一般社団法人不動産証券化協会は1月9日、第17回「機関投資家の不動産投資に関するアンケート調査」の集計結果を公表した。調査は資産運用における不動産への投資の実態と課題を把握する目的で、年金基金(原則、総資産額140億円以上)および生保・損保・信託銀行・銀行等の機関投資家を対象に行われた。調査期間は2017年8月25日から10月5日まで、年金71、一般機関投資家61の計132件の回答があった。
「実物不動産あるいは不動産証券化商品への投資を行っている比率」は基金数(機関数)ベースで、年金では58%と前年52%から増加した。これは5年連続の増加となった。一方、一般機関投資家では92%と前年の94%から減少した。
「投資済とする投資対象」は、年金では「私募リート」47%(前年調査36%)が大きく、「国内不動産プライベートファンド」13%(同14%)、「海外不動産プライベートファンド」12%(同13%)、「Jリート」10%(同14%)が続いた。一般機関投資家では「Jリート」67%(同66%)が大きく、「私募リート」52%(同45%)、「不動産を裏付けとする債券」46%(同57%)が続いた。
「不動産投資を行うために必要なこと」は、年金では長年にわたって1位または2位であった「不動産評価の信頼性向上」が3位に、「ベンチマークとなる不動産投資インデックス」が5位に順位を下げた。その一方で順位を上げ1位になったのは「不動産関連情報の標準化」、2位は「個別の不動産投資情報開示の向上」だった。一般機関投資家では「不動産に精通した運用担当者(投資家サイド)の育成」が昨年に引き続き1位となり「不動産関連情報の標準化」が2位となった。
不動産のESG投資(環境・社会・企業統治に力を入れる企業への投資)について興味の有無を聞いたところ、興味があると回答した割合は、年金では16.7%、一般機関投資家では32.1%にとどまり、興味がないと回答した割合は年金では83.3%、一般機関投資家では67.9%であった。
興味がない理由としては「ESG投資の認知が広がっておらず、説明責任を果たせないため」が最も多く「長期的な運用パフォーマンスが向上しない又は悪化すると考えるため」が続いた。
一方、興味があると回答した人は、年金と一般機関投資家のいずれも「中期的な運用パフォーマンスが向上すると考えるため」が最も多く、「運用パフォーマンスは関係なく、責任投資を行うのが妥当だと考えるため」が続いた。
【参照リリース】第17 回「機関投資家の不動産投資に関するアンケート調査」集計結果について
平井真理
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