投資信託で発生する税金と確定申告の方法まとめ

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投資信託では購入時や運用時、売却時に手数料が発生するほか、利益が出れば税金もかかります。投資信託は投資未経験でも行いやすい資産運用方法の一つとして人気ですが、必要コストが思った以上に負担になる場合もあるので、注意が必要です。

そこでこの記事では、投資信託の特徴やメリット・デメリットのほか、投資信託で発生する税金の種類・内容、確定申告の方法について詳しく解説するので、興味のある方はご参考ください。

目次

  1. 投資信託のメリット
  2. 投資信託のデメリット・注意点
  3. 投資信託で発生する税金の種類と内容
    3-1.株式投資信託は申告分離課税
    3-2.公社債投資信託は源泉分離課税
  4. 投資信託で発生した税金を確定申告する方法・手順
    4-1.確定申告が不要になる口座
    4-2.損失が生じた場合は確定申告で損益通算・繰越控除
    4-3.確定申告に必要な書類
    4-4.確定申告をする際の注意点
  5. まとめ

1 投資信託のメリット

投資信託(投信)とは、投資家から集めた資金を専門家が運用し、その利益を投資家に分配する金融商品です。投資信託は1口1万円程度で販売されており、株式や債券などの銘柄で構成されたファンドを購入するだけで分散投資も可能になるので、少ない資金でリスクを抑えた投資を行えるのが特徴です。

投資信託の詳しいメリットは次の通りです。

運用の手間がかからない

投資信託を購入した後は、投資のプロであるファンドマネージャーが投資家の代わりに投資先の選定や調整を行ってくるので、手間がかかりません。投資初心者の方にとっては取り組みやすく、仕事で忙しい方にとっては手離れの良い投資方法となります。

分散投資でリスクを抑制できる

投資信託は、株式や債券、不動産等の複数の金融商品で構成された投資商品です(※各商品で内容は異なる)。様々な金融商品を組み合わせることで投資先を分散し、リスクを抑えた投資が可能になります。

少額投資が可能

投資信託の多くは1口1万円程度から購入できます(※各商品で異なる)。特に、SBI証券やLINE証券などネット証券では100円から購入できるサービスも増えてきています。少ない資金でも分散投資がしやすいので、手軽にリスクを抑えたい方にも向いています。

商品の種類が豊富

例えば個人で発展途上国の株式や債券などに投資するのは容易ではありませんが、投資信託は発展途上国や新興国を含む国内外の株式、株価指数、債券、不動産を投資対象としています。様々な投資家のニーズに合う商品が豊富に用意されているのも投資信託の特徴です。

2 投資信託のデメリット・注意点

次に、投資信託のデメリットや注意点についても確認してみましょう。

元本が保証されない

投資信託は、元本が保証されている金融商品ではありません。一般的には、景気や相場の動向が良ければ運用結果も良好ですが、景気が悪いと収益は上がりにくく、時には投資元本を割り込む可能性もあります。

手数料がかかる

投資信託は、購入時や保有中に以下の費用がかかります。

  1. 販売手数料:販売価格の0~3%
  2. 信託報酬:運用管理にかかる費用で運用資産の0.1~2.5%
  3. 信託財産留保額:中途解約時に発生する費用で運用資産の0~0.5%

※いずれも目安の一つとして捉えてください。販売手数料については、ネット証券などでは無料で投資信託を購入できる(ノーロード)サービスも増えてきています。

タイムリーに換金できない(ETF等を除く)

株やFXは、市場が開いている間はいつでも注文・売買をできます。一方、投資信託の売却方法は異なり、解約申込から3営業日目以降、海外の金融商品を含む投資信託では5営業日以降でなければ換金ができません。また一定期間は解約ができないクローズド期間が定められた投資信託もあります。

3 投資信託で発生する税金の種類と内容

投資信託の投資対象の種類は、主に株式投資信託と公社債投資信託があり、それぞれ税金の取り扱いが異なります。株式投資信託とは、約款上で株式を組み入れることができる投資信託で、公社債投資信託は株式の組み入れが認められないものをいいます。

ここでは、この2種類の投資信託について、課税上の扱いを見ていきましょう。

3-1 株式投資信託は申告分離課税

株式投資信託の分配金や譲渡益は、上場株式の譲渡益と同じく申告分離課税として扱われます。申告分離課税とは、投資信託による所得を他の所得とは分離して税額を計算し、確定申告により納税する方式です。税率は課税所得に対して20.315%(内訳:所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)となります。

3-2 公社債投資信託は源泉分離課税

公社債投資信託の分配金や譲渡益は、源泉分離課税の扱いになります。源泉分離課税とは、他の所得と分離して一定の税率で税金が源泉徴収される方式です。税率は、株式投資信託と同じく、課税所得に対して20.315%となります。

4 投資信託で発生した税金を確定申告する方法・手順

会社員や公務員の方の場合は、勤め先で年末調整によりその年の税額を確定させているため、基本的に確定申告を行う必要はありません。しかし、以下のパターンに該当する会社員・公務員の方は申告が必要となります。

【確定申告が必要な条件】

  1. 給与収入が2,000万円を超える方
  2. 給与以外に20万円を超える所得がある方
  3. 主たる給与以外の給与+給与以外の所得が20万円を超える方

2については、会社からの給与は年末調整を受けていても、副業の投資信託等で年間20万円を超える所得がある場合、確定申告が必要です(例外あり。次の項を参照ください)。

3については、2カ所以上の会社から給与収入があり、年末調整をされなかった給与と副業の投資信託による所得の合計が年間20万円を超える場合に確定申告が必要です。

4-1 確定申告が不要になる口座

投資信託を始める際は、証券会社か銀行等で口座を開くことになりますが、開設する口座タイプによって確定申告をする・しないが異なってきます。

特定口座(源泉徴収あり)

特定口座(源泉徴収あり)のタイプで投資信託を運用する場合、投資信託の収益から税金が源泉徴収されるため、確定申告が原則不要となります。上記の「確定申告が必要な条件」に当てはまる方の場合でも、特定口座(源泉徴収あり)で投資信託を運用していれば、申告する必要はありません。

特定口座(源泉徴収なし)

特定口座(源泉徴収なし)の口座で投資信託を運用する場合、確定申告が原則必要です。証券会社や銀行等に対して年間の取引を計算した「年間取引報告書」を請求すれば送ってくれるので、それを基に申告書を自分で作成し、提出することになります。

一般口座

一般口座で投資信託を運用する場合も確定申告が原則必要です。一般口座では、証券会社から「年間取引報告書」が送られてこないため、自分で1年間分の取引結果を調べて損益を計算し、申告書を作成しなければなりません。

4-2 損失が生じた場合は確定申告で損益通算・繰越控除

投資信託では、その時々の景気・相場状況によって損失が発生する場合があります。損失が生じると税金はかかりませんが、確定申告を行うことで「損益通算」や「繰越控除」などのメリットを受けられる場合もあります。

損益通算

株式投資信託を売却した場合は、上場株式の譲渡所得等に該当します。売却・償還で生じた損失は、他の投資信託や株式の譲渡所得と損益を通算・相殺することができます。申告分離課税の場合は、譲渡所得だけではなく、配当所得も合算した損益通算が可能です。

特定口座(源泉徴収あり)の場合は、1つの口座内であれば、証券会社・銀行で譲渡損益・配当金の損益通算を行ってくれるため、確定申告の必要はありません。しかし、複数の証券口座(例えば、A証券会社の口座とB証券会社の口座)にまたがっての損益通算は、証券会社・銀行でできないため、自分で確定申告を行う必要があります。

また、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座では、1つの口座内であっても損益通算はしてもらえないため、自分で申告を行う必要があります。

繰越控除

投資信託の売却・償還で生じた損失で、損益通算してもなお控除しきれない損失金額が残っている場合は、翌年度以降3年間に渡ってその損失を繰り越し、各年の投資信託や株式の譲渡所得、配当所得から控除することができます。

4-4 確定申告に必要な書類

確定申告に必要な書類について、特定口座・一般口座に分けてご紹介します。

条件 申告書作成のための必要書類 提出書類
・特定口座(源泉徴収なし)で利益が発生
・取引証券会社=1社
・特定口座年間取引報告書
・給与所得
・退職所得
・公的年金の源泉徴収票
・申告書B(第一表、第二表)
・申告書第三表(分離課税用)
・特定口座(源泉徴収なし)で利益が発生
・取引証券会社=複数
・特定口座年間取引報告書
・給与所得、退職所得、公的年金の源泉徴収票
・申告書B(第一表、第二表)
・申告書第三表(分離課税用)
・株式等にかかる譲渡所得等の金額の計算明細書
・一般口座で利益が発生 ・1年間の取引損益が計算できるもの(取引報告書、受渡計算書など)
・給与所得、退職所得、公的年金の源泉徴収票
・申告書B(第一表、第二表)
・申告書第三表(分離課税用)
・株式等にかかる譲渡所得等の金額の計算明細書
・特定口座(源泉徴収あり)で利益が発生 ・特定口座年間取引報告書 ・申告書B(第一表、第二表)
・他の特定口座、一般口座で損失が発生 ・給与所得・退職所得・公的年金の源泉徴収票 ・申告書第三表(分離課税用)
・株式等にかかる譲渡所得等の金額の計算明細書
・申告書付表(上場株式等にかかる譲渡損失の繰越用)
・特定口座(源泉徴収あり・源泉徴収なし)または ・特定口座年間取引報告書 ・申告書B(第一表、第二表)
・一般口座で損失が発生 ・1年間の取引損益が計算できるもの(取引報告書、受渡計算書など)
・給与所得、退職所得、公的年金の源泉徴収票
・申告書第三表(分離課税用)
・株式等にかかる譲渡所得等の金額の計算明細書
・申告書付表(上場株式等にかかる譲渡損失の繰越用)

※従来の必要提出書類の中には、「給与所得・退職所得・公的年金の源泉徴収票」「特定口座年間取引報告書」がありましたが、平成31年度税制改正により、2019年4月1日以降に提出する申告については不要とされました。最新の情報については、ご自身でもご確認下さい。

4-4 確定申告をする際の注意点

会社員や公務員の方の場合、職場の年末調整でその年の税額を確定させるため、確定申告をした経験がない方もいらっしゃるでしょう。そのため、自分だけの力で申告書を作成しようとすると、計算ミスや書類の添付し忘れ等が発生しやすくなります。

そこで、申告書作成におけるミスを極力なくし、作成作業の負担を軽減するため、国税庁の「確定申告書作成コーナー」を利用するのがおすすめです。確定申告に必要な提出書類を知らなくても、「確定申告書作成コーナー」で画面案内に従って入力作業を進めていけば、提出に必要な申告書様式一式が自動的に完成します。申告書が完成すれば、後は印刷して提出するのみとなります。

また、確定申告書作成コーナーで作成するのが難しい場合は、税務署で職員の指導を直接受けながら作成することもできます。しかし、2月中旬〜3月中旬の確定申告期間は申告書類を作成するために訪れた方であふれるため、思った以上に時間がかかる場合もあることを留意しておきましょう。

まとめ

「源泉徴収あり」の特定口座で投資信託をしていれば、利益が発生しても確定申告をする必要は基本的にありません。

一方、投資信託で譲渡損失が生じた場合は、複数の証券口座にまたがる損益通算、または損失の繰越控除を行うには、確定申告が必要になります。このような場合は確定申告を行わないと税金を払い過ぎる可能性もあるので、該当する方はご自身の投資状況を一度チェックしてみると良いでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム

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