アクサ・インベスト・マネージャーズ株式会社「新型コロナウイルスのマクロ経済および運用戦略への影響に関するアップデート(COVID-19 Impact: AXA IM’s macroeconomic and investment strategy update)」を3月26日付、4月2日付で公開した。金融商品取引法で定義されている適格機関投資家を対象にした顧客向け電話会議の内容を要約している。
この中で、AXAグループ・チーフ・エコノミストのジル・モエック氏は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により「グローバル経済の正常化は第3四半期以前には始まらないというのが当社の基本シナリオ。全ての主要経済地域で新型コロナウイルスの感染拡大がピークを過ぎなければ、バリューチェーンを通じた需給の崩壊のないグローバル貿易は復活しない」((3月26日付))との見解を示し、「今年上期は米国とユーロ圏で急速なリセッションに突入する可能性がある。米国の2020年のGDP成長率は年率ベースで前年比0.4%減、ユーロ圏は2.1%減」と予想する。
20年下期の回復は「デフォルトや失業率上昇を抑えこめるような強力な景気刺激策による。米国、英国、ドイツでは、GDPの5~10%におよぶ財政刺激策を導入しようとしています。財政赤字の大幅な拡大(国債の増発)が予想されるが、中央銀行の大幅な金融緩和策により吸収される」と見込む。特に、FRB(米連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)の緊急対策について「FRBは無制限の量的緩和(QE)を打ち出し、初の社債購入や中小企業への直接貸し付けも緊急対策に含めている。ECBは債券購入に関する制限を撤廃し、年内の1兆ユーロ以上の債券追加購入を確約した。まさに歴史的な決定」と評価した。
4月2日付で、モエック氏はイタリアなどで実施されている感染封じ込めのための外出規制について「外出規制のピーク時には、いかなる先進国でも生産が30-35%減少する。1カ月の外出規制で、GDP成長率は年率で2.5-3%押し下げられるとみられ、外出規制が6週間続いた場合(2次的な被害が食い止められている場合を想定)には3.75-4.5%押し下げられる」と予想。「重要なことは、GDP成長率の低下が今年の第2四半期までにとどまり、その後回復するかどうか」が重要と説いた。
中国については「同国の購買担当者PMIによれば、中国経済はもはや縮小していない。しかし、経済の回復は抑制されたものであり、一部では再感染を防ぐために感染防止策が再び取られている。結局、世界経済が正常化するためには、全ての主要国で新型コロナ感染のピークを過ぎることが必要であり、それまでは世界貿易は停滞を続ける」と楽観しない。
米国に対しては「外出禁止令が出るのが遅かったため、感染防止策が長く継続され、感染拡大のスピードはイタリアを上回っている」と現状を危惧。さらに「米国の財政政策発動の威力は欧州に比べると弱い。米議会では所得支援政策は一から進める必要があり、実施には時間がかかる。欧州では、企業に対する規制や就業中の失業給付などで労働者は企業に在籍することができるが、米国ではレイオフ(一時帰休)が唯一の選択肢であり、状況が改善した場合、雇用主は再雇用するか否かの判断を迫られる。このため、米国では所得の落ち込みが続く可能性がある」と懸念した。
各国の対策については「主要国の緊急政策対応は適切で、十分なサポートになっているが、中期的な問題(特に社債および国債の急膨張)を考える必要がある。中央銀行を通じた債務の相互化や事実上の債務相殺が検討されるべきだが、現時点では政策担当者にはこういった政策を検討する意欲は見られない」と厳しい見方を示している。
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