2024年1月から新しいNISAがスタートしており、AIを活用して投資の提案や運用代行を行うロボアドバイザーサービスで新NISAを活用したいと考えている方も少なくないのではないでしょうか。
ロボアドバイザーサービスによっては、新NISAの対応を見送っているケースもあります。そこで本記事では、NISA対応のロボアドバイザー5社の比較や、ロボアドバイザーでNISAを活用するメリット・デメリット、サービスの選び方について詳しく解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用・投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2024年1月時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- ロボアドバイザーとNISA
1-1.ロボアドバイザーとは
1-2.新NISAとは - NISA対応のロボアドバイザーのメリット・デメリット
2-1.NISA対応のロボアドバイザーのメリット
2-2.NISA対応のロボアドバイザーのデメリット - 新NISAに対応しているロボアドバイザーの比較
3-1.WealthNavi(ウェルスナビ)
3-2.SUSTEN(サステン)
3-3.投信工房(松井証券)
3-4.らくらく投資(楽天証券) - 新NISA対応のロボアドバイザーの選び方
4-1.投資一任型かアドバイス型か
4-2.運用にかかるコストはいくらか
4-3.自動積立機能はあるか
4-4.運用実績は良好か - まとめ
1.ロボアドバイザーとNISA
最初にロボアドバイザーとNISAの基本について解説します。
1-1.ロボアドバイザーとは
ロボアドバイザーとは、AIを活用して投資の提案や運用代行などを行う金融サービスです。ロボアドバイザーには「アドバイス型」と「投資一任型」の2種類のタイプがあります。
アドバイス型は、ユーザーに対して資産配分などについて提案や助言だけを行うタイプのことです。アドバイス型のロボアドバイザーの多くは無料で提供されています。ロボアドバイザーの提案した運用の実行はユーザー自身で行う必要があります。
投資一任型はロボアドバイザーの提案内容をユーザーが承認すれば、運用を代行してくれるサービスです。利用にあたっては、所定の手数料がかかります。商品の買い付けだけでなく、定期的なリバランスなどもしてもらえます。
1-2.NISAとは
NISA(少額投資非課税制度)は投資で得た運用益に税金がかからない制度です。従来のNISAは2023年12月で終了し、2024年からは抜本的に拡充された新NISAがスタートしています。新NISAではつみたてNISAはつみたて投資枠に、一般NISAは成長投資枠になります。
新NISAの概要
口座開設期間 | 無期限 |
非課税期間 | 無期限 |
非課税投資枠(年間) | 成長投資枠: 240万円 つみたて投資枠:120万円 |
非課税保有限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200) |
制度の併用 | 可能 |
出典:金融庁「新しいNISA」
NISA対応のあるロボアドバイザーを利用すると、投資枠上限までの資産運用については、運用益に対して課税されません。
2.NISA対応のロボアドバイザーのメリット・デメリット
2-1.NISA対応のロボアドバイザーのメリット
お任せで新NISAを活用した資産運用ができる
ロボアドバイザーはユーザーが資産運用を任せられるため、時間や手間をかけずに投資できます。投資一任型であれば、運用も代行してもらえるため、ユーザーがすることはほとんどありません。
アドバイス型であっても、それほど手間なく買い付けができる仕組みになっているサービスがほとんどです。新NISAで拡充された投資枠や投資対象について十分に調べる時間が足りない方や、投資初心者の方でも始めやすいサービスであると言えるでしょう。
初心者でもNISAを始めやすい
ロボアドバイザーは簡単な質問に答えるだけでユーザーに合ったポートフォリオを提案してもらえるため、初心者の方でも銘柄選びに悩むこともありません。
たくさんの選択肢の中から自分に合った銘柄を選ぶことは、初心者の方にはハードルが高いといえます。そのために、NISA口座を開設しただけで、なかなか投資に踏み切れない方もいるでしょう。
そのまま時間が過ぎてしまうことは、資産形成の機会損失といえます。特に投資一任型のロボアドバイザーであれば運用も代行してもらえるため、初心者にありがちな機会損失を避けられます。
2-2.NISA対応のロボアドバイザーのデメリット
NISA対応のロボアドバイザーでの投資のデメリットも見ておきましょう。
他の金融機関でNISA口座を開設したことがある場合は変更が必要
すでに他の金融機関でNISA口座を開設している人は、NISA口座の金融機関変更を行う必要があります。他の金融機関でNISA口座を開設したことがある場合、「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」の発行を申請し、「通知書受付番号」を送付する必要があります。
ただし、年初から一度でも買い付けをすると、その年の口座変更はできません。たとえば、2023年にNISA口座で運用商品を買い付けた人は、最短で2024年からNISA口座でロボアドバイザーを利用できるようになるのです。
ロボアドバイザーは少額から投資することができるサービスが大半です。他の金融機関でNISAを利用している人や切り替えを検討している方は、運用成績を比較してみる機会としてロボアドバイザーを利用してもよいでしょう。
自分で銘柄選びをした場合と比較してコストがかかる
ロボアドバイザー投資の手数料は、NISAで人気のあるインデックスファンドなどの信託報酬より高めです。ロボアドバイザーの平均的な運用手数料は運用資産の1.0%程度ですが、人気のあるインデックスファンドの信託報酬は0.1%程度のものもあります。
運用に慣れていてコストを少しでも抑えたいと考える人には、手数料をデメリットと感じる方もいるでしょう。
3.NISA対応のあるロボアドバイザーの比較
NISA対応のあるロボアドバイザーには、以下のような種類があります。それぞれのサービスの特徴も解説します。
タイプ | 手数料(税込み) | 最低投資額 | |
---|---|---|---|
WealthNavi | 投資一任型 | 預かり資産の1%(現金部分を除く、年率・税込1.1%) 3,000万円を超える部分は年率0.55%(現金部分を除く、年率・税込) |
1万円 |
SUSTEN | 投資一任型 | 年率0.08~0.3% | 1万円 |
投信工房 | アドバイス型 | 年率0.35% | 100円 |
らくらく投資 | 投資一任型 | 年率約0.4915% | 100円 |
3-1.WealthNavi(ウェルスナビ)
WealthNaviはウェルスナビ株式会社が提供する代表的なロボアドバイザーサービスで、預かり資産、運用者数ともにNo.1を誇ります(※一般社団法人日本投資顧問業協会「契約資産状況(最新版)(2023年3月末現在)「ラップ業務」「投資一任業」」をもとにネット専業業者を比較 ウエルスアドバイザー社調べ(2023年6月時点))。
WealthNaviは全自動で運用を任せられる、投資一任型のロボアドバイザーです。WealthNaviには、以下のような特徴があります。
- 全自動で資産運用を代行してくれるロボアドバイザー
- 「おまかせNISA」で一般NISAに対応
- 毎月1万円から積立投資が可能
- 2年以上利用しているユーザーの9割以上がプラスの損益
WealthNaviは新NISAでは、自動積立の場合、つみたて投資枠と成長投資枠を活用しながら、資産の買い付けを行います。クイック入金および振込入金の場合は、成長投資枠のみで資産を購入します。
おまかせNISAの手数料
ウェルスナビのおまかせNISAを自動積立に設定すると、NISA口座全体の預かり資産の年率手数料が0.63%~0.67%(税込0.693%~税込0.737%)になります。通常のウェルスナビの手数料は預かり資産の1.1%(現金部分を除く、年率・税込。3,000万円を超える部分は年率0.55%(現金部分を除く、年率・税込))であるため、手数料を低く抑えながら投資一任型のロボアドバイザーを活用することが可能となっています。
下記、自動積立を行ったリスク許容度ごとのおまかせNISAの預かり資産の年率手数料です。
リスク許容度 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 | NISA口座全体(試算) |
---|---|---|---|
1 | 0% | 0.7%(税込0.77%) | 0.63%(税込0.693%) |
2 | 0% | 0.8%(税込0.88%) | 0.64%(税込0.704%) |
3 | 0% | 0.9%(税込0.99%) | 0.63%(税込0.693%) |
4 | 0% | 1.0%(税込1.10%) | 0.67%(税込0.737%) |
5 | 0% | 1.0%(税込1.10%) | 0.67%(税込0.737%) |
なお、積立設定をしない場合には成長投資枠にのみ入金され、リスク許容度1、2、3についてはそれぞれ0.7%、0.8%、0.9%に引き下がります。
※⾃動積⽴のみの⼊⾦で、⼊⾦後に「つみたて投資枠」と「成⻑投資枠」の残⾼の割合が変わらなかった場合の試算。上記の通り「成⻑投資枠」はリスク許容度ごとに⼿数料が異なります。また、相場の変動により資産評価額が変動した場合、新しいNISA⼝座全体の⼿数料も変動します。
おまかせNISAのリバランス
WealthNaviのおまかせNISAでは、以下のようにリバランスが行われます。
- 定期リバランス(半年に1回):NISA口座の資産を売却しない
- 臨時リバランス(最適な資産配分から5%以上乖離した場合):通常の口座での資産売却を優先し、必要な場合にNISA口座からも売却
- リバランス機能付き追加投資・一部出金:通常どおりリバランスを実施
【関連記事】ウェルスナビ「おまかせNISA」のメリット・デメリットは?投資信託との比較や口座開設の手順、必要書類も
3-2.SUSTEN(サステン)
SUSTEN(サステン)は株式会社sustenキャピタル・マネジメントが提供する、投資一任型のロボアドバイザーサービスです。SUSTENの最大の特徴は、利益が出たときだけ手数料が発生する「完全成果報酬型」である点です。
また、日本で唯一の投資信託の運用会社が提供する直販型のサービスでもあります。SUSTENには、以下のような特徴があります。
- 最新投資理論に基づき世界中の金融商品への分散投資
- 新NISAに対応
- 実質最大0.2%の手数料で利用が可能
SUSTEでは実質最大0.2%の手数料での利用が可能であり、低いコストで新NISAを活用可能です。
SUSTEN新NISAの手数料
SUSTENの新NISAの手数料は投資対象から発生する実質的な費用も含んで年率0.08~0.3%(税込)となっています。
加えて、長期利用還元も実施されており、NISA口座では1年以上出金がない場合は最大年率0.1%キャッシュバックされます。長く利用すれば、実質的にNISAは年率0.2%以内でサービスの利用が可能です
ただし、手数料に関しては投資信託の種類の追加によっては上限が変更される可能性があるとしており、キャッシュバックについてもサービス内容のアップデートによって変更になる可能性があります。
SUSTEN新NISAの「節枠機能」
SUSTENの新NISAでは、自動で節枠される点が特徴的です。NISAでは投資できる限度額が設定されていますが、SUSTENの節枠機能ではこの枠を有効利用することができます。
節枠機能の仕組みは、市場悪化時に買い直しを行い、翌年のNISA枠を圧縮させるというものです。これにより、実質的にNISAの枠を拡大させる効果があり、平均的な投資家で140万円ほどの増枠効果が期待できると試算しています。
3-3.投信工房(松井証券)
投信工房は松井証券が提供する運用のポートフォリオやメンテナンスの提案をしてくれる、アドバイス型のロボアドバイザーサービスです。投信工房では、「成長投資コース」として新NISAの成長投資枠に対応しています。
アドバイス型なので投資信託の買い付けはユーザーが行う必要がありますが、リバランス機能があり、見直しの提案もしてくれます。投信工房の特徴は、以下のとおりです。
- 対象となる投資信託の信託報酬が安い
- リバランス機能あり
- 100円から積立投資ができる
アドバイス型のため手数料が非常に低いという点が特徴的で、モデルポートフォリオのコストは最大年率0.16%(税込)の信託報酬のみとなっています。
3-4.らくらく投資(楽天証券)
楽天証券のらくらく投資は、投資一任型のロボアドバイザーサービスです。らくらく投資は一般NISA・つみたてNISAに対応していて、楽天カード決済も可能です。らくらく投資には、以下のような特徴があります。
- 毎月100円からの少額投資が可能
- 一般NISA・つみたてNISAに対応
- スマホ特化サービスなのでスマホがないと使えない
- カード決済など入金方法が多く、ポイント投資も可能
- リバランスがファンド内で行われる
らくらく投資は投資コースごとに買い付けるファンドが決まっていて、リバランスもファンド内で行われます。そのため、リバランスでNISAの非課税枠を使ってしまうことはありません。
らくらく投資の手数料
らくらく投資の手数料は通常の投資信託のように信託報酬として発生します。2024年1月時点で管理費用(含む信託報酬)は0.4915%に設定されており、投資一任型のロボアドバイザーとしては低めの水準となっています。
4.NISA対応のロボアドバイザーの選び方
NISA対応のロボアドバイザーを選ぶ場合に、比較したいポイントを解説します。
4-1.投資一任型かアドバイス型
ロボアドバイザーにはポートフォリオの提案までを行うアドバイス型と、運用代行やリバランスも行う投資一任型があります。投資一任型を選ぶと、手間をかけずに運用を任せられます。
一方、アドバイス型は証券会社や金融機関が提供しており、ロボアドバイザーとしての手数料自体は無料で利用できるサービスがほとんどです。(※信託報酬などファンドの手数料がかかります)提案された運用方法を実行できる方には向いたサービスとなっています。
4-2.運用にかかるコスト
ロボアドバイザーの運用手数料はあまり高いと利益を削られてしまうため、できるだけ安いものを選びましょう。平均的な運用手数料は、預かり資産の1%程度です。SUSTEN(サステン)のように、資産の残高や運用期間の長さに応じて割引のあるロボアドバイザーもあります。
4-3.自動積立機能
自動積立機能は、決められた日に指定口座からお金が引き落とされて積み立てる機能です。自動積立機能を利用できれば入金忘れの心配がなくなり、自動的に買い付けが行われます。
4-4.運用実績
ロボアドバイザーに運用を任せる場合、長期的に見て運用成績が良好なサービスであるかも重要です。各ロボアドバイザーは運用実績を公表しています。
運用実績を見るポイントとしては、コロナショックやウクライナ侵攻のような大きな経済停滞・リセッションが起きた時の指標に注目してみましょう。ロボアドバイザーはリバランスによってリスク資産の入れ替えを自動で行っている点がメリットであり、全体経済が後退している時の成績を検証することで適切なポートフォリオが組まれているかどうかを推し量ることができます。
しかし、過去の実績は投資判断をするうえでの参考とはなりますが、将来の運用成果を約束するものではありません。あくまでも参考としてとらえ、手数料やサービス内容なども含めて総合的に判断されていくと良いでしょう。
まとめ
NISA対応のロボアドバイザーは、NISAで運用を始めたいけれども商品選びで先に進めない人などに向いた投資サービスとなっています。また、忙しくて運用に時間をかけられない人の資産形成の助けにもなるでしょう。
2024年1月から始まった新NISAに対応するロボアドバイザーでは、リバランス機能を使った成長投資枠の積極活用も可能となっており、各社の強みを活かしたサービスが展開されています。運用実績や手数料を比較しながら、検討されていくと良いでしょう。
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松田 聡子
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