アクサ・インベスト・マネージャーズ株式会社は5月14日、機関投資家向け情報「新型コロナウイルスのマクロ経済および運用戦略への影響に関するアップデート」を更新した。「ロックダウン解除後を見据えて」をテーマに、ロックダウン(都市封鎖)の解除が始まった欧州の景気動向、さらに2020年下期の株式市場を予測している。アクサ・グループ・チーフ・エコノミストのジル・モエック氏は冒頭で、緩和の動きについて「2020年下期の好転を引き続き予想しているが、景気回復を損なう可能性がある3つの『反動』を懸念している」と提起した。
第一の反動は、ユーロ圏の格差に端を発した緊張の再燃。前回に続き、ドイツ連邦憲法裁判所(GCC)が「ECB(欧州中央銀行)が各国のECBに対する『比率原則』を順守しなければ、ECBの量的緩和プログラムに対するドイツ連邦銀行の参加を一部中止させる」と判断したことに警戒を示した。第二の反動は、依然軟調な新興国。「大半の新興国は景気刺激策を導入しているが、先進国の刺激策に比べるとその効果は限定的。通貨の急落は、外貨建て債務を通じて金融の安定性を脅かすだろう」と警告する。第三の反動は、米中の緊張再燃だ。「トランプ米大統領は選挙対策の誘惑にかられている。中国は先進国より早くロックダウンを解除したが、経済は依然停滞したまま。中国はこれまでのところ全面的な景気刺激策を打ち出しておらず、米国との緊張関係再燃の見通しにより、中国政府はさらなる財政および金融刺激策を取る」(モエック氏)可能性がくすぶっている。
アクサIM 最高投資責任者のクリス・アイゴー氏は「現在の株価水準と経済状況には大きな乖離がある」と指摘する。「GDPの縮小、失業者の大幅増、過去最高の債務水準見通しは、3月23日以降の主要株価指数の20%~30%上昇とは相いれない。先週の金曜に発表された4月の米雇用統計によれば就業者数が2000万人減少したが、米株式市場は3.5%の上昇で終えた。このことから、株式は割高になっており、投資家は手じまい売りをすべきだと結論づける人もいる」という。
アイゴー氏はこれに異を唱える。「ロックダウンが経済活動や雇用に大きな悪影響を与えたことは明らか。一方、株式市場の機能は、企業収益に基づく将来のキャッシュフロー予想をベースに資本を配分することで、現在の市場水準は今後の動向を織り込んでいる。株式市場が正しいかどうかは景気回復によって決まる」という理由だ。さらに「それ以外にも経済と株価の乖離を合理的に説明できる。新型コロナ危機の当初と比較すると、S&P500指数銘柄の時価総額は2兆5000億ドル減少している。一方、米国経済は今年約9000億ドル減少すると当社は予想している」と、直下の乖離については意に介さない。
さらに「株式市場の構成は経済全般とは異なる。4月の米雇用統計によれば、失業が最も多かったセクターは、レジャー・ホスピタリティー(ホテルやレストランを含む)、教育、ヘルスサービス、小売り。これらのセクターが株式市場で占めるウェイトは大きくなく、成長を生み出す主要産業ではない。米国でパフォーマンスが最も良いセクターは、ワイヤレスサービス、インターネット小売、食品小売、ネットベースの家庭向けエンターテインメント。1株当たり利益が良好なセクターは、ヘルスケア(バイオテクノロジーおよび医薬品)、生活必需品、IT、その他消費者サービス」と比較。「株式市場は合理的だ。投資家は新型コロナの悪影響を最も受けていないセクターや、消費者の購買動向や企業のビジネスモデルの変化の恩恵を最も受ける可能性があるセクターに資金を投じている。状況はアクティブ運用にとっては追い風であり、アクティブ戦略は各株式セクターの変化の恩恵を享受できる」とアクティブ運用を推した。
【関連サイト】アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社
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