今回は、国内企業が手がけるNFTマーケットプレイスについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- NFTマーケットプレイスとは
1-1. NFT マーケットプレイスで使用される仮想通貨 - 日本の新しいNFTマーケットプレイス
2-1. GMOアダム株式会社の「Adam byGMO」
2-2. CryptoGames株式会社の「NFTstudio」
2-3. LINE株式会社「NFTマーケットβ」 - まとめ
2021年に入ってからのNFTの盛況ぶりには凄まじいものがあります。3月には仮想通貨取引所コインチェックが、日本の取引所として初めてNFTマーケットプレイス「Coincheck NFTβ版」をローンチしました。
さらには、GMOインターネット株式会社、株式会社メルカリ、LINE株式会社、エイベックス・テクノロジーズなども、独自のNFTマーケットプレイスを構築しています。
6月30日にはLINE株式会社が「NFTマーケットβ」の提供を開始、6月16日にはGMOフィナンシャルホールディングス株式会社・GMOインターネット株式会社・株式会社サムライパートナーズなどの共同出資により「GMO アダム株式会社」を設立しNFTマーケットプレイスである「Adam byGMO」を8月にローンチする予定です。メルカリに至っては独自の仮想通貨メルコインを発行するための子会社を設立し、2022年のサービスインを予定しています。
NFTゲームのクリプトスペルズを開発するCryptoGames株式会社はNFTクリエイターのための事業展開を開始しました。さらに電通によるNFT事業の支援や、仮想通貨取引所であるビットポイントジャパンもNFT事業の取り組みを発表しています。
まさにNFTマーケットプレイスが乱立する様相を呈してきましたが、今回は日本で次々とオープンするNFTマーケットプレイスについて解説します。
①NFTマーケットプレイスとは
はじめにNFTマーケットプレイスについて簡単に解説します。
NFTマーケットプレイスとはNFT化された商品の売買や交換を行うネット上のプラットフォームのことです。NFTマーケットプレイスの多くはオークション機能があり、ヤフオクやメルカリなどに近いものとなります。
近い将来に個人のスマートフォン同士でNFTの取引が可能になるとも言われていますが、現状ではNFTの取引はマーケットプレイスで行われるのが一般的となっています。
NFT マーケットプレイスで使用される仮想通貨
現在のところ流通している多くのNFTは、イーサリアムのトークン規格の一つであるERC-721とERC- 1155を用いて発行されています。
そのため、マーケットプレイスでNFTを購入する際の決済通貨としてはイーサリアムやイーサリアム上で発行されたERC20規格のトークン(USDCやBAT等)が使われることが多くなっています。個別のマーケットプレイスや、コインチェックなどの取引所はIOSTなどイーサリアム以外の仮想通貨にも対応しています。
往々にして、ブロックチェーンゲームなどではそのブロックチェーンに固有の仮想通貨(あるいはトークン)が売買に使用されることもあります。
②日本の新しいNFTマーケットプレイス
次に2021年3月以降に日本に新たに登場したNFTマーケットプレイスと、間もなくローンチするNFTマーケットプレイスの中から代表的なものを解説します。
GMOアダム株式会社の「Adam byGMO」
GMOフィナンシャルホールディングス株式会社・GMOインターネット株式会社・株式会社サムライパートナーズの出資により設立されたGMOアダム株式会社は、2021年8月にNFTマーケットプレイスである「Adam byGMO」 をローンチする予定です。
「Adam byGMO」で取り扱われる予定のNFTコンテンツはスポーツやデジタルアート、音楽、ゲーム、アイドル、電子書籍などで、ユーザーは証明書付きのデジタルコンテンツをNFTトークンとして購入できるほか、オークション形式の売買もできる予定です。
コンテンツ内容としては、世間一般に広く知られている著名人のNFTがラインナップできるように業界各方面との提携が進んでいます。大手出版社である幻冬舎とは、坂本龍一氏、村上龍氏、原田マハ氏、西野亮廣氏をはじめとする著名クリエーターのNFTを発売予定です。また、日本初の格闘ジャンルとして世界的にも有名な「K-1」と全面的に提携しスポーツ関連のNFTを発売する予定で、これは、スポーツ関連NFTで成功事例となっている「NBA TOP SHOT」を参考にしたコンテンツになりそうです。
さらに将来的には、証券や保険、不動産、チケットなどにも対象ジャンルを拡大する予定で関連企業に参加を呼びかけています。
GMO アダム株式会社では、通販サイトのように一気通貫で利用できる「最高のNFTマーケットプレイスをスタートする」と意気込んでおり、NFT発行や決済、転送に関する関連の手数料は業界最安クラスとし、ベータ版スタート時で日本語、英語、中国語(簡体字)の3カ国語に対応、さらにイーサリアム以外のプロトコルへの対応といった新技術の取り込みも行なっていく予定です。
決済にはイーサリアムをはじめとする複数のERC20規格の仮想通貨を中心に、法定通貨の使用も可能とする予定です。サッカー関連のNFTで世界的大手のSorareのように、仮想通貨に関心のない層の取り込みも狙える戦略をとっています。
コンテンツ戦略やその他のビジネス戦略を考慮すると、「Adam byGMO」が日本のNFT マーケットプレイスとしてベンチマークされる可能性は高く、NFTや仮想通貨が市民権を得るための功労者となる可能性もあると感じています。
CryptoGames株式会社の「NFTstudio」
日本最大級のブロックチェーンゲームであるクリプトスペルズを展開するCryptoGames株式会社は、3月にイラストレーターが簡単にNFTを発行できるNFTマーケットプレイス「NFTstudio」をローンチし、NFT市場のクリエイターサイドを支援しています。
NFTの発行にはトランザクション手数料としてガス代が必要ですが、NFTStudioではMatic Network社が提供するL2ソリューション、polygon(Matic Network)を採用しており、トランザクション手数料をNFTStudioが負担することでクリエイターは無償でNFTを発行できます。
また、NFT作品をクレジットカードで購入できる国内初のNFTマーケットとなります。
他にもコンテンツ事業者向けにNFTショップを構築できる「NFTStudioOEM」の提供を開始し、マルチチェーンやクレジットカード決済に対応したNFTサービスの提供を始めています。
LINE株式会社「NFTマーケットβ」
LINEは6月30日に「NFTマーケットβ」の提供を開始しました。こちらは、2020年8月より提供を開始していたLINEの独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」を利用するコンテンツ事業者が発行するNFTを取り扱う方針です。
「LINE BITMAX Wallet」でLINEアカウント一つで「LINE Blockchain」上で発行されたNFTアイテムを含むデジタルアセットの管理が可能となり、ユーザーは煩雑な秘密鍵の管理なしにブロックチェーンサービスを利用することができます。
ベータ版の段階では、コンテンツ提供者がこのサービスに提供するNFTアイテムのみ出品・購入が可能で、利用時の手数料であるコンテンツ料は無料です。
また、「LINE Blockchain」ではガス代などのネットワーク利用料はかかりません。決済に利用できる仮想通貨はLINEの独自通貨「LINK」となります。
「LINE Blockchain」に参加している代表的な企業は、ブロックチェーンゲームを提供している企業が多く、これらの企業が発行するゲームアイテムなどのNFTを取り扱うマーケットプレイスとなっています。
③まとめ
今回解説した事例の他にも、エイベックスによる音楽に関するNFTマーケットプレイスの展開や株式会社メルカリが独自の仮想通貨メルコインを発行し、新たなエコシステムを構築しNFTも何らかの形で関連してくる予定など、気になる案件がいくつかあります。NFTの動向に関しては、今後も新たな情報が入り次第お伝えしていきたいと思います。
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中島 翔
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