ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ(ナティクシスIM)株式会社が9月30日発表した世界各国の退職後の状況を調べる「2020年リタイアメント・インデックス調査」で、日本は昨年に続き総合評価で23位。平均余命ではトップとなったが、老年人口指数と政府債務では最下位に。退職後の生活保障にとっての長期的脅威として、景気後退、金利、公的債務、気候、経済的平等などが挙げられている。一方、ナティクシスが実施した直近の世界の機関投資家を対象に行った調査で、機関投資家はESG(環境・社会・ガバナンス)投資への関心を強めており、64%の機関投資家が何らかの形でESGを投資戦略に取り入れていた。
調査は、退職後の生活保障が喫緊の社会および経済問題となっている主要先進国44カ国を対象に、退職後の生活に影響を与える要因を調査・評価した定例調査。前回同様、アイスランド、スイス、ノルウェーが総合評価でトップ3、続いてアイルランドが4位、オランダが5位。日本は23位にとどまった。退職後の資金指数(41位)と物質的な豊かさ指数(16位)のスコアが低下したため、総合スコアは昨年を若干下回った。
金融指数のなかでもスコアが最も大幅に低下した指標は金利で、5年平均実質金利がマイナスに低下した結果、スコアは1%に低下。また、銀行の不良債権、老年人口指数、ガバナンスの各指標のスコアも昨年を下回りました。政府債務指標と老年人口指数指標は調査対象国の中で最下位だった。
物質的な豊かさ指数も低下した。所得の質、国民1人当たり所得のいずれの指標も昨年に比べて低下した。一方、雇用指標は調査対象国の中で最高のスコアを付けています。幸福度、環境要因、水質、公衆衛生の各指標のスコアが上昇したため、生活の質指数は昨年に比べて改善。日本の幸福度指標は調査対象国の中で6番目に低く、これ以外では上位10カ国あるいは下位10カ国に入った指標はない。
日本の健康指数のスコアは比較的高くなっている。健康保険費指標が昨年に比べて改善しました。日本は、平均余命(1位)、健康保険費(8位)の両指標で10位以内に入った。同社の「(今後)何を心配する必要があるのか:What could possibly go wrong?」と題する調査は、20年のリタイアメント・インデックス調査を補足するもの。退職後の生活保障に対して長期的に最大の脅威となる原因として景気後退、金利、公的債務、気候、経済的平等、退職後の生活保障の現状を挙げる。
ナティクシスが実施した直近の世界の機関投資家を対象に行った調査によると、機関投資家はESG投資への関心を強めており、64%の機関投資家が何らかの形でESGを投資戦略に取り入れており、54%がESGはプラスにつながると回答。資産を組織の価値に見合ったものとするためにESG投資を行っている機関投資家の割合(57%)も、これに近い水準となった。さらに、10人中4人に近い投資家(37%)がヘッドライン・リスクの最小化手段としてESG投資を組み入れていたことがわかった。
同社北アジア代表を務める加藤欣司氏は「ESGテーマは、投資という観点だけでなく、社会的責任という点でも魅力的な機会であると引き続き当社は考える。コロナ危機下でESGに基づく投資は(市場の下落などに対する)耐性の強さを示しており、多くの投資家が強い関心を示した。ESG基準を織り込んだより多くの退職金制度が提供されることで、貯蓄の増加、年金プランの改善、そして退職後の生活保障の拡充につながると同時に、より持続可能な社会の実現に貢献することになる」と懸念している。
踏査は2019年10月から11月にかけて、アジア、欧州、北米、中南米、中東の企業・公的年金基金、財団・基金、保険会社、政府系ファンドなどの500の機関投資家を対象に実施。世界的な退職後の生活保障という観点で、資産運用者は個人、雇用主、機関投資家、政策当局をつなぐ中心的な存在といえる。調査は「資産運用業界は、年金資金を増やすために必要な運用を主導するだけでなく、世界的な退職後の生活保障にとって重要な意味を持つ課題への対応においても、主導的な役割を果たすべき」と主張する。
そのうえで「ESGテーマは、投資という観点だけでなく、社会的責任という点でも魅力的な機会。コロナ危機下でESGに基づく投資は(市場の下落などに対する)耐性の強さを示しており、多くの投資家が強い関心を示す。ESG基準を織り込んだより多くの退職金制度が提供されることで、貯蓄の増加、年金プランの改善、そして退職後の生活保障の拡充につながると同時に、より持続可能な社会の実現に貢献することになる」と指摘している。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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