これから不動産投資を始めようという人にとって、自分で物件を選ぶのはなかなか難しいのではないでしょうか。新築の新しい物件が必ず良い物件だとは限りませんし、自分が住みたいと思う物件が多くの人も住みたいと考えるとは限りません。
また、購入する前に注意をするべき投資用不動産も数多く存在します。今回は注意が必要な物件の特徴や、投資用不動産選びのポイントなどを、大手の不動産会社で数百件の投資用不動産を販売されてきた青山和也(仮名)さんにお伺いしました。
目次
- 要注意物件の5つの特徴とは?
1-1.立地の悪い物件は長期投資にはリスクが大きい
1-2.デザイナーズ物件には注意
1-3.投資用不動産のブランド名に注意する
1-4.金融機関の審査で評価の低い物件は注意
1-5.建築基準法に違反している物件は避ける - 投資用不動産選びの7つのポイント
2-2.立地は物件を決めるうえで最重要項目
2-1.デザインや部屋の広さは好みではなくトレンドを気にしよう
2-3.金融機関の融資条件が良い物件を選ぶ
2-4.資産価値が高い物件を選ぶ
2-5.ブランドをシリーズ化している不動産会社がおすすめ
2-6.サブリースが条件の物件はできれば避ける
2-7.設備は改修工事ができるので慎重になり過ぎなくても良い - まとめ
編集部

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1.要注意物件の5つの特徴とは?
不動産投資は長期の投資になりますので、成功するためには慎重な計画が必要です。物件選びもそのひとつです。これから不動産投資を始めようという方は、どのような点に注意して物件を選べばいいのか気になると思います。まずはリスクが大きいと思われる物件の特徴について理解し、そのうえで理想の物件を選ぶポイントを解説します。
1-1.立地の悪い物件は長期投資にはリスクが大きい
立地というと駅からの距離を思い浮かべるのではないでしょうか。確かに近い方が入居者も付きやすく収支も安定するでしょう。しかし、立地には他の意味もあります。病院や役所、スーパー、学校などが近くにあるか、という点も物件を選ぶ上で重要な条件になります。
また、国土交通省が職住近接を推進しています。職住近接とは勤務先の近くに住み、周りは緑や水があふれる施設、病院、ショッピングモールなどの環境を整える施策です。そのような社会が当たり前になってくるということを考えると、立地が不安だと思われる物件は避けた方が無難でしょう。
1-2.デザイナーズ物件には注意
デザイナーズ物件というとおしゃれなイメージがあり、人気があるように思えます。しかし、デザインが凝りすぎると年数の経過とともに、奇抜なイメージの方が大きくなり、逆に入居者がつかないということがあります。
例えば、部屋全体が丸みを帯びている物件は一般的な四角い物件と比較して人気がありません。また、お風呂がガラス張りの物件もありますが、せっかく内見まで来ても、それが理由で敬遠されるということもあります。
長い目で見た場合は、そのような特徴的な物件より、ごく普通の間取りの物件の方が入居者はつきやすくなります。もちろん、全てのデザイナーズ物件がマイナスイメージというわけではないのですが、入居者のニーズを汲み取ったのではなく周辺の競合物件との差別化を目的としたデザインなどには注意が必要です。
このように、「デザイナーズ物件だから良い」ということではなく、ケースによって当たり外れがあるということを知っておき、年数が経っても入居者に求められる普遍的なデザインなのかどうかを厳しい目でチェックすると良いでしょう。
1-3.投資用不動産のブランド名に注意する
建物のブランド名に注意しましょう。投資用不動産のブランド名はたいていの場合シリーズ化されていることが多く、ブランド名にその地名などを付けています。
例えば、投資用マンションではプロパティエージェントのクレイシアやFJネクストのガーラが知られていますし、アパート経営であればシノケンプロデュースのハーモニーテラスなどがよく知られています。
無名のブランドだったり、有名なブランド名と無名のブランド名をくっつけたような名前だったりした場合は注意が必要です。建築した不動産会社と販売する不動産会社のブランド名が合わさっていることが多く、その場合、販売会社の利益の分だけ物件価格が高くなっていることがあるからです。そのような物件では利回りが悪くなるため、慎重に検討しましょう。
1-4.金融機関の審査で評価の低い物件は注意
金融機関が融資審査をする際は、申込者の信用情報を見ます。銀行が見るのはそういった個人情報だけではありません。申込者に問題がなくても物件の評価が低いと、融資額が極端に低くなったり、金利が高くなったりすることがあります。
評価が低いということは、収支が悪くなったり、売却の際に価格が安くなったりする可能性があります。いくつかの金融機関に相談して、どの金融機関も条件が悪い場合は物件を代えた方が良いかもしれません。
1-5.建築基準法に違反している物件は避ける
中古物件では建築基準法に違反している物件が存在します。先に触れたように物件が建てられた後に建築基準法が改正されると、基準に満たしていない場合が出てくるからです。特に戸建住宅には注意しましょう。
接している道路幅が基準より狭かったり、建ぺい率がオーバーしたりしている場合などは、大きな制限がかかり、思ったような物件が建てられなかったり、建て替え自体ができなかったりすることがあるからです。
編集部

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2.投資用不動産選びの7つのポイント
上記では、注意すべき物件の要素について解説しました。では、その要素をもとに考えられる投資用不動産選びのポイントについて解説します。
2-1.立地は物件を決めるうえで最重要項目
不動産投資物件で最も重要だと言われるのが立地です。立地は駅からの距離のことだけを指しているわけではありません。物件の周りに病院や役所、コンビニ、スーパーなど生活するのに必要な施設などが備わっていることも物件を決める上で重要な条件になります。近年、都市部の再開発で、国土交通省が職住近接を推進していることは先に触れました。物件を選ぶ際は周辺に何があるのかをしっかり調べることが大切です。
2-2.デザインや部屋の広さは好みではなくトレンドを気にしよう
デザイナーズ物件には当たり外れがあると書きましたが、部屋の広さにもトレンドがあることに注意して物件を選びましょう。部屋は広いに越したことがない、という人もいるようですが、それは自分の価値観にすぎません。
以下の表を見てみましょう。この表は東京首都圏で流通した新築マンションと中古マンションの平均専有面積の2006年から2016年までの推移です。
*東京カンテイの資料を基に作成
この表には居住用のマンションも含まれていますので、平均値が投資用のマンションより少し広めになっています。新築マンションの専有面積は2006年の70㎡をピークにその後は徐々に狭くなってきており、2016年は10年間で一番低い数値になっています。
日本国民全体の所得が増えていないということと、子供はいらないといった夫婦だけの世帯が増えたことが、広い部屋の減少につながったと思われます。このように時代背景で、必要とされるマンションの専有面積も変わってきますので、そういったトレンドを考えて選ぶことが重要です。
2-3.金融機関の融資条件が良い物件を選ぶ
注意すべき物件の解説の際に融資条件の悪い物件をご紹介しました。逆に融資条件の良い物件は「買い」だと思って良いでしょう。
金融機関は審査の際に物件がどれくらいの担保能力を持っているかも判断します。担保能力が低い場合、物件価格をかなり下回る金額しか融資をしなかったり、金利が更に高くなったりします。
ここで言う融資条件が良い、悪いという判断は金利3.5%を基準にしています。不動産投資で使うローンの金利は居住用に購入する際に利用するローンより金利が高くなります。しかし、物件によっては金利優遇などで1%台半ばになるケースもありますので、3.5%や4%になると不動産投資の金利でも高いと言えます。
だからといって必ずしも悪い物件と決めつけられるわけではありません。他の金融機関と比較して高ければ、どうして高くなるのかを確認することが必要です。他の要素も含めて総合的に判断することになりますが、できるだけ融資条件の良い物件を選ぶことが、投資用に良い物件を選ぶコツになります。
2-4.資産価値が高い物件を選ぶ
出口戦略を考えた場合、できるだけ資産価値が高い物件を所有することがポイントになります。資産価値を見るひとつの方法として収益還元法 があります。収益還元法は物件から得られる収益と、還元利回りをもとに物件の価値を試算する方法です。収益還元法には直接還元法とDCF法の2種類の試算方法があります。それぞれを解説します。
直接還元法の計算の仕方
収益還元法とは不動産から得られる収益と利回りから不動産価格を算出する計算法です。その中でも、直接還元法とは収入から経費を引いた実質的な利益のことを指します。
不動産価格=年間の純収益÷還元利回り
という計算方法で算出されます。例えば不動産価格が1年間の収益が120万円、経費が年間20万円かかったとします。還元利回りが6%だとして試算をしてみましょう。
(120万円-20万円)÷6%=1,666万6,666円(小数点1位以下切り捨て)
この金額が直接還元法で割り出した不動産価格になります。
DCF法の計算の仕方
DCF法はDiscount Cash Flow法(割引キャッシュフロー法)の頭文字を取ったもので、事業が生み出すキャッシュフローを割引率で割り引いて今の価値を算出する方法です。この計算方法の元になる考え方は、同じ120万円でも将来得られる120万より、投資などに使える今の120万円の方が価値はあるという考え方に基づいて作られています。
DCF法は事業が生み出すキャッシュフローを割引率で割り引いて今の価値を算出する方法です。以下の条件で試算します。
1年間の純収益120万円、5年後の売却額1,200万円、割引率3%
*下記計算式では、( )2は( )の値の2乗、( )3は( )の値の3乗として計算します。
120万円÷(1.03)+120万円÷(1.03)2+120万円÷(1.03)3+120万円÷(1.03)4+120万円÷(1.03)5+1,200万円÷(1.03)5=1,584万6,954円(小数点1位以下切り捨て)
=116万5,049円+113万1,115円+109万8,170円+106万6,184円+103万5,131円+1,035万1,305円=1,584万6,954円
この条件の場合現在の不動産価格は1,584万6,954円ということになります。
収益還元法は中古不動産の売買の際にはよく使われますので覚えておくと便利です。ただ、実際に売買される際は、この通りの金額になるわけではありません。
他に立地が良いなどの好条件がある場合は物件価格がさらに高くなったり、逆に他に悪い条件がある場合は低くなったりします。売買の際は外部条件も考慮することが必要です。
2-5.ブランドをシリーズ化している不動産会社がおすすめ
先ほどご紹介したように不動産会社の中には自社物件をシリーズ化して販売している会社があります。ブランドをシリーズ化している不動産会社を選ぶことで2つのメリットがあります。
メリット1 シリーズ全体の販売実績がある
シリーズ化しているということはすでに数棟あるいは数十棟の販売実績があるということになります。そういう会社であれば、不動産開発のノウハウが会社に蓄積されており、空室リスクや地震リスクなどへの対策が充実していることや管理システムもしっかりしていること、会社自体の経営も安定していることなどが考えられます。
メリット2 融資条件の良い物件が多い
2つ目は融資条件の良い物件が多いことです。シリーズ化されているブランド物件であれば過去の実績などから、金融機関が金利を低くしたり、優遇措置を設けたりしている可能性が高くなります。
たとえば、先ほど取り上げた「ガーラ」シリーズのFJネクストや、中古マンションのリノベーション分野で「REISM(リズム)」というブランドを展開しているリズムなどは、これまでの実績や高品質の物件などが金融機関からも高く評価されており金利優遇を受けることができるため、ケースによっては1%半ばの金利で借り入れをすることも可能です。
新興の不動産会社の場合は、既存の不動産会社から買い取り、必死に販売していることもあります。また、そういった新しい不動産会社の場合、提携している金融機関が少なく、大手の不動産会社と比較すると金利面などで不利なケースもあります。
もちろん全てに当てはまるわけではありませんが、ブランドをシリーズ化している物件を持つ不動産会社の方が物件や融資条件だけではなく、購入後の管理面やアフターフォローなどの面でもメリットがあります。
2-6.サブリースが条件の物件はできれば避ける
シェハウスや郊外のアパート経営で問題になっているサブリースですが、できれば避けた方が無難でしょう。サブリースというシステムは決して不利益を与えるシステムではありません。
空室でも家賃保証してくれますので、条件によってはメリットがあるシステムです。サブリースで問題になった原因は現実とかけ離れた家賃設定や管理会社の経営破綻、所有者に不利益な契約内容などにあります。
不動産投資対象の物件はたくさんありますし、大手の不動産会社のものであればサブリースをしなくても入居者はつきます。無理してサブリース物件を選ぶ必要はないでしょう。どうしてもその物件にこだわるのであれば、サブリースにする理由や契約内容をしっかり確認して取り組むようにしましょう。
2-7.設備は改修工事ができるので慎重になり過ぎなくても良い
新築マンションを見ると、10年前には考えもしなかったような設備が取り付けられていたりします。さらに技術の発展とともに新しいものが次々に生まれてきます。思わず目移りしてしまいがちですが、設備はあまり慎重にならなくても良いでしょう。設備は内装といっしょで、改修工事ができるからです。
マンションやアパートに住んでいて、お風呂や水道の蛇口が新しくなった経験がある方もいらっしゃると思います。インターホンやドアも取り換えができます。まずは立地や資産価値などを優先して物件を探しましょう。
編集部

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まとめ
投資用物件を探す際は立地や収支に目が行きがちですが、それだけで物件を決めるのはリスクがあることがわかりました。長期的にメリットのある不動産を選ぶには、気に入った物件があっても一度立ち止まって、色々な側面から検討することが必要です。
最初のうちは全てのポイントを検証するのは大変かもしれませんが、やっているうちに徐々に理解が深まってきます。物件を選ぶ際には、今回の投資用不動産を探すポイントをぜひ参考にしていただければと思います。
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西宮光夏

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