日本は金融緩和政策などの影響で長らく低金利の状態が続いています。不動産投資では基本的にローンを組んで投資をしますので、低金利なほど返済額が低くなり、投資を始めやすくなるというメリットがあります。
しかし、慢性的な低金利状態からコロナショックを経て、円安・インフレを背景に金利上昇のリスクは徐々に高まってきています。マンション投資において、金利上昇に備えておくことは重要なポイントとなってくるのです。
この記事では金利が動く要因を確認した上で、金利が上昇した場合のリスクや金利上昇に備えるマンション投資のポイントについて解説いたします。
目次
- 過去の金利動向
- 金利が上がる要因
2-1.景気が良くなると金利が上がる
2-2.円安になると金利が上がる
2-3.物価が上がると金利が上がる - 変動金利と固定金利の仕組みの違い
3-1.変動金利だと金利上昇した場合にリスクが大きい?
3-2.急に返済額が増えない5年ルール
3-3.125%ルールで上限が決められている
3-4.固定金利には一定期間固定と全期間固定期間型がある - 金利が変動した場合のリスク
- 金利上昇に備えるマンション投資の4つのポイント
5-1.マンション投資を始める際に頭金を多く入れる
5-2.繰上返済をして元金を減らす
5-3.低い金利のローンに借り換えをして収支を改善する
5-4.固定金利のローンに借り換えて収支を安定させる - まとめ
1.過去の金利動向
現在の日本の金利は金融緩和政策の中、低い状況が続いています。まずは過去の金利の動きについて見てみましょう。以下のグラフは住宅ローンの金利推移を表したものです。
*住宅金融支援機構ホームページから引用(2023年4月4日時点)
こちらのグラフから、平成3年には変動金利は8%を越え非常に高い状態にあったことが確認できます。また平成7年から相場が安定し、平成21年からは年利2.475%の状態が続いていることが確認できます。長期間低金利の状態が続いていると言えるでしょう。
一方、固定金利についてはじわじわと上昇傾向にあり、固定金利(10年)は4%台に届くような動きを見せています。
この状況から、そろそろ変動金利についても上がるのではないか、と考える人もいるでしょう。とは言え、低金利が長期間続いているという理由だけでは金利は上がりません。まず、どのような要因で金利が上がるのかを確認してみましょう。
2.金利が上がる要因
金利はお金の需給関係によって上下します。お金の需要(お金を借りたい人)が増えれば上がり、お金の需要が減れば下がります。どのようなことが要因となって需要と供給が変化するのかを見てみましょう。
2-1.景気が良くなると金利が上がる
景気が良くなってくると、物が売れやすくなりますので、企業は更なる収益アップを図るために設備投資をしたり、仕入れを増やしたりします。このような事業拡大施策のために金融機関からお金を借りる企業も増えます。
このことから、景気が良くなるとお金の需要が増えることになります。多少融資条件が悪くても借りてくれる期待があるため、金利が上がる傾向となます。
逆に景気が悪くなると、事業拡大をする企業が減るためお金の需要も減るため、少しでも多く融資などのお金の流れを作る必要が出てくることから金利は下がります。また景気が悪い状態の時は、なるべく個人にも預金しているお金を使ってもらうために金利が低くなるという面もあります。
2-2.円安になると金利が上がる
為替の変動によっても金利は上下します。例えば円安になった場合は、ドル建てで預金したり、ドル建てで運用したりした方が利益は大きくなりますので、円預金が解約されたり、円建ての商品が売られたりします。そのため、市場に供給する円の量が減りますので、金利は上がります。逆に円高になると金利は下がります。
2-3.物価が上がると金利が上がる
物価が上がるとお金の価値が相対的に下がることになりますので、人はお金を物に変えようとします。物を購入するためにお金の需要が増えますので、つられて金利が上がるということになります。
3.変動金利と固定金利の仕組みの違い
金利には変動金利と固定金利がありますが、不動産投資を行うにあたり、金利が上昇した時はどのように対応すれば良いのでしょうか。変動金利と固定金利の仕組みについて詳しく見てみましょう。
3-1.変動金利だと金利上昇した場合にリスクが大きい?
金融機関でローンを組む場合、一般的に変動金利の方が固定金利より借入金利が低く設定してありますので、不動産投資をする場合は変動金利を選ぶ投資家のほうが多くなります。
しかし、変動金利では途中で借入金利が上下するため、もし上昇した場合には返済リスクが大きくなることが考えられます。変動金利の見直しは一般的に6ヵ月に1回のペースで行われることが多いので、6ヵ月に1回は上がる可能性もあるということになります。
3-2.急に返済額が増えない5年ルール
変動金利のローンは6ヵ月に1回借入金利の見直しがありますが、その都度返済額が変わるかというとそうではありません。金利が変わったとしても5年間は返済額が変わらない、というルールがあるからです。そのため、金利が上がったとしてもすぐに返済額が増えるということはありません。
しかし、返済の内容が全く変わらないわけではありません。金利が上昇した場合、返済額は変わらなくても、金融機関が返済金額の内訳の元金部分を減らし、利息を増やすという形で調整していますので、元金の減り方が遅くなっています。そのため金利上昇が続くと利息ばかりを支払って、元金はほとんど返済していないという状況にもなりかねません。
返済が終わる時期に元金の未払いが残っている場合、未払いの利息金を別途返済しなければならないことがありますので、ここは注意しておきたい部分です。
3-3.125%ルールで上限が決められている
金利が上昇して5年経過すると返済額が上がりますが、その場合も金利が上がっただけ上がるかというとそうではありません。125%ルールというものがあり、現状の返済額の1.25倍までしか増えることはない形となっています。上限を決めることで、返済額の急騰を抑える仕組みになっています。
しかし、この場合の差額は支払わなくて良いというわけではなく、返済を先送りされているだけですので、この場合も差額分を返済できる原資を確保しておくよう注意が必要です。
3-4.固定金利には一定期間固定型と全期間固定期間型がある
金利が変動した場合のリスクを軽減する方法として、固定金利を選択しておくという方法もあります。固定期間中は金利が変わりませんので、金利上昇のリスクを回避することができます。
固定金利には3年固定や5年固定、10年固定などの一定期間固定のものと、全期間固定のものがあります。固定期間が長いほど金利は高くなります。固定期間内に金利が上昇することはありませんが、もし金利が低い状態が続いた場合は、変動金利より高い金利でローンを組んでいる状態が続くことになります。
変動金利でローンを組んでいる場合と比較すると、金利差分を資金的にロスをしているということにもなりますので、ローンを組む際には長期間のシミュレーションを慎重に立てた上で検討することが大切です。
また、固定金利でローンを組んでいる場合、固定期間内に物件の売却などをするために解約する際には違約金がかかることがありますので、売却の計画がある場合は固定期間の選択は慎重にするようにしましょう。
4.金利が変動した場合のリスク
不動産投資の重要指標に「イールドギャップ」というものがあります。イールドギャップとは実質利回りと不動産ローンの金利差から算出する収益性指標です。
イールドギャップ=(実質利回り)-(不動産ローン金利)
不動産投資ローンの金利が上昇するとイールドギャップが少なくなり、収益性を悪化させます。特に都心のマンション投資では利回りが低い物件が多く、基本的にはキャピタルゲイン(売却益)を収益ポイントにしているため、大きくキャッシュフローを圧迫してしまうリスクがあるのです。
では金利が変動すると、返済額がどれくらい違ってくるのか試算してみましょう。借入額2,500万円、返済期間35年として、金利2%と3.5%の場合を比較したものを以下の表にまとめました。
金利 | 月々の返済額 |
---|---|
2%の場合 | 6万6,252円 |
3.5%の場合 | 8万2,658円 |
この場合、月々の返済額の差額は1万6,406円になります。区分マンション投資の場合は、毎月の手残り額が1万円くらい、ということもありますので、この差額はとても大きな金額だと言うことができます。
金利の上がり方によっては、さらに返済額の差も大きくなることがありますので、金利が上昇した場合の対応については慎重にシミュレーションしておくことが大切です。赤字経営にならないよう、キャッシュフローには余裕を持たせましょう。
5.金利上昇に備えるマンション投資の4つのポイント
5年ルール、125%ルールがあったとしても、金利上昇により増えた金額分は返済しなくても良いというわけではありません。マンション投資は数十年かけて行う長期投資ですので、直近は軽微な損害だとしても、あとあと損害が大きくならないように早めに対応することが大切です。
金利が上がった場合の対応策には、どのようなものがあるのかを見てみましょう。
5-1.マンション投資を始める際に頭金を多く入れる
ローンの返済中に金利が上がると、5年間は返済額が変わらないにしても、金利上昇のぶん元金が減りにくくなるというデメリットがあります。なるべく元金を少なくする方法として、マンション投資を始める際に頭金を多く入れることも一つの方法です。
入れた頭金の金額だけ元金を減らしてローンを組むことができますので、月々の返済額を少なくする効果があるほか、金利上昇対策にもなります。金利が上がった場合にこの方法だけで全てを対策できるわけではありませんが、少しでも最初に元金を減らしておくことで損害を少なくすることには繋がります。
5-2.繰上返済をして元金を減らす
繰上返済には残債の元金を減らす効果があります。繰上返済には残りの返済期間を短くする期間短縮型と、月々の返済額を減らす返済額軽減型とありますが、どちらも同様に元金を減らす効果が得られます。どちらを選択するかは、その後の運用の仕方に影響しますので、慎重にシミュレーションすることが大切です。
5-3.低い金利のローンに借り換えをして収支を改善する
借り換えは繰上返済する場合と同じように、月々の返済額を減らす効果があります。金利が上がったことで今のローンに不安を持ち、収支を改善したい、という場合には効果が見込めます。
ただし、借り換えをする際には再度審査が行われますし、今までのローンの解約や、新しいローンの保証料などの費用が発生しますので、そういった費用を支払ってでも借り換える効果があるのかをシミュレーションして取り組むようにしましょう。
5-4.固定金利のローンに借り換えて収支を安定させる
変動金利ローンから固定金利に借り換えをすることで、借入金利が固定されますので、その後再度金利が上がることがあっても返済額が増える心配はなくなります。
ただし、借り換え前に金利が上昇した場合は、固定金利の借入金利から上がる傾向があるため、借り換える際にはすでに高い金利になっている場合があります。そのため固定金利に借り換える際は、事前に長期的に見てメリットがあるのかどうかを慎重に検討した上で、なるべく金利上昇前に決断をすることが大切です。
例えば、借り換えシミュレーションができる「インベース」というサービスでは、オンライン上で不動産投資ローンの借り換えシミュレーションから借り換え手続きの代行まで一貫して行うことが可能です。インベースなら無料でWeb診断でき、以下の情報が盛り込まれた提案書をもらえます。
- 毎月の利息削減額
- 借り換えで得する金額の総額
- 借り換え時にかかる諸費用
インベースは、借り換え時に必要な「審査書類の取得」なども代行してくれ、融資の承認までサポートしてくれます。
【関連記事】不動産投資ローン診断「インベース」の評判・概要
まとめ
今は長期間金利が低い状態が続いていますので、今後いつ金利が上がってもおかしくない状態となっています。金利が上がってもすぐにはローン返済の負担は大きくなりませんが、元金の減りが遅くなったり、返済すべき金額が先延ばしになったりします。
マンション投資は数十年かけて行う長期投資ですので、問題を先延ばしにしても後々で負担をしなければいけなくなります。負担額によっては、結果的に投資が失敗で終わることに繋がることも考えられます。そのため金利が上がった場合は、長期的な視点からシミュレーションし、対応することが大切です。
【関連記事】不動産投資ローンを借り換えるメリット・デメリットは?借り換え手数料も解説
- 初心者向け無料セミナーを開催している不動産投資会社の比較・まとめ
- 入居率99%超・融資実績1%台など総合力が高いマンション投資会社の比較
- 新築マンション投資に強い不動産投資会社の比較・まとめ
- 頭金(自己資金)300万円以下で始められる不動産投資会社の比較・まとめ
- 頭金(自己資金)500万円以上で始められる不動産投資会社の比較・まとめ
- 頭金(自己資金)100万円以下で始められる不動産投資会社の比較・まとめ
- フルローンや低金利など融資に強い不動産投資会社の比較・まとめ
- サラリーマン・会社員に向いている不動産投資会社の比較・まとめ
- 中古マンション投資に強い不動産投資会社の比較・まとめ
- 入居率が高い(98%以上)不動産投資会社の比較・まとめ
西宮光夏
最新記事 by 西宮光夏 (全て見る)
- 投資用ワンルームマンションを売却するなら知っておきたい7つのこと - 2024年4月23日
- 低金利はいつまで続く?マンション投資で金利上昇に備える4つのポイント - 2023年4月21日
- 不動産投資セミナーのメリットや注意点は?オンラインで話が聞ける不動産会社も紹介 - 2023年1月8日
- 中古マンション投資のメリットや注意点は?役立つセミナーも紹介 - 2022年6月4日
- 収益不動産、購入するなら大手と中小どちらがいい? - 2022年1月10日