相続不動産が未登記だった時の対応方法は?手順や注意点を解説

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遺産の中に未登記の不動産が含まれていた場合、どのような手順で相続を進めれば良いのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。

未登記の不動産は不動産登記法による罰則対象となるうえ、売買や抵当権の設定ができないというデメリットがあります。そのため、相続人を確定した後、すみやかに法務局で登記手続きを行うことが大切です。

この記事では未登記の不動産を相続する手順と注意点をお伝えしていきます。相続不動産が未登記だったことが発覚しお困りの方は、ご参考下さい。

目次

  1. 不動産の登記とは
    1-1.不動産の登記を確認する方法
  2. 未登記の不動産を相続する手順
    2-1.未登記の不動産の相続人、分割方法を決める
    2-2.自治体に所有権変更届を提出
    2-3.建物表題登記を行う
    2-4.所有権保存登記を行う
  3. 未登記の不動産でも相続放棄が可能
  4. まとめ

1.不動産の登記とは

不動産は1筆の土地、または1個の建物ごとに種類や面積などの基本的な情報や抵当権の設定有無など、権利に関する事項を登記により記録します。登記記録(登記識別情報・登記簿)は誰でも閲覧することができます。

日本では不動産の登記は申請主義となっており、当事者の申請や官公庁の嘱託(しょくたく)によって行われます。

不動産登記法第47条には「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない」と、登記には申請の義務があることが記載されています。

不動産登記法上、不動産は登記を行わなくてはいけませんが、何らかの事情で登記されていない「未登記」の建物や土地が存在し、未登記の不動産にも固定資産税・都市計画税が課されます。

不動産登記法第164条では「申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。」との規定があります。

未登記の不動産は罰金を科せられる可能性があり、売買ができない、抵当権を設定できないなどの規制があります。相続の段階で未登記であることが分かったのであれば、登記の手続きを行いましょう。

1-1.不動産の登記を確認する方法

建物や土地が登記されているかを確認するためには、法務局で登記事項証明書を取得し、登記されている事を確認しておきましょう。登記事項証明書は管轄の法務局の窓口で申請、またはオンラインの「登記情報提供サービス」で閲覧する事が出来ます。

なお、固定資産税の納税通知書でも登記の有無が分かることがあります。自治体から送付された通知書の「家屋番号」が空欄、又は「未登記」と記載されている場合には不動産が登記されていない状態です。

ただし、未登記の建物でも家屋番号が書かれていた事例があります。納税通知書と合わせて、法務局での確認も行いましょう。

2.未登記の不動産を相続する手順

未登記の不動産を相続するためには、不動産の相続人や分割方法を遺産分割協議又は遺言書によって話し合い、登記の名義人となる方を決定します。

自治体に所有権変更届を提出した後、「建物表題登記」で建物の登記を行い「所有権保存登記」で所有権の持ち主を登録します。

2-1.未登記の不動産の相続人、分割方法を決める

未登記の不動産を相続する方を、遺言書や遺産分割協議により決定します。遺言書があり、相続人全員が遺言書の内容に沿った相続を希望する際には遺言書通りに分割します。

遺言書が無い場合や相続人が遺言書に合意しない時には、遺産分割協議を行い相続人全員の話し合いにより分割方法や相続人を決める事になります。

不動産相続には、現物による分割(現物分割)、売却して現金化した後分割(換価分割)、相続人の1人が代表して相続、他の相続人には代償として相応の物やお金で分割(代償分割)、共同で相続する(共有分割)という4つの方法があります。

ただし、未登記のままとなっている物件は売却が出来ず、金融機関への担保設定もできません。売却して現金化した後分割する「換価分割」を検討する場合も、代表者が一度相続して登記した後の売却手続きとなります。

不動産の価額や条件、相続人それぞれの意見などを考慮し適した分割方法を選びましょう。これらの手続きによって相続人が確定する事により、登記名義人となる方が決まります。

家屋を取り壊す場合には、解体後30日以内に自治体に「家屋滅失届」を提出します。届出を行う事で、家屋が固定資産税課税台帳から削除され、翌年以降は固定資産税を支払う義務がなくなります。

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不動産の分割をする際は、査定や鑑定を行う

不動産の遺産分割では、不動産の価格査定や鑑定を行う必要があります。現物資産である不動産には決まった価格が存在せず、売却のタイミングや手段によって価格が変動するためです。

不動産価格は、不動産会社に査定を依頼することでおおよその売却価格を把握できます。ただし、不動産会社によって査定額が異なるため複数社の査定を受けることを検討してみましょう。

不動産一括査定サイトなどを利用し、複数社へ査定を行ってもらいましょう。査定価格だけではなく査定の根拠もヒアリングし、適正な価格査定が行われているか確認しておくことも大切です。

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2-2.自治体に所有権変更届を提出

不動産を相続する方が決まった後は有権変更届を所在地の管轄の役所に提出しましょう。(届の名称は市町村によって異なります。)

届出を行うことで、固定資産税・都市計画税の納税通知書が新たな所有者に送付されることになります。

変更届出書の他に、遺産分割協議書や遺言状の写し、戸籍謄本などが必要となります。自治体によって添付書類が異なるため、各自治体のウェブサイトを確認するか、または電話やメールで問い合わせましょう。

2-3.建物表題登記を行う

未登記の状態である不動産の登記を行います。不動産登記法第47条により、表題登記がない建物の所有権を取得した者は1ヶ月以内に登記の義務があるため、速やかに法務局で手続きを行いましょう。

まずは建物の所在地や構造・床面積などの基本情報を登録する「建物表題登記」を行います。必要書類は以下の通りになります。

  • 登記申請書
  • 建物図面・各階平面図
  • 建築確認書(検査済証)
  • 施工業者の工事完了引渡証明書・印鑑証明書・資格証明書
  • 建物の評価証明書
  • 相続に関する証明書(戸籍謄本、遺言書など)
  • 委任状(代理人に申請を行ってもらう場合)

施工業者の工事関連書類や、建築確認書(検査済証)などが見当たらない場合には、法務局に書類が無いことを伝え、上申書を提出します。

オンラインでも申請が可能で自身で行う事も出来ますが、新築の物件を登記するケースと違い、未登記の建物表題登記は手続きが複雑で、資料探しに時間や手間がかかる可能性があります。

登記手続きに難航する場合は、専門家である土地家屋調査士への依頼を検討しましょう。数十万円の費用がかかりますが、建物表題登記を行うことで所有権保存登記ができるようになり、不動産の売買や抵当権設定も可能となります。

2-4.所有権保存登記を行う

建物や土地の所有権が誰かを示す「所有権保存登記」を行います。所有権の登記は任意となっていますが、保存登記を行う事で不動産の売買や、金融機関の抵当権の設定が可能となります。

不動産の価額に応じて登録免許税がかかり、一定の要件を満たした場合には登録免許税が軽減されます。

登記は自身で法務局に申請(オンライン・郵送・持参)を行うか、司法書士に依頼します。

自身で行う場合は、登記申請書と住民票、登録免許税の軽減措置を受ける場合には家屋証明書が必要です。なお、代理人(司法書士を含む)が申請を行う時には委任状が必要となります。登記申請書は法務局のウェブサイトでダウンロードが可能です。

申請に不備があると手続きが遅れ、一旦申請を取り下げるといった手間がかかります。事前に法務局で確認したり、司法書士への依頼を検討し、スムーズな手続きとなるように進めて行きましょう。

3.未登記の不動産でも相続放棄が可能

未登記建物が遺産に含まれている場合でも、相続を放棄する事は可能です。通常の相続放棄と同様に家庭裁判所に申し立てることで相続放棄が出来ます。

全員が相続放棄を行った場合に財産の管理義務があるのと同様に、未登記不動産も維持管理を行う必要があります。

なお、相続放棄を行うと、未登記不動産だけではなく被相続人(亡くなられた方)のプラスの財産も放棄しなくてはいけないため、慎重に検討しましょう。

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まとめ

未登記の不動産は不動産登記法による罰則対象となるうえ、売買や抵当権の設定ができなくなっています。相続人を確定した後は、法務局で登記手続きを行いましょう。

未登記の不動産は、登記名義人となる相続人を決めた後に自治体へ所有権変更届を提出し、法務局で建物表題登記と所有権保存登記を行います。

なお、不動産登記には様々な手間や費用が発生します。相続手続きと並行して行いながら、これらの手間や費用を加味した相続分割となるよう、相続人同士で話し合いを進めて行くことも重要なポイントとなります。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。