為替市場では円安が進んでいます。昨年末(2021年12月)に1ドル=115円前後で推移していたドル円は、2022年6月には1ドル=137円台に乗せ、現在(2022年7月1日時点)も135円を挟んで推移しています。
ドル高の背景には、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が利上げに踏み切ったことで日米金利差(米国債と日本国債の金利差)が拡大したこと、資源価格の上昇により貿易収支が赤字に転じたこと等が挙げられます。
FRBはインフレを理由に利上げを継続する姿勢を示しているため、日米金利差は今後も拡大傾向が予想され、ドル円相場も円安傾向が続くとみられています。そこで今回は、円安時の投資対象、平均リターンや主な商品や始め方を解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年7月1日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 日米金利差とドル円相場
- 円安時の投資対象と始め方
2-1.外貨定期預金
2-2.米国2年国債
2-3.日本株
2-4.都内のマンション
2-5.ホテルREIT - まとめ
1 日米金利差とドル円相場
日米金利差とドル円相場には、強い正の相関関係が確認されています。過去2年間の日米金利差とドル円の相関係数は、米国の2年債が0.86、5年債は0.95、10年債が0.84といずれも高い値です。つまり、金利差が拡大するとドル高に、金利差が縮小するとドル安に、為替が動く可能性が高いということを示唆しています。
FRBは高インフレを背景に利上げを継続する姿勢を示している一方、日本銀行は6月の金融政策決定会合で大規模金融緩和政策の維持を決めました。そのため、日米金利差は今後も拡大傾向となりそうです。
2 円安時の投資対象と始め方
ここでは、今回の円安時に有効な投資対象や始め方を解説します。
2-1 外貨定期預金
日米金利差の拡大からドル円は円安基調にあるため、米ドル定期預金は円安時に有効な投資対象と言えそうです。ドル預金は銀行で始めることができます。ネット銀行は、為替の売買時にかかる為替手数料が9~25銭とメガバンクなどと比較し低いことに加え、預金金利が高めに設定されているため便利です。
なお、定期預金の期間については、3~6カ月物をロール(繰り返す)するようにしましょう。預金金利の上昇が期待できるためです。
ネット銀行のじぶん銀行では、米ドル1カ月定期預金金利10%(従来2%)のキャンペーンを2022年8月2日まで実施しています。円普通預金からの初回預入限定でさらに5%が上乗せされ、1カ月の預金金利が15%の利率が適用されます。
2-2 米国2年国債
米国国債も円安時に有効な投資対象と言えます。
米国国債には期間が2年、3年、5年、7年、10年、20年、30年債などがありますが、現在のような金融引き締め環境にある場合には、2年国債が適しています。それは、利率が引き上げられる可能性があるためです。
債券は、償還までの期間が長いものほど金利上昇に対する価格変化が大きく、元本割れのリスクを伴います。
金利変化に対する価格感応度をベーシスポイントバリュー(0.01%金利が変化に対する債券価格の変化幅)といいます。2022年6月21日時点のベーシスポイントバリューは、2年国債が1.8セント、10年国債が8.6セント、30年国債が19.67セントです。10年国債の価格感応度は2年国債の4.77倍、30年国債については2年債の10.8倍です。
米国債は、証券会社で投資できます。最低投資金額はネット証券が低く、SBI証券や楽天証券などでは額面100ドル以上100ドル単位です。
証券会社で販売されている債券の多くは既発債です。既発債に投資する際には、経過利子(前回の利払い日から、受け渡し日分の利息相当額)が発生し、受け渡し金額は経過利息分が額面相当額に加算されます。経過利息が気になる場合には、ストリップス債(割引債)を選択するようにしましょう。
2022年6月22日時点の米国2年国債利回りは、3.19%です。2年国債は債券価格の変動が小さいため、円換算収益は為替の影響を大きく受けます。円換算収益は、ドル高の影響により過去1年で約17%、過去2年では約20%です。
2-3 日本株
円安はドル換算価格を引き下げる効果があるため、輸出関連やインバウンド関連銘柄に投資妙味がありそうです。輸出関連では、自動車、半導体等電子部品などの関連企業で業績の伸びが期待できます。
2022年5月貿易統計(速報)によると、輸出額は前年同月比15.8%増と15カ月連続で増加しました。鉄鋼、鉱物性燃料、半導体等電子部品等が増加に寄与しています。これらの関連銘柄は、今後も業績の伸びが期待できそうです。このほか、自動車関連も円安の恩恵を受ける銘柄として挙げられます。
また、外国人観光客の受入れ再開を背景に外国人旅行者の増加が予想されており、観光関連や百貨店などの小売業といったインバウンド関連銘柄が注目されそうです。
株式市場では、2022年に入りインバウンド関連銘柄の上昇が目立っており、鉄道や輸送、小売り関連銘柄の上昇が鮮明です。特にインバウンド消費への期待が高まっています。外国人観光客にとって円安は商品価格の値下がりにつながるためです。
百貨店銘柄の例としては、三越伊勢丹HD(3099)や高島屋(8233)の株価の年初来上昇率(2022年6月24時時点)は20%超と、TOPIXのマイナス6.3%、日経平均株価指数のマイナス8%を大幅に上回っています。
投資金額は、三越伊勢丹HDの株価1,063円(6月24日)を基準とした場合、日本株の投資単位は100株のため106,300円+手数料(消費税込み)です。
株式の購入は、証券会社でできます。証券会社は、対面型の証券会社とネット証券の2つのタイプがあり、ネット証券は手数料が低く設定されていることや、品揃えが多いため、ネット操作に慣れている方には使いやすいと言えます。
2-4 都内のマンション
外国人投資家の目からみると、円安下での日本の不動産は魅力的な水準にあるため、首都圏マンションを中心に人気が高まる可能性が高いと考えられます。
首都圏の新築マンション1戸当たりの平均価格は、2019年が5,980万円、2020年が6,083万円、2021年が6,260万円、2022年5月が6,088万円と推移しています。
しかし、ドルに換算すると、2019年が54.6万ドル(1ドル=109.44円)、2020年が66.0万ドル(1ドル=103.43円)、2021年が54.17万ドル(1ドル=115.12円)、2022年5月が47.6万ドル(1ドル=127.8円)と、低下しています。
参照:不動産経済研究所「首都圏 新築マンション市場動向2022年5月」
2-5 ホテルREIT
インバウンド需要が回復すると、ホテルの稼働率上昇が期待できるため、ホテルREITにも投資妙味がありそうです。
ホテルREITは年初より上昇基調にあり、年初来の上昇率(2022年6月21日時点)はインヴィンシブル投資法人(8963)が9.75%、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)が16.19%、いちごホテルリート投資法人(3463)が19.00%、森トラスト・ホテルリート投資法人(3478)が0.05%と、東証REIT指数のマイナス5.7%を大きく上回っています。
ホテルREITは東京証券取引所に上場しているので、株式と同じように証券会社で購入することができます。2022年6月22日時点の価格は、インヴィンシブル投資法人が39,300円、ジャパン・ホテル・リート投資法人が64,400円、いちごホテルリート投資法人が91,100円、森トラスト・ホテルリート投資法人が122,400円です。なお、取引単位は1株から可能です。
まとめ
ドル円は、米国の政策金利上昇による日米金利差の拡大から、2021年末比で約15%上昇しています。米国の政策金利は今後も引き上げられる可能性が高いため、日米金利差は拡大傾向にあると言えます。
円安傾向下では、ドル資産を保有したり、円安の恩恵を受ける株式やREITに投資したりすすると、資産を増やすことが狙えます。
今回解説した投資対象(除くマンション)のリスクは、株→ホテルREIT→米国2年国債→定期預金の順で低くなります。自身のリスク許容度に合った投資対象を選ぶようにしましょう。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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