アパート経営を順調に進めるうえで、土地選びは重要な要素です。土地選びの着眼点は大きく分けて、土地がある場所である「立地」と土地自体の特性に分けられます。土地なしでアパート経営を始める場合、土地を購入して新築する方法のほか、新築・中古の建売物件を購入するのも一案です。
今回の記事では、アパートにおける土地選びと土地なしからアパート経営を始める方法を解説します。また、後半ではアパート開発の実績が豊富で、土地なしからでも不動産投資を始められる不動産会社も2社紹介します。
目次
- アパート経営の立地選びのポイント・好立地の条件
1-1.駅までの距離が近い|最寄駅が便利
1-2.周辺に日常利用する商業施設が豊富
1-3.若年層が多く将来も人口流入が期待できる
1-4.公共施設へのアクセスが良い
1-5.治安・生活環境が良い
1-6.災害リスクが低く、対策が可能
1-7.ターゲットごとの重要なポイントも把握しておく - アパート経営に適した土地の広さ・形状・特徴
2-1.60坪程度以上の面積が理想
2-2.東西に長い整形地
2-3.硬質地盤である - 土地なしからアパート経営を始める方法
3-1.大まかに投資するエリアを決める
3-2.更地か建売かを検討する
3-3.複数の不動産会社に相談しながら比較検討する
3-4.不動産売買契約・金消契約・引き渡し - 好立地の新築アパートの開発・販売・管理を手掛ける不動産会社
4-1.シノケンプロデュース
4-2.アイケンジャパン - まとめ
1 アパート経営の立地選びのポイント・好立地の条件
アパート経営を始める際に立地選びは特に重要です。入居者を獲得しやすい立地選びで重要なポイントは次のとおりです。
- 駅までの距離が近い|最寄駅が便利
- 周辺に日常利用する商業施設が豊富
- 若年層が多く将来も人口流入が期待できる
- 公共施設へのアクセスが良い
- 治安・生活環境が良い
- 災害リスクが低く、対策が可能
- ターゲットごとの重要なポイントも把握しておく
それぞれのポイントについて、詳しくみていきましょう。
1-1 駅までの距離が近い|最寄駅が便利
堅実にアパート経営を進めるなら、駅までの距離が近い物件を選ぶのが一つの方法です。駅から近ければ、通勤・通学・買い物などさまざまな外出に鉄道を利用できるため、利便性が高く入居者を獲得しやすいと期待できます。
さらに、最寄駅の利便性にも着目しましょう。例えば、その都市を代表するターミナル駅に乗り換えなし、短い乗車時間でアクセスできる駅の方が好まれる傾向にあります。そのほか、始発駅、快速停車駅なども、相対的に利便性が高いといえるでしょう。
1-2 周辺に日常利用する商業施設が豊富
徒歩圏に、日常利用するような商業施設があった方が利便性が高いと言えます。例えばコンビニがすぐそばにあると、夜間や休日に急に必要なものが生じてもすぐに買いに行けるため便利です。
また、スーパーや大型のドラッグストア、ショッピングモールなどが近くにある点も、アピールポイントの一つとなります。
1-3 若年層が多く将来も人口流入が期待できる
都市圏で物件を選べば、人口が大きい地域を自然と選ぶことになりますが、さらに一歩進んで人口構成にも着目しましょう。
ワンルームなどの単身者向けアパートなら、基本的には若い人が多い地域の方が堅実にアパート経営ができるでしょう。一方で、高齢化が進む地域でも、高齢者をターゲットとして経営を進めることは可能です。
また、現在だけでなく、将来の流入や人口の見通しを確認しておきましょう。若い人の流入が今後も期待できる、人口減少が進みにくい地域の方が、将来にわたって賃貸需要を獲得しやすいと考えられます。
1-4 公共施設へのアクセスが良い
病院、役所や図書館といった公共施設へのアクセスが良い立地の方が入居需要を獲得するうえではプラスに働くでしょう。全ての施設が徒歩圏にあるのは困難ですが、せめて急病時にかかることのできる病院は近くにあるのが望ましいでしょう。
そのほかの施設は、公共交通で1本で行けるなど、徒歩以外のアクセスの利便性なども見るのが一つの考え方といえます。
1-5 治安・生活環境が良い
治安の良い街の方が安心して暮らせるため入居者の方には好まれます。ただし、犯罪発生率が高くなくとも、深夜営業の店舗が多い、繁華街の近くである、騒音があるなど、生活環境の面で課題がある物件はあまり好まれないでしょう。住宅地で落ち着いた地域の方が、生活環境は良い場合が多いと考えられます。
1-6 災害リスクが低く、対策が可能
災害リスクが低い、せめて対策可能な立地を選びましょう。いくつかの災害リスクは、立地によって変化します。
例えば窪地や低地は浸水リスクが高く、海岸沿いは津波のリスクがあります。その他、急坂や崖の麓は土砂崩れなどのリスク、木造物件が密集するエリアは火災のリスクが高い場合もあるでしょう。
すべての災害リスクがゼロになる土地選びを行うことは現実的ではありませんが、物件を比較しながら相対的にリスクの低い場所を探すのが一つの方法です。
また、どうしても排除できなリスクについて対策可能かを考えておくことも大切です。アパートが加入できる損害保険の種類は、「住宅火災保険」か「住宅総合保険」です。対象の災害が異なっており、大きく以下のように分けられます。
火災保険の種類 | 補償内容 |
---|---|
住宅火災保険 | 火災だけではなく、落雷、破裂・爆発、風災・雹災・雪災も対象となっており、建物および家財に対して補償を受けられます。 |
住宅総合保険 | 住宅火災保険の補償範囲に加えて、洪水や床上浸水、水漏れ、盗難、水災などによる被害に対して補償を受けられます。 |
「住宅火災保険」はアパートに対応する標準的な内容で、火災リスクに備えたい場合に選ばれやすい保険です。一方、「住宅総合保険」はより広い範囲の災害に対応している保険で、特に水害による災害が発生しやすいエリアのアパートには適していると考えられます。
このほか、特約を追加することで火災による損害を手厚くカバーすることができます。例えば、家賃補償特約特約は火災などで入居者の確保が難しい場合に賃料収入を補償してくれる特約で、火災発生時の損害を抑えることができます。
1-7 ターゲットごとの重要なポイントも把握しておく
たとえば次のように、入居者のターゲットによって着眼点が異なります。
若年層の単身者
- 駅までのアクセスが良い、さらにオフィス・学校へ通いやすい
- 普段使いの商業施設が豊富
ファミリー層
- 学校が周囲にある
- 静かで快適に生活できる
- 普段使いの商業施設が豊富
高齢者
- 公共施設(特に病院)が周囲にある
- 静かで快適に生活できる
- 普段使いの商業施設が豊富
自身のアパート経営における入居者のターゲットを明確にしたうえで、ターゲットが好む立地をイメージして土地探しを進めましょう。
2 アパート経営に適した土地の広さ・形状・特徴
土地選びでは立地のほかに、土地自体の形状や特徴も見ておくとよいでしょう。ある程度の広さがあり、整形地で硬質地盤の土地が理想です。
2-1 60坪程度以上の面積が理想
土地の面積はある程度広い方が良く、60坪以上が理想です。アパートの区画数や建物の規模は、土地の面積の制約を受けます。ほかの建築条件や土地の形にもよりますが、60坪程度あれば8区画程度のアパートを建てられる可能性が高く、一定の収益性が期待できます。
区画数が少なければ、一棟あたりの賃料収入が少なくなるだけでなく、1件の空室が収益全体に与えるインパクトが大きくなり、リスク分散効果も薄れてしまいます。8区画以上というのは、リスク分散や収益性の観点から程よい目安と言えるでしょう。
2-2 東西に長い整形地
土地の形も重要で、理想は東西に適度に長い長方形の成形地です。道路に2m以上接しており、四角形であれば大きな問題はありません。中でも東西に長い土地の方が南向きに窓やバルコニーを設置した物件を建てやすく、より理想的と言えます。
反対に、不整形の土地ではアパートの規模が小さくなり収益性に問題を抱えたり、建築基準を満たせなくなるリスクがあります。例えば、道路に面している部分が狭く狭い通路の奥に敷地が広がっている「旗竿地」のような土地は、細長い部分に建物を建てられない分、実際に建設に使えるスペースが限られてしまいます。三角形など特殊な形状をした土地も同様です。
一方で不整形地は、整形地と比較すると土地価格や固定資産税が安くなり、アパートの建築に問題が無ければ高い収益性を見込みやすい土地とも言えます。不整形地でのアパート経営を検討する際は、実際の土地の形状と建築会社との相談のうえ、慎重に検証されていくのが良いでしょう。
2-3 硬質地盤である
地盤が硬く強固な土地の方が望ましいと言えます。アパートは長期で保有するケースが多いため、地盤リスクの低い状態で運用できる物件が理想です。
土地が軟弱だと地盤沈下や液状化などのリスクが高いと言えます。当初は住み良いアパートも、これらの要因で傾いてしまえば住むのが難しくなるでしょう。地盤の質は、インターネット上の情報等で見るだけでは判断できないこともあります。契約の前に、不動産会社などに確認しておくと良いでしょう。
3 土地なしからアパート経営を始める方法
土地なしからアパート経営を始める方は決して珍しくありません。大きく分けて2つの方法でアパート経営を始められます。
3-1.大まかに投資するエリアを決める
どのようなエリアでアパート経営を始めるのかエリアを決めましょう。アパート経営の管理は管理会社に任せることができるため、オーナーの居住地から離れた遠隔地での投資も可能となっています。
自分が首都圏外に住むのであれば、首都圏、次いで大阪・名古屋の圏内が有力候補となります。これらの地域は人口・商業施設ともに密集していて、賃貸需要も見込みやすいエリアです。中長期的に見ても他の地域よりも人口減少に転ずるリスクは低いと言えるでしょう。また、交通網が発達しているため、比較的容易に利便性の高い地域・物件を見つけることが可能です。土地勘がないなかでも物件を見つけやすいエリアと言えます。
また、三大都市圏は航空・新幹線など遠距離への交通網も発達しているため、遠隔地としてアパートがある場所を訪問しやすいという利点もあるでしょう。遠隔地に物件を所有する割には、情報収集や物件の下見などを相対的に少ない手間で行えます。
ただし、遠隔地の場合には選択できる金融機関が少なくなったり、管理が適切に行われているかどうか自分の目でチェックする機会が少なくなるといったデメリットもあります。また、土地勘が無いことで感覚的に良いエリアかどうかを知ることができず、調査に時間がかかってしまうこともあるため、注意が必要です。
【関連記事】アパート経営を遠隔地で行う時の注意点は?物件の選び方や注意点も
3-2 更地か建売かを検討する
一つは、更地を購入してアパート建設会社に相談してアパートを新築する方法です。住居用の土地で一定の広さがあれば、自分のニーズに合ったアパートを建てられます。建築条件に合っていれば、収益性が見込めるアパートを建築会社と柔軟にデザイン可能です。周辺の物件と差別化して入居需要をスムーズに獲得できる可能性もあるでしょう。
一方で、アパートのデザインによっては割高になって初期費用が高くなるケースが考えられます。また、人口密集地になると空き地が出づらく、思うように土地が手に入らない可能性もあるでしょう。
次に、すでに建っているアパートを購入して投資を始める方法もあります。すでにアパートがあるため、物件のデザインに悩まずに済みます。また、土地と建物をセットで買うことで、相対的に割安に購入できる場合もあります。中古物件を購入する方法があるほか、新築のアパートの建売も少なからずあるため、新築・中古双方のニーズに順応可能です。
一方ですでに物件が存在しているため、自分のニーズや理想に沿った物件で経営を始めることはできません。
3-3.複数の不動産会社に相談しながら比較検討する
アパート経営を行う際は、複数の選択肢から比較検討していくことが大切です。アパート経営は数千万円から数億円規模の運用になり、また運用開始後に大きな問題が起きた場合の対策が限られてきます。そのため、複数の選択肢がある状態で比較検討しながら、慎重に経営判断を行っていく必要があるのです。
アパート経営会社によっては、アパート経営セミナーを通じてアパート経営の基礎やリスク、自社物件の紹介などをおこなっていることがあります。情報収集もかねて、複数社のセミナー受講を通じて複数社の比較をされていくのも良いでしょう。
3-4.不動産売買契約・金消契約・引き渡し
購入するアパートが決まった後は、不動産売買契約、金消契約、引き渡しの順番に手続きが進みます。アパートの購入では金融機関のアパートローンを活用するケースが大半であるため、契約と実際の引き渡しまでにはおおよそ2週間~1ヶ月程度の期間を設けています。
通常、この期間にローンの承認が下りなかったり、物件に大きな損失があり契約時の内容が履行できなくなった場合などは、契約が解除できるような特約が設けられています。念のため、売買契約の際にはどのような時に契約が解除されるのか、解除の条件や期間について確認しておきましょう。
4 好立地の新築アパートの開発・販売・管理を手掛ける不動産会社
以下では、自社で開発を行うアパート販売会社を2社ピックアップして紹介します。いずれも金融機関と強いリレーションを構築しており、また管理もそのまま任せることができるため、初心者の方でもスムーズにアパート経営を始められるメリットがあります。
4-1 シノケンプロデュース
シノケンプロデュースは、土地の選定から企画、設計、施工、引き渡し後の賃貸管理まで一貫したサービスを提供するアパート建築会社です。一般投資家向け賃貸住宅経営のパイオニアとしても知られており、アパート供給棟数は自社施工で7,000棟を超えています。「賃貸住宅に強い建築会社ランキング」(全国賃貸住宅新聞)の「年間アパート開発棟数部門」では、9年連続No.1の実績があります。
2023年3月末時点で、グループ会社のシノケンファシリティーズがの管理戸数は47,000戸以上(2023年12月末時点)、入居率98.56% (2023年年間平均入居率)となっています。このような入居率の高さは、5,000店舗以上(2024年5月時点)の仲介業者と提携し、良好な関係を築いていることも要因の一つです。
好立地・高品質な物件選び
シノケングループでは、まず立地や物件の品質にこだわっているのが特徴です。競争力のある物件でアパート経営をすれば、空室の最小化や賃料下落の抑制効果が期待できます。
土地の仕入れについては、土地情報を独自で調査して魅力的な土地の取得を行なっています。長期にわたり現金一括での取得を多く行なってきた実績により、早い段階で新たに売却対象となる土地の情報を得られるようになりました。
また、建物はデザイナーズ物件となっていて、デザイン性と機能性の両方にこだわっています。デザイン面では「ヨーロッパに見られる高級列車の客室をイメージさせるようなワンランク上の居住性」を追求しています。
足元は居住性やトレンドも踏まえて、単身者でも1LDKの物件を多数供給しています。近年は原則全ての物件にIoT設備を導入していて機能性にも優れているのが特徴です。設備については定期的にアンケートを実施して、人気の設備の早期導入を定期的に検討しています。
物件管理も対応可能
シノケンでは自社が販売した物件の管理も行なっています。近年の入居率は平均で99%以上と、空室リスクを抑えて健全な経営を実現しているのが特徴です。物件管理では清掃や入退去者の管理、家賃徴収などあらゆるアパート管理業務を一任してくれます。
さらに、シノケンではサブリース契約も行なっています。空室の有無に関わらず原則として一定期間にわたって同額の賃料が手に入るため、空室リスクの影響の抑制効果が期待できます。
金融機関からの評価も高い
30年超にわたる不動産販売の実績や、高品質で資産価値を維持しやすいと期待されることから、多くの金融機関と強固な関係を築いており、複数の金融機関で提携ローンも提供しています。
オーナーの属性次第では、より良い条件のローンを引き出せる可能性もあります。好条件で資金を調達できれば、返済が滞るリスクやオーバーローンなどのリスクを軽減可能です。
4-2 アイケンジャパン
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をモットーに「グランティック」「レガリスト」などのアパートブランドを全国で展開する不動産会社です。2023年12月末時点で、アパート開発棟数1257棟の実績があります。
賃貸管理の実績として9,136戸(2023年12月時点)の管理を行っており、入居率99.3%(2023年年間実績)となっています。オーナーの負担が大きく、効果が一時的なフリーレントや家賃の値下げを行わずに高い入居率を維持しているのも特徴です。
好立地・高品質なアパートを販売
アイケンジャパンは、都市部・徒歩15分以内の好立地な場所をターゲットとして自社でアパート開発を行っています。独自基準で土地を厳選して、収益性が期待できる土地のみを仕入れています。
そのうえで、土地の形状や特徴に合わせて、柔軟に物件開発を行なっています。「社会人の女性」をターゲットとしつつデザイン性と機能性、セキュリティ性に細部までこだわったうえで「シンプルかつ高級感」があるデザインを追求し、「住み心地のよいアパート」を目指しているのです。
物件管理を任せればリスクを抑えた健全経営が可能に
物件管理においては、24時間体制で入居者のサポートが可能です。入退去者の管理や家賃回収、清掃や定期的なメンテナンスなどアパート経営をフルサポートしています。トラブル処理や近隣住民との意見調査などにより、入居者トラブルへの対策も万全です。
管理物件の入居率99.3%(2023年年間実績)と高く、空室リスクを抑えたアパート経営が期待できます。空室リスクの抑制は、賃料下落の抑制や収益性の維持にもつながっています。
これまでの販売実績により多くの金融機関とリレーションを構築
アイケンジャパンも実績が豊富で、物件の資産価値(担保価値)の高さや販売実績を土台として多くの金融機関と強固なリレーションを築いています。
アイケンジャパンのリレーションを活用することで、有利な融資条件に向けた交渉が可能となるほか、堅実なアパート経営を実現する資金計画・返済計画の相談も可能です。
5 まとめ
土地なしからアパート経営を始める時は、購入する物件の土地選びが大切です。また、立地だけでなく土地の形状や特徴も見逃さないようにしましょう。
土地なしからのアパート経営は珍しくなく、土地購入後の新築、建売物件の購入により、アパート経営を始められます。
今回紹介したシノケンプロデュースやアイケンジャパンのように、自社開発・販売に優れていて管理まで手掛けてくれる会社を利用すれば、土地なしからのアパート経営をスムーズに始められるでしょう。
伊藤 圭佑
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