法人の不動産売却でかかる税金は?計算方法や消費税の仕組みについても解説

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法人が不動産売却をおこなう場合、通常の法人の事業活動にかかる税金の一環として、課税されることになります。また、消費税の課税事業者である場合には、消費税がかかるケースもあります。

本記事では、法人の不動産売却でかかる税金とその計算方法、消費税の仕組みと申告納付、不動産売却の際消費税がかかる取引について解説していきます。

※記事内の税金・税率などは2023年2月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. 法人の不動産売却でかかる税金と計算方法
    1-1.法人税・地方法人税
    1-2.法人住民税
    1-3.法人事業税
  2. 消費税の仕組みと法人の不動産売却で消費税がかかる取引
    2-1.消費税の仕組み
    2-2.消費税の申告納付と消費税課税事業者
    2-3.土地については消費税が課税されない
    2-4.不動産売却で消費税がかかる取引
  3. まとめ

1.法人の不動産売却でかかる税金と計算方法

法人の不動産売却でかかる税金は、法人として利益追求のための事業活動をする上で課せられる枠組みの中でかかることになります。つまり、個人の不動産売却に課せられる譲渡所得税のように、不動産を売却したことによって特別な税金が課せられるわけではありません。

このうち、国によって課される法人税・地方法人税になります。地方によって課されるのが、法人住民税と法人事業税です。以下で詳しくみていきましょう。

1-1.法人税・地方法人税

法人税は、法人の事業活動から得られた所得に対して課される税金です。法人税額は、次のように計算されるのが基本になっています。

法人税額=(益金の額-損金の額)×税率

益金の額は、事業の売上収入や資産の売却収入など、事業活動にかかるすべての収入です。損金の額は、売上原価や販売費、その他の損失などの費用や損失が該当します。

ただし、実際には、企業会計における公正妥当な会計処理基準に基づいて利益を計算した利益に、定められた加算減算を行って所得を算出します。

適用される税率は、法人の種類や資本金額などに応じて変わってきます。普通法人の令和4年4月1日以後に開始する事業年度では、次のような税率になっています。

  • 資本金1億円以下の法人:年800万円以下の部分15%(適用除外事業者は19%)、年800万円超の部分19%
  • 上記以外の法人:23.2%

法人税と同時に課される地方法人税は、法人税額に基づいて計算されます。法人税額に10.3%の税率を乗じた額になります。

※出典:国税庁「法人税の税率

1-2.法人住民税

法人住民税は、法人の事務所等が所在する都道府県および市町村によって課され、次のように計算されます。

法人税割+均等割

法人税割は、法人税額×税率によって計算され、道府県民税では法人税額の1%、市町村民税では法人税額の6%となっています。均等割は、資本金等の額や従業員数の区分に応じて一定額を課されます。下表のように定められています。

資本金等の額 都道府県民税均等割 市町村民税均等割(従業員数50人超) 市町村民税均等割(従業員数50人以下)
1千万円以下 2万円 12万円 5万円
1千万円超1億円以下 5万円 15万円 13万円
1億円超10億円以下 13万円 40万円 16万円
10億円超50億円以下 54万円 175万円 41万円
50億円超 80万円 300万円 41万円

※出典:総務庁「法人住民税・法人事業税

1-3.法人事業税

法人事業税は、法人がおこなう事業そのものに対して、事務所等の所在する都道府県が課します。法人事業税は、事業の種類や規模によって課される税金が異なり、下表のようになっています。

  • 資本金1億円超の普通法人:付加価値割、資本割、所得割
  • 資本金1億円以下の普通法人等:所得割
  • 電気・ガス供給業、保険業を営む法人:収入割
  • 電気供給業を営む資本金1億円超の普通法人:収入割、付加価値割、資本割
  • 小売電気事業・発電事業等の電気供給業を営む資本金1億円以下の普通法人等:収入割、所得割
  • ガス供給業を営む法人:収入割、付加価値割、資本割

このうち、資本金1億円以下の普通法人等では、所得割が課されます。所得割は、法人税と同様に、法人の所得に対して税率を乗じて計算されます。資本金1億円以下の普通法人等の所得割は、下表のようになっています。

  • 年400万円以下の金額:3.5%
  • 年400万円を超え年800万円以下の金額:5.3%
  • 年800万円を超える金額:7.0%

資本金1億円超の普通法人に対して課される付加価値割は、付加価値額(収益配分額+単年度損益)に対して1.2%、資本割は資本金等の額に対して0.5%、所得割は一律1%となっています。

※出典:同上

2.消費税の仕組みと法人の不動産売却で消費税がかかる取引

法人の不動産売却では、課税事業者であれば消費税もかかることになります。ただし、土地については課税されず、建物の売却や事業用資産の売却に対して消費税がかかって来ます。以下で詳細をみていきましょう。

2-1.消費税の仕組み

消費税は、消費者が商品やサービスの消費をする際に、消費税が含まれた商品やサービスの代金を支払うことで、その税額を負担する制度です。

消費税の申告・納付は、商品やサービスを提供する事業者がおこないますが、消費税額の計算過程では、以下のように、売上げた際に預かった消費税額から支払った消費税額を控除することができ、課税負担を転嫁する仕組みになっています。

消費税額=課税売上げにかかる消費税額-課税仕入れ等にかかる消費税額

消費税の申告・納付は、一般消費者がおこなうことはありません。また、事業者であっても、課税事業者の条件を充たす課税事業者に限定されています。そして、消費税の申告・納付をおこなう際、消費税の計算対象となる消費税のかかる取引は、課税取引に限られています。

※出典:国税庁「消費税はどんな仕組み?

2-2.消費税の申告納付と消費税課税事業者

消費税の申告・納付をおこなうのは、課税事業者に限られるということを説明しました。すなわち、2023年2月時点で消費税の納税義務は一定の条件を充たす小規模事業者には免除されることになっており、免除事業者であれば消費税の申告・納付をおこなう必要はありません。

課税事業者になるには、このような免税事業者に該当しないことが条件になります。課税事業者は、次の3点を充たす必要があります。

  • 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えること
  • 特定期間の課税売上高等による判定条件を充たすこと
  • 新設法人の特例等の条件に該当しないこと

課税事業者の原則条件は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えることであり、この基準期間とは、個人事業者であれば前々年、法人であれば前々事業年度、となります。

特定期間とは、個人事業であれば前年1月から6月まで、法人であれば前事業年度開始の日から6カ月、となり、判定条件として、課税売上高もしくは給与等の金額を用いることができます。

この他にも、消費課税事業者となるケースには種々の特例があり、たとえば新設法人の特例では、資本金等の額が1,000万円以上の基準期間のない法人の場合、課税事業者となることとされています。

※出典:国税庁「消費税 法(基礎編)令和4年度版

ただし、免税事業者も自らの意思によって「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば課税事業者になることができます。例えば、インボイス制度に対応する形で法人が課税事業者になっている場合は、上記の判定条件を満たしていない場合も課税事業者として扱われることになります。

【関連記事】インボイス制度が不動産投資に与える3つの影響とは?対策も解説

2-3.土地については消費税が課税されない

課税事業者がおこなう取引であっても、すべての取引に消費税がかかるわけではありません。

消費税の課税対象とならない取引には、事業者が事業としておこなう取引でない取引(生活用動産の売却など)、対価性のない取引(寄付など)は、消費税はかかりません。

土地の譲渡・貸付けや、社会保険医療など、消費税の趣旨や社会政策的な観点から課税に適さない取引についても、消費税を課さないものとしています。

2-4.不動産売却で消費税がかかる取引

消費税の計算と申告納付の仕組みについてお分かりいただいたところで、不動産売却の場面で具体的に消費税がかかる取引について解説していきます。

消費税課税事業者の建物売却

消費税がかかるのは、消費税の課税事業者がおこなう取引で、課税対象から除外されていない取引になります。

たとえば、不動産売却の収入取引では、消費税課税事業者がおこなう建物の売却取引がこれに該当します。同じ建物の売却取引であっても、消費税の課税事業者でない個人がおこなう場合は、消費税はかかりません。

また、消費税の課税事業者がおこなう取引であっても、消費税が非課税とされている土地の売却取引について消費税はかからないことになります。

消費税課税事業者の事業用資産売却

消費税がかかるのは、消費税の課税事業者がおこなう取引で、課税対象から除外されていない取引になります。

たとえば、事業用不動産の売却をする際、その不動産に設置されている設備などの事業用資産を売却することがあります。このような消費税課税事業者のおこなう事業用資産の売却には消費税がかかります。

まとめ

法人の不動産売却でかかる税金は、法人税・地方法人税、法人住民税、法人事業税になります。それぞれ課税団体と計算方法が異なるので注意しましょう。

消費税の課税事業者である場合には、消費税の申告納付も必要になる可能性があります。不動産売却で消費税がかかるのは、建物を売却したり、事業用資産を売却したりする場合になります。該当する場合には、消費税の申告納付も忘れないようにしましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。