ロボアドバイザーの市場規模はどれくらい?今後はどうなる?

資産運用の一つとしてロボアドバイザー(ロボアド)が注目されるようになってから投資に関心を持つ若い世代が増えてきています。野村資本市場研究所によれば、米国では30代のミレニアル世代を中心にロボアドバイザーの利用が進み、2015年時点で顧客の9割以上が50歳以下となっています。

今回はロボアドバイザーによる投資方法を説明するとともに、ロボアドバイザーの先進国である米国と比較しつつ、市場規模や今後の予測などをご紹介します。

目次

  1. ロボアドバイザーの概要
    1-1.助言タイプのロボアドバイザー
    1-2.投資一任タイプのロボアドバイザー
  2. ロボアドバイザーの市場規模
    2-1.海外のロボアドバイザー市場
    2-2.日本のロボアドバイザー市場
  3. ロボアドバイザー市場の今後の展望

1 ロボアドバイザーの概要

ロボアドバイザーとは、投資家が資産運用する場合に商品選びから売買までを一任できる人工知能(AI)を活用したサービスです。AI投資の一種であり、最近では「ロボアド」とも呼ばれ注目されています。

ロボアドバイザーの種類は、各投資家に最適な資産配分や投資対象のアドバイスを行う「助言タイプ」と、アドバイスと運用を合わせて行う「投資一任タイプ」の2つに分かれます。ロボアドバイザーを提供する企業の中には両方のサービスを行っている会社も見られます。

1-2 助言タイプのロボアドバイザー

助言タイプのロボアドバイザーの特徴は次の通りです。

  • 利用者の投資プランに対する診断
  • 利用者の投資方針(リスク等の投資に対する考え方)に適した投資プランの提案
  • 運用シミュレーションの提供

助言タイプの基本的なサービスは投資プランの提案です。それ以外の提供は事業者で異なります。助言タイプではこれらのサービスが無料で提供されており、投資一任型で徴収される運用料・管理料などはかかりません。

サービスの提供者は主に証券会社等であり、彼らはこのサービスを利用してもらうことで顧客に証券口座を開設してもらい、個別銘柄の株式、投資信託やETFへの投資を促し、その販売の手数料収入を得ます。なお、投資信託などを購入する場合、投資一任型と同様に信託報酬等のコストはかかります。

助言タイプのサービスを提供する事業者は次のようになります。

事業者名 サービス名
松井証券 投信工房
カブドットコム証券 FUND ME
三菱UFJ国際投信 ポートスター(PORTSTAR)

1-3 投資一任タイプのロボアドバイザー

投資一任タイプのロボアドバイザーはポートフォリオの提案等に加えて「運用」までを自動で行ってくれるサービスです。

利用者はサービスを提供する証券会社や運用会社などと投資一任契約を結び、投資資金を入金すれば、あとはロボアドバイザーが各投資家に最適な投資対象の選定、購入や管理(市場の変化に対応したリバランス等)を自動で行ってくれます。

投資一任型のロボアドバイザーサービスの特徴

投資一任サービスを利用する流れは次のようになります。

  1. 利用希望者がインターネット経由でサービス会社へ申込む
  2. 利用者とサービス会社との間で投資一任契約が締結される
  3. 年齢、金融資産、リスク許容度等に関する質問に利用者が回答する
  4. ロボアドバイザーがその利用者に適したポートフォリオ(対象資産の配分・組み合わせ)を提案する
  5. 利用者はその提案を了承または一部変更して決定する
  6. ロボアドバイザーは、決定した設定内容に基づき対象資産(商品)を購入し、その後、必要に応じて資産配分を変更する(ポートフォリオのリバランス等)

これまでの投資信託との違い

個人が投資信託に投資する場合、「投資対象の選定」「ポートフォリオの作成」「各商品の購入」などは自分で行います。さらに「投資対象のリターンが良くない」「価格が下落する」などの場合は、自分でその対象の一部を売却し、新たな投資対象を購入することも必要です。

このように、自分で投資を行うには商品の選定や相場の分析といった一定の投資知識が要求され、投資対象の資産管理や市場相場のチェックなどが適宜必要になります。そのため投資経験の主婦の方や投資に時間を回せないサラリーマンの方などには負担となります。

しかし、投資一任型のロボアドバイザーは自動で全てを任せることができるため、投資の知識があまりなく、時間的に余裕がなくても資産運用を気軽に始められます。

ロボアドバイザーの投資対象(商品)

ロボアドバイザーの投資対象はサービス会社により違いますが、主に海外上場投資信託(ETF)や国内投資信託が対象になっています。

また、ロボアドバイザーには積立投資が可能なタイプもあり、1000円など低予算で始めることも可能です。利用にかかる手数料もサービス会社によって異なりますが、投資一任型では信託資産の1%程度です。

例えば、THEO(テオ)の手数料は、「売買手数料」「為替手数料」「為替スプレッド」「リバランス」は無料となるため、個人で投資信託の投資を行うよりもメリットになる場合もあります。
また、信託報酬等は個人による投資信託と同様間接的に負担することとなりますが(対象資産の価格へ反映)、THEO等のロボアドバイザーでは低コストの海外ETFを対象としているため比較的負担が少なくなります。

投資一任型のロボアドバイザーを提供する大手事業者には以下のような会社が挙げられます。

事業者名 サービス名
株式会社お金のデザイン THEO(テオ)
ウェルスナビ株式会社 Wealth Navi(ウェルスナビ)
楽天証券株式会社 楽ラップ

2 ロボアドバイザーの市場規模

次にロボアドバイザー市場の内容や規模などの状況を見ていきましょう。

2-1 海外のロボアドバイザー市場

ロボアドバイザーの普及が進む米国の市場規模は、米国の投資分析会社セルーリ・アソシエイツによると、2016年末時点の資産運用残高は約830億ドル、2021年までに3,850億ドルほどに達すると推定されています(株式会社野村総合研究所の NRI Financial Solutions 2018年1月号 「米国ロボ・アドバイザー利用者にみる日本での普及のヒント」)。

米国のロボアドバイザー市場の規模

また、米国のグローバル・マネジメント会社のA.T. Kearneyでは、米国でのロボアドバイザーの資産運用残高が2018年に約9千億ドル、2020年には2.2兆ドルに達すると予想しています。加えて同社は2020年にはロボアドバイザー市場が米国の資産運用額全体の5.6%を占めるまでに拡大すると見込んでいます(2015.6 Hype vs. Reality: The Coming Waves of “ Robo ” Adoption)。

市場規模の推定値は分析する会社により異なりますが、上記のように米国のロボアドバイザー市場が今後も拡大していくことが予想されます。

米国のロボアドバイザーの利用者

前出の野村総合研究所では、米国のロボアドバイザーを主に利用している者は「30~40代の投資経験者で中長期を対象とした積立投資でロボアドバイザーを活用している」と指摘しています。

利用者の中心はおもに小口の投資家やミレニアル世代であり、サービス会社の主要なターゲットとなっています。手数料の低さやインターネット経由での取引の容易さなどが、従来の対人型投資一任サービスとの違いであり、利用者も伸びています。

利用者の年齢層を見ると、30代と40代が約60%を占めるなど比較的若い世代が中心です。その理由としては、「オンラインで手軽に利用できる」(20%)、「手数料が安い」(15%)、「シンプルで使いやすい」(10%)が挙げられています。

投資経験の有無でみると、投資経験者が約87%、投資未経験者が約13%です。理由としては、「ロボアドバイザーの新興企業が金融機関などから顧客を奪っている」「新規参入した大手金融機関が自社の顧客に利用している」などとされています。

米国のロボアドバイザーのサービス会社とそのビジネスモデル

米国内の独立系新興企業のロボアドバイザーサービス会社で投資一任型の有料サービスを提供しているのは20社強です(野村総合研究所 2016年8月号 「米国ロボアドバイザー市場の再編と近未来展望」より)。

2007~2008年に創業したウエルスフロント社やベターメント社が米国のロボアドバイザー市場を牽引してロボアドバイザーが脚光を浴びるようになりました。その後ETF(上場投信)で有名な資産運用会社バンガード社やブラックロック社のほか、金融機関などがロボアドバイザー市場に参入しています。

ロボアドバイザーの資産運用額では、バンガードが800億ドル台、次にオンライン証券のチャールズシュワブが200億ドル半ば、ベターメントが100億ドルといった状況です(2017年後半)。

現在の米国のロボアドバイザー市場の特徴の一つは、金融機関によるロボアドバイザーベンチャーの買収や業務提携が挙げられます。

独立系のベンチャーの参入が少なくなる一方、2015年以降独立系会社の身売りが増加しており、シンプルなロボアドバイザーの投資一任型のサービスだけでは厳しい状況になっている点が浮き彫りにされています。

一方、ブラックロックはファイナンシャルアドバイザーの効率化、ハイブリッド型ロボアドバイザーサービスの提供などを目的にフューチャーアドバイザーズ社を買収しました(野村資本市場研究所「米国の資産運用業界で注目されるロボ・アドバイザー」)。

さらに、ベターメントでは自社で個人向けの投資顧問業者(RIA)を雇用し、ロボアドバイザーとRIAとで投資の助言を統合的に実施するハイブリッド型サービスを実施しています。非対人のロボアドバイザーだけでなく対人によるアドバイスなどを含めた投資の一体的なサービスの提供が重視され始めています。

2-2 日本のロボアドバイザー市場

ここでは日本のロボアドバイザー市場(投資一任型)の状況を確認していきましょう。

日本のロボアドバイザー市場の規模

2018年3月24日の日本経済新聞電子版では、日本のロボアドバイザーの大手4社(ウェルスナビ、お金のデザイン、マネックス、楽天証券)の資産運用残高を集計した結果、2月末時点で1,220億円に達したと報じています

手軽に投資できる点を強みとしてITに慣れ親しんでいる若者を中心に利用者を増やし、この1年間で4倍以上に増加しサービスの提供から2年で1,000億円を超えました。

日本のロボアドバイザー市場は徐々にサービス内容が認知され、参入者も増え始めています。しかし、米国の2016年末時点の資産運用残高が約830億ドル(約9兆1,300億円ドル)と比較すれば、日本のロボアドバイザー市場はまだ黎明期にあるといえるでしょう。

ただし、米国においても今後の資産運用残高は大幅に伸びると予想されており、米国よりも歩みが遅れている日本のロボアドバイザー市場も同様のことが期待されます。

日本のロボアドバイザーの利用者

例えば、THEOの利用者には以下のような特徴がみられます。

  • 年代別:20代、30代が全体の49%と約半数を占めている
  • 投資経験:81%が投資未経験者

また、楽ラップの場合では以下のような特徴があります。

  • 年代別:40歳代を中心に、未成年の方から60歳以上まで幅広い
  • 投資経験:投資経験者も未経験者もいる

楽ラップの場合はTHEOと比べ利用者の年齢層は高く、投資経験についての偏りはさほどないことがわかります。楽ラップは楽天証券によって運営されており、投資経験を有する既存の顧客の利用者が少なからず流れているものと推測されます。

日本のロボアドバイザーのサービス会社とそのビジネスモデル

日本のロボアドバイザー市場は黎明期とも言える状態で、ロボアドバイザーの提供会社も米国ほど多くなく、ロボアドバイザーサービスを専業的に提供しているビジネスモデルがほとんどといってよいでしょう。

しかし、ロボアドバイザー市場の規模が拡大していく現在において、今後もさらに市場参入者が増える可能性があります。例えば、野村アセットマネジメントは、投資一任型ロボアドバイザーサービスを提供するエイト証券を2018年に傘下に収めることとなりました。野村アセットマネジメントはエイト証券の20~40代の顧客を有する点、金融系のモバイルアプリやシステム開発の強みを評価しました。

THEOを提供する「お金のデザイン」は、2018年6月に独立路線から脱却し、東海東京フィナンシャル・ホールディングスに対する50億円の増資を行いました。これにより東海東京FHD系列の東海東京証券や同証券が提携する地銀などの顧客に対するロボアドバイザーの利用促進が期待されています。

また、「お金のデザイン」は2017年にSBI証券と住信SBIネット銀行と提携し、同行による投資一任契約の締結の媒介等を委託するようなりました。

このようにロボアドバイザー市場へ新規参入する会社が増加する一方、既存のロボアドバイザーサービスの専業会社は証券会社や金融機関と提携し、利用者の拡大に注力しようとしています。

3 ロボアドバイザー市場の今後の展望

日本の先を大きく進む米国ではロボアドバイザーの独立ベンチャー企業は淘汰され始め、その数は減少しつつあります。一方、世界的規模の資産運用会社がロボアドバイザーベンチャーを吸収するなど運用会社などの参入も少なくありません。

その参入の目的はロボアドバイザーサービスの提供によりIT操作が得意なミレニアム世代の利用者を取り込むことと、従来の対面式の投資一任型のサービスの補完などが挙げられます。

特に対面式の投資一任型サービスと一体的に提供するハイブリッド型サービスが重視されており、今後の主要なサービス形態となることが予想されます。

日本の場合は米国よりも市場の成り立ちが遅れているため、市場規模は今後も拡大が期待されますが、若者が投資に充てる資金も限られることから中高年齢層の利用者の拡大が課題になると考えられます。

そのため従来のロボアドバイザー会社は金融機関などとの連携を広め、幅広い利用者の獲得を目指す傾向が予想されます。一方、対人型の投資一任サービスを提供している金融機関などでは、若年層の利用者の獲得、従来サービスの補完(時間・場所に制限されないサービスの提供、サービス提供者の能力の補完等)としてロボアドバイザーサービスの導入も進むことが予想されます。

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HEDGE GUIDE 編集部 少額株式投資・ロボアドバイザーチーム

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