米環境保護庁(EPA)は5月6日、メタン排出量削減に向けた最終規則を発表した(*1)。EPAの温室効果ガス報告プログラム(GHGRP)を改訂し、気候変動の主な要因の一つである石油・ガス施設からのメタン排出に関する透明性と説明責任の向上を図る。
GHGRPを改訂する同最終規則は、石油・ガス部門からのメタン排出を削減するのを支援するために議会が策定した、インフレ抑制法(IRA)におけるメタン排出削減プログラムの重要な構成要素となる。
石油・天然ガス施設は、二酸化炭素(CO2)の何倍も強力で、現在発生している温室効果ガス(GHG)による温暖化のおよそ3分の1を引き起こしている国内産業部門最大のメタン排出源である。
最近の研究では、石油や天然ガス施設からの実際の排出量は、これまでGHGRPに報告されてきた量よりもはるかに多いことが明らかになっている。
そのよう中、同最終規則の下で、EPAは今回初めて、排出量の定量化を支援するために人工衛星などの先進技術の利用し、石油・天然ガス事業から報告される排出量データの質の劇的な改善を図る。
スーパーエミッター(特異的にメタン放散量が多い施設など)およびイベントの特定、定量化のために衛星データの利用を推進する。主要な排出源の直接モニタリングを義務付け、計算方法を更新することで、報告された量と実際の排出量のギャップに対処していく。
2024 年の排出量の算定に際しては、経験的に得られたデータの使用を希望する施設に対して、経験的データの算定方法を任意で早期に使用することも認める。
これらの変更によりメタン排出に関する透明性を向上させる。また、メタン排出削減の取り組みを証明するための経験的データを提出させることで、Waste Emissions Charge(WEC、#1)を課す事業者か否かを特定するための選択肢が広がる。
EPA長官のマイケル・リーガン氏は「厳格な基準、適切なモニタリングと報告、メタン排出削減のための投資を組み合わせることで、米国はクリーンエネルギー経済への移行で世界をリードすることができるだろう」と述べた(*1)。
EPAの今回の措置は、バイデン政権の「米国内のメタン排出削減に向けた行動計画」の下、経済のあらゆる部門から排出されるメタンガスを削減するための取り組みを補完するものだ。
2023年だけでも、同政権はメタン検知を強化し、石油・ガス事業、埋立地、廃坑、農業、工業、建物からのメタン汚染を削減するため、ホワイトハウス・メタンタスクフォースが調整する形で100近くのアクションを起こしてきた。無排出・低排出の石油・ガス技術への移行を加速させるため、10億ドル超の資金・技術援助を動員している。
(#1)WEC…CO2換算で年間25,000トンを超えるCO2を排出する石油・天然ガス施設に適用される課徴金。
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