マンション経営は金融機関の融資を活用することで手元資金が少なくとも検討することができ、資産運用の観点からもメリットがあります。特に取得単価の低い区分マンション投資は、不動産投資のなかでも比較的リスクの低い投資方法です。
しかし、不動産投資は運用資金が大きくなるほどリスクが高まります。不動産投資の初心者が始める前には、注意したいデメリット・リスクもあります。
本記事では、不動産投資の初心者の方向けに、マンション経営のメリットとデメリット・リスク、始め方の概略を解説します。
目次
- マンション経営のメリット
1-1.長期的な資産性収入を見込める
1-2.金融機関の融資を利用できる
1-3.団体信用生命保険に加入することができる
1-4.税金の軽減ができる場合がある
1-5.インフレに対するリスクヘッジになる - マンション経営のデメリットとリスク
2-1.初期費用が高額になる場合がある
2-2.融資のレバレッジにより、返済リスクを伴う
2-3.空室が生じたり、家賃収入が下落したりする
2-4.建物が老朽化したり、設備が陳腐化したりする
2-5.経済環境の変化や災害のリスク - 初心者向けのマンション経営の始め方
3-1.運用目標を明確にし、情報収集をする
3-2.投資計画に適合する物件を探す
3-3.融資を受けて物件を購入する - まとめ
1.マンション経営のメリット
マンション経営のメリットとして、主には次のような点が挙げられます。
- 長期に安定した資産性収入を得ることができる
- 金融機関の融資を利用できる
- 生命保険の代わりにすることができる
- 税金の軽減ができる場合がある
- インフレリスクに対応することができる
以下で詳述していきます。
1-1.長期的な資産性収入を見込める
マンション経営では、需要のある立地などを選ぶことにより、入居者からの家賃収入を長期的に見込むことができます。マンションは建物の耐用年数が長く、比較的賃貸需要の多い立地でおこなわれることが多いため、長期間の運用でも一定の収入を得られる可能性が高いと言えます。
資産を運用することによって得られる資産性収入を長期間得られるため、勤労性収入のリスクヘッジにもなる点はメリットと言えるでしょう。
1-2.金融機関の融資を利用できる
マンション経営では、購入するマンションを担保にして、金融機関の融資を受けて物件の購入をすることが可能です。自己資金以上の物件を運用して資産形成をすることができる点は、メリットといえるでしょう。
ただし、金融機関の融資審査では不動産の担保性だけでなく、融資を受ける人の属性(年収・年齢・勤務先などの情報)も評価されます。物件と属性の両方が審査対象となるため、購入できる物件は投資家によって異なってきます。
なお、新築マンションは建物の担保評価が高く、好立地であれば収益性も高いと評価される傾向があります。マンション経営は属性評価が低い方でも、金融機関の融資を利用できる可能性が高い投資方法であるといえます。
1-3.団体信用生命保険に加入することができる
収益マンションを購入するために金融機関で融資を受ける際、団体信用生命保険に加入することができます。団体信用生命保険とは、金融機関等から融資を受けている債務者が、死亡したり高度障害状態になったりしたときに、生命保険会社が債務残高相当分の保険金を金融機関等に支払い、保険金を債務の弁済に充てる制度です。
団体信用生命保険に加入することで、マンション経営で融資を受けていて、本人が死亡等の状態になったとしても、遺族に借入のない状態でマンションを残せる可能性があります。
1-4.税金の軽減ができる場合がある
収益マンションの家賃収入は、不動産所得として毎年確定申告をおこなって、その収入にかかる所得税と住民税を納めます。
このとき、不動産所得は「不動産収入―必要経費」によって算出されますが、マンション経営では、建物価格の割合が大きいため、減価償却費が大きくなりやすい傾向があります。不動産所得がマイナスになると、他の所得との損益通算が可能になり、所得税や住民税が軽減できる場合があります。
また、相続にあたって納める相続税についても、マンションの財産評価額が路線価や固定資産税評価額などを基準として計算されるため、現金で相続するよりも相続税を抑えられる傾向があります。
1-5.インフレに対するリスクヘッジになる
現物資産を取得するマンション経営では、インフレによる物価上昇のリスクヘッジになる側面があります。インフレになると現金資産の価値が相対的に下がる一方でローンの借入額は変動しないため、現金資産のままで保有した場合よりも資産保持に繋がります。
また、マンションの家賃収入は設定家賃を定期的に見直すことで、インフレに連動して上昇する傾向があります。また、一棟マンションの場合、土地の資産価値の割合も高く、インフレによる財産価値の下落を防ぐことが可能になります。
2.マンション経営のデメリットとリスク
マンション経営のデメリットには、次のような点が挙げられ、それぞれがリスクをもたらします。
- 初期費用が高額になる
- 金融機関の融資を受けておこなう
- 空室が生じたり、家賃収入が下落したりする
- 建物が老朽化したり、設備が陳腐化したりする
- 経済環境の変化、災害が起きることがある
以下で、それぞれのデメリットと、それによって生じうるリスクについて詳述していきます。
2-1.初期費用が高額になる場合がある
マンション経営では、マンションの購入費用あるいは建設費用が必要になります。東京都内では、区分マンションであっても2,000万円~5,000万円、地方の一棟マンションであれば5,000万円~数億円が必要になります。
金融機関の融資を受けて購入する場合でも、初期費用は、数百万~1,000万円程度を現金で用意しなければならないケースは少なくありません。
マンション経営はまとまった現金を手元に用意しないと始めることが難しく、多額の現金を一時期に支出することで、その後の生活や人生設計に支障が生じるリスクがあるといえるでしょう。
初期費用を抑えるには、仲介ではなく売主が販売元の不動産会社へ問い合わせてみたり、フルローンの実績がある不動産投資会社の利用を検討してみると良いでしょう。
【関連記事】フルローンや低金利など融資に強い不動産投資会社
2-2.融資のレバレッジにより、返済リスクを伴う
前述したように、マンション経営は購入するマンションを担保にして、金融機関の融資を受けて物件の購入をすることが可能です。自己資金以上の資産運用ができる点はメリットであると同時に、リスクが増大するデメリットとも言えます。
想定したシミュレーション以上に家賃収入が減少したり、無くなったりした場合、家賃収入からローンの返済をできなくなる可能性があります。その場合、他の収入を返済に充てたり、それでも返済できずに滞った場合は、担保にしているマンションを差し押さえられたりする可能性もあります。
2-3.空室が生じたり、家賃収入が下落したりする
マンション経営では、入居者が退去するとしばらく空室になって家賃収入が入らない空室リスクがあります。また、マンションの設定家賃は新築時から徐々に下落していき、新築時から築20年程度までに20%下落する傾向があります。
このように、空室が生じたり家賃収入が下落したりすることで、計画していた運用収入が得られないリスクがあります。金融機関から融資を受けていれば、ローンの返済を家賃収入のみでおこなうことが難しくなる可能性もあります。
不動産投資において、空室リスクや家賃下落のリスクを完全に排除することは非常に難しいと言えます。投資前のシミュレーションではこれらのリスクを厳しく加味し、多少の変動が起きても問題の無いキャッシュフローの物件を探すことが大切です。
2-4.建物が老朽化したり、設備が陳腐化したりする
不動産は建物の築年数が経過するにつれ老朽化し、設備や内装が陳腐化していきます。このような老朽化や陳腐化を防ぐために、修繕やリノベーションなどの必要性が生じ、支出が増加してキャッシュフローを圧迫するリスクがあります。
特に、一棟マンションでは、外壁塗装や共用の給排水設備などの修繕費用のすべてをオーナーが負担する必要があり、修繕費が大きくなるリスクがあります。
1室ごとに所有する区分マンション投資では、複数のオーナーが修繕積立金や管理費を負担し、建物管理会社への管理委託をしています。建物管理の状況が悪いと適切な管理が行われず、数十万円の一時金を請求される可能性もあります。
【関連記事】不動産投資で建物管理がなぜ重要なのか?建物管理に強い不動産会社も
管理面でのリスク対策としては、あらかじめ管理費用を経費としてシミュレーションに加えておき、適切なキャッシュフローの想定をしておくことが大切です。投資物件の管理費が安い場合には、なぜ安いのか、その背景まで確認しておきましょう。
2-5.経済環境の変化や災害のリスク
マンションの立地する地域で競合物件が増加したり、景気が悪化したりして賃貸需要に変化が生じることがあります。また、借入金利が上昇する可能性もあります。このような場合、マンション経営のキャッシュフローが悪化するリスクがあります。
エリアごとの人口推移や家賃相場の推移を確認しておくことが大切です。変動金利でローンを組む場合には金利上昇がおきてもキャッシュフローがプラスで保てるかどうか、それぞれ確認しておきましょう。
また、火災・地震・水災・風災・雪災などの災害によって、建物が損壊もしくは破損し、入居者が居住できないような状態になるおそれもあります。大型台風や集中豪雨による風水災のような災害が生じると、家賃収入が入ってこなくなるだけでなく、入居者が居住できるように建物を修繕しなければならなくなります。
災害リスクに対しては、保険加入を検討しておきましょう。また、対象エリアのハザードマップを確認し、災害が起きた時の影響度についても考慮しておくと良いでしょう。
3.初心者向けのマンション経営の始め方
マンション経営を始める際は、実際に物件を探す前に、運用の数値目標を設定し、投資計画を立てておきましょう。
それから、投資計画に適合する具体的な物件を探していきます。物件を検討する際は、自分でも賃貸需要などの調査を行うことも大切です。物件を購入する際は、融資を受けるのであれば、金融機関の融資審査を通過してから購入という流れになります。
以下、それぞれの手順を詳しく解説します。
3-1.運用目標を明確にし、投資計画を立てる
マンション経営は、長期的に安定した家賃収入を得ることに向いています。手元資金を運用して、どれぐらいの期間でいくらぐらいの運用収益を得たいのか、目標を明確にして投資計画を立てます。
投資計画では、主にマンション経営の収支シミュレーションをおこないます。運用収益を得たい期間の家賃収入と管理費、修繕費、ローンの返済などの支出を1年ごとに見積もってみましょう。
3-2.投資計画に適合する物件を探す
投資計画を立てたら、計画に適合する物件を探します。中古であれば、収益マンションを扱っている不動産投資会社へ問い合わせたり、ポータルサイトから探す方法があります。
新築であれば、マンション建築を請け負っている建設会社や土地活用や収益物件販売を得意とする不動産会社などに問い合わせてみる方法があります。
複数の企業に問い合わせて、比較検討するとよいでしょう。想定家賃収入や想定支出を提示された場合、資料を鵜呑みにするのではなく、自分で調査して検証してみるようにしましょう。
3-3.融資を受けて物件を購入する
物件が見付かったら、融資を受けて購入します。融資を受ける際には、金融機関から物件や属性の審査があります。金融機関についても、できる限り有利な条件でローンを組むことができるように、複数の金融機関に問い合わせてみるようにしましょう。
融資の審査に通ってから、マンションを購入したり建築したりすることになります。頭金や諸費用は、現金で支払うことになるため、物件価格の1割~2割程度は手元に用意しておくようにしましょう。
【関連記事】上場している不動産投資会社7社の実績・評判まとめ
まとめ
マンション経営のメリットは、長期的な家賃収入を見込め、融資を受けて資産形成をできることが大きいといえます。他方で、ローンの返済、物件の老朽化、経済環境の変化・災害リスクなどがあることには注意したいといえます。
マンション経営を始める際には、運用目標を数値化して投資計画を立て、それに合った物件を探すようにしましょう。複数の物件を、収益性・資産性の側面から慎重に比較検討してから購入することも重要なポイントです。
- 初心者向け無料セミナーを開催している不動産投資会社の比較・まとめ
- 入居率99%超・融資実績1%台など総合力が高いマンション投資会社の比較
- 新築マンション投資に強い不動産投資会社の比較・まとめ
- フルローンや低金利など融資に強い不動産投資会社の比較・まとめ
- サラリーマン・会社員に向いている不動産投資会社の比較・まとめ
- 中古マンション投資に強い不動産投資会社の比較・まとめ
- 入居率が高い(98%以上)不動産投資会社の比較・まとめ
佐藤 永一郎
最新記事 by 佐藤 永一郎 (全て見る)
- 公認会計士が不動産投資をするメリット・デメリットは?体験談・口コミも - 2024年9月20日
- 不動産投資を小さく始める方法は?初心者向けの手順や注意点を解説 - 2024年8月25日
- 中古マンション投資のメリット・リスクは?初心者向けの注意点も - 2024年7月27日
- 不動産小口化商品のリスクは?購入・投資前に確認しておきたい5つのポイント - 2024年6月2日
- 相続不動産を売却したら税金はいくら?シミュレーションで解説 - 2024年3月31日