不動産投資ローン、繰り上げ返済はするべき?メリット・デメリットを比較

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繰り上げ返済は返済期間を短縮できるメリットがある一方、事業への融資という側面もある不動産投資ローンで繰り上げ返済をした方がいいのか、悩む方も多いのではないでしょうか。

そこで今回のコラムでは、不動産投資ローンの繰り上げ返済をするべきかどうか、メリットとデメリットを通して探っていきます。ぜひ参考にしてください。

目次

  1. 繰り上げ返済にはいくつかの種類がある
  2. 不動産投資ローンの繰り上げ返済をするメリット
    2-1.不動産投資ローンの利息の支払額を減らせる
    2-2.不動産投資のリスクを軽減できる
    2-3.金融機関からの信用が上がる
  3. 不動産投資ローンの繰り上げ返済をするデメリット
    3-1.手数料が掛かる
    3-2.投資効率を下げることに繋がる
    3-3.所得税が増える可能性もある
  4. 不動産投資ローンの繰り上げ返済をする際の注意点
    4-1.金利の高いローンから繰り上げ返済をしていく
    4-2.ローン完済後は抵当権抹消登記の手続きをする
  5. まとめ

1 繰り上げ返済にはいくつかの種類がある

繰り上げ返済とは、ローンの返済中に毎月の返済額とは別に返済をすることです。これによって借入金の元本を減らすことができるため、支払う利息を減らすことができ、返済期間を短くできるなどのメリットがあります。

この繰り上げ返済には大きく分けて2つの方法があります。それは、残額の一部を返済する一部繰り上げ返済と、すべてを返済する一括繰り上げ返済です。

また、一部繰り上げ返済には、繰り上げ返済後の返済期間を短縮する期間短縮型と、毎月の返済額を減らす返済額軽減型の2通りがあります。それぞれに特徴がありますので、次の表で確認しておきましょう。

繰り上げ返済方法 毎月の返済額 返済期間 利息軽減効果 メリット
期間短縮型 同じ 短縮 大きい 総返済額が減る
返済額軽減型 減額  同じ ややある 毎月の返済額が減る

ご自身の経営状況を確認して、どちらの方法を選択するのか慎重に検討しましょう。

2 不動産投資ローンの繰り上げ返済をするメリット

不動産投資ローンを繰り上げ返済するにはどのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく見てみましょう。

2-1 不動産投資ローンの利息の支払額を減らせる

前項でも紹介した通り、不動産投資ローンを繰り上げ返済すると借入金の元本が減らせます。ローンは元金を返済するだけではなく、お金を借りた使用料という意味合いを持つ利息を支払います。

この利息は金利と元本の大きさに対して決まるため、元本を減らすことができれば、その分支払う利息も減らすことができるのです。元本を減らせば減らすほど利息が減るため、繰り上げ返済をすることで総返済額を減らすことができるのです。

2-2 不動産投資ローンの金利変動リスクを軽減できる

不動産投資にはいくつかリスクがありますが、繰り上げ返済をすることで金利変動リスクを抑えることが可能です。変動金利でローン契約を締結した場合、景気の状況によって金利が上下するため影響を受けますが、借入金の元本を減らしておけば、金利が上下しても影響は小さくなります。

2021年8月現在、金融緩和政策によって不動産投資ローンの金利は過去と比較して非常に低い水準で推移しています。繰り上げ返済を行うことは、金利が上昇する時に備えたリスクヘッジとして有効な手段と言えるでしょう。

2-3 金融機関からの信用が上がる

繰り上げ返済で予定より早く不動産投資ローンを返済することで、金融機関に対して支払い能力や経営能力があることをアピールすることに繋がります。その他、新規ローンの審査では申込時点のその他の借入についても調査されますが、返済総額が減ることで返済比率が下がるため、新しいローン審査でもプラスに評価されるポイントとなります。

返済能力が高いことを金融機関に印象付けできれば、次の物件に対しての融資が得やすくなるのです。ひとつの物件だけではなく、2つ目、3つ目と増やしていくことを目標にしている場合、繰り上げ返済を行うことで借入金を減らしておくことにはメリットがあると言えます。

3 不動産投資ローンの繰り上げ返済をするデメリット

不動産投資ローンの繰り上げ返済にはデメリットもあります。それぞれ見て行きましょう。

3-1 手数料が掛かる

融資を借り入れるときは金融機関が「ローン返済計画書」や「ローン返済予定書」を作成します。しかし、繰り上げ返済を行うと、その通りに行かなくなり、新たに返済計画を作成することになります。こうした事務的な手続きが必要になるため、ほとんどの金融機関では繰り上げ返済をする際に手数料を徴収しています。

例えば、三井住友信託銀行の「アパートローンの商品概要説明書」では、下記のように手数料の金額も明記しています。

・繰上返済を行う場合は、以下の手数料または違約金をお支払いいただきます。
変動プラン(1)一部繰上返済 5,500円(税込み) 、(2)全額繰上返済 5,500円(税込み)

※引用:三井住友信託銀行「アパートローンの商品概要説明書

その他、固定金利を選択している場合は、繰り上げ返済ができないようになっています。ただし、違約金や損害金を支払うことで繰り上げ返済ができるようになります。

みずほ銀行の「アパートローン」には、下記のように記載されています。

固定金利選択方式および全期間固定金利方式・・・繰上返済は原則として行えません。当行が繰上返済を認める場合には、別途当行所定の方法により算出した損害金をお支払いいただきます。

※引用:みずほ銀行「アパートローン

繰り上げ返済をする場合は、前述した手数料と同様に違約金を支払っても総返済額が減額になるようにある程度の金額をまとめて行うようにしましょう。

3-2.投資効率を下げることに繋がる

不動産投資ローンの繰り上げ返済を行うと、手元の現金資産を減らすことになります。手元の現金が減ることで、その他の投資機会を失うデメリットがあります。また、繰り上げ返済によって不動産投資ローンによるレバレッジ効果が薄れ、自己資金効率(CCR)が低下します。積極的に投資効率を上げて行きたい場合、注意しておきたいデメリットと言えるでしょう。

その他、突発的な災害や事故に対応するために、ある程度の現金資産を手元に残しておくことはリスクヘッジに繋がります。2021年8月時点、市中金利が低金利の水準であることからも、繰り上げ返済を行いすぎてしまうとメリットよりデメリットが大きくなり、逆に投資に対するリスクを上げてしまう可能性がある点に注意しましょう。

3-3 所得税の負担が増える可能性もある

不動産投資ローンを返済する際に支払った利息は経費として計上できます。そのため繰り上げ返済をすると、支払う利息が減り経費が削減されるということになります。所得税などの課税対象額が増え、支払う税金が増える可能性があります。

不動産所得を求める計算式は下記のようになります。

不動産所得=家賃収入-必要経費

繰り上げ返済をすると利息の支払いを抑えることができますが、その分、税金の支払いが多くなる可能性がある点に注意しましょう。

【関連記事】不動産投資、確定申告の手順は?計上できる経費や適用できる控除も紹介

4 不動産投資ローンの繰り上げ返済をする際の注意点

これまでメリットとデメリットについて解説しましたが、繰り上げ返済をする際に注意しておきたい点も紹介します。

4-1 金利の高いローンから繰り上げ返済をしていく

不動産をいくつか所有している場合、あるいは複数のローンを抱えている場合は、ローンの金利や返済期間、残高などを考えてから繰り上げ返済するローンを選ぶ必要があります。

ポイントは次の2つです。

  • 金利の高いものから:金利が高い方から返済していくと、元本が早く減ることで、支払う利息も少なくなる
  • 残額の多いものから:同じ金利の場合、残額が大きい方が支払う利息が高くなるため、残額が多い方から返済する

複数のローンを抱えている場合は、繰り上げ返済をするにもコツがあります。手数料や違約金などもローンによって異なりますので、詳しく調べてから行うようにしましょう。

4-2 ローン完済後は抵当権抹消登記の手続きをする

不動産投資ローンの場合、通常は融資対象の不動産に金融機関が抵当権を設定しています。そのためローンの全額を繰り上げ返済する際は、抵当権の抹消登記を行う必要があります。ご自分で行う場合は手続きの手順などを確認しておきましょう。

抵当権を抹消する際は、金融機関から書類を預かり法務局で手続きをします。金融機関では書類を用意してくれますが、下記のものが必要になるので、漏れのないように確認しておきましょう。

  • 弁済証書:ローンを完済したことを証明する金融機関の書類
  • 抵当権抹消の委任状:抵当権者である金融機関に代わって抹消手続きを行うための委任状
  • 金融機関の資格証明書:抵当権者である金融機関の資格を証明する書類(必要ないケースもあり)

ご自身で行うことが難しい場合は司法書士などに依頼することもできます。

まとめ

不動産投資ローンの繰り上げ返済には返済比率を下げられるメリットがありますが、投資効率を下げてしまう点や、手数料・違約金が発生する可能性がある点はデメリットとなります。これらのメリット・デメリットを理解したうえで、繰り上げ返済をした方がいいのか、しない方がいいのか、判断していきましょう。

不動産投資を行う目的は各オーナーによって様々であり、物件の収益性やローンの残債・残年数によって繰り上げ返済を行うべきかどうかはケースバイケースと言えます。この記事を参考に、慎重に検討してみましょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。