ロボアドバイザーとは、投資家の代わりに人工知能(AI)が自動的に資産運用するサービスのことです。これまでの投資への関わり方を大きく変える画期的な資産運用サービスと言われています。
しかし、ロボアドバイザーは最近よく見かけるようになってきたサービスのため、使い方や、そのメリットやデメリットについて、まだ詳しくは知らないという方も少なくないかと思います。
そこで、この記事ではロボアドバイザーを利用して投資するメリットとデメリットについて詳しく解説していきたいと思います。
目次
1 ロボアドバイザーとは?
ロボアドバイザー(通称ロボアド)は、人工知能(AI)を活用してインターネット上で資産運用サポートが受けられたり、資産運用を一任できるサービスのことで、利用者が質問に回答することによって、その利用者の資産運用の目的やリスク許容度を考慮した合理的な投資配分を提案、もしくは資産運用をしてくれるサービスです。
少額からスタートできる、各種の手数料が安い、運用の手間がかからないといったメリットがあるため、20代から30代の若手層を中心として急激な成長が見られています。
サービスが普及した背景には日本でもネット証券が一般的となったことやフィンテックが浸透してきたことなどが挙げられます。もともとはアメリカ発祥のサービスですが、日本でも2016年頃から認知が進み、大きな盛り上がりを見せています。
2 ロボアドバイザーの9つのメリット
ロボアドバイザーには「少額から始められる」「初心者が始めやすい」「手数料が安い」などさまざまなメリットがあります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
2-1 少額から投資を始められる
投資を始めるに当たり、少なくとも数十万円~数百万円の資金が必要だと思っている方も多いのではないでしょうか。ロボアドバイザーの場合は、10万円以下の資金から投資をスタートすることができます。
例えば、投資一任型で大手ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」は初期の最低投資額が10万円となっており、自動積立は1万円から行うことができます。
ウェルスナビ
運営企業 | ウェルスナビ株式会社 |
住所 | 東京都渋谷区渋谷2-22-3 渋谷東口ビル9F |
設立年月 | 2015年4月28日 |
資本金(資本剰余金含む) | 119億1,944万1,767円※2024年3月31日現在 |
自己資本規制比率 | 662.5%(2023年12月末現在) |
(注)自己資本規制比率は企業経営の健全性を表す重要な財務指標で、金融商品取引業者は、この自己資本規制比率が120%を上回るよう努めることが義務付けられています。
また「THEO+docomo」という投資一任型も、最低投資額1万円から始めることが可能で、こちらも毎月の積み立てが可能です。
THEO+docomo
運用会社 | 株式会社お金のデザイン |
住所 | 東京都港区赤坂1-9-13 |
設立年月 | 2013年8月 |
資本金(資本剰余金含む) | 121億円2,392万円(2021年3月時点) |
自己資本規制比率 | 560.16%(2021年3月期) |
また、株式会社FOLIOが提供するROBOPRO(ロボプロ)は、ETF(上場投資信託)を対象資産としたAI技術を個人向けに初解禁し、本格的に資産運用にAIを活用した「進化版ロボアドバイザー」となっています。
ROBOPRO
運営企業 | 株式会社FOLIO |
住所 | 東京都千代田区一番町16-1 共同ビル一番町4F |
設立年月 | 2015年12月10日 |
資本金(資本剰余金含む) | 141億2万6106円(資本剰余金含む)2023年3月末時点 |
自己資本規制比率 | 515.6%(2023年6月末現在) |
フィデリティ証券が提供する「ザ・ハイブリッド」も最低1万円(ネット完結コースの場合。アドバイス担当者付きコースは最低必要資金300万円)から始められます。
ザ・ハイブリッド
運用会社 | フィデリティ証券株式会社 |
住所 | 東京都港区六本木7丁目7番7号 |
設立年月 | 1998年4月 |
資本金(資本剰余金含む) | 117億5750万円(2022年3月16日時点) |
自己資本規制比率 | 418.0%(2022年3月末) |
いきなり大金を注ぎ込むことに抵抗がある投資初心者の方でも、ロボアドバイザーを利用すれば、少額から始めて様子を見ながら徐々に投資額を増やしていくことが可能です。
2-2 投資の知識がなくても始められる
一般的に資産運用を始めるには投資に関する知識を学ぶことから始める必要がありますが、ロボアドバイザーは特別な投資知識を必要とせずに資産運用を始められます。
例えば投資信託は、投資家たちから集めたお金を運用のプロであるファンドマネージャーが金融市場に投資して、その成果を投資家に還元する仕組みですが、投資一任のロボアドバイザーはこれと同じように資金を預けて運用をしてもらうことができるサービスです。
用意された複数の質問に回答し、口座を開設して最低投資金額以上のお金を入金するだけで、あとはロボアドバイザーが資産運用をするために必要なことを投資家の代わりに行ってくれます。
ロボアドバイザーがどのような投資をしているのかを確認するための知識は最低限必要になりますが、独学でゼロから投資の勉強をして試行錯誤を繰り返しながら資産運用を行うよりも、ロボアドバイザーを利用するほうが投資を始めるハードルは低く、さらに効率的に勉強することが可能です。
2-3 手間がかからない
ロボアドバイザーの利用者が感じるメリットは「手間がかからない」という点です。
投資一任型のロボアドバイザーの場合、利用者の回答内容に従って、自動的に投資銘柄を選ぶ、分散投資をするなど資産運用のすべてを任せることができます。
さらに、提案当初の資産配分(=ポートフォリオ)を維持するため、必要に応じて自動でリバランス(=メンテナンス)してくれますので利用者の手間を必要としません。言い換えれば、ほぼ“ほったらかし”で資産運用することが可能です。
そのため、投資初心者でも、仕事が忙しい人でも、手間と時間をかけずに資産運用することができます。
2-4 感情に左右されずに資産運用する
投資では、株の上昇局面や下落局面など、その時々の感情によって大きく損をすることがあります。
「株がもっと上昇するのではないか」「これ以上は下落しないのではないか」と希望的観測で判断することが多々あります。例えば下落局面では、早めにロスカット(一定の損失が出た場合に損失を確定すること)しないと大きな損害を被ることになるため、冷静な判断が求められます。
一方、ロボアドバイザーはアルゴリズムによって運用されているため、一定のルールやデータの分析結果などからロスカットや買い戻しなどの投資判断・提案を素早く行ってくれます。運用中に生じる「焦り」や「不安」といった感情に左右されずに、データやルールに基づいた資産運用をすることが可能になるという点は、価格の動きに対して適切な判断が難しいと考えている方にとっては非常に大きなメリットです。
2-5 利用者に最適な資産配分を決定する
資産運用をする上で、投資銘柄の資産配分は重要なポイントです。「リスクをどのくらい取るのか」「リターンを重視するのか」によって、資産配分は変わってきます。ただ、地域や銘柄ごとの特性、その後の価格予想など情報収集や分析が必要となる範囲は非常に広いため、投資初心者にとってポートフォリオの作成は最初の関門となります。
しかし、ロボアドバイザーは利用者の回答内容に従って資産運用の目的やリスク許容度などに応じて適したポートフォリオを自動的に作成してくれます。つまり、リスクを恐れずに投資をしたい人には「ハイリスク・ハイリターン」な資産配分を、リスクを避けたい人には「ローリスク・ローリターン」な資産配分をそれぞれ作成して運用してくれるというメリットがあります。
2-6 運用コストが安い
通常、投資信託を始める場合、信託報酬(投資信託の管理手数料)のほかに購入手数料や信託財産留保額(投資信託を解約する際に支払う費用)が必要ですが、ロボアドバイザーを始める際は、購入手数料と信託財産留保額は不要です。
先ほど取り上げたTHEO+docomoを例に上げると、売買手数料や、委託手数料・為替手数料などは投資一任報酬の中からTHEOが負担するため、ユーザーには年率1.1%(税込)の投資一任報酬以外の負担がかからず、THEO側も手数料を増やすための不必要な取引を行うというインセンティブが働かないという仕組みになっています。
なお、ロボアドバイザーは、信託報酬のほかに「サービス手数料」がかかりますが、預ける資産の1%前後が一般的です。一方、投資信託の購入手数料は2%~3%かかるものもあり、加えて信託手数料(運用手数料)が毎年かかる仕組みとなっています。資産運用が長期に渡る場合、信託報酬などの手数料が安いほどコスト削減につながります。
2-7 ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談する必要がない
従来、投資を始める場合、証券会社やファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に相談することが一般的でしたが、ロボアドバイザーが普及したことで専門家に相談することが必ずしも必要ではなくなりました。
専門家に相談する時間やコストが不要となるため、その分を仕事やプライベートなどに充てることが可能となります。
2-8 口座に入れたお金をすぐに引き出せる
金融商品の中には、定期預金のように1度口座に入金したお金は、一定期間引き出せないものもありますが、ロボアドバイザーはすぐに引き出すことができます。
ただ、期待する分散投資効果を維持するために出金できる金額に制限を設けているものもありますので、入金前にしっかりと確認をしておいたほうが良いでしょう。
2-9 確定申告不要の特定口座がある
ロボアドバイザーの口座には、「一般口座」と「特定口座」の2種類があります。
一般口座は確定申告する際に必要になる年間取引報告書を自分で作成し、確定申告を行う必要があります。
一方、特定口座は年間取引報告書を証券会社が作成するものです。特定口座には「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」の2種類があり、前者の場合は確定申告する必要がなく、後者の場合は確定申告する必要があります。
そのため、特定口座(源泉徴収なし)を開設すれば、年間取引報告書を作成する必要はなく、確定申告をする必要もありません。
3 ロボアドバイザーのデメリットとは?
ロボアドバイザーには次のようなデメリットがあります。それぞれ確認していきましょう。
3-1 株式投資よりも運用コストが高い
ロボアドバイザーのメリットとして、「投資信託より運用コストが安い」ことが挙げられますが、デメリットは「株式投資より運用コストが高い」ことです。
証券会社には、総合証券とネット証券がありますが、手数料を比べるとネット証券のほうが安くなりますが、その総合証券の手数料よりもロボアドバイザーの手数料のほうが高くなります。
しかし、ロボアドバイザーでは「投資銘柄を買い付け」「資産配分」「リバランス」までを一任することができるため、利便性を重視するなら「ロボアドバイザー」、コストをできるだけ抑えて自分の力だけで投資をするなら「株式投資」などと使い分けても良いでしょう。
3-2 投資経験を積むことが難しい
資産運用を代わりに行ってくれるのが投資一任型のロボアドバイザーのメリットですが、利用者は何もせずとも投資ができてしまうため、特に投資初心者の場合、投資経験を積むことが難しくなる点がデメリットとなります。
しかし、これはロボアドバイザーの使い方次第ともいえます。というのは、ロボアドバイザーの運用の仕方を注意深く観察することで、資産運用の考え方や方法を学ぶことができるからです。
また、ロボアドバイザーのサービスサイトやスタッフブログなどでは、資産運用の考え方や方法を学ぶためのコンテンツが用意されているケースもあります。
ロボアドバイザーに全てを任せきりにしないで、自分でも資産運用について考えてみる、積極的に学んでみるということはとても大切なことです。
3-3 短期的に大きな成果は望めない
ロボアドバイザーは、FX(外国為替取引)などは短期間で大きな利益を生むことができる投資手法とは異なり、長期的に資産を運用していく保守的な投資手法になります。
そのため、ロボアドバイザーは「長期間にわたって着実に資産を増やしていきたい」という投資家に向いています。将来に向けて、じっくりと投資をしていきたい方に向いていると言えるでしょう。
3-4 元本割れのリスクがある
投資を始める理由として、「お金を増やすため」という人がほとんどですが、投資には「元本割れ」というリスクがあります。元本割れとは資産運用した結果、初めの投資金額を下回ることです。
投資の一種であるロボアドバイザーも、元本割れのリスクがあります。そのためロボアドバイザーを始める際は、元本割れリスクがあることを認識しておく必要があります。
4 まとめ
この記事では、ロボアドバイザーを利用して投資するメリットとデメリットについて解説してきました。
投資を始める際はメリットだけでなく、リスクもきちんと把握してから取り組むようにしましょう。
始める前に知っておきたいロボアドバイザー投資の基礎知識
- 5分で分かる!ロボアドバイザーの仕組みと使い方
- 始める前に知っておきたいロボアドバイザーのメリット・デメリット
- ロボアドバイザーが投資初心者の資産運用におすすめな7つの理由
- ロボアドバイザーの運用利回りは何%?主要5社の利回りも徹底比較
- 何が違うの?ロボアドバイザーと投資信託の違いを徹底比較
- 【アドバイス型 vs 投資一任型】知っておきたいロボアドバイザーの種類
- ロボアドバイザーの市場規模はどれくらい?今後はどうなる?
- 資産運用初心者も安心!ロボアドバイザーの始め方
- ロボアドバイザーで資産運用する前に知っておきたいリスク許容度とは?
- ロボアドバイザーの資産運用で失敗しないために心がけるべき6つのこと
ロボアドバイザーの比較記事
- 1万円以下から投資できるロボアドバイザーサービス
- 手数料が安いロボアドバイザーサービス
- スマホでかんたんに積立投資ができるサービス
- 少額で株式投資ができるサービスの比較・まとめ
- ポイント投資・ポイント運用ができるサービス
- 大手が運営しているロボアドバイザーサービス
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