アパートの適正な売却価格は?査定前に知っておきたい相場の調べ方5つ

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アパートを売りに出す際、売り出し価格は不動産会社による査定結果を参考にすることになります。しかし、不動産会社1社だけに売却査定を依頼し、その査定結果が適正価格ではなかった場合、相場よりも低い価格で売買契約が成立してしまう可能性があります。

このような状況を避けるため、オーナー自身がアパートの適正価格を知り、対策をしておく必要があります。そこでこの記事では、適正価格でアパートの売却を目指す方向けに、アパート売却価格の判断に役立つ相場の調べ方を5つ紹介します。

目次

  1. アパートの売却を進める際は適正価格を知ることが重要
  2. アパート売却価格の判断に役立つ5つの相場の調べ方
    2-1.複数の不動産会社に査定を依頼して調べる
    2-2.不動産一括査定サービスを活用して調べる
    2-3.収益還元法で利回りからアパートの相場を調べる
    2-4.原価法でアパートの積算価格を調べる
    2-5.不動産ポータルサイトで調べる
  3. アパート売却の査定額を高くする・アパートを高値で売却するコツ
    3-1.アパートの修繕履歴や賃貸履歴などを準備する
    3-2.金融機関の融資情報に詳しい不動産会社へ査定・売却依頼する
    3-3.アパートの欠陥やネガティブなポイントも正確に伝える
  4. まとめ

1.アパートの売却を進める際は適正価格を知ることが重要

アパートの売り出し価格を、適正価格かどうか分からないまま不動産会社の査定結果に基づいて決定してしまうと、適正価格よりも低く売却してしまったり、相場と比べて価格が高くなってしまい売却が長期化してしまったりする可能性があります。

また、アパートの売却では通常の住居とは異なり、不動産投資家や不動産業者などが買主になります。つまり、アパートの収益性を重視し、買主自らが厳しい目線で物件を評価する可能性があるのです。

アパートの査定や売却になれていない不動産会社に依頼してしまうと、適切な売出価格を設定することができずに、買主との交渉が難航してしまうこともあります。そのため、売却価格の設定は自分自身でも相場を調べたり、複数社の査定結果を比較するなどして把握しておく必要があります。その方法を見ていきましょう。

2.アパート売却価格の判断に役立つ5つの相場の調べ方

アパート売却価格の判断に役立つ相場の調べ方として、以下の5つの方法が挙げられます。

  1. 複数の不動産会社に査定を依頼して調べる
  2. 不動産一括査定サービスを活用して調べる
  3. 収益還元法で利回りからアパートの相場を調べる
  4. 原価法でアパートの積算価格を調べる
  5. 不動産ポータルサイトで調べる

それぞれの相場の調べ方について詳しく解説します。

2-1.複数の不動産会社に査定を依頼して調べる

アパートの売却価格について1社だけに査定を依頼した場合、その不動産会社の査定結果の信憑性が高いかどうかを比較検討できず、正確な判断を行いにくくなります。そこで、複数の不動産会社に査定を依頼するという方法が挙げられます。

例えば、A社・B社・C社の3つの不動産会社に査定を依頼し、A社は8,000万円、B社は7,500万円、C社は7,800万円という査定結果が出たとします。各不動産会社が似たような査定結果を出しているため、7,500~8,000万円が相場である、と見立てられます。

一方で、A社は7,000万円、B社は7,800万円、C社は8,000万円と1社だけ査定結果に開きが生じた場合には、どの価格が相場なのかを自分で確認する必要があります。そのため、不動産会社に査定を依頼した際には、査定価格の根拠もあらかじめ各社に確認しておくと良いでしょう。

なお、収益不動産の価格査定は居住用物件とは異なるノウハウが必要となります。例えば、外部収益(駐車場・携帯基地局・自動販売機収入等)があるかどうかなど、収益物件に慣れていない不動産会社の場合は見逃してしまう可能性があるため、注意が必要です。

各不動産会社によって査定に反映するポイントや狙い、得意とする物件は異なります。不動産会社1社の言うことだけを鵜呑みにせず、様々な情報を総合的に判断することが大切です

2-2.不動産一括査定サービスを活用して調べる

複数の不動産会社に査定を依頼するという方法を選んだ場合は、それぞれの不動産会社にアパートの情報を提供しなければなりません。そのため、査定を依頼する不動産会社を増やすとそれだけ手間と時間がかかります。

このような手間を避けたい方は不動産一括査定サービスを活用して相場を調べることを検討してみましょう。一括査定とは、売却を予定しているアパートに関する情報を一度登録するだけで、複数の不動産会社から査定結果を得られるというサービスです。

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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

複数の不動産会社に情報を渡しに行く手間を省くことができるため、効率良く相場を知ることができるうえ、売却活動の依頼も楽になります。また、おおよその相場だけ知りたい場合には匿名査定を利用して査定結果だけを知ることも可能です。

売却する強い意志がある場合は通常の査定方法でも問題ありませんが、相場を知ってから売却するか決めたいという場合には匿名査定の利用を検討してみるのも良いでしょう。

2-3.収益還元法で利回りからアパートの相場を調べる

収益還元法とは、アパート経営によって得られる年間の家賃収入の総額と還元利回りからアパートの適正価格を算出するという方法です。具体的な計算方法は以下の通りです。

不動産価格=年間の家賃収入の総額 ÷ 還元利回り

還元利回りとは、アパートを経営することによって得られる投資利回りのことです。還元利回りには地域や物件の構造・築年数によっておおよその相場があり、利回りから逆算することでも物件の相場を調べることが可能です。

仮に年間の家賃収入の総額が1,000万円で、周辺のアパートの還元利回りが5%だった場合、1,000万円÷5%=2億円が売却価格の目安となります。

なお、収益還元法では「部屋の家賃設定が適正かどうか?」が、重要なポイントとなります。初めてアパートを売却する場合には、付いている家賃が適正かどうか不動産会社にレントロール等を提出し、確認することを検討してみましょう。

その他、エリアによってはアパートに空室があると買主側の空室リスクの懸念から減額交渉をされたり、金融機関からの評価が低くなったりすることがあります。売出前にはできるだけ空室を減らせるよう、対処しておくことが大切です。

アパートのような収益目的の物件の査定では、主に収益還元法が使われます。不動産会社の査定でも主に使われる方法なので、覚えておくと良いでしょう。

2-4.原価法でアパートの積算価格を調べる

原価法とは、同条件のアパートを手に入れる際に土地の取得と建物の建築に必要な価格を算出後に合算し、アパートの適正価格を調べるという方法です。この方法で算出された価格を積算価格と言います。

具体的な建物価格の計算方法は以下の通りです。

建物価格:単価 × 総面積 × 残存年数(耐用年数-築年数) ÷ 耐用年数

また、不動産物件の耐用年数は構造によって異なります。

  • 木造:22年
  • 軽量鉄骨:19~27年
  • 重量鉄骨:34年
  • RC(鉄筋コンクリート):47年

積算価格は土地と建物の総和と述べましたが、アパートが既成市街地にあり造成費用等の金額がわからないなど、土地の再調達原価を計算することが困難なケースもあります。この場合は取引事例比較法や、路線価額で求めた価格を利用します。

この積算価格が高いと金融機関の融資審査の際に高い担保評価がなされ、買主が融資を受けやすくなります。融資が受けやすい物件は買い手が付きやすく、相場より低い利回りでも売却できることがあります。こちらも先に解説した収益還元法と合わせて覚えておくと良いでしょう。

2-5.不動産ポータルサイトで調べる

不動産ポータルサイトとは、複数の不動産会社が登録して物件情報を掲載しているHOME’S、SUUMOなどのサイトのことです。これらの不動産ポータルサイトには、戸建住宅やマンションなどの売却価格だけでなく、アパートの売却価格も掲載されています。

売却を予定しているアパートの周辺に、築年数、構造、利回りなどの条件が類似するアパートが売りに出ている場合には、おおよその価格相場を知ることができます。ただし不動産ポータルサイトを活用して調べるという方法は、あくまでも類似物件のおおよその相場を知ることができるという程度にとどまります。アパートの正確な劣化状況、入居率、かかる諸経費などの個別要因が反映されているわけではありません。

より正確な相場が知りたい場合には、不動産会社の査定や、一括査定を活用するのが良いでしょう。事前にポータルサイトで相場を調べておくことで、不動産会社の査定に疑問が出て来た場合に質問してみる、という使い方も可能です。

3.アパート売却の査定額を高くする・アパートを高値で売却するコツ

アパート売却では、次の買主が収益を目的として購入検討することになります。そのため、通常の不動産売却以上に、次の買主にとってメリットとなるように物件情報を整えておくことが重要なポイントとなってきます。

3-1.アパートの修繕履歴や賃貸履歴などを準備する

例えば、アパートの修繕履歴をとっておくことで将来に必要な修繕費用などが把握しやすいため、次の買主の方も購入検討しやすくなります。その他、収入が分かる過去の賃貸履歴、家賃表なども収支シミュレーションを行いやすくなるため、投資判断に役立ちます。

これらの情報が少ないと買主の方の投資リスクが上昇し、物件価格の指値交渉(値下げ交渉)や売買条件の交渉などに繋がります。その結果、最終的な売却価格が下がったり、売却期間が長くなってしまうことあるのです。

アパート売却を行う際はこれらの情報をできるだけ多く集め、次の買主の方にメリットを感じてもらえるように工夫をされてみると良いでしょう。下記、査定や売却時に準備しておきたいアパート情報の例です。

アパート査定・売却で役立つ物件情報の例

  • 修繕履歴
  • 賃貸履歴
  • 家賃表(レントロール)
  • 付帯設備(エアコンなどの室内設備)
  • 入居者の属性が分かるもの
  • ランニングコスト(共用部の電気・水道・管理費など)

3-2.金融機関の融資情報に詳しい不動産会社へ査定・売却依頼する

アパートのような収益物件は居住用の不動産と異なり、購入者の住所に関わらず保有し運用することが可能です。つまり、全国の投資家が買主候補となり得る、ということになります。

不動産の購入には融資を利用する方が大半となりますが、不動産会社によっては住宅ローンの融資情報には詳しくても、アパートローンのノウハウが少ないケースもあります。アパートローンの融資条件については金融機関の支店レベルで異なっていることや、過去の取引実績、またその時々の経済情勢によっても異なるためです。

全国の投資家を買主候補としてみた時、金融機関の融資審査において物件の所在地や買主の住所がエリア内であるかという点も重視されます。このような情報を持っているかどうかで査定時の価格や、売却価格にも大きな影響を与えることになります。

アパートの査定価格を提示された際は、査定の根拠としてどのような金融機関で融資利用を検討しているのか、過去の融資実績としてはどの程度見込めそうであるか、確認されてみるのも良いでしょう。

【関連記事】アパートローンの金利相場は?金融機関・属性・物件などアパートローンの実例も

3-3.アパートの欠陥やネガティブなポイントも正確に伝える

不動産売却では、アパートに不備や不良などがあった場合に売主が買主に対して契約不適合責任を負います。 契約不適合責任により、契約書に明記されていない欠陥が引き渡し後に見つかった場合は、売主は修繕費の支払い対応などを請求される可能性があります。

また、売買契約前であっても、買主側がアパートの欠陥や不備を見つけることで途中で購入を辞退してしまったり、大幅な値引き交渉が行われることもあります。いずれの場合も、気になるポイントがあればあらかじめ査定担当者に伝えておくことが大切です。

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まとめ

今回ご紹介したアパートの相場の調べ方は大きく分けて「複数の不動産会社の査定(一括査定)を活用して調べる」「自分でアパート価値を計算しポータルサイトなどで調べる」という2つに分類されます。

適正価格でアパートを売却するには、相場を知った上で査定結果を踏まえながらアパートの売却価格を決めることが大切です。これらの方法を組み合わせ、後悔のない売却を目指していきましょう。

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依田泰典

依田泰典

不動産投資家。情報経営イノベーション専門職大学客員教授。公認不動産コンサルティングマスター。宅地建物取引士(宅建マイスター)。
ソニーにて、ITソリューション関連の法人営業や企画・マーケティングに従事(MVP受賞)。株式(信用取引)等幅広く金融商品を運用。リーマン・ショックを経験後、不動産投資を徹底研究。日本銀行のマイナス金利政策を勝機とし数億円の融資を獲得。分譲マンション(1Kから3LDK)を20戸以上購入。ソニー退職後、不動産会社(ベンチャー企業・東証上場企業)にて、収益用不動産(1棟物件)の売買、事業開発、広報・広告宣伝に従事。現在は、ベンチャー企業を創業。東証上場グループ企業等の社外取締役、顧問、アドバイザーとして活動。不動産テック等スタートアップ30社に出資。貸金業務取扱主任者、ビル経営管理士、賃貸不動産経営管理士、社会保険労務士、行政書士等の資格を保有。趣味は、マンガアプリ(電子書籍)とYouTube。街の散策と食べ歩き。合気道(有段者)。アイドルファン(乃木坂46齋藤飛鳥)。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。