脱炭素に積極的に取り組む不動産投資会社・サービスは?

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脱炭素の取り組みとして、自動車やエネルギーなどの直接的な産業に注目する方も多いのではないでしょうか。一方、大規模な工事や材料を必要としながらも人の暮らしに欠かせない住宅の分野にも、脱炭素化を導入する動きが始まっています。

また、一戸建てだけではなく、賃貸用物件のような比較的規模の大きい物件に取り組む不動産投資会社が登場しており、不動産業界においても脱炭素の注目度は高まっていると言えるでしょう。

今回のコラムでは、脱炭素に積極的に取り組む不動産投資会社の事業やサービスについて紹介していきます。

目次

  1. 住宅の脱炭素化が注目されている理由
  2. 株式会社ウッドフレンズ
    2-1.木質資源カスケード事業で持続可能な社会へ
    2-2.不動産クラウドファンディング事業「信長ファンディング」
  3. 株式会社グローバル・リンク・マネジメント
    3-1.環境負荷を軽減した投資用不動産を供給
    3-2.「BELS」5つ星を獲得した新築投資用マンション
  4. まとめ

1 住宅の脱炭素化が注目されている理由

現代社会が抱える環境問題の一つに、温室効果ガスによる地球温暖化があります。この温室効果ガスの大半を占める二酸化炭素の排出を抑制するために、世界の国々が取り組みを開始しています。

そのうち、日本政府が「日本の排出削減目標」として世界に宣言しているのが下記です。

  • 2030年度の温室効果ガスの排出量を、2013年度比で46%削減(50%に向けてさらに挑戦)
  • 2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする

地球温暖化対策計画案」では、この目標を達成するために家庭部門の二酸化炭素排出量を66%削減する必要があるとし、2021年10月22日に閣議決定しています。

具体的には、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方検討会」における「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組の基本的な考え方」の中で、2050年および2030年に目指すべき住宅・建築物のあり方が示されています。

項目 省エネ 再エネ
2030年に目指すべき住宅・建築物の姿 新築される住宅・建築物についてはZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保される 新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入される
2050年に目指すべき住宅・建築物の姿 ストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保される 導入が合理的な住宅・建築物における太陽光発電設備等の再生可能エネルギー導入が一般的となる

※参照:国土交通省「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会 概要

省エネ住宅や創エネ住宅なども普及し始めていますが、国内には多くの賃貸用物件もあります。賃貸用物件のオーナーとして脱炭素化に対応する賃貸用物件を供給することで、脱炭素の取り組みに参加することが可能です。

すでに脱炭素化に向けた取り組みを始めている2つの不動産投資会社について、次の項目から詳しく見て行きましょう。

2 株式会社ウッドフレンズ

株式会社ウッドフレンズ株式会社ウッドフレンズは名古屋市に本社を置く不動産会社です。事業の中心は分譲住宅の販売ですが、マンション建設販売や収益型不動産事業も展開しています。不動産投資事業としてはクラウドファンディングの「信長ファンディング」が広く知られています。

社名のウッドフレンズとは、「自然環境」や「天然素材」「ナチュラルな人間社会」を表す「WOOD」と、「人と人」「人と組織」「人と素材」「素材と素材のあり方」をイメージさせる「FRIENDS」を融合させたものです。「自然と人間の共生」「風土との調和」などをテーマに、独自性と創造性を持って不動産事業に取り組んでいます。

2-1 木質資源カスケード事業で持続可能な社会へ

テーマの一つとして挙げている「自然と人間の共生」において、同社が取り組んでいるのが「木質資源カスケード事業」です。住宅建設には木材が欠かせないため、地域の木材を積極的に活用することで、森林を適正に循環させることを目標としています。

これは日本の国土の多くを占める人工林が、人の手が入らないことで痩せ細ったり、加工できないほどに太く育ってしまう懸念があるためです。

木材として活用されない場合、森林の高齢化が進んでしまうことになります。木は成長の過程が一番多く二酸化炭素を吸収すると考えられています。地域の森林が適切な時期に伐採され、新しく植林することは、二酸化炭素の排出量削減にも効果が見込まれます。(※参考:(独)森林総合研究所 温暖化対応推進拠点「森林の林木(幹・枝葉・根)が吸収(固定)する炭素の平均的な量」)

ウッドフレンズでは、SDGsの考え方が広がる前の2011年に、集成材工場・プレカット工場を岐阜県養老町に開設し、林業から建築、販売に至るまでを一貫した製造小売を実現してきました。その中で、地域の木材を積極的に活用し、森林を適正に循環させていくことを目指しています。木材を無駄なく有効活用し、かつ製造小売による流通変革により、国産材を低価格で提供することにも成功しています。

「木質資源カスケード事業」の柱となっているのは、こうした取り組みによって木質資源のロスを削減させていくことですが、今後はバイオマス発電やバイオケミカルの実施により、同社ではさらなる木質資源の有効活用も目指しています。

2-2 不動産クラウドファンディング事業「信長ファンディング」


株式会社ウッドフレンズが運営する不動産クラウドファンディング事業に「信長ファンディング」というサービスがあります。

信長ファンディングは出資者から集めた資金をもとに不動産運用を行い、運用益や売却益を出資者に分配する仕組みです。不動産特定共同事業法に基づく不動産投資商品(匿名組合型)のため、出資者は事業者(株式会社ウッドフレンズ)と不動産特定共同事業契約(匿名組合契約)を結ぶことになります。

不動産クラウドファンディングでは、資金には「劣後出資」と「優先出資」の2つがありますが、「信長ファンディング」の出資者は優先出資となります。そのため配当金は先に分配され、損失が出た場合は後で負担することになります。また運用資産価値が下落しても劣後出資比率以内であれば、劣後出資者の株式会社ウッドフレンズが負担するため出資者の元本には影響がない仕組みになっています(ただし、元本・予定分配率は保証されません)。

例えば1口10万円で、想定利回り5.0%・12カ月運用のファンドの場合、10口100万円を運用すると12カ月後の分配金は105万円になります。

「信長ファンディング」の2022年5月時点で運用中のファンドは下記のようになっています。

  • 信長ファンド10号:1口1万円、想定利回り(年利)10.0%、想定運用期間3カ月
  • 信長ファンド9号:1口1万円、想定利回り(年利)5.0%、想定運用期間11カ月
  • 信長ファンド8号:1口1万円、想定利回り(年利)5.0%、想定運用期間12カ月
  • 信長ファンド7号:1口1万円、想定利回り(年利)5.0%、想定運用期間9カ月

2022年5月時点で募集中のファンドはありませんが、利用登録することでファンドの募集に申し込みすることができます。

3 株式会社グローバル・リンク・マネジメント

グローバル・リンク・マネジメントの評判株式会社グローバル・リンク・マネジメントは東証プライム市場に上場するマンション投資会社で、不動産の開発・販売・管理をワンストップで行っています。物件は主に「アルテシモ」というデザイナーズブランドで展開しており、入居率は98.03%(2022年5月時点)となっています。

オーナーからの厚い信頼を獲得しており、リピート・紹介率が71.3%(2019年度実績)となっています。これは入居率の高さに加えて、国内唯一の7年更新によるサブリース契約を展開しており、さらに7年後の家賃見直し時の下落幅は5%の下限を設けていることなどが要因となっています。

3-1 環境負荷を軽減した投資用不動産を供給

株式会社グローバル・リンク・マネジメントはサステナブルな不動産開発に注力しているESC不動産投資会社として、「お客さまの持続的な資産形成」「社会の持続的な発展」「環境負荷の軽減」の3つを実現する「サステナブルな不動産事業モデル」をコンセプトに事業を行っています。これを実現しているのが3チカ戦略です。

3チカ戦略とは、「駅から徒歩10分圏内(駅からチカい)」「ターミナル駅まで30分前後(都心からチカい)」「高い地価(チカ)」という3つの「チカ」を持つ物件の供給です。この3チカ戦略を遂行することで、二酸化炭素排出量削減などを実現するコンパクトシティ化を推進しています。

また、事業活動にも環境負荷軽減を組み込んでいます。例えば、自社開発マンションに対して環境対応を標準仕様化しているほか、環境に配慮した建材の利用などです。その技術を集結したのが、2023年4月竣工予定の「アルテシモ上十条(仮称)」です。

3-2 「BELS」5つ星を獲得した新築投資用マンション

株式会社グローバル・リンク・マネジメントでは、ESC不動産投資会社として下記のような方針を発表しています。

  • 自社開発の新築物件すべてに「ZEH-M Oriented」や「BELS」の4つ星以上などを標準仕様
  • 一般社団法人環境共創イニシアチブの「ZEHデベロッパー」への登録
  • 2024年12月期のすべての企画開発物件の環境配慮への対応

こうした方針のもと、現在進めている新築投資用マンションが「アルテシモ上十条(仮称)」です。2023年4月末に竣工が予定されている同物件は、昨年12月に「BELS(ベルス)」の最高位である5つ星を獲得しています。

「BELS」とは、Building-Housing Energy-efficiency Labeling Systemの略称で、建築物における省エネ性能を第三者評価機関が評価して認定する建築物省エネルギー性能表示制度のことです。「アルテシモ上十条(仮称)」が「BELS」の5つ星を取得したのは、同社の技術によって断熱性能を高めるなどで、同じ条件の物件と比べてエネルギー消費量を20%程度削減できるためです。

このような脱炭素化に向けた物件を運用することは、環境性能に優れた物件を通じて不動産投資をすることができ、持続可能な社会への貢献ができる生活を入居者へ供給することに繋がります。

まとめ

持続可能な社会の実現のためには、世界中の人々の取り組みが欠かせなくなっています。今後、こうした活動に取り組む不動産投資会社も増え、賃貸用物件のオーナーや入居者の環境に対する意識も高くなっていくことも予想されるでしょう。

今は先進的な取り組みでも、今後はこのような物件を供給したり、投資判断の要素の一つとして検討することがスタンダードになる可能性があります。賃貸用物件のオーナーが社会に貢献できることの一つとして、実際に脱炭素に向けた事業を行っている不動産会社に注目されてみるのも良いでしょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。