資産運用に関心を持つサラリーマンの方が増えています。サラリーマンには給与という安定収入があり、その強みを資産形成につなげることが可能です。この記事ではサラリーマンに適した資産運用を紹介し、老後資金準備など投資目的別に適した手段を考えていきます。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- サラリーマンに資産運用が必要な理由
1-1.預貯金ではお金が増えない
1-2.安定収入を活かして資産形成が可能
1-3.借り入れも活用できる
1-4.退職金があてにできない - サラリーマンが資産運用をするときの注意点
2-1.勤務先の副業規定に抵触しないようにする
2-2.業務に影響のないように注意する
2-3.運用の目的・目標をはっきりさせる
2-4.無理のない資金計画を立てる
2-5.リスク軽減を心がける
2-6.節税・納税を適切に行う - サラリーマンに適した資産運用5選
3-1.株式投資
3-2.投資信託・ETF
3-3.ロボアドバイザー
3-4.不動産投資
3-5.クラウドファンディング - 投資目的に合う資産運用とは?
4-1.老後資金
4-2.教育資金
4-3.FIRE
4-4.起業資金 - まとめ
1.サラリーマンに資産運用が必要な理由
株式会社ロイヤリティ マーケティングの「第49回 Ponta消費意識調査」による「2021年(令和3年)冬のボーナスの使い道」で、投資信託が9位になりました。投資信託のトップ10入りはこの調査が始まってから初めてのことで、資産運用に関心を持つ人の増加がうかがえます。
最初に、サラリーマンの方に資産運用が必要な理由を考えます。
1-1.預貯金ではお金が増えない
現在の超低金利下では、預貯金ではお金はほとんど増えません。たとえば、20年間で2,000万円の資産を作るとします。年利0.1%では毎月8万2,500円を積み立てなければなりせんが、年利4.0%なら毎月5万4,300円の積み立てで達成可能です。
運用の成果は確実ではありませんが、預貯金より少ない負担での資産形成が期待できます。
1-2.安定収入を活かして資産形成が可能
自営業・フリーランスと違い、サラリーマンには安定した給与収入があります。そのため、運用計画が立てやすく、堅実な資産形成が見込めます。目的に応じて資産形成の目標を立て、着実に実行していきましょう。
1-3.借り入れも活用できる
サラリーマンの安定収入は、ローンを利用するための信用にもつながります。資産運用の中には、借り入れの活用で運用効率を上げられる不動産投資のような方法もあります。比較的融資を受けやすい点は、サラリーマンの資産運用上の強みです。
1-4.退職金があてにできない
日本の企業で退職金制度のある企業は減少傾向にあります。終身雇用など1社で長く働く人が減り、退職金を見込んだライフプランが立てられないケースが増えました。その場合、現役時代から意識的に老後資金を準備する必要があります。
2.サラリーマンが資産運用をするときの注意点
サラリーマンの方には自主的な資産運用が必要ですが、注意すべき点がいくつかあります。
2-1.勤務先の副業規定に抵触しないようにする
サラリーマンの資産運用が副業に該当するおそれのある場合、勤務先の就業規則などを確認する必要があります。一般的な資産運用は副業に該当しませんが、一定規模を超える(5棟10室)不動産投資などは事業とみなされる可能性があります。
就業規則に副業禁止が謳われている勤務先では、ルールに抵触しないか注意しましょう。
2-2.業務に影響のないように注意する
サラリーマンであれば就業時間内は業務に集中できるよう、資産運用により支障をきたさないように注意すべきです。買い付けた金融商品の値動きが気になって、仕事がおろそかになってはいけません。できれば、手間や時間のかからない投資方法を選びましょう。
2-3.運用の目的・目標をはっきりさせる
運用をするのであれば、「何のために」「いつまでに」「いくら準備するか」などの目的や目標を明確にしましょう。限られた資金を有効に活用するには、目的のために最適な方法を選択する必要があるからです。目標から逆算して、堅実に達成できるようにしましょう。
2-4.無理のない資金計画を立てる
運用では早期に資産形成しようと過度に資金を投入せず、余裕資金による無理のない計画を実行することが大切です。投入する資金が多いほうが資産形成にはつながりますが、必要な生活費まで運用に回してはいけません。当面使う必要のないお金だけで運用していけるよう、家計を見直してから始めましょう。
2-5.リスク軽減を心がける
資産運用を長続きさせるには、リスクコントロールが重要です。投資のリスクをゼロにはできませんが、適切なコントロールで軽減できます。一般的には「長期」「分散」「積立」はリスク軽減の王道といわれています。サラリーマンの方の資産運用でも取り入れたい手法です。
2-6.節税・納税を適切に行う
資産運用では可能な節税は適切に行い、運用益にかかる税金は正しく納付しましょう。資産運用に関連して、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)のように、税の優遇が受けられる制度があります。利用できる制度は利用し、節税につなげましょう。
通常、運用益には税金がかかり、勤務先で年末調整を受けているサラリーマンの方でも確定申告が必要な場合があります。確定申告が必要なケースをあらかじめ確認しておきましょう。
3.サラリーマンに適した資産運用5選
以上の内容を踏まえ、サラリーマンに適した5つの資産運用を紹介します。
3-1.株式投資
株式投資は企業が発行する株式を市場で買い付けて値上がり益を狙ったり、配当を受け取ったりする方法です。
株式投資のメリット
株式投資では買い付けた銘柄の値上がりに理論上上限がなく、大きな利益を狙えます。また、保有するだけで配当金や株主優待を受けられます(銘柄により無いものもあります)。株式の最低投資単位を単元といい、1単元は100株です。
しかし最近では、金額指定や1株単位などで購入できる単元未満株を取り扱う証券会社が増え、少額投資が可能になりました。また、外国株式は1株から買い付けでき、世界的有名企業の株主にも比較的少額の投資でなれます。
株式投資のデメリット
株価の変動要因はさまざまで、そのために値動きの幅が大きい特性があります。大きな値上がりが期待できる反面、大きく値下がりする可能性もあります。
また先述のとおり少額での投資も可能になりましたが、複数の銘柄を保有するには比較的多額の資金が必要です。
多くのサラリーマンの方は市場が開場している平日日中に取引に参加しづらいため、頻繁な売買には向きません。しかし、株式投資にはさまざまな手法があり、自分に合ったやり方が選べます。
3-2.投資信託・ETF
投資信託とは複数の投資家から集めた資金を投資のプロが株式や債券などで運用し、成果を投資家に還元する金融商品です。ETFは特定の指標に連動する運用成果を目指し、市場で売買される投資信託の一種です。
投資信託・ETFのメリット
投資信託・ETFでは、ファンドマネージャーという運用のプロに資金の運用を任せられます。そのため、投資家は買い付ける個別銘柄を選ぶ必要がありません。また、個人の資金で多くの銘柄に分散投資するのは難しいのですが、投資信託・ETFなら少額でも国際分散投資が可能です。
投資信託・ETFはiDeCoやNISAなどの制度やロボアドバイザーでも投資先として活用されており、個人の資産運用に欠かせない運用商品といえます。
投資信託・ETFのデメリット
投資信託とETFは買い付けの方法が異なるため、購入価格の決まり方に注意が必要です。投資信託の場合、注文の時点では買い付けの価格が決まっておらず、前日の価格を参考にします。そのため、リアルタイムの値動きを見ながらの買い付けはできません。一方、ETFは株式と同様に、市場で成行または指値での注文ができます。
また投資信託・ETFは、短期間で大きな利益を狙うための運用商品でないことも知っておきましょう。
3-3.ロボアドバイザー
ロボアドバイザーとはAI(人工知能)を活用して、資産運用の提案や運用代行をする金融サービスです。資産運用のアドバイスのみを行う「アドバイス型」と、実際に商品の買い付けなどの運用をお任せできる「投資一任型」があります。
ロボアドバイザーのメリット
投資一任型のロボアドバイザーでは、簡単な質問に答えるだけで自分に合った運用の提案を受けられます。実際の運用は事業者が代行してくれるので、ユーザーは運用のすべてを「お任せ」できます。銘柄選定に悩んだり、買い付けのタイミングを考えたりする必要もありません。
ロボアドバイザーでは最新のアルゴリズムに基づいて国際分散投資が行われ、リスクを軽減し堅実な運用益が期待できます。
ロボアドバイザーのデメリット
通常の投資一任型ロボアドバイザーでは運用商品のコスト(信託報酬など)に加え、資産額に応じた運用手数料がかかります。自分で投資信託やETFを購入すればかからないコストなので、自身で戦略的に長期積立投資ができる投資経験者にとってはデメリットといえます。
また、投資一任型に運用を任せても、運用益が保証されているわけではありません。運用の成果はユーザーが負うことを認識しておきましょう。
3-4.不動産投資
不動産投資はアパートやマンションを購入して第三者に貸し出し、家賃収入を得る方法です。
不動産投資のメリット
不動産投資には物件の購入に多額の資金が必要です。しかし、安定した収入のあるサラリーマンの方であれば、借り入れを活用できる可能性があります。借り入れが活用できれば、自己資金以上に高額な物件の取得が可能です(レバレッジ効果)。
また、不動産管理会社と契約すれば、手間のかかる賃貸経営をサポートしてもらえます。
不動産投資のデメリット
多額の資金を扱う不動産投資には、対策すべきリスクが様々にあります。主なリスクの一つは空室リスクです。特にワンルームマンションや戸建への投資では、空室によって家賃収入がゼロになるため、できるだけ空室期間を短くしなければなりません。
空室対策には人気エリアにある条件の良い物件を選ぶ、空室対策に強い不動産管理会社と契約するなどの方法があります。
その他にも不動産投資にはリスクがあるため、知識ゼロで始めるのは無謀です。書籍を読む、セミナーに参加するなどで知識を得てから、実際に投資を始めるようにしましょう。
3-5.クラウドファンディング
クラウドファンディングはインターネットを利用して、不特定多数の人から事業資金を調達する方法です。出資者に経済的なリターンが発生するタイプを投資型クラウドファンディングといいます。投資型クラウドファンディングには、以下のような種類があります。
融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング) | 資金調達したい企業に投資家が資金を貸し、利息と元本の返済を受ける。案件によっては利回り10%以上のものもある。 |
ファンド型クラウドファンディング | 事業やプロジェクトに出資を募り、投資家は成果を配当金などで受け取る。 |
株式型クラウドファンディング | 未上場企業が発行する株式を取得し、投資家は業績等に基づいた配当を受け取る。将来の上場の際には、売却益を狙える |
クラウドファンディングのメリット
クラウドファンディングの利回りは案件ごとに異なりますが、一般的には預貯金などより高めの水準です。最低投資金額はプラットフォームごとに異なり、多くは1万円程度から始められます。
また、投資案件を選んでお金を支払えば、満期まで分配金などを受け取るだけなので、投資家に手間がかかりません。
クラウドファンディングのデメリット
クラウドファンディングでは、未上場企業など信用力の低い投資先が多いため、リスクが高い投資といえます。元本保証はなく、事業が上手くいかずに元金が回収できなかったり大きく毀損したりする可能性があることを認識しておきましょう。
また、通常は運用期間中の解約はできません。加えて利回りの高い案件の場合、応募が多くて投資できないケースもあります。
4.投資目的に合う資産運用とは?
老後資金の形成など、投資目的ごとにどんな資産運用が合っているかを解説します。目的に合った資産運用方法を組み合わせてリスクを軽減しましょう。以下は、投資目的と資産運用の適正の一覧表です(筆者見解)。
項目 | 株式投資 | 投資信託・ETF | ロボアドバイザー | 不動産投資 | クラウドファンディング |
---|---|---|---|---|---|
老後資金 | 〇(投資手法によっては) | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 |
教育資金 | △ | ◎ | ◎ | △ | △ |
FIRE | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 |
起業資金 | △ | ◎ | ◎ | △ | 〇(あまり長期の案件でなければ) |
4-1.老後資金
運用が長期にわたる老後資金の準備では、iDeCoやつみたてNISAなどの制度の利用も取り入れたいところです。投資信託・ETFを中心に、自分で運用する自信のない人はロボアドバイザーを利用してもよいでしょう。
また、きちんとリスク管理ができれば、不動産投資も比較的手堅い方法になり得ます。運用期間が長いため、リスクを取れる人は株式投資やクラウドファンディングで高いリターンを狙うのも選択肢となります。
4-2.教育資金
教育資金は老後資金よりも運用期間が短いため、より堅実な成果が求められます。つみたてNISAを利用した中・低リスクの投資信託・ETFやロボアドバイザーなどが有力な選択肢となるでしょう。
4-3.FIRE
経済的自立および早期リタイア「FIRE」を目指す場合、運用益だけで生活できる資産の形成が必要です。一般的に生活費の25倍の資産を年4%で運用できれば、運用益のみでリタイアできるといわれています。
FIRE目的の資産運用では、米国高配当株式への投資や不動産投資、投資信託・ETFでのインデックス投資などが選ばれています。
4-4.起業資金
サラリーマンの方が起業を考える場合の資金準備は、準備期間によって適する運用方法が異なります。いざというときに換金しやすい投資信託・ETFやロボアドバイザーなどが無難でしょう。
まとめ
超低金利の現在、ライフイベントごとのさまざまな資金準備には、資産運用が欠かせません。サラリーマンの方の資産運用には、堅実で手間のかからない方法が適しています。安定収入というサラリーマンならではのアドバンテージを生かし、賢く資産形成をしていきましょう。
- 頭金(自己資金)300万円以下で始められる不動産投資会社の比較・まとめ
- 頭金(自己資金)500万円以上で始められる不動産投資会社の比較・まとめ
- 頭金(自己資金)100万円以下で始められる不動産投資会社の比較・まとめ
- サラリーマン・会社員に向いている不動産投資会社の比較・まとめ
- 入居率が高い(98%以上)不動産投資会社の比較・まとめ
松田 聡子
最新記事 by 松田 聡子 (全て見る)
- 個人の金融資産が2212兆円の過去最高を突破。将来に向けた資産形成のポイントは? - 2024年10月21日
- 高校生が金融教育で学ぶ「貯める・増やす」資産形成の内容は?NISAの仕組みも - 2024年8月8日
- ウェルスナビとROBOPROの違いは?手数料や実績、メリット・デメリットを比較 - 2024年6月22日
- 2024年度の税制改正で子育て世帯はどう変わる?家計のポイントを5つ解説 - 2024年6月9日
- NISAで毎月いくら積立設定するべき?収入や年齢からポイントを解説 - 2024年6月9日