新聞やテレビなどで不動産価格が上昇しているという話をよく見るようになりました。不動産投資を検討している方にとっては、「今から不動産投資に参入しても大丈夫なのか?」という点が非常に気になっているかと思います。ここでは、その疑問にこたえるべく、バブル期やリーマンショック時と現在との比較をしていきたいと思います。
目次
- 都市における商業地の土地価格はバブル期を超えている
- 住宅地の平均価格はバブル期の半分以下
- 東京都の土地価格の上昇には、実需の裏付けがある
- バブル期やリーマンショック時と異なる4つのポイント
4-1.現在はインカムゲインが不動産投資の評価基準に
4-2.震災復興や東京再開発などで建築需要が増加
4-3.高齢者増加や相続税改正に伴う相続対策需要
4-4.海外不動産の高騰と東京の価値の見直し
都市における商業地の土地価格はバブル期を超えている
現在の不動産価格を検討するにあたり、まずは国土交通省が発表している「主な都市における商業地の『最高』価格の推移」を見ていきましょう。まず、昭和61年12月から平成3年2月までの時期がバブル景気、平成20年9月がリーマンショックの時期となります。それを踏まえて下図を見てみると、ショッピングモールやオフィスなどが立ち並ぶ商業地では、すでにバブル期やリーマンショックの時期の水準を大きく超えて地価が上昇してきていることが分かります。
国土交通省「主な都市における商業地の「最高」価格の推移」
住宅地の平均価格はバブル期の半分以下
では、商業地の地価が高いから今がバブルのはじける寸前かというと、実はそうとも言い切れないのが難しいところで、次に見ていただきたいのが「住宅地」の価格の推移です。バブル時期では、商業地も住宅地も関係なく、土地を買えば値上がりするという幻想が先行した時期でしたので、東京の住宅地で平米単価140万円という数字が出ていました。
50平米(16坪程度)の土地の取得だけで7,000万円がかかる計算ですので、自宅を立てれば簡単に1億円を超えてしまうということになります。バブル期のほうが今よりも物価が10%以上安かったことを考えると恐ろしい話です。一方、リーマンショック時には東京の住宅地の土地価格は最高で57.9万円まで上昇しましたが、平成30年時点の平均価格は57.2万円とほぼ同水準となってきています。
国土交通省「主な都市における住宅地の「平均」価格の推移
東京都の土地価格の上昇には、実需の裏付けがある
2018年8月時点での東京の人口はリーマンショック以降から10%以上増加しており、経済規模は世界の主要都市の中でもトップ(IMFの統計より)、東京都単体のGDPもリーマンショックの頃よりも大きくなっています。
人口が増え、経済活動も活発ということになれば住みたい人や商売をしたいという人も増えるため、土地の価格が上昇するのも自然な流れとなります。このように、現在の土地価格上昇は実需に支えられたものと考えられ、リーマンショック以前よりも高い土地価格であるということも納得できる話となります。
東京都「東京都の総人口(推計)の推移(昭和31年~平成29年)-各年1月1日現在-」
バブル期やリーマンショック時と異なる4つのポイント
他にも、バブル期やリーマンショックの状況と異なる点をまとめていきます。以下の4点を詳しく見ていきましょう。
- 現在はインカムゲインが不動産投資の評価基準に
- 震災復興や東京再開発などで建築需要が増加
- 高齢者増加や相続税改正に伴う相続対策需要の増加
- 海外不動産の高騰と東京の価値の見直し
1. 現在はインカムゲインが不動産投資の評価基準に
バブル時代は、実需ではなく値上がりを期待してキャピタルゲイン(売却益)を狙う売買が中心でしたが、現在は都心など実需が見込めるエリアを中心としたインカムゲイン(家賃収入)を狙った投資が主流となっています。
そのため、物件価格の決め方も家賃収入と利回りをベースにした「収益還元法」という算出方法にシフトしてきており、毎月の家賃収入に比べて物件価格が高すぎるということが簡単に判断できる様になってきています。
なお、2018年時点の利回りの目安としては、都内の新築マンションで表面利回り3%~4%、中古マンションで表面利回り4%~6%程度となっています。また、新築アパートの表面利回りは5%~7%程度、中古アパートの表面利回りは7%~10%程度となっています。(中古物件の利回りは、築年数などの条件により目安よりも大きく上下します)
現在、不動産投資の利回りは低い水準にあるのですが、2016年からのマイナス金利政策により融資金利も歴史的に低い水準にあり、都内の新築マンションで1.5%~2.0%(変動金利)など、利回りと融資金利の差(イールドギャップ)で2%前後は確保できる状態になっています。また、日銀総裁の続投により低金利政策は今後も継続される見込みとなっています。
また、最近では中古マンション投資で、金利1%台から・8割以上が頭金10万円以内の条件で融資を受けている「湘建」のような投資効率がよい不動産投資会社なども出てきていますので、初期費用やランニングコストを抑えて取り組むことも可能になってきています。
2. 震災復興や東京再開発などで建築需要が増加
最近の不動産価格の上昇は、建築価格の上昇にも起因しています。2011年の大震災から建築会社の仕事は増え続けており、2020年のオリンピックはもちろん、2040年までは東京再開発の建築特需が続くと予測されています。建築需要が多いために物件価格も高くなってきているという背景があり、こちらも実需の裏付けがある価格上昇要因となります。
たとえば、一般社団法人住宅生産団体連合会が毎年発表している『2015年度戸建注文住宅の顧客実態調査』を見てみると、2012年から平均建築費単価が毎年5%前後上昇しており、2008年のリーマンショックの頃からは10%近く単価が上昇していることがわかります。
2016年度 戸建注文住宅の顧客実態調査 図表 1-3 平均建築費単価の推移
今後も2020年のオリンピックや2040年頃までの東京の公共事業需要などを考えると、建築費用は大きく下がらずに高止まりとなることが予測されます。建築費の価格上昇はマンションやアパートなどの物件価格にも反映されますので、不動産価格にも大きな影響があるということになります。
3. 高齢者増加や相続税改正に伴う相続対策需要
高齢者数の急激な増加や平成27年からの相続税改正に伴って、相続税対策の需要も高まってきています。改正があった年の平成27年中に亡くなられた方は約129万人でしたが、このうち相続税の課税対象者は約103,000人(平成26年約56,000人)で、課税割合は8.0%(平成26年4.4%)となっており、前年度に比べて倍近い人数が課税対象となりました。
国税庁「相続税の申告状況について (付表2) 課税割合の推移」
また、平成27年の課税対象の相続財産総額は14.6兆円、うち現金・預貯金が4.8兆円、有価証券が2.3兆円、相続財産に対する課税総額は1.8兆円となっています。亡くなった方1人あたりの課税額は1,748万円となっており、今回の相続税改正と課税結果を受けて、今後は相当な金額の相続税対策に向けて不動産投資などに動き出すものと考えられます。
特に、相続税対策にも活用しやすい都心のタワーマンションなどは人気が高く、表面利回りが3%台になるまで物件価格が上がってきています。また、アパートなども相続税対策で購入されることが多く、地方銀行などが主体になって積極的に融資を進めていたのですが、金融庁からの監視強化や2018年に入ってからの不正融資問題などでアパートローンの融資審査基準が厳しくなってきたこともあり、やや落ち着きを見せてきています。
アパートローンの融資については、融資付けの実績が豊富なシノケンプロデュースという会社が、無料で初心者向けのセミナーを開催していますので、現在の金利相場や融資条件などについて気になる方は足を運んで情報収集をされてみると良いでしょう。
4. 海外不動産の高騰と東京の価値の見直し
一時期、爆買いという言葉が流行りましたが、海外投資家や海外富裕層の日本買いも以前より増えてきています。香港や台湾など海外の都市では不動産の利回りが1.5%〜2.5%という低水準のため、東京の不動産利回りが、新築でもいまだに3%台〜5%という状況は外国人投資家にとって魅力的に映ると言われています。
また、中国や東南アジアの人々は、投資目的以外にもセカンドハウスやリゾート目的で日本の物件を物色する傾向があると言われており、こちらも今後の伸びが期待できる需要です。
一方、マクロ経済の動向としては、リーマンショックなどの金融危機や世界情勢に対する不安が高まると、リスク回避で安全資産の円が買われて円高になりますが、2013年以降は安定的な期間が続いているため円安が進んでいます。
ドルだけでなく、元などの通貨でも円安となっており、2012年の水準からは日本の不動産は3割から4割近く価格が安くなっている計算です。単純計算となりますが、たとえば2012年当時に3000万円の中古マンションがあったとして、それが今では同じ条件の物件を2000万円で買うことができるということで、日本の不動産のお買い得感が増しているのです。
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