不動産テックのサービスやスタートアップ企業は?5社の事例を紹介

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近年さまざまな業種でDXに代表されるようなデジタル化が進んでいますが、不動産業界も例外ではありません。仲介業者を通じた紙の契約書を介した取引のようにアナログで伝統的な取引形態が多く残る不動産業界には、テクノロジーの技術を取り入れて効率化する余地が大きいといえるでしょう。

不動産テックとは、そのようなテクノロジーを通じて不動産業界における改善や変革を目指す事業及び企業を指します。今回の記事では近年発展する不動産テックを、代表的な企業の事例と共に紹介します。

目次

  1. 不動産テックとは?
    1-1.不動産テックが発展する背景
    1-2.不動産テックにおける事業アイデアの例
  2. 不動産テックの5社の事例を紹介
    2-1.モゲチェック
    2-2.Creal
    2-2.すむたす売却
    2-2.Renosy(GA Technologies)
    2-2.管理ロイド
  3. まとめ

1 不動産テックとは?

不動産テックとは、不動産とテクノロジーを組み合わせてつくられた造語です。不動産業界をテクノロジーを導入して改善し、従来より優れた不動産物件やサービスの提供、便利な機能をもたらしたり、不動産業界で働く方々の業務効率化を促進したりする役割が期待されます。

1-1 不動産テックが発展する背景

IT技術の発展するなかで不動産業界における課題解決を進める動きが進むことにより、不動産テックは発展しています。1990年後半ごろからビジネスにおいて浸透したIT技術は、その後の20年余りで急速に発展しています。

AI技術やIoT、ビッグデータ分析などの新たな技術が急速に普及しました。また、従来と本質的な機能としては大きく変わらない部分でも、扱えるデータ量の拡大や高速化などが進んでます。

一方で、不動産業界はもともと旧来の業界慣行や取引形態が残っており、たとえば次のように効率化や変革の余地が大きい業界のひとつという見方もありました。

不動産業界における課題や非効率の例

  • 不動産価格の透明性が低く、仲介業者と個人顧客の情報の非対称性が大きい
  • 物件の管理に長期で手間・金銭的負担が大きい
  • 物件自体が(特に個人にとっては)高額で参入障壁となっている
  • 紙の契約書を交わす旧来の取引形態に寄る非効率
  • 物件の情報収集に手間がかかる(情報検索や内見など)

IT技術の発展により、以上のような課題を解決する余地が広がったため、不動産テックの領域で事業展開する事例も増えていると考えられます。

1-2 不動産テックにおける事業アイデアの例

近年発展するさまざまな技術を活用し、不動産業界における多様な領域で不動産テックは発展しています。具体的な企業の例は後半で紹介しますが、ここでは事業アイデアの例についていくつか紹介します。

不動産取引や価格の透明化

ITを活用して不動産価格の透明性を向上させて、適正価格での取引を促進する事業アイデアが見られます。上場株式のように取引を伴う公開価格が存在しない不動産では、価格情報を仲介会社が把握しやすい一方で、個人は情報の入手がしづらい状況でした。

現在ではそのような取引慣行を変革すべく、ビッグデータやAI技術を活用した公平性の高い価格査定をする技術などが発展しています。一部の不動産会社が取引の発展のために取り入れるほか、売買査定を主要事業とする不動産テックもみられます。

営業活動や商談・契約の効率化

従来の不動産業界は、対面でのコミュニケーション、紙でのアナログな資料・契約書の授受が多く見られていました。このようなアナログな業務によって営業員は資料や書面を作成したり、アポイントの調整、商談対応に大きな負担がかかったりしていました。また、顧客側にとっても商談や契約への対応は手間がかかり、購入検討から契約締結までに時間がかかる原因のひとつとなっています。

現在ではZOOMなどの会議システムや商談ツール、電子契約書の発展などにより、対面でのコミュニケーションなしに商談を進めやすくなりました。商談や営業・契約締結に関する業務の効率化が期待されます。

また、不動産契約についてはDXの流れに伴って関連する法律の改正も行われており、例えば、ITを活用して重要事項説明を行う「IT重説」があります。重説(重要事項説明)は、従来は対面で行われるものでしたが、オンラインなどの技術が発達したことで2017年に賃貸借契約でスタートし、2021年3月30日からは不動産売買取引でも導入されるようになっています。

【関連記事】IT重説で不動産売買を行う時の注意点は?事前の準備や手順も解説

IoTを活用した設備の改善

物件の品質そのものも、不動産テックにより改善が進められています。たとえばIoT技術を導入して、便利な設備を備えた物件が散見されます。IoTとはモノとITを組み合わせた技術のことです。

たとえば、スマートフォンを通じて遠隔から物件内のさまざまな設備を操作する機能、カギの開閉をスマートフォンでできる機能などがあります。不動産テックを通じて、入居者は従来より便利で快適な生活が可能となるのです。

ローンシミュレーション

不動産を購入するときには、しばしばローンを活用します。不動産購入時に検討可能な融資先は多数ありますが、個人にとってはどの金融機関や融資サービスを利用すべきか判断が難しいという事情がありました。

近年はAIやビッグデータなどを活用して、個人の属性や購入予定の物件情報などをもとに適したローン借入先の紹介や、ローンシミュレーションの生成などを行うサービスがみられます。従来は、不動産経営や物件取得において手間になりがちだった融資の準備をスムーズに進められるようになりました。

【関連記事】不動産投資ローン診断「インベース」の評判・口コミ

VRを活用した遠隔での内見

不動産は、従来現地に行かなければ物件の品質が確認できないのがネックでした。遠隔地の物件を取得する場合、内見は顧客にとって大きな負担になります。最近は、VRや動画等を活用して物件の内装をチェックできるサービスや機能を持つ不動産会社も増えています。

現地での内覧の完全な代替とはならないものの、初期的なチェックをするうえでは便利です。自宅に居ながらにして、大まかに購入物件の候補を絞ることができます。

2 不動産テックの5社の事例を紹介

続いては、実際に不動産テックを活用して事業を発展させている企業を5つ紹介します。

  1. モゲチェック
  2. Creal
  3. すむたす売却
  4. Renosy(GA Technologies)
  5. THIRD

それぞれの不動産テックの活用状況について詳しくみていきましょう。

2-1 モゲチェック

モゲチェックは、株式会社MFSが提供する住宅ローンのオンラインサービスです。モゲチェックのWebサイトでは、利用者の情報を入力すると、システムがその人の希望に合った住宅ローンをランキング形式で表示できます。

住宅購入時における便利なローン選びは、しばしば利用者の悩みのタネとなりがちですが、モゲチェックならAIやビッグデータを活用して自宅にいながら簡単に住宅ローン選びが完了します。

住宅ローンシミュレーションやローン借入の成功確率を教えてくれるサービスがあるほか、プロフェッショナルが実際のローン契約締結までの手続きをサポートやアドバイスもしてくれます。

不動産投資ローンに利用できる「インベース」も

「インベース(INVASE)」は、モゲチェックと同じ株式会社MFSが提供する不動産投資ローンのオンライン借り換えサービスです。不動産投資ローンの借り換え手数料は成功報酬型となっています。

不動産投資ローンの平均金利削減額実績・約450万円という実績があり、手数料は金利削減額に対して10%という成功報酬制のため、自己資金ゼロでのローン見直し実行を行うことも可能です。借り換え金利は、変動金利1.575%から案内してもらうことも可能ですので、毎月のローン返済が気になる方は一度無料診断を検討してみると良いでしょう。

2-2 CREAL(クリアル)

ESG不動産投資クラウドファンディング「CREAL」

CREAL(クリアル)は不動産クラウドファンディングと呼ばれる不動産ファンドの販売や運営、調達資金を活用した不動産事業の運営などを行っています。

不動産クラウドファンディングとは、不特定多数の投資家から少額の資金をインターネット上で集めて、それを不動産事業に投資するファンド形式の金融商品です。投資家は賃料収入や開発・不動産売却に伴う収益を原資とした分配金を収益として受け取れます。

現物を購入する不動産投資では多額の自己資金が必要となり、これが個人投資家にとっての参入障壁のひとつになっていました。一方、CREALの場合は1口1万円程度から不動産ファンドへの投資が可能であり、より手軽に少額から不動産投資にチャレンジできます。

CREALの分配金は不動産の賃料収入が原資となります。また、損失の発生時も一定割合までは運営会社が負担する仕組みを採用するなど、投資家の投資元本を守る仕組みが構築されています。

※CREALでは、下記ページ経由で新規に投資家登録やファンドへの投資を行うと最大50,000円のAmazonギフト券がプレゼントされるキャンペーンを開催中です。詳しくはCREALのキャンペーンページでご確認下さい。

2-3 すむたす売却

すむたす売却は、米国で発展著しい不動産テック領域のひとつ「iBuyer」に似たビジネスを手がける企業です。iBuyerは、不動産会社が売り手から直接物件を買い取り、迅速で効率的な取引を実現する仕組みです。

不動産仲介業者が買い手を見つけるプロセスが省略される分、迅速な取引が期待できます。すむたす売却によると最短2日で物件売却が可能です。不動産査定ではAIを活用して、公平で納得感の高い価格提示ができます。

査定にテクノロジーを導入することにより、査定にともなう人的コストの削減効果なども期待できます。すむたす売却の大まかなプロセスは下記の通りです。

  1. Web上で物件情報を入力し、価格を簡易査定
  2. コンサルタントにZoomなどで無料相談
  3. 訪問査定
  4. 売却方法を決定
  5. (すむたす売却に売る場合)売買契約を締結
  6. 決済・現金の振り込み

ここまではすむたす売却の特徴的な仕組みである「買取」にフォーカスしましたが、従来型の取引モデルに近い「仲介」を選択して、より高値での売却にチャレンジすることもできます。所有者が希望する形で不動産売却を検討できるのが、すむたす売却の特徴です。

【関連記事】アメリカ不動産テックで注目される「iBuyer」の仕組みは?日米における不動産流通の違いも

2-4 Renosy(GA Technologies)

GAテクノロジーズ「RENOSY」

Renosyおよび同サービスを営むGA Technologiesは、さまざまな部分にIT技術を取り入れて、不動産投資事業を展開している会社です。たとえば、不動産の売買や価格提示ではAIを取り入れて不動産価値をスコアリングするなどして、より確度の高い物件の厳選や公平性の高い価格提示などに努めています。

同社は、営業活動にもITを積極的に取り入れているのが特徴で、顧客への案内や提案などの多くの部分をリモートで実施可能です。営業員と利用者の双方の負担軽減を実現しています。

投資開始後には、物件のメンテナンス状況や入金状況、入居状況などを専用アプリで一元管理が可能です。事業拡大に関する意思決定をシミュレーションでサポートしたり、確定申告をスムーズに進めるうえでもアプリが役立ちます。

2-5 管理ロイド

管理ロイドは、株式会社THIRDが運営する物件管理の効率化を実現するサービスです。いわゆるBtoBのサービスなので個人が目に触れる機会は限定的ですが、ビル管理・建物管理の会社の業務効率化や管理品質の向上に役立っています。

管理ロイドは、AIやモバイルアプリを介して物件管理に伴うタスク管理を可能とし、従来現場の負担要因となっていた報告書作成の削減や作業状況の遠隔管理を実現します。

ペーパーレス化や建物管理の業務効率化につながります。また、点検の抜け漏れ・報告書の不備に起因するミスなどをなくすことで、管理品質の強化にも有効です。

3 まとめ

不動産業界にはアナログな慣行が残っている分、IT技術を活用した改善の余地が豊富にあります。不動産テックは、IT技術を活用して不動産業界に変革をもたらす業態や企業です。

AIやビッグデータ、IoTなど先進技術の活用により、多くの領域で従来よりも便利で効率的なサービスや機能が利用可能となっています。

不動産テックが発展すれば、不動産売買や管理がよりスムーズに手間なく行えるようになるでしょう。また、自宅売買を検討している方、賃貸に住む方など、不動産に関わるさまざまな方に対して、今後も発展が期待される分野であると言えます。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。