年齢が上がるにつれ「世代内資産格差」が拡大。三井住友トラスト資産のミライ研が資産形成の実態調査

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三井住友信託銀行株式会社のシンクタンクである三井住友トラスト・資産のミライ研究所は6月22日、「住まいと資産形成に関するアンケート調査」の結果を公表した。調査は今年1月、全国の20~64歳の男女を対象にインターネットで実施、1万780サンプルを得た。各世代における住まいや住宅ローンに対する考え方や資産形成の方法についての違いが浮き彫りになった。

まず「世帯として保有している金融資産(現金、預貯金、債券・株、投資信託、生命保険のうち満期金のあるもの、貸出金など住居など不動産は除く)」をたずねたところ、1世帯あたりの平均金融資産保有額は20歳代の270万円から年齢とともに増加、60歳代(60歳~64歳)では1828万円、20歳代の6.8倍という結果になった。10歳刻みで平均保有額の変化をみると、20歳代から40歳代までの伸びは比較的緩やかだが、50歳代から60歳代にかけては700万円以上増加しており、住宅ローン返済からの解放、教育費負担の減少、退職金の受け取りなどが要因と考えられる。

次に、金融資産保有額を「低位層(300万円未満)・中間層(300万円以上~1500万円未満)・高位層(,500万円以上)」の3階層に分け、各世代での家計金融資産の分布状況をみた。20歳代では3/4を占めた低位層が、60歳代では1/3まで減少、20歳代では2%強だった高位層が、60歳代では4割まで増加した。中間層は30歳代以上で年齢が上がるにつれ減少、結果、60歳代における比率は、低位層33.3%、中間層25.5%、高位層41.2%となった。中間層が減って高低両側へのバラツキが大きくなる、つまり「齢を重ねるほど同じ世代内における金融資産の格差が拡大する」という傾向が浮かび上がる。

調査ではさらに、金融資産の格差拡大と「住まいと住宅ローン」との関係性を調べるため、「持家の状況」と「住宅ローンの有無」の結果から、「持家/ローンあり世帯」「持家/ローン返済済み世帯」「持家/ローンなし世帯」「借家・親と同居/ローンなし世帯」の4グループに分けて保有金融資産の推移を比べた。40歳代は「持家/ローン返済済み世帯」と「持家/ローンなし世帯」の資産形成が大きく進み、保有額は1000万円前後に到達した。50歳代は「持家/ローン返済済み世帯」と「持家/ローンなし世帯」の資産形成が引き続き順調。60歳代では持家と住宅ローンの保有状況により、60歳代時点で家計金融資産保有額に2倍の開きが出た。

資産の形成をどのように行っているのかの調査では、全世帯に「定期・不定期を問わず、過去1年に以下の資産形成に向けた取り組み(保有)をしているか」とたずね、1つ以上行っていれば「実施」とした。具体的には国内預金、財形・社内預金、生命保険、日本国債・地方債、外貨預金、FX、投資信託、社員持ち株会、株式投資、不動産投資、暗号資産、商品先物取引など。

資産形成に向け何らかの取り組みを実施している世帯の比率は、全世帯ベースでは7割だが、「持家/ローンあり世帯」はローンの保有状況別の4グループ中、最も実施比率が高く、8割が住宅ローンを返済しながら資産形成にも向け何らかの取り組みを行っている。ただし、実際に1年間に資産形成できている金額は、資産形成への取り組みを行っている「持家/ローンあり世帯」の5割は年間資産形成額が50万円未満で、うち1割は差し引きゼロ(積み立てはするが、引き出して費消してしまうケース)、300万円以上は5%未満に留まっていた。

最後に、住宅ローンを保有していて資産形成にも取り組んでいる世帯の家計行動の特徴を知るために、「家計面で行っている具体的な工夫・努力」についてたずね(複数回答可)、その結果と金融資産保有額をクロス分析した。3つの金融資産保有額階層(低位層・中間層・高位層)ごとの工夫・努力項目の実施率をみると、全ての保有額階層で実施率トップは「ポイントやマイルの活用」だった。ただし300万円未満では35%、300万円以上では45%と実施率に差が出ている。

「ポイントやマイルの活用」以外では、低位層は、まずは「日々の節約」、次に「家計簿」の順。中間層・高位層になると「節約」より「家計簿」が上位になる。家計簿の利用率は金融資産保有額が大きい世帯ほど高く、高位層では4割が実施していた。食費と光熱水道費の節約はどの金融資産階層でも30~35%前後が実施していた。保有金融資産が高額になるにつれて、納税してからメリットバックを受ける「ふるさと納税」の利用比率も高まる傾向にある。

保有額300万円未満の層には、300万円以上の層と比べ「特に何もしていない」比率が高く(17.9%)、実施している工夫・努力の項目数は少ない(平均2.6個)という特徴がみられる。「資産形成を進めるためには普段からの様々な工夫・努力が大切」といえるだろう。

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HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム

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