クラウドファンディング投資で損失が出た時の確定申告は?損益通算の仕組みも

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クラウドファンディング投資で損失が出た場合、確定申告での取り扱いはどのようになるのでしょうか。

クラウドファンディング投資では、確定申告が必要な投資型のものであっても、株式型、貸付型、ファンド型があり、それぞれの種類によって、所得税法上の取扱いも異なるので注意が必要です。

本記事では、クラウドファンディング投資で損失が出た場合の確定申告について、詳しく解説していきます。

※記事内の税制内容は2022年2月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. クラウドファンディング投資の種類と税金
    1-1.非投資型と投資型では確定申告の要不要が異なる
    1-2.投資型クラウドファンディングの税金
  2. 投資型クラウドファンディングで損失が出た場合の確定申告
    2-1.株式型
    2-2.貸付型、ファンド型
  3. クラウドファンディング投資で損失が出た時の確定申告の注意点
  4. まとめ

1.クラウドファンディング投資の種類と税金

クラウドファンディングには大きく分けて投資型と非投資型のものがあり、金銭的なリターンの発生しない非投資型のクラウドファンディングでは、寄付金控除などの申請を行わない場合、確定申告が不要です。

確定申告が必要なクラウドファンディング投資には、株式型、貸付型、ファンド型があります。いずれのケースでも、投資した個人が得たリターンには所得税・住民税が課されます。

損失が出た場合の取扱いを知る前に、それぞれのクラウドファンディング投資でリターンが発生した場合に、税法上どのような取り扱いがなされるのかを確認しましょう。

1-1.非投資型と投資型では確定申告の要不要が異なる

クラウドファンディングは、クラウドファンディングサイトを経由して、多数の資金提供者から少額ずつ資金を集める仕組みです。新規・成長企業等が、資金調達をおこなう方法の一つとして注目されており、投資型のものと非投資型のものがあります。

投資型クラウドファンディングでは、どのような形態であっても、原則として投資した側には投資した資金に対する金銭的リターンが設定されており、リターンが発生した場合は、個人であれば所得税・住民税が課せられます。

投資型クラウドファンディングの形態には、貸付型、株式型、ファンド型があります。それぞれのクラウドファンディングの種類の違いは、貸付けの方法によるのか、株式発行の方法によるのか、あるいは、ファンド持分を購入させる方法によるのか、という資金調達の方法の違いになります。

一方、非投資型クラウドファンディングには、寄付型のものと購入型のものがあります。寄付型は、資金提供者が資金を寄付として提供するため、リターンは発生しません。購入型は、一定の商品やサービス、権利等を購入する対価として資金を提供する形態です。いずれも金銭的なリターンが発生しないため、特に税金が課されることはありません。

投資型クラウドファンディングによって得た利益がある場合、原則として確定申告が必要となります。ただし、給与収入が2,000万円以下で、投資型クラウドファンディングを含めた給与以外の所得(収入から経費を差し引いた金額)の合計額が20万円以下の場合などは、例外的に確定申告は不要です。

1-2.投資型クラウドファンディングの税金

貸付型、ファンド型のクラウドファンディングで得られるリターンは、匿名組合から組合員への分配という形式を採っています。そのため、個人の場合、雑所得として総合課税の対象となります。

一方、個人が株式発行の方法による株式型クラウドファンディングによって得たリターンは、非上場株式に対する配当という扱いになり、上場株式等以外の配当所得として所得税の総合課税の対象となります。(※参照:国税庁「配当金を受け取ったとき(配当所得)」)

なお、株式型クラウドファンディングによって取得した株式は、基本的には流通取引を前提としておらず、売却することは難しいといえます。イグジットに成功して譲渡益が発生した場合は、一般株式等に係る譲渡所得として、所得税の申告分離課税の対象となります。譲渡益に対してかかる税金は、所得税15.315%、住民税5%の一律税率となります。(※参照:国税庁「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」)

2.投資型クラウドファンディングで損失が出た場合の確定申告

確定申告が必要なのは、投資型クラウドファンディングのみであるということがお分かりいただけたかと思います。

そこで、投資型クラウドファンディングに焦点を当てて、投資型クラウドファンディングで損失が出た場合、確定申告の取扱いはどのようになるのか、を見てみましょう。株式型と貸付型、ファンド型で取扱いが異なるため、それぞれに分けて見ていきます。

2-1.株式型

株式型のクラウドファンディングで損失が生じるのは、そのクラウドファンディングにかかる株式を売却した場合になります。

株式型のクラウドファンディングの売却損益は、「一般株式等に係る譲渡所得等」として申告分離課税となります。このため、株式型のクラウドファンディングにかかる株式の売却損が発生した場合、給与所得、不動産所得などの他の総合課税の所得と損益通算することはできません。

申告分離課税となる株式の譲渡所得の中であっても、「上場株式の等に係る譲渡所得等」は、「一般株式等に係る譲渡所得等」とそれぞれ別々に計算することとなっています。そのため、「上場株式等」の譲渡所得との損益通算もできないことになります。

ただし、他の株式型のクラウドファンディングの売却益など、「一般株式等に係る譲渡所得等」に該当する譲渡益の範囲であれば、損益通算が可能です。他の「一般株式等に係る譲渡所得等」の利益があり、源泉所得税が徴収されている場合は、確定申告をすることで損益通算され、その源泉所得税が還付されることもあります。

※出典:国税庁「株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い

2-2.貸付型、ファンド型

貸付型、ファンド型のクラウドファンディングでは、クラウドファンディングの事業者が、匿名組合を組成して投資家から資金を集め、資金調達を必要としている企業に対して資金を貸付けたり、投資をおこなったりします。

クラウドファンディングでは損失が生じている場合であっても、その分だけ出資した資金を減少させて補填することが多く、実際に投資家から補填金の支払いを求めることはないでしょう。

ただし、クラウドファンディングの匿名組合契約終了時には、元本割れを起こしていれば、投資家の損失負担が確定することになります。また、貸付型のクラウドファンディングでは、貸付けをおこなった事業者からの返済が受けられないような場合、いわゆる貸倒損失が発生するような場合もあります。

このようなケースでは、クラウドファンディングで発生した損失は、投資家が実際にその損失を負担する時に、雑所得の計算において必要経費に算入できることになります。

なお、貸付型、ファンド型のクラウドファンディングに係る所得は、所得税法上、雑所得に該当し、雑所得の金額は次の算式によって計算します。

雑所得=総収入金額-必要経費

損失を含む必要経費の額が総収入金額を上回り、雑所得がマイナスになった場合、他の総合課税の所得と損益通算することはできず、そのマイナスはなかったものとされます。ただし、雑所得内での損益通算は可能であるため、他の貸付型、ファンド型のクラウドファンディングの利益や、副業所得、動産や金銭の賃貸料などと損益通算することが可能です。

他の雑所得に該当する所得があり、源泉所得税が徴収されている場合には、確定申告をすることによって損益通算され、源泉所得税が還付されることもあります。

※出典:国税庁「商法上の匿名組合契約に係る課税の取扱い

3.クラウドファンディング投資で損失が出た時の確定申告の注意点

投資型クラウドファンディングで損失が生じ、確定申告する場合の注意点は、まず、株式型と貸付型、ファンド型とでは、取扱いが大きく異なるということです。

株式型では、売却した場合の損益は「一般株式等に係る譲渡所得等」として申告分離課税となり、所得税15.315%、住民税5%の一律税率となります。

発生した譲渡損失は、「一般株式等に係る譲渡所得等」に分類される所得内のみでの損益通算となります。他の総合課税の所得と合算、損益通算できないだけでなく、「上場株式等に係る譲渡所得等」とも損益通算できません。

一方、貸付型、ファンド型では、その損益は雑所得に該当し、総合課税の対象となります。発生した損失は、実際に投資家がその損失を負担する時に、雑所得の計算上必要経費として差し引くことができます。

ただし、雑所得の区分内での損益通算は可能であるものの、雑所得がマイナスとなった場合、他の総合課税の所得との損益通算はできない点に注意が必要です。

また、株式型、貸付型、ファンド型、いずれの場合であっても、実際の支払額は、源泉徴収税額が差し引かれた後の金額になっているため、確定申告の際には、差引前の総額を把握するようにしましょう。

確定申告の際には、他の所得の源泉所得税額が損益通算によって還付されることがあるため、他の所得の源泉所得税額も忘れずに把握するようにしましょう。

まとめ

クラウドファンディング投資で損失が出た場合、確定申告が必要な投資型に該当する、株式型、貸付型、ファンド型のクラウドファンディングでは、確定申告をおこなうことで、損益通算により、源泉所得税が戻る可能性もあります。

株式型では、売却損が生じた場合に、確定申告によって、他の「一般株式等に係る譲渡所得等」と損益通算することができます。

貸付型、ファンド型では、投資家が負担する損失が確定している場合、確定申告で雑所得の必要経費に計上することが可能です。他の雑所得と損益通算することができます。

なお、確定申告の際には、実際の支払額について源泉所得税額が差し引かれた後の金額となっている所得に注意しましょう。そのような所得については、支払総額と源泉徴収税額を把握して確定申告をおこなう必要があります。

クラウドファンディングの制度は、まだ税法の整備が追い付いていない側面もあります。確定申告をする際は、国税庁のホームページを確認したり、専門家に依頼したりすることも検討してみましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。