会員権NFTによる資金調達、DAOによるゴルフコース購入?!ソーシャルトークンとしてのNFT

今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. LinksDAOとは?
  2. 「ソーシャルトークン」としてのNFT

リアルな世界(話題がNFTではありますが、メタバース上ではないということを強調するためにこのように表現しました)でゴルフコースを購入しようとするLinksDAOというコミュニティがNFTセールを始めました。今回は、このNFTセールの概要やこのNFTはどういう用途で使用できるのか、そしてコミュニティを形成するソーシャル性としてのNFTについて寄稿します。

LinksDAOとは?

LinksDAOとは、先述の通り、ゴルフコースを購入するための資金を集めることを目的としたゴルフ愛好家のためのコミュニティです。これは、一般的なカントリークラブのようなものですが、ブロックチェーンを利用し、会員に投票権を与え、理想的にはより多くのコントロールができるようになっています。つまり、このDAOにおけるルールとガバナンスはスマートコントラクトでコード化され、DAOのメンバーによって投票されない限り変更することができないという仕様になっています。

LinksDAOのミッションは、「現代のゴルフ・レジャークラブの創造」と「カントリークラブの再構築」で、急成長するDAOエコシステムの中でスポーツ中心の体験を提供することです。

LinksDAOは資金調達を行うにあたって、NFTセールを行いました。このNFTセールでは、約9,000個の会員権としてのNFTを販売し、販売してから26時間で1,100万ドルを集めました。しかし、プロジェクトリーダーのMike Dudasによると実際にゴルフコースを購入するにはさらなる資金調達が必要であると話しています。

今回販売されたNFTは「レジャー会員権」と「グローバル会員権」の2種類があります。レジャー会員権は6,363個が販売され、これは会員権NFTを介した初期のガバナンス権、ゴルフのティータイムや商品などの利用および割引、ゴルフやセレブリティなどの著名人がゲスト出演する会員制Discordチャンネルへのアクセス、LinksDAOのファンタジーゴルフリーグへの参加といった内容が含まれています。一方で、グローバル会員権は2,727個が販売され、レジャー会員権に含まれている全ての特典の他に、グローバル会員権NFTを通じた通常の4倍の初期のガバナンス権、LinksDAOが最初に取得したクラブで個人会員権2枚または家族会員権1枚を購入する権利、ゴルフや旅行などのLinksDAO IRL公式イベントへの参加、参加に同意した他のグローバルメンバーとのクラブ相互利用が含まれています。このどちらの会員権も今後利用可能な権利が追加されていくことも検討されているとのことです。

これらのNFTに含まれている特典において「初期の」ガバナンス権という表現になっているのは、LinksDAOがガバナンストークンとしてLINKSトークンをローンチしようとしているためです。ここで、分散型オラクルChainlinkのLINKトークンやLINEブロックチェーンのLINKSトークンと混同しないように注意が必要です。LinksDAOの2つのNFTのどちらかの保有者は、LINKSの割り当てを受けると予想され、上位の「グローバル会員」の保有者は下位の「レジャー会員」に与えられるトークン数の4倍を受け取ることになることになるかと考えられています。

「ソーシャルトークン」としてのNFT

LinksDAOでは会員権としてNFTを販売しました。この会員権NFTは、CryptoPunksやBAYCとは違い、見た目での見分けがほとんどつきません。

非代替性トークンという意味であるNFTが画期的なポイントとしては、それが代替することができないトークンであるということです。これは、一見意味がわからないように聞こえるかもしれませんが、別の言い方をすると、NFTはビジュアライズ化された画像や動画の重要性は無いという意味です。

LinksDAOの会員権NFTは、CryptoPunksやBAYCのようにコレクションとしてNFTを保持することではなく、アクセス権として機能しているので見た目は重要ではないのです。このことは、イーサリアムの創設者ヴィタリック・ブテリン氏が1月末に東京で開かれた「Web3.0 Conference Tokyo」というWeb3.0に特化したイベントでの発言内容にも合致する点があります。このイベント内で「現在、一番興味のあるNFTプロジェクトはどれですか?」という質問に対して、ヴィタリック氏は「私が興味を持っているNFTは、NFTであることだけが特徴ではないNFTです」と回答しています。つまり、NFTのヴィジュアルはあくまでおまけで、そのNFTが保有者にどのような体験や付加的な用途をもたらすのかが本質的であると解釈することができます。

この会員権NFTはソーシャルトークンとしての機能を果たしていると見なすことができます。ソーシャルトークンとは、個人のクリエイターやコミュニティが発行するトークンで、コミュニティのメンバーが共同で作成した価値の所有権を共有できるようにするものです。ソーシャルトークンは、グループへの貢献に対する報酬として獲得でき、チャットグループへのアクセス権付与やコミュニティの決定事項に対する投票などの目的に使用することができます。

ソーシャルトークンを実際に活用しているプロジェクトとしては、Web3のアーティストやオペレーター、そして思想家のコミュニティである「Friends with Benefits(FWB)」があり、FWBトークンというソーシャルトークンを発行しています。FWBのDiscordチャットに参加するには、最低限FWBトークンを所持し、コミュニティの成功へのコミットメントを示す短い申請書を提出する必要があります。また、FWBトークンは、FWBコミュニティの国庫の配分に影響を与えるガバナンスの権利も提供します。FWBコミュニティは、トークン所有の証明を必要とする対面式のイベントを開催したこともあります。

このFWBをはじめ多くのソーシャルトークンを用いているプロジェクトは、ERC20という規格で発行されており、これは通常の仮想通貨(暗号資産)のように扱うことができ、NFTとは異なります。LinksDAOで用いられている会員権NFTはソーシャルトークンを塗り替えようとしています。

現状のソーシャルトークンの課題として、主に2つあると考えます。

1つ目は、トークンの価格が上がることでコミュニティへ参加する敷居が高くなり、スケールが難しくなるこということがあります。トークンの価格が上昇してから参入しようとすると、元々お金を多く保有している者しか参入ができないという状況になり、結果的にコミュニティがクローズドになってしまいます。しかし、これはコミュニティからすれば、より大金を支払ってまでコミュニティに参加したい人が入ってくるという見方ができるので、コミュニティが健全に保てるという側面もあります。

2つ目は、階層化の手段が定量的になることです。例えば、特定の条件を満たした人のみがアクセスが可能となる仕組みを構築したい際には、ソーシャルトークンを用いるとトークンの保有量によって分類され、一元的な指標でしか分けることができなくなり、多様な価値基準での評価・分類が困難になり、結果的に拝金主義的に陥り、つまらないものになってしまいます。

結局のところ、ソーシャルトークンは新規参入者にとっては使い勝手の良いものではありません。一方で、会員権NFTでは、様々なNFTを配布することで階層化がより多様になることが期待でき、そのNFTを保有している人に対して特定の権利を付与することもできます。コミュニティ内でのメンバーシップとして使用する際には、ソーシャルトークンよりもNFTの方が応用が効き、可能性が広がります。ヴィタリック氏の言う「NFTであることだけが特徴ではないNFT」はソーシャルトークン的なNFTが直感的に馴染みやすいものかもしれません。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

【関連記事】イーサリアムとは?特徴・仕組み・購入方法
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【参照記事】イーサリアムのヴィタリク・ブテリンが語る、Web3、NFT、メタバース(Web3 Conference Tokyo より)
【参照記事】A beginner’s guide to social tokens

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守 慎哉

守 慎哉

Fracton Ventures株式会社リサーチャー。DAO分野に強みを持ち、コモンズ・公共財におけるガバナンスのあり方などのリサーチを担当。その他CoinPost×あたらしい経済で立ち上げた「CONNECTV」の共同編集長をも務める。