ウッドフレンズは、林業から建設・販売まで一貫した住宅供給などを目指している企業です。省エネ住宅の建設および販売や、ESG投資が可能な不動産投資クラウドファンディング「信長ファンディング」の運営など、様々な事業やサービスを通してESG・サステナビリティの取り組みを進めているのが特徴です。
そこで、この記事ではウッドフレンズの特徴や業績と株価推移、配当情報、ESG・サステナビリティの取り組み内容、将来性について詳しくご紹介するので、ESG投資などに興味のある方は参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年7月時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- ウッドフレンズの特徴
1-1 信長ファンディング - ウッドフレンズのESG・サステナビリティの取り組み内容と将来性
2-1 ウッドフレンズのサステナビリティ
2-2 環境に対する取り組み例
2-3 社会に対する取り組み例
2-4 ガバナンスに対する取り組み例 - ウッドフレンズの業績・株価推移
3-1 最近の業績
3-2 株価推移 - ウッドフレンズの配当情報
- まとめ
1 ウッドフレンズの特徴
株式会社ウッドフレンズ(8886)は、不動産業を営む上場企業です。東京証券取引所のスタンダード市場と名古屋証券取引所のメイン市場に上場しており、本社所在地の名古屋市をはじめ愛知県や岐阜県など東海地方を中心に事業展開しています。
ウッドフレンズの設立は1982年11月26日と40年超の歴史を持ち、創業後は分譲住宅の販売やマンション建設販売などの事業を手掛け、2000年代に入ると東京など首都圏への進出も果たした企業です。
現在は、戸建分譲住宅の開発・販売や住宅建設資材の製造・販売等を行う住宅事業が主力事業となっており、最新の2023年5月期の決算では売上高の9割超を占めています。
ウッドフレンズは2004年に愛知県初のPFI事業者(公共施設等の設計、建設、維持管理および運営などを民間のノウハウや資金を駆使して請け負う事業者)として「森林公園ゴルフ場」の運営事業者に選定されるなど、ゴルフ場・ホテル・公共施設の運営管理などの事業も展開しており、これらの余暇事業は売上高の約5%超となっています。
その他にも、収益型不動産の開発並びに施設の維持管理等を行う都市事業、上記以外の外部顧客への販売やサービスの提供などを行うその他の事業なども手掛けているのが特徴です。
1-1 信長ファンディング
信長ファンディングは、2020年11月11日からサービス開始となっている不動産投資型クラウドファンディングです。従来の不動産投資では、個人が不動産物件を購入し、自己資金を投入して所有するか、ローンを組んで投資する必要がありましたが、クラウドファンディングを利用することで、より低い金額から不動産投資に参加可能なのが不動産投資型クラウドファンディングの特徴です。
信長ファンディングの最低投資資金は10万円程度(※1口1万円で申込最低口数10口の案件が多い)、運用不動産の賃貸や売却等で得られた利益を分配金として受け取ることができます。元本を毀損する可能性のある金融商品ですが、運営元が返済順位の低い劣後出資を行うことで、投資家の元本と分配金のリスクを抑える仕組みとなっています。
なお、信長ファンディングでは、環境に優しい国産木材を積極的に活用した賃貸アパートや中古の不動産再生物件などを商品化しているため、ESG投資の一環として不動産投資を行えるのも大きな特徴です。対象不動産は愛知県と岐阜県の物件が中心となっており、地域振興や活性化などの観点からもESG投資の対象となり得ます。
また、一つのファンドで複数の不動産が投資対象となる案件もあり、首都圏や関西圏などの不動産と分けて投資することで地域リスクや災害リスクなども抑えながら分散投資することが可能となっています。
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2 ウッドフレンズのESG・サステナビリティの取り組み内容と将来性
ウッドフレンズは、人や環境に優しい木材を活用した住宅の建設・販売を行っているのが特徴です。以下では、ウッドフレンズのサステナビリティに対する考え方やESGへの具体的な取り組み内容と将来性についてご紹介します。
2-1 ウッドフレンズのサステナビリティ
ウッドフレンズは、住宅事業において林業から建設・販売まで一貫した製造小売を実現する「木質資源カスケード事業」という企業理念をもとに持続可能な事業の達成を目指している会社です。早くから地元東海地方の豊富な森林資源に着目し、2011年には集成材工場とプレカット工場を開設し、外壁など木質部材の国産化を進めてきました。
2024年には、かねてから計画を進めてきた製材工場を岐阜県美濃加茂市と加茂郡八百津町に開設予定で、これにより原木調達から建設資材の製造、建設まで森林資源を無駄なく利用できるようになる見込みです。
新しい製材工場では2024年秋からヒノキや杉を活用した集成材や柱、チップなどの生産を予定しています。初年度は原木40,000㎥を使用して製材品生産量16,000㎥予定しており、2027年には原木160,000㎥を使用して製材品生産量64,000㎥まで生産規模を拡大させる見込みです。
コロナ禍の影響によるウッドショック以降、輸入木材価格が高止まりする中、ウッドフレンズのこれらの取り組みはウッドフレンズで使用する国産木材の供給につながるほか、また、森林資源の有効活用や国産材木と山林の価値向上にもつながる取り組みとして期待されています。
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2-2 環境に対する取り組み例
ウッドフレンズが積極的に活用する木材で建築した木造住宅は、鉄筋コンクリート造よりコストが安価な上、断熱性能も高い点が特徴です。木はコンクリートの約10倍、鉄の約400倍の断熱性能を有しており、夏は涼しく冬は暖かい省エネ住宅を供給することによって、冷房や暖房などから発生する温室効果ガスの削減に貢献しています。
ウッドフレンズの手がける住宅は、2022年4月1日から改正省エネ基準として新設された最上位等級「断熱等性能等級5」を取得したほか、2022年11月26日には冷暖房に頼らない省エネライフを提供する住宅展示場「地球世代」をオープンするなど、省エネ住宅の販売はウッドフレンズが特に力を入れている取り組みとなっています。
また、木造住宅は主要構成材料を製造する際のCO2排出量も少なく、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて約3分の1~4分の1の排出量で供給可能となっており、ウッドフレンズは使用する資材の側面からもカーボンニュートラルの達成に向けて貢献しています。
さらに、「木質資源カスケード事業」では、木屑などを活用したバイオマス発電や原木からチップまで使い切る資源の有効活用にも着手しており、ウッドフレンズは住宅メーカーならではの方法で環境に対する取り組みを進めています。
2-3 社会に対する取り組み例
ウッドフレンズの「木質資源カスケード事業」は、木材の供給だけでなく衰退を続ける国内林業の活性化と雇用促進につながる取り組みです。
2021年11月30日から2日間で開催された「日経SDGsフェスinどまんなか」で登壇したウッドフレンズの林社長は、産業として取り組む住宅事業について、地域の雇用創出を図りながら資源を有効活用し、豊かな住環境を作り出す地域環境型経済モデルの実現がSDGsへの貢献にもつながることを強調しました。
住宅事業を産業として取り組み、地域の雇用創出を図りながら資源を有効活用し、豊かな住環境を作り出す。私たちが目指す持続可能な地域循環型経済モデルの実現は、SDGsへの貢献につながると考える。
※引用:日経ESG Special「持続可能な未来へ、東海の豊富な知見を発信」
ウッドフレンズの目指すビジネスモデルは、木材資源のロスを減らすだけでなく、地域での雇用や豊かな住環境の提供、木材流通の簡素化など社会課題の解決にもつながる取り組みであるほか、子育て世帯や若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得などを支援する国土交通省の補助事業「こどもみらい住宅支援事業(2022年11月に終了)」にも参画するなど、若者の住宅取得支援などの地域の活性化にも注力しています。
2-4 ガバナンスに対する取り組み例
ウッドフレンズは、2022年8月24日に「内部統制システム構築の基本方針」を改定するなどコーポレートガバナンスの強化に向けた取り組みも進めています。
この改定では、内部監査室を代表取締役の直轄組織とすることやリスクマネジメント推進委員会の設置などが盛り込まれており、ウッドフレンズのコンプライアンス基本方針を周知することでコンプライアンス経営を推進することが主な目的です。
法令違反を早期発見し、自浄作用を働かせるための内部通報制度の運用についても触れられており、全ての役職員が法令や定款を遵守した職務遂行できるような体制の強化なども行われています。
また、リスク管理体制についても改定が行われており、内部監査室が行った各部門のリスク管理の状況について報告を受けた代表取締役が問題点の把握やリスク管理体制の見直しを行うなど、危機に対して迅速な判断が下せるような管理体制の構築も進められています。
3 ウッドフレンズの業績・株価推移
ウッドフレンズの最近の業績と株価推移についても確認しておきましょう。
3-1 最近の業績
ウッドフレンズはここ数年堅調に売上高を伸ばしている企業で、2019年5月期以降の決算状況は以下の通りです。
(単位:百万円)
決算期 | 43586 | 43952 | 44317 | 44682 | 45047 |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 35511 | 37619 | 37474 | 42301 | 43750 |
営業利益 | 1109 | 627 | 1210 | 1493 | 547 |
当期利益 | 534 | 119 | 546 | 937 | ▲230 |
(※参照:2023年5月期は決算短信、その他の年度は年度報告書より)
2021年5月期の売上高は足踏みしたものの、2023年5月期まで堅調に伸びています。一方、営業利益と当期利益は2022年5月期まで堅調な推移でしたが、2023年5月期決算では最終利益が赤字に転落するなど厳しい状況です。分譲住宅の販売戸数減少は土地分譲によって補えたものの、分譲住宅販売戸数減少や建築資材価格の高騰による利益率の低下が業績悪化の大きな要因となりました。
2024年5月期の会社予想は売上高40,422百万円、営業利益403百万円、当期利益9百万円の減収見込みとなっており、当面は住宅の販売戸数減や資材価格の高騰などで厳しい状況が続くものと予想されています。
3-2 株価推移
下表は2019年以降のウッドフレンズの四半期末日における終値をまとめたものです。
(単位:円)
2月末 | 5月末(期末) | 8月末 | 11月末 | |
---|---|---|---|---|
2019年 | 3060 | 2554 | 2120 | 2459 |
2020年 | 2396 | 1693 | 2083 | 2160 |
2021年 | 2511 | 2202 | 2985 | 3555 |
2022年 | 3540 | 3520 | 3095 | 2671 |
2023年 | 2100 | 2050 | - | - |
2019年2月末に3,060円だった株価は2020年5月末にかけて1,693円まで下落しています。これは2020年前半から日本にも影響を及ぼし始めた新型コロナウイルスの影響で市場全体が大きく低迷したことが主な要因です。
その後、ウッドフレンズ株は2022年5月期が増収増益となったことなどを受け、2018年10月以来となる3,500円を超える水準まで反発しています。
2022年後半からは、増収ながらも大幅な減益となる厳しい決算状況を受け、2023年3月24日には再び2,000円を切る水準の1,870円まで下落しています。その後やや回復したものの、2023年7月19日時点で1,852円と再び急落しており、今後も利益率の改善など業績動向に左右される展開が続く可能性があるでしょう。
ウッドフレンズの株価は、2015年後半頃より2,000円~3,500円のボックス圏内で動いていましたが、業績の悪化による下値を伺う動きも警戒されており、今後の株価動向も注視する必要があります。
4 ウッドフレンズの配当情報
以下は、ウッドフレンズの2018年5月期以降の配当状況をまとめた表です。
(単位:円)
年間配当額 | 中間 | 期末 | 配当性向 | |
---|---|---|---|---|
2023年5月期 | 0 | 0 | 0 | - |
2022年5月期 | 161 | 0 | 161 | 0.25 |
2021年5月期 | 93 | 0 | 93 | 0.248 |
2020年5月期 | 20 | 0 | 20 | 0.244 |
2019年5月期 | 95 | 0 | 95 | 0.259 |
2018年5月期 | 120 | 0 | 120 | 0.248 |
(※参照:2023年5月期は決算短信、その他の年度は年度報告書より)
ウッドフレンズは、株主への利益還元を経営の最重要課題として捉えており、業績動向や経営環境を総合的に勘案しながら将来の事業展開に備えた財務体質強化のための内部留保とバランスのとれた還元を実施する方針です。なお、ウッドフレンズの配当金は年1回の期末配当のみを基本方針としており、中間配当は実施していません。
毎年、配当性向25%程度を目安に配当を実施しており、業績によって異なりますが、2020年5月期に20円だった年間配当額は2022年5月期に161円と2期連続での増配を達成しました。
一方、2023年5月期は年間配当予想の27円が修正となり、7月14日の決算発表と同時に無配となることが発表されています。これは最終利益が赤字に転落したことが理由で、物価上昇によって消費者マインドが落ち込んだにも関わらず供給が続いたことで、住宅市場が供給過多の状態となっており、資材価格の高騰なども要因となって予想よりも業績が落ち込んだためです。
2024年5月期も住宅販売戸数の劇的な回復は見込めず減収予想となっており、資材価格の高騰など利益構造の大幅な改善も難しく、引き続き無配となる予想です。
まとめ
ウッドフレンズは、国産木材の積極的な活用による林業の活性化や省エネ住宅の販売など地域循環経済の促進によってSDGsへの貢献を進める企業で、2024年に向けて製材工場の建設も進めるなど積極的な取り組みが続いています。
ウッドフレンズはここ数年間堅調に売上高を伸ばしていますが、直近の2023年5月期は住宅市場の供給過多や資材価格の高騰が響いて最終利益は赤字の状態です。来期も厳しい業績は続く見込みで、2023年5月期だけでなく2024年5月期も無配の予想となっています。
今後、ウッドフレンズの株価は業績に大きく左右されることが想定されるため、利益率の推移や新設される製材工場の情報なども加味しながら投資判断をすることが大切です。
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