家賃保証は、所有する賃貸用マンションが空室になると家賃に相当する額を補填してくれるサービスです。しかし似たようなサービスも多く、その仕組みや注意点を適切に把握できていない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、家賃保証の仕組みを解説し、メリットとデメリット、さらには注意点についても紹介していきます。
目次
- マンション投資の家賃保証とは
- マンション投資の家賃保証の仕組み
- マンション投資の家賃保証のメリット
3-1.空室が発生しても収入が得られる
3-2.赤字リスクを避けられる - マンション投資の家賃保証のデメリット
4-1.保証料が必要になる
4-2.契約できないこともある - マンション投資の家賃保証の注意点
5-1.家賃保証は満額ではない
5-2.不動産市場では敬遠されることもある
5-3.契約先によって内容が異なる - まとめ
1 マンション投資の家賃保証とは
マンション投資における家賃保証は、空室時の家賃を保証してくれるサービスのことです。不動産投資には空室リスクが伴い、空室になると家賃収入が得られないため、想定通りの経営ができない可能性があるのです。
こうした事態を防ぐために提供されているのが家賃保証のサービスです。家賃保証サービスには、次の3つのタイプがあります。違いを確認してみましょう。
家賃保証サービスのタイプ | 内容 | 契約先 |
---|---|---|
家賃保証 | 空室になったときに家賃が補填されるサービスです。空室保証とも言われます。 | 保証会社、不動産会社など |
滞納保証 | 入居者が家賃を滞納した際に、入居者に代わって保証会社が家賃を補填するサービスです。連帯保証人の代わりに、契約時に入居者が契約する仕組みです。 | 保証会社 |
サブリース | サブリースを担う会社が物件を借り上げて管理し、オーナーに毎月の家賃を支払うサービスです。入居者と直接の賃貸契約を結ぶのはサブリース業者となる点が大きな相違点です。 | サブリース会社、アパートメーカーなど |
今回は、家賃保証(空室保証)について解説していきます。サブリースについては下記の記事もご参考ください。
【関連記事】不動産投資、サブリース契約のメリット・デメリットは?契約時の注意点も
2 マンション投資の家賃保証の仕組み
家賃保証は保証会社との契約によって家賃が保証されるシステムですが、物件を管理する管理会社や仲介事業を行っている不動産会社、アパートを建設するアパートメーカー(そのグループ企業)などで行っているケースもあります。
保証内容は契約先の企業や、契約プラン内容によって異なりますが、概ね下記のような仕組みになります。
- オーナーが支払うもの:毎月の保証料
- 保証されるもの:空室が発生したときの家賃
契約内容により異なりますが、例えば家賃収入の80%まで補填される契約の場合、稼働率が70%まで落ち込んだ際に家賃収入の10%分が補填されるといった仕組みになります。空室が発生しても損失は最大20%で済むため、収入がゼロになるリスクを回避できるということになります。
サブリースとの違いは、物件の管理や入居者の募集などは自ら行う必要があることです。また、敷金や更新料、家賃、修繕費用などはオーナーの収支となります。サブリースの場合は、管理業務などアパート経営に関するすべてを含めて1部屋◯◯円あるいは家賃×◯%というような契約になります。
3 マンション投資の家賃保証のメリット
家賃保証の特徴は、空室になっても契約内容に応じて家賃相当額をオーナーが得られることです。これによってどのようなメリットがあるのか、解説していきましょう。
3-1 空室が発生しても収入が得られる
一棟アパート経営などと比べ、マンション投資は空室リスクが大きくなります。アパートの場合は複数の部屋があるため1部屋が空室になっても収入がゼロになることはありませんが、マンション投資を1つの部屋で運用している場合には収入がゼロになってしまうリスクが高くなります。
家賃保証を活用していると空室になっても家賃を補填してくれます。まだ運用している戸数が少ない場合にも、家賃保証は収益が大きく減少してしまうリスクを低減する効果が高いと言えます。
3-2 赤字リスクを避けられる
マンションを所有していると管理組合に対して管理費と修繕積立金を支払う義務があります。また、投資用マンションを金融機関から融資を得て購入した場合は、毎月ローンの返済をすることになります。
つまり、マンション投資によって収入が得られない場合は管理費や修繕積立金、ローン返済を貯蓄などから捻出しなければならず、キャッシュフローがうまく回らない場面が出てくることがあるのです。
さらに、一年を通して固定資産税や都市計画税などの税金を納める義務もあります。家賃収入が得られなければこれらの税金も蓄えから捻出しなければならず、マンション投資の収支は赤字になってしまいます。
一方、家賃保証によって家賃を補填していると、このような赤字リスクを避けることができます。投資のリスクを低減し、できるだけシミュレーションに近い運用を行いたい場合に、家賃保証のメリットは大きいと言えるでしょう。
4 マンション投資の家賃保証のデメリット
一方、家賃保証にはデメリットもあります。今回は代表的な2つのデメリットを紹介します。
4-1 保証料が必要になる
家賃保証を受けるためには、満室状態でも毎月保証料を負担することになります。つまり、家賃保証をつけることで支払う経費が増え、本来の利益が得られないことにもなります。
保証料の負担額は、保証会社の契約プランによって異なりますが、通常は家賃の◯%という形で毎月支払います。そのため稼働率を想定して、保証料の負担とのバランスを考慮しながら判断する必要があります。
4-2 契約できないこともある
家賃保証は、オーナーが希望すればどのマンションでも契約できる訳ではありません。それはマンションの状態がそれぞれで異なるからです。例えば、築年数が経っていて入居率の悪いマンションの家賃保証をした場合、保証会社は家賃を補填し続けるリスクがあるからです。
そのため通常、家賃保証の契約は数年ごとに見直しされます。その際のマンションの状態や入居率によって、保証料が上昇したり、補填額が減少したりすることになります。さらにマンションの状態に不備があれば、契約自体を断られるケースもあります。
5 マンション投資の家賃保証の注意点
これまで家賃保証のメリットとデメリットを解説してきましたが、それらを踏まえて代表的な3つの注意点を紹介していきます。
5-1 家賃保証は満額ではない
契約内容によりますが、家賃保証では家賃の満額が補填される訳ではありません。通常は家賃収入の80%~90%が保証範囲になっています。90%以上の稼働率があれば、家賃保証のための保証料が無駄になる可能性があると言えるでしょう。
家賃保証を導入することで空室時の収入を補填してもらっても、収入の最大値が減少することを覚えておきましょう。
5-2 不動産市場では敬遠されることもある
入居者がいるオーナーチェンジ物件として売却する場合、家賃保証がついていることで買主候補に敬遠されることもあります。
家賃保証がついていると、退去しても家賃が保証される可能性があるため買主候補が早期に現れることもあります。しかしその一方で、入居者がいる状態で家賃保証がついていると保証料が無駄に感じるオーナーもいるためです。
5-3 契約先によって内容が異なる
ひと口に家賃保証といっても、基準にばらつきがあるためサービスを提供する保証会社や不動産会社などによって契約プランが異なります。家賃を保証してくれるものだと思って契約しても、実際には「免責期間がある」「保証期間が限定されている」など、想定していた内容と異なることもあります。
そのため、安易に契約するのではなく、提案されている家賃保証の条件や契約内容をしっかり確認することが大切です。契約書を読んでもわからない点は、そのままにしないで担当者に聞くようにしましょう。
家賃保証を契約する際に、主に確認するポイントは下記になります。
- 保証料
- 補填額(補填割合)
- 保証期間
- 保証開始時期
- 契約期間
- 契約更新時の条件
空室対策は収支に大きな影響を与え、マンション投資のパフォーマンスを大きく左右します。家賃保証が空室対策として適しているかどうかは、それぞれの物件で異なります。オーナーとして適切に判断しましょう。
まとめ
家賃保証の仕組みには、「家賃保証(空室保証)」「滞納保証」「サブリース契約」という3つのタイプがあり、今回はその中でも家賃保証について取り上げました。
家賃保証を契約するかどうかの判断は、所有するマンションの稼働率が大きなポイントとなります。契約内容にもよりますが、90%以上の稼働率があれば、家賃保証のための保証料が無駄になる可能性があります。
所有している戸数が少ない時のマンション投資は空室リスクが特に高く、家賃保証を導入するか否かは経営における重要な選択肢の一つです。ご自身の投資スタイルに合わせた判断をできるよう、比較検討してみましょう。
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倉岡 明広
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