アパート経営を遠隔地で行う時の注意点は?物件の選び方や注意点も

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アパート経営において、投資する物件の近くに住んでいた方が良いと考える方も多いのではないでしょうか。居住地の近くでアパート経営を行うことは、エリアごとの賃貸ニーズの把握がしやすく、管理も行いやすいというメリットがあります。

一方で、遠隔地の物件でアパート経営を行うことも検討可能です。遠隔地での投資が実現すれば、自分が住む地域以外の物件を選択肢に加えることができるので、より柔軟に投資戦略を組めるようになります。

不動産での分散投資を実現するうえでも、遠隔地での物件を選択肢に加えるのが有効な手段となります。今回は、遠隔地で行うアパート経営のポイントや物件の選び方を紹介します。

目次

  1. 遠隔地でアパート経営を行うメリット
    1-1.投資先の選択肢が広がる
    1-2.複数の地域でアパート経営すればリスク分散になる
  2. 遠隔地でアパート経営を行うデメリット、注意点
    2-1.土地勘がなく情報収集もしづらい
    2-2.物件管理がおろそかになる恐れ
    2-3.アパートローンを利用できる金融機関が限定される
  3. 遠隔地でアパート経営を行うときの物件の選び方
    3-1.初心者は大都市圏から始める
    3-2.複数持ちする場合は購入地域を分散させる
  4. 遠隔地でのアパート経営のその他の対策
    4-1.綿密な情報収集と契約前には下見を
    4-2.質の高い管理会社を選ぶ
    4-3.サブリースも選択肢の一つとして検討の余地あり
  5. まとめ

1 遠隔地でアパート経営を行うメリット

遠隔地でのアパート経営が可能になれば、自分が住む地域以外の物件も投資先の選択肢に入れられるようになり、またリスク分散にもなります。まずは、遠隔地でアパート経営を行うメリットをおさえておきましょう。

1-1 投資先の選択肢が広がる

遠隔地でのアパート経営を視野に入れると、日本全国の物件の中から選ぶことができるようになるため、投資先の選択肢が広がります。他地域の魅力的な物件も検討することができるため、地方在住者の方でも、相対的に賃貸需要が見込みやすい大都市部の物件へ投資できるようになります。

自分が住む地域に不動産投資の物件を制限してしまうと、投資先の選択肢を大きく制限してしまうことになります。他の地域に魅力的な投資物件が見つかっても、それにチャレンジすることができないため、効率の悪い投資になってしまう可能性もあるでしょう。

また、自身が地方に住んでいて、その地域の人口が減少傾向だった場合、居住地の周辺でのみ物件を探すとなると、相対的に入居者を集めにくいリスクの高い投資しかできないことになってしまいます。投資先を自分が住む地域周辺に限定せず、遠隔地の物件を探しに行けば、より魅力的な収益物件や賃貸需要が安定している相対的にリスクの低い物件を投資先の選択肢に含められるのです。

1-2 複数の地域でアパート経営すればリスク分散になる

遠隔地で投資ができれば、さまざまな地域にアパートを所有することも可能です。例えば、大都市圏だけに絞っても首都圏、名古屋、大阪に1棟ずつ所有する、といった投資戦略も考えられます。

アパート経営においてケアすべき重要なリスク要因としては次のようなものがあります。

  • 火災や地震、津波などの災害
  • 地域全体の賃貸需要の減退

これらは地域一体の賃貸物件がダメージを受けるリスク要因であるため、1棟のアパートを所有していてもリスクを抑えるのが困難です。

そこで、複数の地域にアパートを所有して分散投資し、一つの地域の情勢変化や災害のダメージを軽減するのが有効な対策となります。例えば首都圏、名古屋、大阪に物件を持っておけば、どれか一つの地域で大規模災害がおこったとしても、他の2つの物件は正常な経営が継続できます。ダメージを軽減するとともに、他の物件の収益から被災物件の復旧費用を捻出できるようになります。

このような戦略は自分の居住地域に投資物件を限定していては充分に機能しません。近隣に複数の物件をもつことになるため、一つの災害で全ての物件が被災するリスクが高くなります。また、賃貸需要の情勢も似通ってしまうため、複数の物件のすべてが同じタイミングで入居者獲得に苦労する可能性もあります。遠隔地で複数の物件を所有することで、地域分散によるリスクヘッジが可能となるのです。

2 遠隔地でアパート経営を行うデメリット、注意点

メリットを見ると魅力的な遠隔地でのアパート経営ですが、注意すべきポイントもあります。例えば、土地勘がなく情報収集がしづらい、物件管理がおろそかになるといった点に注意が必要です。

2-1 土地勘がなく情報収集もしづらい

以前住んでいた、など特殊な事情がない限り、遠隔地には土地勘がありません。アパート経営においては、例えば次のような地域特性を加味して、適した投資物件をうまく選別する必要があります。

  • その地域の賃貸需要
  • 居住者の特性(学生が多い、労働者が多いなど)
  • 利便性の高い場所や栄えている場所
  • 人気の路線
  • 治安

土地勘がない地域については、これらの情報を持ち合わせていないケースが多いでしょう。さらに、いざ情報収集をしようとしても、遠方になるためインターネットで調べる以外の情報収集にはコストがかかります。

少なくとも、最終的に購入可否を判断する前には、現地を訪問して不動産会社などとも情報交換をしておくことが大切です。一方で現地調査の回数を増やすと旅費と時間がかかるので、費用対効果を鑑みて効率的に進めて行きましょう。

2-2 物件管理がおろそかになる恐れ

遠隔地にアパートを所有していると、日々の物件管理の大部分について管理会社に任すことになるでしょう。自分は頻繁に物件をチェックすることができないため、物件管理がおろそかになる恐れがあります。いつの間にか進んでいた物件の劣化や清掃の不備、発生した住民トラブルなどを放置しないように注意しなければなりません。

なお、実際のところ所有物件が遠隔地・近隣のどちらであるかに関わらず、不動産投資を行う人の中で日々の物件管理や住民対応などの大家業まで行うという人は決して多くありません。管理会社を活用して、管理を任せて効率的に運用する人が多いと言えます。

日常の物件の維持・管理や住民対応などは管理会社が行うため、適正に管理されている限りにおいては物件を確認しに行ったり、何か対処すべき事項が頻繁に発生したりすることはありません。管理会社を活用する場合には、近隣・遠隔地どちらにアパートを所有していたとしても、アパート経営中にオーナーが対応すべき部分は意外に少なくなります。

それでも、物件を頻繁に直接見ることができない、何かあってもすぐに現地に行けないという点は、遠隔地でアパート経営を行うが故のデメリットにはなるので、適切な対策を施しておく必要があります。

2-3.アパートローンを利用できる金融機関が限定される

金融機関によっていくつかのアパートローンの条件が定められていますが、そのうち重要視されるのが「物件の所在地」と融資を受ける方の「居住地」の2つです。この2つのいずれか、もしくは両方が金融機関のエリア外であった場合、融資を受けることが出来なくなります。

遠隔地でアパート経営を行う場合、物件所在地と融資を受ける方の居住地が大きく離れることになります。これに活用できる金融機関が限られてしまうため、資金調達の難易度が上がりやすいという点に注意が必要になります。

3 遠隔地でアパート経営を行うときの物件の選び方

ここまで紹介した遠隔地でアパート経営を行うメリットや注意点を踏まえて、うまく経営していく上での物件の選び方を紹介していきます。次に紹介するようなポイントに留意すれば、遠隔地にあるアパートでもうまく運用できるでしょう。

3-1 初心者は大都市圏から始める

初心者が遠隔地に物件を持つ場合は、まず大都市圏から始めるのが良いでしょう。自分が首都圏外に住むのであれば、首都圏、次いで大阪・名古屋の圏内が有力候補となります。

これらの地域は人口・商業施設ともに密集していて、賃貸需要も見込みやすいエリアです。中長期的に見ても他の地域よりも人口減少に転ずるリスクは低いと言えるでしょう。また、交通網が発達しているため、比較的容易に利便性の高い地域・物件を見つけることが可能です。土地勘がないなかでも物件を見つけやすいエリアと言えます。

また、三大都市圏は航空・新幹線など遠距離への交通網も発達しているため、遠隔地としてアパートがある場所を訪問しやすいという利点もあるでしょう。遠隔地に物件を所有する割には、情報収集や物件の下見などを相対的に少ない手間で行えます。

3-2 複数持ちする場合は購入地域を分散させる

少し不動産投資に慣れてきて複数物件をもつ段階になったら、二つのアパートは異なる地域に所有して地域分散を図りましょう。

よほど魅力的な収益物件が見つかったなど特殊な事情がない限り、遠隔地でのアパート経営であるにもかかわらず、複数のアパートを同じ地域に所有すると分散効果が限定されてしまうためです。それよりもアパートを所有する地域をうまく選んで、リスク分散を図ってみることを検討されてみると良いでしょう。

また、東京・大阪・名古屋のなかから複数の大都市圏にアパートを所有するのも一案です。少しチャレンジするなら二棟目以降は福岡・広島・札幌などの地方政令市クラスまで視野を広げてみるのも良いでしょう。

さらに地方の物件に手を伸ばし、大都市圏と地方で分散投資するというのも一つの考え方ではありますが、リスクは高くなるので、資金状況や収支見通しを踏まえて慎重に判断してください。

4 遠隔地でのアパート経営のその他の対策

遠隔地でのアパート経営をスムーズに行うためには、立地選び以外にも注意すべき点がいくつかあります。情報収集や管理会社選びなどを上手く行いながら、トラブルなく運用していくことが大切です。また、管理の手間とリスクがどうしても不安な場合は、サブリースの活用も一つの選択肢となります。

4-1 綿密な情報収集と契約前には下見を

遠隔地でアパート経営をする大きなリスクは、物件の所在地の状況がわからないことです。しかし、現代ではインターネットが発達しているため、基本的な地理的情報や人口動態、交通網など、多くの情報は現地に行かなくても手に入ります。周辺の賃料の相場観についても、賃貸物件が豊富な地域であれば賃貸物件の紹介サイトで把握できるでしょう。

一方で、契約前には必ず現地に赴いて、不動産投資会社との情報交換や物件の下見、物件所在地の周辺環境の状態などを実際に確認しましょう。いくら情報が豊富といっても、やはり実際に話を聞いたり、現地を見たりして気づくことは多々存在します。遠隔地では下見にも手間とコストがかかりますが、少なくとも最終候補まで絞った段階においては、下見をした上で投資の意思決定してください。

4-2 質の高い管理会社を選ぶ

購入後の物件管理は、全面的に管理会社に頼むことになるでしょう。投資家が現地に赴く頻度が多くなるとそれだけでコストがかかります。自分が関わらなくとも賃貸運営がスムーズに進み、自動的に賃料収入が入る状態を構築しなければなりません。

そのため、管理会社選びには特に気を配る必要があります。客付けから入退去対応、細かい修繕・整備やトラブル対応まで、日常的な賃貸管理に関わる全ての役割を担ってくれる管理会社であるのが大前提です。対応範囲が広ければ、必然的に管理費用も高くなるので、コスト面にも気を配る必要があります。

管理費用が安くても、管理の質に妥協するわけにはいきません。質の低い管理によって投資家自身に負担が及んだり、空室率が上がって収益性が低下しては本末転倒です。あくまでアパートが建つ地域における物件管理に実績があって、信頼のおける会社を厳選しましょう。

管理会社選びは、遠隔地でのアパート経営において特に重要なポイントになるので、妥協せず最善な会社を見つけることが大切です。管理会社選びのポイントについては以前の記事でも紹介しているので、合わせて参照してみてください。

【関連記事】アパート経営で重要な管理会社の選び方は?7つのポイント解説

4-3 サブリースも選択肢の一つとして検討の余地あり

不動産投資会社や管理会社が物件を借り上げ、高めの管理費用を徴収する代わりに物件管理の全てに対応、空室も保証してくれるサービスを「サブリース」と言います。

サブリースは、かつてサービス継続に失敗して経営困難に陥ったり、投資家に長期の家賃保証であると誤認させてトラブルに発展した事例があります。

過去のトラブルにより悪いイメージがありますが、2020年12月に施行されたサブリース新法により広告や勧誘、契約時の重要事項説明の側面で規制が強まり、以前よりも利用しやすいサービスになっています。

サブリースは空室リスクと管理を気にせずに遠隔地の投資が可能にあることから、遠隔地のアパート経営においても検討の余地がある選択肢といえるでしょう。次のようなリスクと留意点を理解した上で、それでも充分に収益性が見込めるのであれば、サブリースの活用により管理の手間を省くのも考え方の一つとなります。

サブリースのリスクと注意点

  • 管理費用は通常の物件管理より高め
  • 物件管理は全面的に管理会社に任せなければならない
  • 保証家賃は定期的に更新されるので、将来下がることもある

【関連記事】サブリース新法と従来のサブリース契約との違いは?注意点や今後の影響も

5 まとめ

遠隔地でのアパート経営は投資先の選択肢が広がる、複数持ちによるリスク分散が図れるなど、さまざまなメリットがあります。

物件管理の難易度が上がる点に留意し、質の高い管理会社の選別や、インターネットと現地下見をうまく組み合わせた情報収集により、遠隔地での経営によるリスクやデメリットを抑えながら経営を行うことが大切です。

また、サブリースの活用についても、過去の事例にとらわれず冷静に管理コストや収益性を見積もって検討されてみると良いでしょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。