アースト・アンド・ヤング(EY)は4月30日、最新の独自調査レポート「EY CEO Outlook Pulse Survey」を公表した(*1)。同調査では、経営トップの54%が12か月前よりもサステナビリティの取り組みの優先度が高まったと回答した。
今回のサーベイは、2023年12月と24年1月に、21か国5業種の大企業の最高経営責任者(CEO)1,200人と、21か国の機関投資家300人を対象に調査を行った。
同調査によると、CEOの54%が、12か月前よりもサステナビリティへの取り組みの優先度が高まったと回答した。一方、経営者の23%は、厳しい経済情勢や財務状況を主な理由として、サステナビリティの優先順位が下がっていると回答した。
地域別では、サステナビリティの優先度が高まったと回答したのは米州が62%と最も多く、優先度が下がったと回答したのは16%と最も少なかった。欧州は51%が優先順位を上げ、27%が下げ、アジア太平洋では49%が優先順位を上げ、25%が下げており、概ね世界でサステナビリティの優先度が高まっていることが分かる。
同調査では、企業トップが足元では生産性を高めるために人工知能(AI)による変革を優先しているものの、脱炭素への取り組みを長期的な最優先課題として位置づけている。
向こう1年間の戦略的な優先事項のトップ3に脱炭素化とネットゼロの達成を挙げたのはわずか16%であった。一方、成長と生産性向上のためのテクノロジーとAIへの投資を優先したのは47%に上った。ただし、3年後を見据えた戦略的な優先事項としては、脱炭素化が43%と最も多かった。
長期的な展望を優先する傾向が強まっているのは、CEOが事業見通しに自信を感じているからである。調査に参加したCEOの60%が、12か月前と比較して、自社の収益拡大に楽観的であると回答した。
CEOの見解とは対照的で、投資家のうち、サステナビリティの優先順位が12か月前より高くなったと回答したのはわずか28%であった。サステナビリティ目標をより迅速に達成することを犠牲にして、短期的な財務的リターンの優先順位を高めるこのズレは、近視眼的かもしれない、とEYは見ている。
CEOと投資家の見解がおおむね一致する事項もある。例えば、CEOの73%、投資家の67%が、企業はグリーンウォッシングと非難されることを恐れてグリーンハッシング(#1)をしていると回答した。また、CEOの74%、投資家の67%が、企業のバランスシートはESG(環境・社会・ガバナンス)要因に起因する座礁資産によるリスクに直面していると回答している。
さらに、CEOの75%、投資家の70%は、テクノロジーとAIは自社が直面する多くの主要なサステナビリティの課題に対する答えを握っていると回答した。
(#1)グリーンハッシング…企業が、自身の環境への取り組みについて公表することを控えること。
【参照記事】*1 アースト・アンド・ヤング「The EY CEO survey highlights how CEOs navigate between immediate profits and future sustainability aspirations.」
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