株式市場ではインド市場の存在感が高まっています。インド株式市場の代表的な指数であるセンセックス指数の、2023年度の騰落率は18.7%、Nifty50は20.0%と、好調でした。経済成長とともに中間所得層が伸び、消費は拡大しているものの、インフラ整備が遅れています。インドは2036年夏季五輪開催を目指すなか、インフラ整備を進めています。
今後も経済成長が期待できるインドは、長期投資にメリットがある国です。本稿では、投資のプロである筆者が、インド投資の今後10年の見通しについて解説します。
※2024年5月16日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- インドの魅力
1-1.高い経済成長率
1-2.理想的な人口構造 - インドの政策や目標
2-1.メイク・イン・インディア政策
2-2.インフラ投資の急増
2-3.2036年夏季五輪開催 - 今後10年の見通し
3-1.世界第2位の経済大国
3-2.五輪景気
3-3.株高
3-4.白物家電の普及 - まとめ
1.インドの魅力
インド経済は成長過程にあり、投資家にとってメリットのある市場です。ここでは、インドの魅力について解説します。
1-1.高い経済成長率
インドの魅力のひとつは、高い経済成長率です。世界銀行によるとインドの2023/2024年度の実質GDP成長率予想は6.3%と、高い経済成長が期待されています。また、国貨基金(IMF)は、インドの名目GDPが2026年に日本の名目GDPを抜き、2027年にはドイツを抜き世界3位の経済大国になると予想しています。
経済成長に伴い賃金も上昇傾向にあり、中間所得層が増加傾向にあることもインドの魅力です。
参照:World Bank「India’s Growth to Remain Resilient Despite Global Challenges」
1-2.理想的な人口構造
インドの人口ピラミッドは三角形を描いており、人口の50%が30歳以下です。平均年齢が29歳と若く、若い世代が経済成長を牽引しています。
また、インドでは国家教育戦略として、2020年から2030年までの期間に25%に満たない高等教育への進学率を50%以上に引き上げるとしています。教育の底上げをすることで、経済成長や格差の是正が期待されます。
参照:PopulationPyramid.net「人口: インド 2023」
2.インドの政策や目標
インドの今後10年を予想するに当たっては、現在の政策や目標を理解する必要があります。ここでは主な政策や目標を解説します。
2-1.メイク・イン・インディア政策
政策として、メイク・イン・インディアが挙げられます。メイク・イン・インディア政策とは輸入品は課税されるものの、インド国内で生産される製品には課税されない政策です。海外企業がインド国内で生産する工場製品には課税されません。なお、海外企業がインド国内に工場を建設する場合、国や州からの補助金が給付されます。
海外企業を誘致することで、インド国内での雇用創出や消費拡大に繋がります。
2-2.インフラ投資の急増
インドでは、インフラ整備が遅れているため、政府はインフラ投資に力をいれています。上下水道、電気、ガス、物流・交通網の整備が進んでいません。これらのインフラ整備をするために、安定的かつ自然に優しいエネルギー供給が重要です。
エネルギーの大半を石油と石炭に頼っているため、公害問題も深刻な状況です。そのため2047年を目途に、インドでは石油・ガスの輸入に頼らないエネルギーの自立を目途に目指しています。
2-3.2036年夏季五輪開催
インドのモディ首相は、2036年夏季五輪開催を目指しています。2036年夏季大会には、エジプト、トルコ、インドネシア、カタール、韓国など十数国が誘致に関心を示しています。インドが選ばれれば、五輪開催に向け、交通網、下水などのインフラ整備が一気に進む可能性があります。
インドの国技的スポーツであるクリケットが、2028年ロサンゼルス五輪に採用されました。インドでは五輪開催ムードが高まっています。
3.今後10年の見通し
3-1.世界2位の経済大国
今から10年後の2034年度インドの経済は、第2位の中国がデフレに苦しむなか、順調に成長し、世界第2位の経済大国となる可能性があります。
道路や鉄道のインフラも、デリーやムンバイの大都市では整備が進んでいることでしょう。メイク・イン・インディア政策が功を奏し、外資系企業の誘致に成功しました。これに伴いインド国内産業規模が拡大するため、貿易赤字が縮小し、通貨高に向かう可能性があります。
3-2.五輪景気
2036年の五輪開催が決まり、インド国内では建設ラッシュが起きる可能性があります。交通網や下水などインフラ整備が大都市を中心に進むでしょう。
1962年から1964年の東京五輪景気と同様の現象が、2034年のインドでも起こるとすると、中間所得層が増加、五輪を機に白物家電の普及率が高まりそうです。東京五輪が開催された昭和30年代には、テレビ、洗濯機、冷蔵庫が三種の神器と呼ばれ、豊かな生活の象徴となり、家電が一気に普及しました。
3-3.株高
株価は経済成長とともに上昇し、代表的なセンセックス指数は2023年比で2倍程度に上昇しました。五輪開催に向けさらなる上昇に期待ができます。
世界第3位の大国となったインド株式へ、年金基金を中心に長期投資マネーが流入し、時価総額は日本や中国を上回り、世界第2位となる可能性があります。
3-3.白物家電の普及
白物家電の普及率は低く、エアコンの普及率が5%前後、洗濯機が13%、冷蔵庫が約33%となっています。人口14億人を超えるインド市場において、中間所得層の増加は白物家電の普及率を押し上げに繋がる可能性が高いと言えそうです。
4.まとめ
本稿では、投資のプロである筆者が、10年後のインドを大胆に予想してみました。インドは若年層の多い人口構造、継続的な経済成長、通貨が安定していること等から、2034年には世界第2位の経済大国となっていることでしょう。株価は現在の数倍、通貨も強くなっていると予想されます。
加えて、夏季五輪開催が決まれば、開催に向けたインフラ整備が進みます。日本で昭和30年代の東京五輪開催に伴い、高速道路や鉄道など交通網が整備されたように、インドでも同様に整備が進むことでしょう。
経済成長にともない、人々の所得も増加し、より豊かな国となっている可能性があるため、インドへの長期投資を検討してみてはいかがでしょうか。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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