「東京から世界を変える」サーキュラースタートアップの創出に向けて【CIRCULAR STARTUP TOKYO説明会レポート】

CIRCULAR STARTUP TOKYO 参加希望者向けプログラム説明会の様子

サーキュラーエコノミーメディアプラットフォーム「Circular Economy Hub」を運営するハーチ株式会社は2024年3月7日、東京都との協働により実施されるサーキュラーエコノミー領域に特化したスタートアップ企業の創業支援プログラム「CIRCULAR STARTUP TOKYO(サーキュラースタートアップ東京)」の参加希望者向けプログラム説明会を開催した。

当日は現地・オンライン合わせて約100名の参加者が集まり、主催のハーチ株式会社に加えてサーキュラースタートアップに関わるゲストスピーカー3名が登壇し、それぞれの取り組みや今後の展開に向けた課題、プログラムへの期待などについて発表やパネルディスカッションが行われた。

本記事では、経済産業省 産業技術環境局 資源循環経済課課長補佐 吉川 泰弘 氏、株式会社ファーメンステーション 代表取締役 酒井 里奈 氏、アーキタイプベンチャーズ パートナー 北原 宏和 氏による三つの異なる観点からのゲストトークと、3名によるパネルディスカッションの様子についてレポートする。

サーキュラースタートアップの創出を目指して

主催者であるハーチ株式会社の代表取締役 加藤 佑氏は、「循環経済(サーキュラーエコノミー)という、日本政府としてもこれから注力していく領域で新しい事業を作ろうとされていらっしゃる方々に支援をさせていただき、この東京の地からサーキュラーエコノミーの良い事業・実践をどんどん創出していきたい。今回のプログラムは我々としても初のチャレンジとなるので、皆様にフィードバックをいただきながらより良いものにしていければと思っている」と開幕の挨拶を述べた。

ハーチ株式会社 代表取締役 加藤 佑 氏

また、CIRCULAR STARTUP TOKYO主催メンバーであるアーキタイプベンチャーズの北原氏は、今回のプログラムについて「サーキュラーエコノミーのスタートアップ支援プログラムが日本の中で重層的に生まれていくような、そういう大きな取り組みの端緒にしていきたい」と意気込みを示した。

政策面からのゲストトーク「日本のサーキュラーエコノミー政策とスタートアップへの期待」

経済産業省の吉川氏は、経済界からも大きな注目が集まるサーキュラーエコノミー政策に関する解説を行った。

資源循環経済政策の変遷や廃棄物の削減の状況などのトピックに触れた上で、「これまで最終処分場の逼迫という社会課題に対して3R(リデュース・リユース・リサイクル)という観点から取り組みを進めてきたが、これからは資源をいかに循環させて効率的・循環的に利用していくかというアプローチを進めていく必要がある」とサーキュラーエコノミーへの移行の意義を訴えた。

経済産業省・産業技術環境局 資源循環経済課課長補佐 吉川 泰弘 氏

「また、世界全体で見ると、2060年には人口が100億人を超えると予測されているが、これまでの大量採掘・大量生産・大量消費・大量廃棄のリニアエコノミーの経済システムをこのまま続けていくと、人口の増加に応じて資源採掘量も大幅に増加してしまうことになり地球の資源はいずれ枯渇してしまう。特に日本は他の国々と比べて資源が採れない国のため、この点に危機感を持って取り組む必要がある。経済的指標は今後も求めていきつつも資源の循環性を高める好循環、つまり、経済的成長と投入する資源量をデカップリングしていくことが重要だ」と言葉に力を込めた。

今回のプログラムに関しては、「サーキュラーエコノミーの市場規模は世界的にも大きくなっていく中で、ここに集まった皆さんが新たに起こしていくビジネスが今後の大きな経済成長の源泉になっていくと考えている」と参加者に呼びかけた。

また、「サーキュラーエコノミーのビジネスを起こしていくにあたっては、経済性・環境性・社会性をどうやって両立していくかが非常に重要。それを個々の主体だけでやるのは難しいが、産官学でパートナーシップを組んで社会全体で取り組んでいくことによって色々な社会課題を解決していくことができる。そうした問題意識で、昨年9月に『サーキュラーパートナーズ(CPs)』を立ち上げた。」

「資源循環分野で今後10年間で官民合わせて2兆円超の投資を実現することを昨年12月に閣議決定しており、経産省としてもサーキュラーエコノミー政策とスタートアップ政策の掛け算で政策展開を今後進めていきたいと考えている」と締め括った。

実践者からのゲストトーク「サーキュラースタートアップの実践」

ファーメンステーションの酒井氏は、元々は銀行員だったが「社会・環境にプラスになる事業がしたい」という想いから起業をした、というバックグラウンドを有する。

株式会社ファーメンステーション・代表取締役 酒井 里奈 氏

ファーメンステーションは、未利用バイオマスに発酵アップサイクル技術を掛け合わせて、高付加価値なバイオ素材を生み出す事業を手掛けるサーキュラースタートアップで、これまで色々な会社の食物残渣や未利用資源を商品へと変えるというビジネスなどを数多く手掛けてきた。現在は研究開発と原料にフォーカスをした新たな事業にも着手しており、今後はグローバル展開を目指して海外市場に向けて脱石油・高機能バイオマス素材のトッププレイヤーを目指していく。

ファーメンステーションでは、経済性と環境性・社会性を両立する観点から、環境や社会に配慮した公益性の高い事業を行う企業に与えられる国際認証制度「B Corp」も取得している。「今後、サーキュラービジネスをやっていくのであれば、B Corpのような自社の環境性・社会性を高めていく目線も求められてくるようになるのでは」とサーキュラースタートアップが公益性を高めていくことへの重要性も強調した。

最後に「日本にはサーキュラーエコノミーのスタートアップがまだまだ少ない。この領域で、もっともっと多くのみんなと一緒に戦っていきたいと思っているので、このプログラムを通じて仲間が増えていってほしい」とプロジェクトへの期待を寄せた。

投資家からのゲストトーク「サーキュラースタートアップ投資の最前線」

北原氏はベンチャーキャピタルの視点から、どうすれば事業をスケールできるのか、サーキュラースタートアップはどうすればマーケットで勝てるのか、具体的に何に取り組めばいいのか、といった点について解説した。

「事業をスケールしていくためには、ただサーキュラーエコノミーの事業をやるというだけでは解像度が足りず、そこから解像度を上げていく必要がある。単純に社会のために良いから、事業が成り立つからという理由だけで始めるのではなく、技術・社会・消費者などの全てのパーツがうまく揃うタイミングで始めることが重要。」

また、「サーキュラーエコノミーは、テクノロジー面や社会面では取り組む環境が整いつつある状況だが、私たちの生活や消費まで浸透しているとはまだ言えないという状況。ではどうすればいいかと考えてみると、サーキュラーエコノミーを分解し、どの領域ならビジネスで勝てるのかを考えていく必要がある。BtoCという領域では難しいのであれば、たとえばBtoBではどうなのか、あるいは産業を絞ればどうなのか、などを考えながらインフレクションポイント(変曲点)が近い領域を見つけることが重要。」

「日本では、サーキュラーエコノミーを前面に出してマーケットに入っていくと失敗してしまう事例が多いと感じているため、消費者が価値を感じてくれるところからマーケットに入っていき、プロダクトやビジネスの中にサーキュラーエコノミーの考えや要素を織り込んでいく形の方が良いのではないか」と海外の事例なども交えて話した。

アーキタイプベンチャーズ株式会社・パートナー 北原 宏和 氏

今回のプログラムに関しては、「事業を通じて大きな社会的インパクトを出していくためにも、ただ単に目の前の課題解決ができる、経済性もあるから取り組めばいいという考えで取り組むのではなく、高い志をもってスケールというところもしっかりと追求していってほしい。今回のプログラムの中では、そういったところもきちんとお伝えできれば」と期待と展望を語った。

パネルディスカッション「サーキュラーエコノミーの可能性とスタートアップへの期待」

続くパネルディスカッションでは、ゲストスピーカーの吉川泰弘氏・酒井里奈氏・北原宏和氏3名と、ファシリテーターに加藤佑氏を加え、「サーキュラーエコノミーの可能性とスタートアップへの期待」というテーマで議論を重ねた。

スタートアップへの期待という点について、吉川氏は、「サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラル、グリーンテックといった分野の掛け合わせが、今後は産業政策としての一つの基軸になっていくと考えている。」

「特にグリーン、デジタル、経済安全保障の話と、社会的なインフラとしての人材、スタートアップなどを経済産業政策の新機軸として掲げてやっているので、それらの掛け算を、まさに東京のこの場から生み出していけると我々としてはすごく嬉しい。」

「今後はスタートアップ×グリーンの領域にも支援をしていくべきであると考えており、サーキュラーエコノミーの文脈にグリーンテックをしっかりと取り込んでいきながらビジネスをしていただけると、すごく良いエコシステムが生まれていくのではないかと考えている。そうした新しいビジネスモデルを作っていくのは、まさに今ここに集まっている皆さんなのではないかと私は思っている。」

「皆さんが我々では考えつかないような自由な発想で、それを起業へとつなげていけるような環境整備を国としても進めていくので、そこをぜひ好機と捉えていただいて、まずはプログラムに応募・参加してみていただけると良いのではないか」と説明会参加者へのエールを送った。

パネルディスカッションの様子

サーキュラーエコノミーの可能性という点について酒井氏は、「お二人の話を聞いていて改めて今は本当に商機だと感じていて、ファーメンステーションにも非常に大きな可能性を感じている」と話す。また、事業をスケールアップさせていくポイントとしては、「自分たちと同じようなことを考えていらっしゃる会社さんを探しながら一緒に市場をつくる、ビジネスを作ってお互いに稼げるという証明をどんどん世の中に出していくと、他の皆さんも入ってくるのではないかと思う。」と語った。

投資家としての視点から見たサーキュラーエコノミーへの期待について、北原氏は、「先ほど、サーキュラーエコノミーの製品・サービスに関して、まだ消費者はついてきていないという話はしたが、それはチャンスでもある。他の人より少しでも先行してビジネスを始めておけば、自分より能力が高い人にも勝てるかもしれない。(スタートアップは)学校のテストではないので、みんな同じタイミングでスタートして60分で答えてくださいという話ではなく、先に走ればいい。そういう観点で、今は非常にいいタイミング。」

また、「投資家としてどういうスタートアップに投資をしたくなるかどうかという点については、『その事業をやるのが、なぜあなたなんですか?』という点も重要。ビジネスのアイデアは少し勉強をしたら誰でも思いついてしまう。アイデアがちゃんとストライクゾーンに入っているうえで、『この会社なら一番早く遠くまで行けそうだな』と感じるときに、やはり我々としては投資をしたくなる」と投資の現場で実際に感じていることを伝えた。

一方で、「投資家のいうことを聞きすぎないようにしてください、ということもこの場でお伝えしておきたい。やはり最後は自分がやり切れるかどうか、やりたいかどうかというところが全てだったりもするので、事業について色々と周りが言ってくると思うのですが、聞くべきところを聞きつつ、聞かないところは聞かないでいいと思うので、自分が強くコミットしてやり切れるところで頑張ってほしい」と呼びかけた。

最後に、吉川氏から、プログラムの参加検討者に向けて「皆さんがサーキュラーエコノミーのビジネスを花開かせていくために、『こういう制度や環境が必要だよね』と現場で感じるもののなかで、我々として対応できる部分があれば、そこはぜひ教えていただきたい。国としても真摯に考えていきたい。また、皆さんが他のステークホルダーとパートナーシップを組んでいきたいという際には、『サーキュラーパートナーズ』の枠組みなどを活用して、我々が皆さんのお役に立てることもあるのかなと考えている」

「私たちは皆さんのチャレンジを応援しているので、うまく追い風に乗っていただけるように、サーキュラーエコノミーの風は吹かせ続けていきたい」と広く参加を呼びかけた。

Circular StartUp Tokyoのプログラムについて

応募期限・個別相談

CIRCULAR STARTUP TOKYO第一期のプログラム応募受付は2024年3月15日12時まで。応募前の個別相談も可能。

また、共に東京から日本・世界のサーキュラーエコノミー加速に向けたエコシステム構築に参画したいという企業・団体からのプログラムパートナーの募集も受け付けている。

【個別相談・プログラムパートナー:問い合わせ先】circularstartuptokyo@harch.jp

対象参加者

  • サーキュラーエコノミー分野(モノづくり・ファッション・食・建築・包装・デジタル など)で創業を検討している個人
  • 研究内容をもとに事業化をしたいと考えている大学生・大学院生の方
  • サーキュラーエコノミー分野の新規事業を検討中の大企業に所属する社内起業家(イントラプレナー)
  • サーキュラーエコノミー分野の新会社設立を検討中の中小企業経営者
  • サーキュラーエコノミー分野で起業し、資金調達を前提に本格的に事業拡大を目指したいスタートアップ経営者

参加者特典

  • プログラム参加期間中はCircular Economy Hub・コミュニティ会員特典(月額2,980円相当)を付与
  • プロトタイプ作成・実証実験支援として、1チームにつき最大20万円まで費用補助(要申請)
  • 事業の課題やフェーズに合わせて国内外のサーキュラーエコノミー投資家、大企業、研究者、専門家に最速マッチング
  • PoCフィールドの紹介、実証実験に協力可能な小売・商業施設・サーキュラースタートアップ誘致に積極的な自治体などを紹介
  • サーキュラーエコノミーに関わる助成金・補助金に関する情報をタイムリーに提供。

運営会社(ハーチ株式会社)について

ハーチ株式会社は、”Publishing a Better Future(よりよい未来をみんなに届ける)” をミッションに掲げるデジタルメディア企業。サステナビリティ・サーキュラーエコノミー分野における情報発信、企業・自治体・大学らとの協働プロジェクトを展開。「Circular Economy Hub」に加え、社会をもっと良くするアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」、横浜市におけるサーキュラーエコノミー推進メディアプラットフォーム「Circular Yokohama」などを展開。2023年4月にB Corp認証を取得。
URL:https://harch.jp/

【応募フォーム】CIRCULAR STARTUP TOKYOに応募する

※本記事は、Circular Economy Hubより転載された記事です。

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