アパート経営に興味が湧いたばかりの方にとって、どういう仕組みでビジネスが成り立っているのか、はじめに押さえておくべきことはどういうポイントなのか、知っておきたい方も多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、アパート経営へ向けて第一歩を踏み出すための超初心者向けの知識として、アパート経営の仕組みを中心に解説していきます。アパート経営の大まかな流れや支出の仕組み、注意点も紹介します。
目次
- アパート経営の仕組み
1-1.アパート経営の大まかな流れ
1-2.アパート経営の収入と支出
1-3.アパート経営の代表的な支出 - アパート経営の特徴
2-1.インカムゲインとキャピタルゲイン
2-2.レバレッジ効果 - アパート経営の注意点
3-1.アパート経営を始める際の手順
3-2.アパート経営の注意点 - まとめ
1 アパート経営の仕組み
アパート経営は不動産賃貸事業という事業形態となります。所有するアパートのひと部屋を賃借人に貸し、その対価として家賃を得ることで成り立つビジネスモデルです。全体の流れを知るために、アパート経営の大きな流れを追っていきましょう。
1-1 アパート経営の大まかな流れ
所有する部屋に入居者がいると、収入が得られることになります。入居者が部屋に入居すると、その賃料として家賃をオーナーに支払います。これに対して、オーナーは快適な居住空間を提供するために、物件の管理をします。
その後、入居者が退去すると、再び入居者を募集します。ただし、部屋が汚れていたり、破損・経年劣化があると修繕工事などを行い、次の入居者が快適に暮らせるようにオーナーが環境を整えていきます。
所有するアパートの部屋数が10室あれば、10室で同様のことを行い、オーナーは家賃収入を得ていきます。これがアパート経営のおおよその仕組みとなります。
なお、アパート経営を始めるには、新築アパートを建築する方法や中古アパートを購入する方法など、様々な手段があります。以下、それぞれの大まかな手順を確認してみましょう。
新築アパートを建築する場合
- アパートメーカーや企画会社に問い合わせる
- 建築プランが作成される
- 施工会社が着工する
- アパートが完成する
- 物件の引き渡しが行われる
- 経営を開始する
【関連記事】アパート経営の始め方と必要な資金は?土地あり・土地なしのケースで解説
中古アパートを購入する場合
- 不動産情報をチェックし、比較検討をする
- 候補のアパートを見学しにいく
- 購入の申し込みを行う
- 資金を準備する
- 売買契約を締結する
- 物件の引き渡しが行われる
- 経営を開始する
【関連記事】中古アパート経営のメリット・デメリットは?注意点やリスク対策も
1-2 アパート経営の収入と支出
アパート経営の大まかな流れを把握したところで、利益が生まれる仕組みを解説していきます。主にアパートを経営では、下記のような収入と支出があります。
アパート経営の主な収入 | アパート経営の主な支出 |
---|---|
・毎月の家賃 ・入居の際に支払われる礼金 |
・物件管理にかかる管理費用 ・入居者が退去した後に必要な原状回復費用 ・建物の外壁や屋根などの維持にかかる修繕費用 ・仲介会社に対して支払う広告宣伝費 ・物件購入代金の返済 |
アパートの主な収益ポイントとなる家賃はエリアの賃貸需要・築年数・間取り・周辺相場などによっておおよその上限が決まり、オーナーの努力で改善できるポイントは多くありません。そのため、アパートを取得した後は、かかる経費をいかに削減していくかという視点も重要となります。
1-3 アパート経営の代表的な支出
アパート経営で支出としてかかる費用について詳しく紹介します。
管理費
入居者が快適に暮らせるように、アパートの清掃を行ったり、家賃の回収などをスムーズに行う必要があります。
この管理業務には、オーナー自身で行う自主管理と、管理会社に委託する委託管理の2つの方法があります。管理を管理会社に委託した場合は、管理費がかかります。管理費の設定は管理会社によって異なり、ひと部屋◯円や、家賃×◯%などとなっています。
修繕費
外壁や屋根の工事、玄関や廊下など共用部分のメンテナンスや工事、居室内の内装工事、設備の交換などにかかる費用のことです。
入居者が快適に暮らせるようにするのが第一の目的ですが、資産であるアパートの劣化を防ぐ目的もあり、アパート経営には欠かせない支出です。
広告宣伝費
入居者を獲得するためには、仲介会社に入居者募集の情報を提供して入居者募集を行います。この際の契約の方法は、媒介契約と代理契約の2種類あります。
管理会社に委託している場合は、管理会社が代行して仲介会社とやりとりをしてくれます。通常は、入居が決まると広告費として請求される仕組みになっています。不動産ポータルサイトやWEB広告などに、入居者募集の広告を掲載するためです。
ローン返済額
アパートを購入した際に金融機関から融資を受けた場合、その元本を利子とともに毎月返済していきます。この原資となるのが家賃収入です。
なお、アパートローンの返済は厳密には支出ではなく、返済した分だけ純資産が増えることになります。確定申告時にも利息分は経費として計上可能ですが、返済したローンの元本については計上することはできません。
税金
アパート経営には様々な税金が課されています。主に、必要な税金は下記になります。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 不動産所得税
- 印紙税
- 登録免許税
- 消費税
このうち、毎年かかる税金は固定資産税と都市計画税で、不動産所得税や印紙税、登録免許税はアパートを取得したときにかかります。また、個人事業主の消費税は課税売上高(家賃収入を含む)が1,000万円以上になると納税義務が生じます。
そのほかの支出
このほかにもアパートを経営するにはさまざまな支出があります。下記で確認してください。
- 通信費
- 借入金利子
- 水道光熱費
- 保険料
- 消耗品費、など
2 アパート経営の特徴
アパート経営の仕組みと大まかな流れが把握できたところで、アパート経営の特徴を紹介します。アパート経営を始める際の知識として覚えておきましょう。
2-1 インカムゲインとキャピタルゲイン
アパート経営の収益には、大きく分けてインカムゲインとキャピタルゲインの2種類があります。両社の違いをみて行きましょう。
- アパート経営のインカムゲイン:家賃収入
- アパート経営のキャピタルゲイン:売却益
アパートは経年劣化するもので、購入時の価格よりも売却価格の方が低くなっていきます。仮に家賃収入を定期的に得られていても、売却時に大きく値下がりをしてしまうことで、トータルの収益がマイナスになることがあります。
このような事情から、アパート経営を行う際はインカムゲインとキャピタルゲインの両方の総和がどのように推移するのか、二つの視点でシミュレーションを行うことが重要となります。なお、アパート売却時の戦略立てを行うことを、出口戦略と言います。
2-2 レバレッジ効果
アパート経営でレバレッジ効果が働くのは、物件を所有する際に金融機関の不動産投資ローンを利用できるからです。
一例として、手持ち資金が500万円だった場合をみて行きましょう。ローンを活用しなければ手に入れられるのは500万円の不動産ですが、500万円を頭金に3,500万円の融資を得られた場合は4,000万円の物件を購入することができます。
500万円の物件と4,000万円の物件がともに利回りが10%だった場合、それぞれに生み出す年間収入は下記のようになります。
- 500万円の物件:年間の家賃収入50万円
- 4,000万円の物件:手残りの家賃収入225万円(400万円-年間のローン返済175万円)
※融資年数を20年と仮定し、金利・事務手数料などの諸経費は考慮していません。
上記のように、同じ利回りの物件でもレバレッジ効果が得られることで、自己資金効率に大きな差が出てくることが分かります。
ただし、レバレッジ効果はプラスの側面だけでなく、マイナスに進むスピードも増加することになります。多くの融資を得てレバレッジをかけすぎると、大きな損失に繋がるケースもあるため注意が必要となります。
【関連記事】不動産投資ローンの頭金を少なくするメリット・デメリットは?
3 アパート経営の注意点
アパート経営をこれから始めるのであれば、注意点をしっかり確認することが大切です。
3-1 アパート選びは慎重に行う
アパート経営は投資資金も大きな金額になりやすい投資方法です。不動産会社に勧められるがまま購入したり、勢いに任せて購入することのないようにしましょう。
アパートを選ぶ際に比較検討する場合、下記の項目がポイントとなります。
- エリア
- 価格
- 利回り
- 間取り
- 設備・仕様
- 交通アクセス
- スーパーやコンビニ、学校などの周辺の環境
中古物件の場合は、築年数や入居率、経年劣化の状態なども検討項目となります。これらを慎重に検討し、シミュレーションなどを経てから物件を選択するようにしましょう。
【関連記事】不動産投資のシミュレーションで必要な基礎知識は?5つ紹介
3-2 リスクを把握して回避策を設ける
アパートを経営するにはリスクがあります。これらのリスクを把握して、回避策を実施したり、準備しておく必要があります。
アパート経営のリスク | 主な内容 |
---|---|
空室リスク | 入居者が退居し、部屋が空室になるリスク |
家賃滞納リスク | 入居者の経済的な理由などで家賃が支払われないリスク |
家賃下落リスク | 賃貸需要の減少により家賃が下落するリスク |
災害リスク | 台風や大雨、洪水、地震などの被害を受けるリスク |
資産価値下落リスク | 経年劣化や災害などによる資産価値の下落 |
金利変動リスク | ローン金利の変動によりキャッシュフローに影響を与えるリスク |
アパート経営が立ちゆかなくなることもありますので、リスク対策を施しつつ、トラブルが起きた際には適切に対応するようにしましょう。
まとめ
アパート経営は、所有するアパートを貸して得た家賃で、物件の代金を支払っていく仕組みです。そのため、毎月の家賃収入が継続的に得られなければキャッシュフローが破綻し、追加の投資資金を必要とするケースもあります。
このような事態を回避するためには、アパート経営を始める際の物件選びや、アパート経営を維持するためのリスク対策が大切なポイントとなります。
まずはこのような重要なポイントから押さえておき、実際の物件を比較したり、アパート経営会社のセミナーに参加するなどして、徐々に知識を蓄えていきましょう。
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倉岡 明広
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