リアルとデジタルとの架け橋を築くNFT

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の太田航志 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 現実世界と絡めたNFTプロジェクト
    1−1. Azuki PBT
    1−2. NOT A HOTEL
    1−3. RTFKT
  2. まとめ

2022年はLuna-USTの崩壊に始まり、トップティアVCであったThree Arrows Capitalの破産、そしてFTX TreadingとAlameda Researchの経営破綻によって大変な混乱に陥った暗号資産市場でしたが、市場全体の混乱によってNFT市況も非常に厳しいものとなりました。

一方、NFTの領域においてはAMM型NFTマーケットプレイスやマルチチェーンに対応可能なNFT、またNFTのレンディング、レンタル、デリバティブなど幅広い分野において、ユニークなプロダクトが生まれた年でもあります。そして本記事のタイトルにもある通り、NFTの新しいユースケースとして期待されるデジタル世界と現実世界の架け橋となるNFTプロジェクト、取り組みも多数誕生しています。その代表例として、NFTプロジェクトのAzukiは物理的なアイテムとNFTに結びつける「Physical Backed Tokens」を発表しました。

今回は、そんな現実世界に結びついたNFTの概要と具体的な事例をいくかのプロジェクトをもとに概観します。

現実世界と絡めたNFTプロジェクト

Azuki PBT

NFTプロジェクトのAzukiは、2022年10月にPhysical Backed Tokens略してPBTを発表しました。これは、物理的なアイテムとNFTとを結びつける規格であり、NFTを利用してその関係を証明するScan-to-Ownという取り組みを実現するものです。

具体的には、Azukiを手掛けるChiru labsが開発したbeanチップを製品に付し、それをiPhoneなどモバイル端末に近づけて認証します。チップをスキャンすることでNFTがミントされ、所有者のウォレットに転送されます。そしてNFTを転送する際に、このチップを認証することで物理的なアイテムとオーナーとの1対1の関係を証明します。これにより、そのアイテムがどのオーナーからどのオーナーへ渡ったのかを追跡することができ、売買や販売履歴の検索が可能となる予定です。

Azukiは最初のPBTの活用事例として、本物の金でメッキされたPBT付きスケートボードをオークションを通じて販売しました。9点のスケートボードが制作された中で、オークションにおける最低落札価格は200ETH、最高落札価格は309ETHにも上っています。また金のスケートボードの印象が大変に強いAzukiのPBTですが、11月にはAzukiとAMBUSHがコラボしたPBT付きのパーカーも販売されています。

現状PBTのユースケースとしてAzukiが提案しているのは、「モバイル端末の等のスキャンによって物理的なアイテムを認証可能にする物理的アイテムの分散型認証」「当該の物理的なアイテムの過去と現在の所有者を検証可能にすることで、所有者の履歴を追跡可能にする仕組み」「デジタル上の体験において物理的なアイテムを使用可能とする取り組み」の3つを挙げています。

1点目の物理アイテムの分散型認証に関しては、まさにPBT付きのスケートボードやパーカーで実現されていることであり、3点目のデジタル上で物理アイテムが使用可能になる取り組みに関しては、2023年1月にAzukiが発表したメタバース都市Hilumiaにおいて金のスケートボードの所有者がPBTをスキャンすることでHilumia内の遺跡に祀られる仕掛けが用意されるとも発表されています。

NOT A HOTEL

出典 :NOT A HOTEL

NOT A HOTELは、不動産のD2C事業を手掛けるスタートアップ会社で、オーナーはオンラインで直接、不動産を売買することができます。NOT A HOTELにおいて、不動産のオーナーは、別荘として当該物件を利用できるほか、ホテルとして貸し出すことも可能となっています。したがって通常の不動産のように売買も可能なほか、ホテルとして利用者に貸し出すことも可能なため、収益を上げることもできます。NOT A HOTELは、この宿泊できる権利をNFT化し販売している点がユニークなものと言えるでしょう。

さて、これまでNOT A HOTELでは最低でも30日から所有が前提となっており、その金額や利用効率といった点においてハードルが高くなっていました。そこでNFTを活用し1日単位で宿泊できる権利に分割することでより容易に利用できる仕組みを構築したのです。現にNFT分野の盛り上がりと相まって昨年のセールでは販売開始20分で3億円分が完売するなど、大きな反響を呼びました。

ここからはNOT A HOTEL NFTの具体的な仕様について解説します。まずNOT A HOTEL NFTとは、その名の通りNFT保有者に対して、MEMBERSHIPと呼ばれるNOT A HOTELの宿泊券が設定されたもので、3種類のNFTが用意されています。MEMBERSHIP Sは1年のうち1泊分のランダムな日付が割り当てられ、MEMBERSHIP Yには2泊分が、そしてMEMBERSHIP Xには3泊分の日付が割り当てられます。加えてMEMBERSHIPに記載された日程の3ヶ月前には、NOT A HOTELの鍵であるTHE KEYというNFTが宿泊者のもとに届きます。

NOT A HOTELは、現時点で宮崎県の青島や栃木県の那須などで建設が進んでおり、今後ロケーションが追加される予定です。なお宿泊先に関しては、その年ごとにランダムに決定されるため、THE KEYが届くまではわかりません。このMEMBERSHIP NFTとTHE KEYは、OpenSeaなどで二次流通が可能となっており、売却やプレゼントすることも出来ます。このNFTを保有することで、毎年NOT A HOTELへの宿泊が可能となるほか、その有効期間は47年間と設定されています。NFTの販売価格は現時点でMEMBERSHIP Sが7.5ETH、Yが17.2ETH、Xは28.4ETHとなっています。

RTFKT

RTFKTは、RTFKT Studiosが手掛けるNFTを活用したフッションブランドで、NFTのスニーカーからジャケットまで幅広いブランド製品を制作してきました。NFTホルダーは、メタバース上で当該製品をアバターに履かせることができるほか、ARを用いて現実世界で利用することも可能となっています。そのRTFKT Studiosは2021年に買収によってNike傘下にとなることが決定し、現在では現物のスニーカーもNFTとの引き換えを通じて販売されています。

具体的にRTFKT Studiosは、昨年の12月にNikeとコラボレーションしたNFTスニーカー Cryptokicks iRLを発表しました。Cryptokicks iRLでは実際のスニーカーにNFCチップ用いてNFTを紐付け、認証することで、その受け取りを可能にしています。この他にもBluetoothとの連携やワイヤレス充電の仕組みも搭載されます。またWeb3的な要素として昨年話題にも上がったMove to Earnのチャレンジやイベントも開催される予定で現実世界での活用に期待がかかるでしょう。

RTFKTは、NFTと物理的なアイテムを用いた製品の開発を盛んに進めており、上記の他には昨年8月にアーティストの村上隆氏が手掛けるNFTコレクションClone Xとのコラボレーションも実現しています。コラボレーションNFTのClone X Forgingでは、NFTホルダーが同様にパーカーやシャツなど物理的なアイテムと交換することが可能となりました。

まとめ

ここまでは現実世界とデジタルの世界の架け橋となるようなNFTプロジェクトを概観してきました。上記で紹介した事例においては、いずれもWeb3やクリプトの文脈を超えて大きな注目と盛り上がりを見せているものばかりです。デジタルの世界が中心となるNFTを現実世界においても利用を可能にすることは、新しくも楽しい顧客体験を創り出す重要な要因となりうるでしょう。

またこれまでNFTはアートやコレクティブ、コミュニティなど明確なユーティリティを定義しづらい事例が数多く散見されてきました。一方NOT A HOTELのように現実世界でそもそも問題に上がっていた点をNFTを活用することで、魅力的なビジネスモデルへと仕立て上げる例も存在しています。2023年はリアルワールドアセットとWeb3の結びつきが大きなテーマとして挙がる中で今後も現実世界とデジタル世界を結びつけたNFTが登場し、新たなナラティブが創出されていくのではないでしょうか。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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Fracton Ventures株式会社

当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。