気候テックスタートアップのElectricity Mapsは5月7日、気候変動に焦点を当てたファンドTransitionとRevent より、500ユーロ(約8億円)を調達したと発表した(*1)。調達資金を元手に、電力業界のデータドリブンな脱炭素化の支援を加速させる。
Electricity Mapsは2016年に設立された、デンマーク・コペンハーゲンを拠点とする気候テックスタートアップだ。電力の炭素強度(#1)と原産地データを企業に提供し、ユーザーが電力使用によるカーボンフットプリント(CFP、#2)の理解し、削減できるよう支援している。
米国、欧州、オーストラリア、南米やアジアの大部分を含む世界230超の国と地域をカバーしており、リアルタイム、ヒストリカル、予測データを同社のAPIから入手できる。現在ではAPIを通じて毎日1,000万件のリクエストに対応している。
Electricity Mapsのソリューションは、企業が電力使用によるカーボンフットプリントを詳細に開示したり、グリーン電力が送電網により多く供給される時間帯に合わせてエネルギー使用量を計画したりするのに役立つ。
現在のユースケースは、データセンターにおけるよりクリーンな人工知能(AI)計算から、より持続可能な電気自動車(EV)の充電、粒度の細かいデータに基づく炭素会計の実施まで多岐にわたる。
例えば、韓国サムスンはSmartThingsアプリを介してElectricity Mapsのプラットフォームを活用し、端末の電気使用量とカーボンフットプリントをユーザーに表示している。また、グーグルは再生可能エネルギーが有り余る時間帯に電力使用量の多い計算を実行するために、Electricity Mapsの予測データを利用している。
さらに、Electricity Mapsは年間数百万人のユーザーを持つ無料アプリと、非商用でデータを提供するオープンデータポータルも提供している。データは、政府機関や政策立案者がエネルギー転換の状況を理解し、脱炭素戦略を議論するために広く利用されている。
Transitionのプリンシパルを務めるクララ・リカール氏は「Electricity Mapsが炭素強度とエネルギーミックスの真実の情報源となることに成功したのは、研究者や政策立案者などに広く利用され、世界的にインパクトを生み出しているオープンソースのデータセットに因る」と述べた(*1)。
(#1)炭素強度とは、エネルギー消費あたりの二酸化炭素排出量を指し、炭素を含有する燃料をどのくらいエネルギーとして使ったかを示す指標。
(#2)カーボンフットプリント…、製品・サービスのライフサイクルにおける温室効果ガス排出量を二酸化炭素量に換算し表示するもの。
【参照記事】*1 Electricity Maps「Electricity Maps raises €5m to accelerate the
data-driven decarbonization of electricity」
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