実家をスムーズに相続する手順は?遺産相続の基本や準備、注意点も

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親が亡くなり実家を相続する事になった場合、遺言書の有無の確認、実家の登記名義人の調査などの準備が必要です。

不動産相続においては、期限が定められている手続きもあります。例えば、相続放棄は3ヶ月以内、被相続人(亡くなられた方)の所得税を申告・納付する準確定申告は4ヶ月以内などと定められています。これらを検討する場合は、早めの行動が必須となります。

本記事では実家を相続する前に行っておく事、相続の基本と手順、注意点を解説していきます。スムーズに相続の手続きを行うために、あらかじめ相続の流れと相続登記の必要書類などを確認しておきましょう。

目次

  1. 実家を相続する前に確認しておくこと
    1-1.実家の登記名義人は誰になっているか
    1-2.遺言書があるか
  2. 相続の基本と手順
    2-1.相続開始~遺言書の確認・検認
    2-2.遺産の調査~相続を行うか決める
    2-3.相続放棄・限定承認は3ヶ月以内に
    2-4.準確定申告(4ヶ月以内)
    2-5.遺産分割協議
    2-6.相続の登記を行う
    2-7.相続税の申告・納付
  3. 相続した実家に欠陥があった場合の注意点
  4. まとめ

1.実家を相続する前に確認しておくこと

実家を相続する際には、手続きを行う前に実家の登記名義人と遺言書の有無を確認しておきましょう。

例えば、親が実家を祖父母から譲り受けた場合には親が所有権の移転登記を行わず、祖父母のどちらかが登記名義人となっているケースが存在します。

登記名義人と被相続人が異なると、相続人の調査や登記の手続きに時間が掛かり、費用や手数料も余分にかかる可能性があります。事前に確認しておきましょう。

また、遺言書の有無で相続の手順が異なるため、遺言書の確認も重要となります。

1-1.実家の登記名義人は誰になっているか

実家を建てたのが両親ではないケースでは、登記名義人が両親ではない可能性が存在します。

祖父母の代から所有され名義を変更していない、そもそも登記を行っていない(未登記)などの可能性がありますので、登記名義人を確認しておきましょう。

登記名義人は法務局に出向き登記簿謄本を取得する方法の他に、下記のウェブサイトでも調べる事が可能です。(有料)

登記情報提供サービス:https://www1.touki.or.jp/

1-2.遺言書があるか

被相続人が遺言書をのこしており、法的に有効である場合には原則遺言書通りに遺産を配分します。

遺言で指定された相続分は「指定相続分」と呼ばれ、民法で決められた「法定相続分」より優先されます。しかし、相続人全員の同意があれば、「遺産分割協議」による話し合いで決めた割合で配分する事が可能です。

遺産分割協議は相続人全員の参加が必須条件で、1人でも欠けていると協議は無効となります。

2.相続の基本と手順

相続は被相続人が亡くなったことを知った日から相続開始となります。死亡届の提出、遺産の調査・確認、相続を承認するか放棄するかの決定など、やるべき事は少なくありません。

それぞれの手続きの期限を確認し、順序を把握しておくことで「マイナスの資産の相続放棄が出来なかった」「税金を延滞してしまった」という事態を避けていくことが大切です。相続の手順について詳しく解説していきます。

2-1.相続開始~遺言書の確認・検認

相続は、基本的に被相続人が亡くなったことを知った日が相続の開始日となります。まずは7日以内に、下記のいずれかを管轄する役場に死亡届を提出しましょう。

  1. 被相続人が亡くなられた場所
  2. 被相続人の本籍地
  3. 届出をする方の住所

続いて、遺言書があるかどうかを確認します。遺言書がある時には内容と法的な有効性を確認します。

遺言書には自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種があります。公正証書遺言は公証役場で公証人が作成して保管しているため、法的に無効である可能性は限りなく低い遺言書と言えます。

自筆証書遺言は被相続人が日付・氏名・文章を自筆で書き、押印していることで有効となりますが、財産目録はワープロやパソコンの使用が認められています。相続発生の段階で有効性の確認が必要です。

秘密証書遺言は、公証役場で証人2人と公証人立ち合いの元で署名・押印・封印しますが、内容がチェックされませんので、自筆証書遺言と同様の確認が必要となります。

遺言書は内容を変造・偽造しないよう、家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります。家庭裁判所に申立書と遺言者のすべての戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本などの資料を添付し、申立てを行いましょう。

2-2.遺産の調査~相続を行うか決める

相続では被相続人が残した「金銭に換えられる全ての財産」が相続の対象となります。取引のあった不動産会社や金融機関に財産の総額の確認を行いましょう。なお、住宅ローンといった債務も財産に含まれます。

実家の価格と住宅ローンの残債を比較した時、残債の方が多い「オーバーローン物件」であることがあります。他のプラスの資産が無い状況でオーバーローン物件を相続すると、金銭的には不利益を被る相続となります。

このような相続上での不利益を避けるため、不動産価格と残債を比較し、プラスの資産であるかどうかを調査することが重要です。遺産の範囲や価額を知った上で、遺産を相続するか、放棄するかを決定します。

なお、不動産相続における評価額は、建物については「相続税評価額」、土地は「路線価方式又は倍率方式」で評価されますが、これらの不動産の評価額と、実際に売却を行った時の価格(実勢価格)には差があるため、相続を判断する際は不動産査定を受けておくことも検討しておきましょう。

また、不動産会社によって査定額が大きく異なることも少なくないため、複数社による査定を受けておくことも大切です。複数社の不動産査定を効率的に受けることが出来る「不動産一括査定サイト」の利用も検討してみると良いでしょう。

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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

2-3.相続放棄・限定承認は3ヶ月以内に

相続を放棄する際は相続開始より3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てを行います。相続放棄は基本的に被相続人の全ての財産を放棄する事になりますので、他の財産や財産の価額を知り、よく検討した上で手続きを行いましょう。

被相続人の債務がどのくらいあるか分からない時は、限定承認という相続で得た財産の範囲内で債務を弁済する手続きもあります。

これらの申立てを行わなかった際には相続をすることを承諾(単純承認)したとして、被相続人の土地の所有権や借金・債務等の義務をすべて受け継ぐことになります。

【関連記事】相続放棄のメリット・デメリットは?不動産活用・売却の手順も

2-4.準確定申告(4ヶ月以内)

準確定申告は、相続開始の翌日から4ヶ月以内に行います。

例えば、被相続人が2021年に3月1日に亡くなられた場合、2021年1月1日~2月28日までの所得税を申告・納付する必要があります。

2-5.遺産分割協議

相続人全員で遺産の分割協議を行います。全員が一堂に集まる事が原則で、1人でも欠席する方がいた場合には無効となります。

不動産には下記4つの分割方法があります。

  • 現物分割:現物をそのまま分与する
  • 換価分割:実家を売却して代金を分ける
  • 代償分割:相続人の1人が代表して相続、他の相続人には実家の価額相当の代金を支払う、または物を分与する
  • 共有分割:共有名義とする

全員で4つの分割方法の中から財産の価額や税金、相続人の気持ちなどを考慮し話し合った結果、適した分割方法を選び決定した内容を「遺産分割協議書」として作成します。

2-6.相続の登記を行う

遺産分割協議の結果や、遺言書の内容に従って遺産を分割します。不動産の場合は相続として法務局に所有権移転登記(名義変更)の申請を行う必要があります。

不動産の相続登記で必要な書類は以下の通りになります。

  • 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 登記申請書(法務局のウェブサイトからダウンロードが可能)
  • 被相続人の戸籍謄本(生まれてから亡くなるまで)
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票の写し
  • 委任状(代理人が申請する場合)
  • 登録免許税(収入印紙で納付)
  • 固定資産評価証明書(登録免許税の資料)
  • 遺言書又は遺産分割協議書(遺産分割協議書に相続人が押印した場合は相続人全員の印鑑証明書が必要)

相続人全員で申請する必要がありますが、相続人のうち一人が代表して手続きを行う事も可能です。代表で行う場合には、他の相続人の委任状が必要になります。

登記申請書に必要事項を記入し、上記の資料を添付して法務局に直接出向く又は郵送により申請を行います。

2-7.相続税の申告・納付

遺産の総額が基礎控除額(3000万円+(600万円×法定相続人の数))を超える場合、相続税が発生します。

相続人それぞれの税額を計算、申告・納付を相続開始の翌日から10ヶ月以内に行います。

なお、不動産は「小規模宅地等の特例」で税金が軽減される可能性があります。加えて配偶者は「配偶者の税額軽減制度」により、税金の対象となる金額の1億6千万円まで又は法定相続分までが控除されます。

【関連記事】「小規模宅地等の特例」で相続税はいくらまで減額される?適用条件も解説

3.相続した実家に欠陥があった場合の注意点

相続した実家に、分割時には気づかなかった欠陥がある場合は、遺産の分割が不平等になってしまうケースがあります。

例えば、兄と弟2人が相続人で、兄が評価額1000万円の実家を相続し、弟は1000万円相当の現金や有価証券を相続した、という事例を見て行きましょう。相続後に、実家の屋根が壊れたことが発覚して600万円の修理代が必要な場合、遺産の分配が公平ではなくなってしまいます。

民法第911条では「各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。」との条文があり、兄は弟に600万円の損害賠償請求ができます。

弟が相続した600万円を兄に譲る、不動産の評価額1000万円から600万円を差し引き、改めて遺産分割をやり直すなどの方法を相続人同士で話し合い、解決することになります。

ただし、損害賠償請求は「隠れた瑕疵(傷や欠陥など)を知った時から1年以内」と定められているため、注意が必要です。

まとめ

実家の相続はあらかじめ手順を把握し必要書類を準備しておくことで、スムーズな手続きが可能となります。

不動産の評価額と、実際に売却を行った時の価格(実勢価格)には差があるため、相続を判断する際は不動産査定を受けておくことも検討しておきましょう。また、不動産会社によって査定額が大きく異なることも少なくないため、複数社による査定を受けておくことも大切です。

相続放棄・限定承認の申立ては3ヶ月以内、準確定申告は4ヶ月以内、相続税の申告・納付は10ヶ月以内といった期限に注意しながら相続を行っていきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。