クリーンテックスタートアップEVOLOH、シリーズAで30億円調達。水電解槽スタックの製造能力を拡大へ

水電解槽スタック製造スタートアップのEVOLOHは3月26日、シリーズA(資金調達ラウンド)で2,000万ドル(約30億円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、同社のスケーラブルでハイスループットな製造技術を拡大するとともに、先進的なアルカリ水電解槽に新たな機能を導入することを目指す。

今回の投資ラウンドは、米マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とするベンチャーキャピタルのエンジン・ベンチャーズ(Engine Ventures)が主導した。ネクステラ・エナジー・リソーシズの子会社や米工業製品・事務用品のスリーエム(3M)のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)3Mベンチャーズも参加した。

EVOLOHは、電解槽の製造に革命を起こし、低炭素水素を世界的に利用しやすくすることを目指す。既存の電解槽の製造、輸送、設置は高価で困難なことで知られており、政治的・環境的に複雑なサプライチェーンに依存しているが、同社の製造施設は設備投資と設置面積を80%削減することができる。

EVOLOHの創業者兼最高経営責任者(CEO)のジミー・ロハス博士は「今回の資金調達により、電解槽スタックを100%現地のサプライチェーンで製造し、手頃な価格で効率的なハードウェア商品に変え、電解槽製造市場をリードすることができる」と述べた(*1)。

電解槽の中核部品である電解槽スタックは、EVOLOHのノーチラス(NautilusTM)プラットフォームを通じて提供され、鋼鉄、プラスチック、アルミニウムなどの豊富な材料から作られ、貴金属やレアアースを必要としない。

EVOLOHのアルカリ水電解方式の水電解技術を使用し、水素プラントの設備投資と営業費用を削減するために、低コストのパワーエレクトロニクスを用い、腐食性の電解質も必要としない。また、ノーチラス・スタックは非常にコンパクトで、24メガワット(MW)級モジュールに組み立てることができるため、大規模な産業用途に最適だ。

ネクステラ・エナジー・リソーシズの戦略・製品ソリューション担当バイスプレジデントを務めるリック・クラーク氏は「EVOLOHの電解槽スタックは、手頃な価格で広く入手可能な材料を使用することで、グリーン水素のコストを削減するエキサイティングな機会を創出する」と述べた(*1)。

また、3M New Growth Venturesのシニアバイスプレジデントを務めるマーク・コープマン氏は「我が社は高容量の膜電極接合体(MEA、#1)に関するこれまで培ってきた専門性を活用する機会を有している。EVOLOHへの投資は、水素社会の実現を後押しし、地球をクリーンなエネルギー転換に向かわせるために我が社が行っている取り組みと整合するものだ」と述べた(*1)。

(#1)MEA…固体高分子型の燃料電池に使われるイオン交換膜と電極からなる部材。

【参照記事】*1 EVOLOH「EVOLOH Secures $20M to Transform Electrolyzer Manufacturing and Make Low-Carbon Hydrogen Globally Accessible

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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