相続財産が不動産しかない時の注意点は?事前にできる対策も

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不動産相続は分割方法や評価額をめぐって相続人同士で意見が別れやすく、中には調停や裁判に発展してしまうケースもあります。よって、あらかじめ分割方法や対策を知り、いざという時に備えておくことが重要となります。

本記事では相続財産が不動産しかない時に行う事、分割方法、事前にできる対策3つを解説していきます。

目次

  1. 相続財産が不動産しかない時には、まず価額を調査・把握する
    1-1.複数の不動産会社に査定を依頼する
    1-2.不動産にローンが残っている場合
    1-3.不動産の相続放棄
  2. 相続財産が不動産のみの場合の分割方法
    2-1.現物分割
    2-2.換価分割
    2-3.代償分割
    2-4.共有分割
  3. 不動産のみの相続で事前にできる対策3つ
    3-1.遺言書を作成する
    3-2.推定相続人全員と話し合っておく
    3-3.必要書類を準備しておく
  4. まとめ

1.相続財産が不動産しかない時には、まず価額を調査・把握する

相続財産が不動産のみである場合、まずは不動産の価額を調査・把握することになります。

不動産相続税の計算時には土地は路線価又は倍率方式、建物は固定資産税評価額で評価します。しかし、実際に売買される価格(時価)と税評価額には大きな差が出てくるため、遺産分割の際には時価で評価し、分割を行います。

また、国税庁が定める相続時の財産評価の基準である「財産基本評価通達」によると、基本的に不動産は時価(不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に成立すると認められる価額)でみなされると記載されています。

1-1.複数の不動産会社に査定を依頼する

不動産の時価を調査するには、無料で行える不動産会社の査定を利用する方法があります。この場合、不動産会社に査定を依頼し、提示された査定額を時価(自由な取引で成立すると認められる価額)とみなす流れになります。

ただし、不動産会社は、会社によってマンション・戸建てなど得意分野と不得意分野があり、査定額に差が生じる可能性があります。最初は一括査定サイトなどを利用して複数社に査定を依頼することで、査定価格や査定の根拠を比較すると良いでしょう。

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なお、相続人の中で査定額による評価に反対する人がいる時には、全員が合意するまで話し合う又は家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。話がまとまらない場合は、不動産鑑定士による鑑定評価額を採用するケースもあります。

不動産鑑定士の不動産鑑定では、鑑定費用が掛かる点がデメリットですが、公的に不動産の資産性を証明することができます。法的なトラブルに繋がりそうな場合は利用を検討されてみると良いでしょう。

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1-2.不動産にローンが残っている場合

不動産にローンが残っている時には、ローン残債と売却価格の相場を比較することで物件の価値が分かります。ローン残債は金融機関の窓口で、売却価格の相場は不動産会社の査定額から予測を立ててみましょう。

ローン残債と売却価格の相場を比較し、ローン残債が売却価格の相場を下回る場合はアンダーローンで物件の価値はプラスです。一方でローン残債が売却価格の相場を上回る場合は、オーバーローンで物件の価値はマイナスとなります。

オーバーローンの物件を相続すると、資産性がマイナス状態の不動産を引き継ぐことになります。相続財産が不動産しかない場合には、相続放棄なども視野にいれながら検討することになります。

1-3.不動産の相続放棄

相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行う事で、不動産相続を放棄できます。ローンが残っている時にはローンも同時に放棄する事になります。

しかし、相続人全員が相続放棄を行ったケース、1人しかいない相続人が相続を放棄したケースでは、たとえ相続を放棄した者でも管理義務が残ります。マイナス分が大きい不動産の場合は相続人全員が相続放棄をする可能性が高いため、管理責任についてどのように対処していくか別途の相談が必要になります。

相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。(民法940条)

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2.相続財産が不動産のみの場合の分割方法

相続財産には4つの分割方法があります。相続では遺言書がある時は基本的に遺言書の内容に従い、遺言書が無い時は相続人全員が遺産分割協議で分割方法を話し合い決定します。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割
  • 共有分割

2-1.現物分割

不動産を現物のまま分ける方法で、例えば相続人が2人おり1人が建物を1人が土地を相続するといったケースです。相続財産が不動産のみである場合、現物分割で公平に分ける事は困難で現実的ではない事例が多いでしょう。

2-2.換価分割

不動産を売却した代金を各相続人の相続割合で分ける方法です。公平に分けやすく後でトラブルが起こりにくいというメリットがあり、相続財産が不動産しかないというケースでは利用されることも多い方法です。

ただし、売却の手間と費用がかかるというデメリットがあります。また、思い入れのある不動産を手放さなすことになるという、精神面のデメリットもあると言えるでしょう。

2-3.代償分割

不動産を相続人のうち1人が代表して相続し、他の相続人には代わりに金銭又は財産を譲る方法です。

相続人は他の相続人に代償金(又は代物)を支払うため資金力が必要となります。「不動産を処分したくないが、共有名義は避けたい」というケースには適しています。

2-4.共有分割

相続人がそれぞれの相続割合に応じて不動産を共有名義で相続する方法です。

「不動産を残したいが代償分割が難しい」というケースで利用されますが、所有者全員の合意が無いと賃貸や売却ができず活用が難しいというデメリットがあります。さらに、二次相続が発生すると名義関係が複雑化していくため、注意が必要です。

相続人同士で意見が食い違いトラブルの元となる可能性がありますので、慎重に検討しましょう。

3.不動産のみの相続で事前にできる対策3つ

相続財産が不動産だけである時に事前にできる対策として下記の4点があります。

  • 遺言書の作成
  • 推定相続人との話し合い
  • 必要書類の準備
  • 遺言執行者を選任

3-1.遺言書を作成する

被相続人(相続財産を残して亡くなる方)があらかじめ遺言書を作成し、相続人や割合を指定しておく方法です。相続人が意思を汲み、遺言書通りのスムーズな相続が行われることにもつながります。

ただし、相続人全員が出席する遺産分割協議で全員が合意した時には遺言書に従った相続が行われない可能性があります。また、不動産は価格変動がおきる資産なので、相続時の資産性を正確に推し量ることは難しく、遺言書の作成時点でどのような設定を行うのかは慎重な検討が必要と言えるでしょう。

その他、遺言書には民法で定められた決まりがあり、2人以上の共同での遺言や被相続人が病気であり遺言能力がないなど法律的な要件を満たさないケースで無効となってしまう可能性があります。

遺言書を書く時にはあらかじめ弁護士・司法書士など専門家に相談し、不備がないものが作成できるよう工夫をしましょう。

3-2.推定相続人全員と話し合っておく

相続財産が分割の難しい不動産のみのケースでは、相続人同士で意見が別れるケースもあります。相続人になる予定のある推定相続人の方全員を交えて、元気なうちに不動産相続について話し合っておくことで、相続時のトラブルを防げることがあります。

3-3.必要書類を準備しておく

相続不動産の所有権移転登記(名義変更)では、申請書や被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本などの書類が必要となります。相続登記であらかじめ必要となる書類を準備しておくことで、相続人の負担を軽減できることがあります。

固定資産税評価証明書は定期的に評価額が変更になり書類の内容も変わってしまいますが、戸籍謄本は有効期限がなく引っ越しや結婚などの予定が無い限り内容も変わりません。

戸籍謄本は取り寄せるために時間がかかるケースもありますので、あらかじめ準備しておくことも検討しておきましょう。

まとめ

相続財産が不動産だけの時は、価額を調査・把握し、4つの方法から遺言書又は遺産分割協議によっていずれかの方法を選びます。

将来被相続人になる可能性のある方は、遺言書を作成する、推定相続人と話し合っておくなどの事前にできる対策を検討しましょう。

この記事を参考に相続財産が不動産のみのケースについて知り、実際の場面で活かしていきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。