2022年1月時点、日本において少子高齢化が社会問題となっています。全国には将来的な人口減少が懸念されていますが、東京23区は他府県からの転入超過によって人口上昇傾向にあり、賃貸需要の増加が見込まれているエリアです。
東京で行うマンション投資には、人口増加を背景とした将来的な家賃収入の見込みやすさ、地価の上昇による売却益(キャピタルゲイン)など様々なメリットがあります。しかしその一方で、物件価格が高いために利回りが低くなる傾向にあり、大きな収益を狙うのが難しいというデメリットがあります。
初心者の方が東京23区でマンション投資を検討するうえでは、このようなメリット・デメリットについて理解し、自身の投資目的に沿っているか判断することが重要となってきます。
そこで今回のコラムでは、東京23区で中古マンションを用いた不動産投資を行う場合のメリットとデメリットを解説していきます。また投資初心者の方が注意しておきたいポイントを紹介します。
目次
- 東京23区で行う中古マンション投資のメリット
1-1.取り扱われている物件数が多い
1-2.国内で最も人口が多く、賃貸需要が見込みやすい
1-3.流動性が高く売却しやすい
1-4.地価が上昇傾向にある
1-5.不動産投資ローンを組みやすい環境が整っている - 東京23区で行う中古マンション投資のデメリット
2-1.物件価格が高い
2-2.土地の課税標準額が高く、固定資産税が高い
2-3.居住期間が短い - 不動産投資の初心者向け3つのポイント
3-1.不動産会社を見極める
3-2.投資エリアを慎重に見極める
3-3 不動産投資ローンの借入を増やしすぎないように注意する - まとめ
1 東京23区で行う中古マンション投資のメリット
東京23区内でマンション投資を行う場合のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。人口や土地価格などのデータも紹介しながら、解説していきます。
1-1 取り扱われている物件数が多い
公益財団法人不動産流通推進センターが発表した「2021不動産業統計集」によると、2020年3月から2021年2月までの東京都と神奈川県、大阪府の中古マンション成約物件件数は下記のようになっています。
都府県 | 中古マンション成約物件件数 |
---|---|
東京都 | 18,846件 |
神奈川県 | 8,994件 |
大阪府 | 8,445件 |
成約物件件数が多いということは、市場に売りに出されている物件が多く、物件を選ぶ際の選択肢が多いということでもあります。
1-2 国内で最も人口が多く、賃貸需要が見込みやすい
東京都は国内で最も人口が多い都市であると同時に、「経済センサス基礎調査甲調査(民営事業所)令和元年」によると日本で最も事業所が多い都市となっています。
事業所の登録数は2位の大阪府の約2倍となる913,912で、そこで働く従業員も多く、賃貸需要が見込みやすいと言えます。
ただし、2021年には新型コロナウイルスの感染拡大の影響によりリモートワークが推奨され、家賃の高い東京都から転出者が増加した背景もあります。東京23区全体としてみると長期的には人口増加傾向にありますが、このような市況の変化にも注意しながら、投資判断を行うことが重要です。
1-3 流動性が高く売却しやすい
前述したように、2020年3月から2021年2月までの東京都の中古マンションの成約物件件数は18,846件で、他の地域よりも多くなっています。これは投資用物件だけではないため一概にはいえませんが、それだけ中古マンションが市場に売り出されているということになります。
東京都ではこのように中古マンションの取引が他の地域に比べて活発であり、売却に時間がかからない可能性があるのです。
1-4 地価が上昇傾向にある
「令和3年東京都基準値価格の概要」によると、東京都区部の対前年平均変動率は、全用途で0.1%増、住宅地で0.5%増となっています。令和2年は、全用途で1.6%増、住宅地で1.4%増でしたので、増加率は縮小しましたが、土地価格は上昇傾向にあります。
地価が上昇傾向にあることで資産価値の下落を抑えられ、売却時には利益を得られるキャピタルゲインの期待感も高いと言えます。
ただし、中古マンションにおける資産の土地の割合は大きくないため、建物の経年劣化による価格下落の可能性はあります。建物管理状況や周辺の家賃相場を調査するなど、地価以外の面も総合的に判断するようにしましょう。
1-5.不動産投資ローンを組みやすい環境が整っている
不動産投資を始める、金融機関の融資を活用して資金調達をされる方がほとんどでしょう。東京のマンションは前述した立地の良さや人口の豊富さゆえに担保性が高く、金融機関からも高く評価され、融資を活用しやすいという点もメリットです。
また、地方銀行などでは支店のエリアによって担保設定できる物件が決まっており、購入する不動産と投資家のいずれかがエリア外になっていると、融資を実行できないケースもあります。
一方、東京の中古マンションでは各金融機関の支店も多く、融資相談ができる金融機関の選択肢が豊富です。このような背景から、東京の中古マンション投資は他府県と比較して不動産投資ローンを組みやすい環境が整っていると言えるでしょう。
2 東京23区で行う中古マンション投資のデメリット
ここまで東京23区で行うマンション投資のメリットを見てきましたが、デメリットもあります。この項目で見てみましょう。
2-1 物件価格が高い
中古マンションとは言え、東京23区内は土地価格が高いため物件価格も高くなりがちです。
下の表は、東京23区と東京市部、そのほかの主要都市の区分マンションの価格を収益物件の取引サイト「健美家」が毎年公表している「収益物件市場動向 年間レポート2020年」から抜粋したものです。
都市 | 物件価格 |
---|---|
札幌市 | 645万円 |
仙台市 | 730万円 |
埼玉県主要都市 | 1,217万円 |
千葉県主要都市 | 1,055万円 |
東京23区 | 2,072万円 |
東京市部 | 1,173万円 |
横浜市 | 1,062万円 |
名古屋市 | 1,570万円 |
大阪市 | 1,351万円 |
福岡市 | 1,007万円 |
※参照:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)「収益物件市場動向 年間レポート2020年 区分マンション 価格の推移(登録)」
表を見てみると東京23区は、大阪市や名古屋市を抑えて全国1位になっています。物件価格が高いと、用意する自己資金も多く必要になるため、他の地域で物件を購入するよりも融資が得にくいなどのデメリットがあると考えられます。
その他、賃貸需要が見込みやすいメリットの反面、家賃相場に対して物件価格が高いことで表面利回りが低くなってしまうというデメリットがあります。不動産投資を通して大きな収益を上げたいと考えている場合、東京の中古マンション投資は適さない可能性があると言えるでしょう。
2-2 土地の課税標準額が高く、固定資産税が高い
固定資産税は、土地や家屋などを持っている人に対して課せられる地方税です。計算式は下記になっています。
課税標準額×1.4%=固定資産税
課税標準額とは土地や家屋の価値について評価した金額で、その基準は自治体が決めています。つまり、東京23区内は土地価格が高いため、他の地域の同じ広さに土地に比べて、固定資産税や都市計画税などの税金は高くなるのが通常です。
中古マンション投資は、入居者がいないと収入がありません。しかし不動産を所有していると税金が発生しますので、入居者がいない場合でも税金を支払う必要があります。他の地域に比べて東京23区でマンション投資を行っていると、このような場合に税金負担が大きく感じるため、デメリットとも言えます。
2-3 居住期間が短い
東京は全国の都道府県のうち最も居住期間が短いという統計があります。総務省統計局が発表している「平成27年国勢調査」のデータを見てみると、居住期間が「1年未満」および「1年以上5年未満」を合わせた割合は、沖縄県の28.8%、福岡県の27.9%を抑えて東京都が29.5%と全国で最も高くなっています。
居住する期間が短いということは、オーナーにとってみると、すぐに空室になるリスクがあるということです。次に入居希望者が現れる可能性もありますが、退去に伴ってオーナーは下記のような費用を支払うこともあります。
- 原状回復費
- 仲介手数料
- 広告料
- 設備交換費用
- クリーニング費用
3 不動産投資の初心者向け3つのポイント
これまで東京23区でマンション投資を行う際のメリットとデメリットを見てきましたが、それらを踏まえた上で初心者が投資を行う際に気をつけたいポイントを紹介します。
3-1 不動産会社を見極める
東京23区内では数多くの中古マンションが販売されており、取り扱う不動産会社もたくさんあります。投資のパートナーとなる不動産投資会社を見極めるうえで重要なポイントとして、購入後のアフターサービスに注目してみましょう。
中古マンション投資では、新築時よりも空室率が上昇していたり、エアコンやキッチン周りの付帯設備が劣化しているなどの問題を抱えていることがあります。不動産投資会社によっては、このようなリスクやデメリットに対してサポートを行っていることがあります。
例えば、東証プライム上場グループ企業の「プロパティエージェント」では、東京23区・横浜エリアに集中したマンション開発・販売により入居率99.59%(2024年1月末時点)の実績を有しています。建物管理事業を備えているため、中古マンション投資のリスクの一つである購入後の物件の資産性を維持するための必要なコストなどの知見も深く、長期的に不動産を運用していきたい方にも適した不動産会社です。
プロパティエージェントの設備保証サービスは2種類あり、「プランA」(月額1,480円)は6品目、「プランB」(月額4,980円)は13品目が対象となっています。同社で購入した新築・中古、他社ブランド物件すべてが対象となっており、築年数も無制限なのが特徴です。1回の修理代は10万円まで、修理回数は無制限となっています。
その他、東京23区の投資用マンションの仕入れ・販売を手掛ける「エイマックス」では、マンション購入後は、1室あたり一律2200円(税込)の管理費用で運営を委託することができ、購入後5年間は査定家賃80%保証、家賃滞納100%保証、購入後3年間は設備保証も設定されているなど購入後の保証が充実しています。
不動産会社によっては、物件仲介だけ行ってその後のアフターサービスを行わないケースも少なくありません。これから不動産投資を始める初心者の方であれば、まずは購入後のアフターサポートを行っているかどうか、という点を重視してみるのも良いでしょう。
複数社の不動産投資会社へ問い合わせ、自身の投資目的に沿っているかどうか比較してみるのも有効な手段です。また、1社から提案された内容に不信感が出てきたとき、他の不動産投資会社とコミュニケーションを取っていることで、提案内容に問題があるかどうかの判断に役立てることもできます。
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3-2 投資エリアを慎重に見極める
賃貸需要が高い東京23区ですが、その分、競合物件が多いことに気をつけましょう。近隣に似たような物件がたくさんある場合、適切な空室対策を取らないと空室がいつまでも埋まらないこともあります。
また、東京都内の人口総数に対するエリアごとの人口割合にも、大きな差が見られます。
※引用:東京都統計局「東京都の人口(推計)」
上図をみると、大企業がオフィスを構える渋谷区・港区・中央区などの人口割合は低い一方で、中心部へのアクセスが良く家賃との折り合いが付きやすい世田谷区・杉並区・江戸川区の人口割合が高くなっています。
エリア別に細かく見ると、最寄駅までのルートや、生活圏内の施設などの周辺環境によって、同じ区内であっても微妙な賃貸需要の差異が生まれることは少なくありません。「東京都は人口上昇しているエリアだから大丈夫」と安易にとらえず、ミクロの視点で対象物件のエリアごとに精査し、慎重に検討することが重要です。
3-3 不動産投資ローンの借入を増やしすぎないように注意する
前述したように、東京のマンション投資では家賃収入に対して物件価格が高いために大きな利回りは狙いにくくなっています。そのため、複数戸の規模拡大を行っていると家賃収入に対して借入額が大きくなりすぎてしまい、投資のリスクが高すぎる状況に陥ることがあります。
特に中古マンション投資では、新築時よりも物件の劣化による修繕の頻度や費用が高まっている可能性があります。突発的なトラブルに対応するための一時金を必要とすることもあるため、安易な規模拡大を行ってしまうとキャッシュフローが回らず、これらのトラブルに対応できなくなってしまう可能性があるのです。
金融機関のローンによるレバレッジは資金効率を高める効果があり、不動産投資の大きなメリットの一つです。しかし、レバレッジ効果は収入が増えるプラスの効果だけでなく、経費や損失も大きくなるというマイナスのデメリットもあります。
人口の多い東京23区は不動産投資のリスクが低いエリアですが、レバレッジをかけすぎてしまうとハイリスクな投資になっていることもあります。自身の資金状況とのバランスを取りながら、適切にリスクコントロールを行いましょう。
まとめ
東京23区でのマンション投資には、メリットばかりではなく、デメリットもあります。特に競合によって空室が続くと、税金が高いなどで経営が赤字になる危険性もあります。
人口が多い、家賃下落リスクが低いなどのメリットはありますが、パートナーとなる不動産会社選びと物件選びを慎重に行い、空室対策などリスク回避を適切に行うようにしましょう。
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