産投資の設備保証付きの管理とは
設備保証サービスとは、不動産会社が設備機器の修理・交換についての費用を負担してくれるサービスのことです。管理の手間や負担が大きく軽減され、運用のシミュレーションも行いやすくなるため、投資家の方からも人気のあるサービスの一つとなっています。
また、2020年4月の民法改正(民法第611条)によって、賃貸物件内の設備機器が使えない場合、家賃が減額されることになっています。
(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
第六百十一条 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
民法改正により、オーナーの管理上のリスクは高まっていると言えます。設備保証サービスを受けることで管理上のリスクを減らすことは、一つの選択肢として有効であると言えます。
1-1 対象となる住宅設備機器
住宅設備機器とは、日常生活に必要、あるいは役立つものとして住宅内に設置されている機器のことです。さまざまな種類の住宅設備機器があり、大きく分けると下記のようになります。
住宅設備機器の分類 | 代表的な住宅設備機器 |
---|---|
厨房・調理機器 | システムキッチン、冷蔵庫、ガスコンロ、IHクッキングヒーター、シンク、収納棚、レンジフードなど |
浴室・給湯機器 | ユニットバス、ガス給湯器、電気給湯器など |
洗面機器 | 洗面化粧台など |
トイレ機器 | トイレ、シャワートイレ、手洗い台、収納棚など |
空調・換気機器 | エアコン、ストーブ、換気扇、ファンヒーターなど |
そのほかの住宅設備機器 | 太陽光発電システム、床暖房、インターホン、警報器など |
これらの住宅設備機器には寿命があり、いずれ故障することになります。その場合、物件を所有するオーナーが修理や交換をすることになりますが、設備保証サービスは利用料をオーナーが支払うことで管理会社が修理代や交換費用を負担する仕組みです。
物件の管理を専門とする管理業者、投資用物件を販売し、管理業務も担う不動産投資会社、仲介業務を行う仲介業者などで提供しています。
1-2 設備保証サービスのメリット
設備保証サービスは、大きな費用が必要な設備機器の修理や交換を管理会社が負担してくれる仕組みです。そのため故障が発生しても、オーナーが工事費用を負担することはありません。
設備機器を交換する場合、費用が高額になることが多く、エアコンは10万円程度、電気給湯器であれば10万円〜30万円程度になってしまいます。不動産投資が順調で余剰資金があれば大きな問題がありませんが、資金のストックがない場合は経営が赤字化することになります。つまり設備機器の故障によって、経営状態が一気に悪化することもあるのです。
一方、設備保証サービスを利用していた場合、これらの費用を負担することがありません。保証料は必要ですが、固定費用とすることで月間の収支に大きな波ができないのも利点です。
1-3 設備保証サービスのデメリット
反対にデメリットは、本来の家賃収入に比べて手元に残る資金が減ることです。保証料は月額500円から2,500円程度が相場ですが、少額とは言え利益が減ってしまいます。物件を所有している間に設備機器が故障しないケースもあるため、この場合は保証料が無駄になってしまい、デメリットをより大きく感じてしまうでしょう。
設備保証サービスには期間が設定されることがあります。この場合、契約期間外になると設備機器が故障しても保証はされません。そのため必要なときに保証されないケースも考えられるのです。この点もデメリットです。
1-4.不動産投資でかかる修繕費用・時期の目安
不動産投資に必要な修繕費用の目安を確認してみましょう。国土交通省の「計画修繕ガイドブック」から、ワンルームマンションで必要な修繕費用と時期について見て行きます。
こちらのガイドブックでは大規模修繕に向けたマンションの修繕積立金で補填される外壁や共用部分の修繕費用も加味されています。修繕全体に必要な費用の目安として参考としてみましょう。
大規模修繕の周期になる11~15年目は約46万円、21~25年目では約90万円という高額な修繕費用が発生しています。しかしそれ以外にも、年数が経過するごとに給湯器や浴室設備などの室内設備の修繕が発生し、経費を圧迫していることが分かります。
おおよそ築10年を超える中古マンション投資を検討する際は、自身で修繕に向けた資金を別途積み立てておくか、室内設備の状態を加味して設備保証の導入を検討されてみるのも良いと考えられます。
2 設備保証サービスを提供する不動産投資会社5社
設備保証のサービスは、それぞれの不動産投資会社が独自に提供しているサービスのため、各社によって保証の範囲、期間、料金など異なります。どのようなサービスがあるのか、主な5社を例に概要を表にまとめましたので、参考にしてください。
不動産投資会社 | 保証料 | 特徴 |
---|---|---|
プロパティエージェント | 月額1,480円、月額4,980円 | 1機種上限10万円まで、回数は無制限 |
クリアルパートナーズ | 月額4,500円(税別)、他 | 専有部分の設備を修理、交換 |
REISM(リズム) | 月額1,300円(税込) | 最大20年間、修理、交換 |
湘建 | 査定賃貸料金の10% | 家賃保証システムに含まれる |
エイマックス | 月額2,200円(税込) | 家賃保証システムに含まれる |
次の項目から、それぞれの不動産投資会社について見ていきましょう。
2-1 プロパティエージェント
プロパティエージェントは、創業以来20期連続で増収増益を続けている東証プライム上場グループの不動産投資会社です。エリアは東京23区と横浜エリアに集中し、新築マンションと中古マンションのどちらも取り扱っています。
設備保証サービスは、同社で購入した新築・中古、他社ブランド物件すべてを対象にし、築年数は関係ないのが特徴です。プランは、6品目が対象となる「プランA」(月額1,480円)と、13品目が対象になる「プランB」(月額4,980円)の2種類があります。1回の修理代が10万円までで、修理回数は無制限となっています。
名称 | 設備保証サービス |
保証料 | 月額1,480円、月額4,980円 |
内容 | 「プランA」はルームエアコン、給湯器などの6品目、「プランB」は「プランA」の6品目にインターホン、ガラスなどの6品目がプラスされます。 |
2-2 湘建
湘建は、「都市部物件」「1R」などのテーマで物件を供給する不動産投資会社です。エリアは賃貸需要の高い東京・横浜に限定しており、入居率は99.7%(2020年11月末実績)となっています。
管理業務では、入居者募集から入居者審査、家賃集金送金、解約精算まで一貫して担当しています。プランは「集金代行システム」と「家賃保証システム」の2種類が用意されており、「家賃保証システム」を選択した場合、設備トラブルによる修理費や原状回復のための修繕費用は同社が負担することになっています。
名称 | 家賃保証システム |
保証料 | 査定賃貸料金の10% |
内容 | 本来は家賃を保証するシステムで、査定家賃の90%を保証するほか、設備トラブルがあった場合の修理費も保証しています。また原状回復のための修繕費なども保証されます。契約期間は原則3年ごとに更新されます。 |
2-3 REISM(リズム)
REISM(リズム)は、東京23区で中古ワンルームやリノベーション投資などを手掛ける不動産投資会社です。ビッグデータを用いて物件を選定するのが特徴で、良質な物件の供給を可能にしています。ルームコンセプトにこだわったリノベーションを施すことによって、高い付加価値を提供するのも特徴です。
賃貸管理は月額2,000円(税別)であらゆる業務を代行しています。また「安心設備保証サービス」をプラスすることで、設備の故障による臨時の出費をカバーすることができます。最大20年間、何度でも修理・交換費用を保証するのが特徴です。
名称 | 安全設備保証サービス |
保証料 | 月額1,300円(税込) |
内容 | エアコン、給湯器、キッチン・浴室換気扇、コンロなどを対象に、1機器・1修理あたり最大10万円までの修理・交換が可能です。製造から最大20年間、何度でも利用することができます。 |
2-4 エイマックス
エイマックスは、投資用マンションの仕入れ・販売を行う不動産投資会社です。日本でトップの不動産販売実績(※)を有する代表の天田浩平氏を中心に、厳選した投資用マンションを東京23区内で供給しています。(※投資用マンション部門 天田氏の個人取引実績 年間最高売上高83.9億円)
管理業務は月額2,200円(税込)で請け負っており、家賃保証と設備保証のどちらもセットになっています。そのため管理を委託した場合、設備交換および内装工事費用は物件購入から3年間は同社が負担することになります。
名称 | サポートシステム |
保証料 | 月額2,200円(税込) |
内容 | 物件購入後、5年間利用できる、空室時の家賃保証と設備保証がセットされている管理業務プランです。設備交換および内装工事費は物件購入後、何度でも無料です。家賃保証は空室発生60日経過後から入居決定までの期間、査定家賃の80%が保証されます。 |
2-5 クリアルパートナーズ
クリアルパートナーズは、資産形成の一つの方法として、公認会計士や税理士などの専門家が不動産投資を提案する不動産投資会社です。独自開発したDXを活用するため、効率的に不動産投資を行うことができます。
賃貸管理サービスは、「低コストプラン」「設備保証プラン」「完全保証プラン」の3種類を用意しており、オーナーの経営スタイルによって選ぶことができます。この際、「設備保証プラン」か「完全保証プラン」を選択すると、賃貸管理サービスに設備保証がプラスされます。
名称 | 設備保証プラン、完全保証プラン |
保証料 | 月額4,500円(税別)、相場家賃の15%(税別) |
内容 | 設備保証プランは専有部分の設備を修理・交換する場合の保証で、完全保証プランは設備保証と空室保証がセットになったプランです。 |
まとめ
民法第611条では、設備が故障したままの賃貸物件は家賃を減額することが決められています。各不動産会社が提供している保証サービスは、このような設備機器の故障のリスクに備えるために利用検討してみると良いでしょう。
設備保証サービスには、設備故障のリスク対策としてのメリットがある一方、毎月少額の費用がかかる点はデメリットと言えます。各社の保証範囲や保証内容、料金について詳しく確認しておくと良いでしょう。
今回のコラムでは、不動産投資会社5社の設備保証サービスを比較しやすいように、表にまとめて紹介しました。不動産投資を検討している方は、ご参考ください。
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倉岡 明広
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