不動産投資に活用できるAIサービスは?査定や売却、利回りシミュレーターも

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さまざまな分野でAI技術の活用が進んでおり、ビジネスや日々の暮らしが効率的かつ便利になってきたと感じている方も多いのではないでしょうか。

不動産業界でもAIが導入され、売却やシミュレーションなどのシーンで目にするようになっています。

そこで今回のコラムでは、不動産投資で活用されている代表的なAIサービスについて紹介していきます。

目次

  1. AIができること
  2. 不動産投資×AIサービスで得られるメリット
    2-1.膨大なデータを不動産査定に活用できる
    2-2.コスト削減やスピードアップが図れる
  3. 不動産投資×AIサービスの注意点
  4. 不動産投資で活用できる主なAIサービス
    4-1.価格・利回りシミュレーター
    4-2.キャッシュフローシミュレーター
    4-3.AI不動産査定
    4-4.AIチャットボット
  5. まとめ

1 AIができること

AIとはArtificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)の略で、日本語では「人工知能」と言われます。総務省の「情報通信白書(令和元年版)」では、確立されている定義はないものの、「人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術といった広い概念で理解されている。」としています。

AIの基本的な仕組みは、与えられたデータを学習し、蓄積された膨大なデータから特徴や規則性を導き出していくことです。それによって、具体的に下記のようなことが高い精度でできるようになります。

  • 検索・探索
  • 解析・分析
  • 将来の予測
  • 画像認識
  • 音声認識、など

例えば、不動産は長い期間所有したり、運用することになります。AIによって膨大な過去の取引データや地価推移などを解析し、将来のリスクを回避したり適切な不動産運用に繋がったりなどの活用方法が期待されているのです。

2023年時点、不動産投資にもAIが活用されるようになっています。具体的にどのようなメリットがあるのか、次の項目で見ていきましょう。

2 不動産投資×AIサービスで得られるメリット

AIはこれまで人間が行ってきた頻雑な業務を行うことができ、業務効率化が図られるなどのメリットがあります。この項目では、不動産投資でAIサービスを活用することで得られる具体的なメリットについて解説していきます。

2-1 膨大なデータを不動産査定に活用できる

不動産を売却する際は、不動産会社に査定をしてもらいますが、査定価格を算出するには類似物件の成約事例を参照することがあります。これを取引事例比較法といい、投資用不動産の査定でもしばしば用いられる方法です。

このとき、情報が多いほど市場に合致した価格設定ができます。しかし人間の能力には限界があり、膨大な不動産情報をすべて参照するということは現実的ではありません。

その点、AIは膨大なデータを解析して必要な情報を抽出することが得意なため、数百万件、数千万件の情報を学習することもAIなら可能なのです。

AI技術を導入することで、より多くの物件の情報からスピーディに査定価格を算出することができます。

2-2 コスト削減やスピードアップが図れる

AIの処理スピードは速く、人間の能力では数十時間かかるようなことも、数十秒で可能になります。

先述の例で言うと、査定価格をつける際に過去の成約事例を収集する作業を行います。この際、人間が1日で収集できるのは数十件程度ですが、AIなら膨大なデータから数万件の情報を取り出すことができます。つまり、これまで人間が時間をかけてやっていた情報収集やそれをもとにした分析が、AIを導入することで一瞬でできるようになるのです。

不動産会社に訪問査定を依頼した場合、査定価格が提示されるまでには1週間程度の期間が必要です。しかしAIを活用すれば、早ければその場で、遅くても2〜3日後には査定価格の算出が可能です。

不動産は需要と供給によって価格が変動するものです。そのためAIを活用して時間をかけずに適正価格を設定することで、よりスピーディな売却が可能になります。また、人間が行う作業をAIが担うことで、人件費などのコストダウンにもつながるのです。

3.不動産投資×AIサービスの注意点

2023年時点、不動産業界におけるAIサービスの課題はいくつかあります。代表的なものとしては下記のような点です。

  • 不動産の個別性に対応しきれていない
  • 参照データが不正確、もしくは乏しい場合がある
  • 取引数の少ない地方エリアには対応していない場合も

不動産はそれぞれエリアや劣化状況に違いがあり、個別性の高い資産です。間取りや日照条件などデータ化が難しい項目も多くあり、定量的な検証を得意とするAIとの相性が悪い面も少なくありません。

また、過去の取引事例についても東京都内のように物件数・人口の多いエリアであれば膨大なデータが蓄積されますが、地方など取引数が少ないエリアでは標準化がなされず、適切なデータを抽出できないケースもあります。

上記の課題から、不動産業界におけるAIの活用についてはその精度や利便性についてはまだ発展途上であるという見方をしている人もいます。不動産投資にAIサービスを活用する際は、どのような対象に活用するのか、また参照データの正確性は高いかなど、注意しておくと良いでしょう。

4 不動産投資で活用できる主なAIサービス

さまざまな分野で実用化されているAI技術ですが、不動産投資の分野でも実用化されているサービスがあります。具体的な例を紹介していきます。

4-1 価格・利回りシミュレーター

賃貸物件を購入する際に、物件価格や利回りが適正なのか判断するのはオーナー自身です。不動産会社の担当者が情報を提示してくれますが、不動産市場を詳細に把握していなければ判断は難しく、適正価格なのかどうか不安を持ちながら購入するケースもあります。

そのような場合に利用できるのが、オンライン不動産投資サービスINVASE(インベース)の「価格・利回りシミュレーター」です。

東京23区と横浜市、川崎市の50㎡以下の投資用区分マンションの物件情報約230万件をデータベース化しており、データを分析して妥当性の高い物件価格や適正利回りを提示するサービスです。

利用する際は、「所在地」「最寄り駅名」「駅からの距離(徒歩)」「築年数」「専有面積」「賃貸状況(賃貸中か空室か選択)」「所在階」「マンションブランド」「毎月の賃貸料」の8項目について入力して、「判定する」ボタンを押します。これでPスコアおよび当該スコアに対する適正利回りが算出され、さらに賃料を入れることで適正価格が計算される仕組みになっています。

Pスコアとは同サービス独自の分類で、下記の表のように賃貸の安定性と適正利回りの目安となる指標です。

Pスコア 賃貸の安定性 適正利回り
5.00 極めて高い 3.29%
4.00 非常に高い 3.60%
3.00 高い 4.00%
2.00 やや低い 4.57%
1.00 低い 5.53%

投資先を検討しているケースや、現在運用している物件を評価する際などに適正価格および適正利回りを知ることができるため、判断材料として活用することができます。

【関連記事】インベース(INVASE)の不動産投資セミナーの内容は?体験レポート

4-2 キャッシュフローシミュレーター

高額な賃貸物件を購入するには、事業計画を作成して金融機関から融資を得ることが通常です。その際、実際に不動産投資の収支だけでローンの返済がどれくらいできるか、適切にシミュレーションすることができると将来の予測がより正確になります。

オリックス銀行が提供する「キャッシュフローシミュレーター」は、最長50年間のキャッシュフローをシミュレーションするサービスです。検討中の投資用不動産を登録することで、2億件超の不動産データに基づいて将来の賃料や空室率を予測し、さらに借入希望条件を組み合わせた上で、収支を算出していきます。

賃料の将来予測もグラフでわかりやすく、人口動態や商業に関する各種統計データ、スーパーやコンビニなどの周辺施設のほか、近隣のマーケットリポートも視覚的に確認することができます。

4-3 AI不動産査定

不動産を売却する際、適切な価格を設定することが重要です。これまでは不動産会社の担当者がそれまでの経験をもとに査定価格をつけることが大半でしたが、AI査定を導入することでスピーディに適正価格を設定しやすくなります。

例えば、SRE不動産では、ソニーグループのディープラーニング(深層学習)技術と、SREホールディングスが持つ不動産査定のノウハウを組み合わせた不動産価格推定エンジンによって高精度かつ根拠のあるAI査定を行います。

データは下記の項目で保有しており、独自の価格推定アルゴリズムによって推定価格を算出していきます。

  • 同じマンション内の流通状況、市場動向
  • 階数、専有面積、築年数、間取り、バルコニー方向などの住居条件
  • 駅からの距離などの立地条件
  • 住居中、空室、賃貸中などの入居状況、など

アルゴリズムの改善を継続的に行っているほか、推定価格・推定精度については週1回の頻度で更新しています。このように最新のデータを自動的に学習しているため、常に最新の推定価格を算出することが可能なのです。

なお、SRE不動産ではAIによる価格設定をそのまま提示するのではなく、個別の条件や状態、オーナーの希望などを加えて査定価格を算出できることも特徴的です。よりオーナーの意向に合わせた、また不動産市況に合わせた査定価格の設定が可能になっています。

【関連記事】SRE不動産(旧ソニー不動産)のAI査定の仕組みは?メリット・デメリット、他社との比較も

4-4 AIチャットボット

AIチャットボットは問い合わせに対してAIが自動で回答するシステムです。入居者からの対応をAI搭載のチャットボットで行うことで、管理業務の負担を軽減することができます。

例えば、AIシステムを導入している管理会社と契約することで管理業務の効率化、コスト削減、入居者の満足度向上などにつながる可能性があります。

管理会社に対する入居者からの問い合わせの多くは似たような質問になるため、チャットボットで自動対応することで管理業務の頻雑さを減らすことができるのです。24時間で対応できるため入居者の不満や不安軽減に役立つほか、対応品質の均一化にもつながります。

まとめ

物件を購入する際の利回りシミュレーションやキャッシュフローシミュレーション、物件を売却する際のAI不動産査定、さらには管理業務の負担軽減につながるAIチャットボットなど、不動産投資のあらゆるシーンでAIサービスが活用できるようになっています。

一方、不動産業界におけるAIサービスの導入についてはまだ限定的な側面もあります。技術の発展・改善によってどのような形で不動産業界に変化が起きてくるのか、今後も注目していきたいトピックと言えるでしょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。