シングルマザー向け住宅の調達と提供(アフォーダブルハウジング)事業を手掛ける株式会社LivEQuality(リブクオリティ)大家さんは3月27日、第2回のインパクトボンド(私募社債)を発行、銀行からの融資と合わせて総額1.8億円の資金調達を完了したと発表した。アフォーダブルハウジングは、就業機会を得やすいアクセス、清潔さや利便性などの良好な条件を満たし、かつ住居費を負担しても、十分に生活費を賄える水準に家賃を設定した住宅を意味する。調達金額は累計5億円となった。
リブクオリティ大家さんは、名古屋市に本社を置く総合建設業の千年建設株式会社を母体に2022年設立。アフォーダブルハウジング事業を、経済性と社会性の両立を追求する「ソーシャル大家」として展開している。
「母子家庭の深刻な貧困の起点には、住まいの問題がある。DVや離婚で住まいを失ったシングルマザーは、住まいを支援の前提とする『住所主義』の行政から、支援を受けられない場合が多い。しかし、保育園に子どもを預けられなければ働けない。仕事がないから家を借りられないという負のスパイラルに陥る」と、同社の岡本拓也社長は指摘する。シングルマザーの居住を支援したいという思いが、リブクオリティ事業の開始、さらに新会社設立へと拡大した。
同社のビジネスモデルは、テナントや一般入居者が求める都市部の好立地のビルを購入し、老朽化が進んでいる部分を修繕やリフォームで物件の質を高め、ビル全体の収益性を担保しながら、一部を相場以下で貸し出す。この仕組みで、就業機会にアクセスしやすく、清潔で便利な個室を、シングルマザーへ低賃料で提供している。同社、認定NPO法人LivEQuality HUB、千年建設を軸とした3法人合同事業スキームにすることにより、物件の取得から修繕・リフォームや建物管理・賃貸管理、入居後のシングルマザーの伴走支援など、ハード面からソフト面までワンストップの支援を実現している。
現在までに受け入れた母子は22世帯54人。4分の1は外国籍で、LivEQualityはDV避難下での転入、保育園の申込みなどの行政手続きの同行から、地域とのつながりの構築までを支援している。「就業機会にアクセスしやすく、清潔で便利な個室」と「伴走型支援」により、入居後、半年以上経過したシングルマザーの就業率は83%。母親たちは就業、生活再建、離婚手続き完了など、自立に向けて前進しているという。
今回の資金調達の内訳は、インパクトボンドの発行7000万円、銀行からの融資1億1000万円。投資を行ったのは日本社会事業大学専門職大学院教授の井上由起子氏、フリーランスのプログラム・アドバイザーで公共政策学修士の沖依子氏、株式会社DETOURNER、合同会社エン代表社員の増田芳隆氏、フィランソロピー・アドバイザーズ株式会社代表取締役の藤田淑子氏。
リブクオリティ大家さんは、今回の資金を元に、名古屋市内で新たな居住用物件を16戸取得。保有する住戸数は延べ103戸となった。今後は名古屋エリアでの伴走支援の拡大や事業モデルの確立とともに、他地域・他領域への支援の広がりも期待される。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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