不動産サービス大手のCBRE(日本本社:東京都千代田区)は5月16日、2019年1月~3月(1Q)の投資市況動向調査の最新調査結果を発表した。調査期間は3月14日~4月11日で有効回答数は136人。それによると、世界の事業用不動産投資額は1900億ドル(約21兆円)で前年同期比16%減となった。
企業買収や大型の取引の減少が主因で、株式市場が18年末に下落したことを受け、投資家が借入れコストの上昇や世界景気の後退を懸念したとみられる。
地域別に見ると、全体の半分以上を占めた米州での投資額は対前年同期比15%減の1020億ドル(約11兆円)。また、欧州・中東・アフリカ(EMEA)は同23%減の620億ドル(約7兆円)、アジア太平洋地域(APAC)は同1%減の270億ドル(約3兆円)となった。
日本の事業用不動産投資額は7610億円(同30%減)。第1四半期の投資額としては、13年以降で最低となった。J-REIT、その他国内投資家、海外投資家のいずれの投資額も減少で、額が最も大きかったのはJREITだった。ポートフォリオの質の改善を目的とした取引が多く、公募増資による取得が大幅に減少したことが背景にある。
同日、CBREが四半期ごとに実施する「不動産投資に関するアンケート-期待利回り(19年4月時点)」が発表された。東京の期待利回り(NOIベース)の平均値は、前期から横ばいとなった商業施設とマンション(ワンルーム)を除く4アセットタイプで低下、最低値を更新した。地方都市のオフィス利回りも4都市(大阪、名古屋、仙台、福岡)で最低値を更新している。
19年4月時点での東京Aクラスビルを対象としたCBRE短観は、全項目で悪化。悪化の要因は「変わらない」の回答率が増加したことによる。ただし物流施設(首都圏、マルチテナント型)は、「賃料」「空室率」「期待利回り」の3項目のDIは改善した。悪化した残り4項目で悪化幅がもっとも大きかったのは「投融資取り組みスタンス」DI(同12ポイント減)で、「現状を維持」の回答率が8ポイント増加したことが要因。
19年1月の投資家意識調査では、投資(取得)意欲は18年と比べて衰えていないという結果だった。また、今期の期待利回りやCBRE短観を見ても「Q1に投資意欲が衰えたとは言えない」とする。しかし、マーケットに出る物件が少なく、不動産価格が高止まりしていることに加えて、世界経済に対する懸念が高まっていることから「投資家はより選別的になっている」と指摘。一方、19年の売却意欲は前年よりやや低下しており、CBREは「タイトな需給バランスが続くことにより、2019年の総投資額は伸び悩む可能性がある」と予想している。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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